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「ピンチの鉄道会社」を救うのは「濡れ煎餅」だけではないのか?

−企業協賛イベントが開かれたGWの銚子電鉄を訪問して(08年5月3日訪問)−


TAKA  2008年05月26日



芸能人を読んだイベントの効果は如何に?@犬吠駅でのテツandトモCD即売会&握手会


 GWのロ-カル線訪問の第二段は「銚子電鉄」を訪問する事にしました。
 銚子電鉄は千葉県最東端の銚子から犬吠崎の近くの犬吠を経て外川までの短距離ローカル路線で、東京から一番近い?ロ−カル私鉄といえる鉄道です。
 この鉄道は元々「流浪の歴史」を辿って色々な系列下に入りながらも、何とか鉄道を維持して来て居ましたが、2006年11月15日に銚子電鉄HPに掲載された「電車修理代を稼がなくちゃ、いけないんです」と言うメッセージと、平成18年11月24日の国土交通省による「 安全確保に関する命令 」で、運行継続に関して危機的な状況が表面化し、その後ブログ等のネット上を中心に「濡れ煎餅を買う事で銚子電鉄を救おう」という動きが活発になり、注目を集めた鉄道です。
 実際このネット上を中心に盛り上がった支援呼びかけで、銚子電鉄の濡れ煎餅に注文が殺到し品切れになったり、多数の人が銚子電鉄に集まり大根雑になるなどの「増収効果」が有り、電車の定期検査を行う事が出来ると同時に、国土交通省に指摘された踏切施設・枕木等の不備に関しても、運行が継続出来るレベルまでメンテナンスが出来るようになりました。
 その様な危機的状況に有った銚子電鉄も、その様な支援の成果もあり、取り合えずで有っても危機から約1年半が経過しても何とか路線と輸送を維持しています。又此の頃ではスポンサーが着いての新しい試みも行われて居ると聞きます。前回の訪問から約一年半が経過して、新たな動きが出てきた銚子電鉄の状況をGWの遠出を生かして再度の訪問による「経過観察」を行う事にしました。

 「銚子電鉄 主要指標」
年度営業キロ輸送人員輸送密度資本金従業員営業収益営業費用営業損益全事業経常利益
H13年6.4km721千人1,124人/日129百万円23人142,017千円202,227千円▲60,210千円▲5,699千円
H15年6.4km674千人1,022人/日129百万円23人127,605千円165,819千円▲38,214千円1,027千円
H16年6.4km652千人1,001人/日129百万円20人110,374千円134,856千円▲24,482千円22,766千円
H17年6.4km654千人1,000人/日69百万円20人114,462千円153,860千円▲39,398千円▲11,644千円
※上記数値は「数字で見る鉄道2003・2005・2006・2007」より引用(一部は資料を基に計算)しています。

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 今回「経過観察」を兼ねて5月3日に銚子電鉄を訪問したのは、有るイベントが開かれていたからです。そのイベントは「 今年は「桃鉄」20周年! 「桃鉄」で千葉県・銚子電鉄を支援する第3弾 テツandトモが歌う「菜の花鉄道」で銚子観光を応援 」と言うイベントです。
 「桃太郎電鉄」と言えば、結構人気の有る「日本全国の鉄道を双六で進むゲーム(?)」で、私も桃太郎電鉄の登場初期の高校時代〜大学時代には結構皆で遊んでいて、ゲームに出てくるキャラクターの貧乏神のコメント「ボンビー」が流行るなど、30歳代の我々に取っても馴染みの深いゲームです。そのゲームが20周年紀念イベントとして銚子電鉄支援に協力するとの事です。
 「桃太郎電鉄」は大証ヘラクレス上場のゲーム会社ですが、主力商品の桃太郎電鉄が登場20周年を向かえた事からも、歴史の長い事が明らかで「チョット出てきたIT系企業」とは重みが異なる会社です。そのハドソンが過去の桃太郎電鉄と銚子電鉄のコラボレート(2003年12月発売の「桃太郎電鉄12」で、銚子電鉄沿線内の10駅をゆっくり走り、一番遅くゴールした人が勝ちという、「潮風のんびり銚子電鉄レース」というイベントがゲーム内に登場)等の実績もあり、今回の銚子電鉄危機に際して07年4月に再度コラボレートして「 整備中の車両の外壁修復費を「桃太郎電鉄」ラッピング電車の広告費で負担 」という取り組みを行う事になりました。
 GW前半には「手造り感覚十分」ともいえる 和歌山電鐵のイベント を見てきた後なので、その対比と言う意味では「ゲーム会社が仕掛けたイベント」を見るのも面白いと思い、生憎の小雨模様のGW後半初日でしたが銚子電鉄を訪問する事にしました。

 
左:JR駅の片脇に有る銚子電鉄銚子駅 右:ゲームの「桃太郎電鉄」が協賛しているラッピングトレイン

 5月3日GWの初日でしたが、生憎の小雨模様の天候でした。この日は朝一番で仕事をした後、錦糸町11:47発のしおさい5号で銚子に向かい、銚子到着は13:35でした。この時間帯は東京から銚子到着の特急が約2時間に1本で大体29分〜42分の時間帯に到着します。それに対して銚子電鉄は毎時2本で時間はチョットランダム気味の ダイヤ が組まれて居ます。しかしJRの列車との接続自体は特急・普通との接続は「完璧」とは言えないものの考慮はされて居る感じです。実際私もJRが13:35到着で銚子電鉄が14:41発・犬吠には14:01着と丁度良い感じの接続が取れています。実際1回目13時・2回目14時開始のイベントを見に行くには丁度良い時間帯でした。
 銚子電鉄のホームには既に電車が入線しています。入線して居る列車は「桃太郎電鉄ラッピング電車」です。銚子電鉄には笠上黒生にしか交換設備がありませんから、最大の運用は2編成での運用になります。流石に今日はハドソン&桃太郎電鉄のイベントが行われて居る為に2編成の運様の内1編成にラッピングトレインを投入し、偶々私もそれに当ったのだと思います。
 ラッピングトレイン自体は桃太郎電鉄の登場キャラクターを主体にデザインされており、カラーリング共に「悪い」印象は有りませんが、ホームから最初に見えるキャラが「貧乏神」でドアが閉まり走行しだすと真ん中には「キングボンビー」が居ます。この2つは桃太郎電鉄の中でも特徴的なキャラですからラッピングトレインに載せるのは当然なのですが・・・。倒産寸前でネットで救済を求めるほど「金の無い会社」の電車に取りつく「貧乏神・キングボンビー」を見ると、「銚子電鉄に貧乏神が取り付かないかな?」とチョット不安になります。

 
観光客で犬吠駅は結構な混雑!? 左:銚子より到着の電車(14時前) 右:銚子行きの電車(15時頃)

 しかしながら停車中のラッピングトレインの中を見ると・・・。「貧乏神・キングボンビー」の影響など心配するよりかも「電車に乗れるかな?」という事を心配した方が良い程の混雑状況です。(小型に近い)中型車単行と言う路面電車に毛が生えたほどの輸送力ですから此れだけ混むのかも知れませんが、ざっと見て100名近くの乗客は乗って居る感じです。
 乗って居る人の比率は、地元客(主に学生)約10%:観光客(比較的高年齢 犬吠岬が目的?)約50%:観光客(比較的若い年齢 イベントor乗り鉄系)約40%と言った感じです。実際沿線で一番降車客が多かったのは(当然ですが)犬吠駅でしたが、犬吠駅降車客もイベントが始まって居るにも拘らず「素通り・売店での買い物」等に半分以上の客が向かい、イベントに興味を示さない客も結構居ました。こう見るとこの混雑のかなりの部分は「イベントの誘発効果」ではなく、「GWの観光需要」で有ったと言えます。

 
左:「桃太郎電鉄」関連で行われた「テツandトモ」のライブイベント 右:銚子電鉄と言ったらやはり「濡れ煎餅?」@犬吠

 さて犬吠駅に着くと、既にイベントは始まって居ました。テツandトモ自体は私もテレビで見た事が有るタレントなので、「知名度はかなり高いタレント」と言う事が出来ます。その様なタレントのイベントだからなのか、其れなりの人の集まりで80名〜100名程度の人が集まって居ます。
 此れを「多い」と見るか「少ない」と見るかは難しいですが、「ローカル線活性化の為のお祭り的イベント」として比較して見ると、やはり「たまスーパー駅長」というタレント(?)がいた 和歌山電鐵の貴志川線祭り の方が明らかに「動員力」「鉄道への貢献度」は有った感じがします。銚子電鉄の場合、テレビに出演しているタレントが来てこのレベルですから、「たまスーパー駅長」の人気の凄さが引き立つ結果ですが、如何に「イベントを開いてローカル線に人を集める」事が難しいのを示して居ると言えます。
 私はテツandトモのトークを聞いていてもイマイチ面白く感じなかったので、暫くしてから駅の中に入りお約束の「濡れ煎餅売店」でお土産の濡れ煎餅を物色します。流石にGWと言う事で既に売れていたのか、1枚ずつバラ売りの濡れ煎餅しか残って居ません。仕方なくそれを10枚ぐらいお土産に買いました。此の頃は「品切れ」と言う言葉をそんなに聞かなくなり、しかもオンラインショップ等でもコンスタントに売る様になって居るので、昔のような「飛ぶ様に売れる」状況ではなくなったと思います。しかしそれでもGWの犬吠駅では「バラ売りしか無い」状況は人気でかなり売れて居る事を示して居ます。テツandトモの人気と濡れ煎餅の人気を考えると、やはり銚子電鉄において「濡れ煎餅の存在感の大きさ」は無視出来ない物で有る事を改めて痛感しました。しかしながら沿線外でも買える為、濡れ煎餅と鉄道利用の相乗効果が限定的で有ると言うのが残念な所で有ると感じました。

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 元々銚子電鉄の場合、2006年に廃止危機が発生した時には、ネット上で「救済運動」が盛り上がり、地元自治体・地元の人達では無く、沿線外の人達が盛り上げてネットでの運動に加えて、沿線外の人達に銚子市の住民が加わって出来た「 銚子電鉄サポーターズ 」が支援活動を行って居る状況です。
 基本的に銚子電鉄は「地域に根ざして居る鉄道なのか?」というと、残念ながら「地域に取って無くても良い鉄道なのでは?」と感じさせる点も有ると感じられます。実際地域公共交通という役割も有るのは分かって居ますが、比重として見ると「観光客の為の観光鉄道」という比重の方が大きいのでは?と感じられます。其処に「濡れ煎餅」という「取りつき易いネタ」が存在したからこそ、ネットで支援活動が盛り上がり、其処を狙って今回の 桃太郎電鉄のハドソン や( 濡れ煎餅販売サイト に協力した)オンラインショッピングのバリューコマース等の協賛する企業が登場したのだと思います。
 此れも又「ローカル線再生」の一つの形では有ると思います。只非常に現代的で有るとも言えますが、非常に特殊な形態で有ると言えます。私は果たして此れが本当に正しいのかは分かりません。しかし現在ネット社会が此れだけ広がって居る現状を考えると、この様な実例も又「一つの方策」として考えなければなら無いと改めて感じます。



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