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「セントラルライナー」関連報道2001

2001年における「セントラルライナー」(以後「CL」と略します)と中央西線に関する報道・記事を ピックアップしてみました。
なお、引用文は斜字で表記し、引用文章における漢数字は、便意上算用数字に書き換えました。

1999〜2000年における「セントラルライナー」関連記事はこちら。
2002年における「セントラルライナー」関連記事はこちら。

18.2001年正月輸送概況と2000年の年間輸送概況
線区区間2001年2000年前年比(%)
東海道大府〜名古屋19521959100
名古屋〜岐阜18061707106
高山岐阜〜美濃太田129129100
中央名古屋〜高蔵寺1885193198
関西名古屋〜四日市36737498
飯田豊橋〜豊川36338894
合計65026488100
『JR東海の名古屋近郊の在来線は約65万人で、微増(0.2%)した。』(中日新聞2001年1月5日朝刊)

2001年1月4日に JR東海の公式ホームページ に2001年1月 1日〜3日までの線区別輸送概況の詳細が公開されました。なお、表の数値単位は百人とのことです。 (一部抜粋)「セントラルライナー(CL)」が2度目のお正月を迎え、久しぶりに詳細にわたる輸送 状況が発表されました。東海道線の好調に反して、中央線では前年割れのようです。

「CL」を生んだ1999年12月のダイヤ改正以後、JR東海は名古屋駅のJRセントラルタワーズやジェ イアール名古屋高島屋開業による、いわゆる「タワーズ」効果を力説し続けているのですが、この1年 間の報道をあらためて振り返ると、「CL」そして中央線がこの「タワーズ」効果への寄与や、それに よる恩恵を得ることができたのかは疑問です。高島屋開業直後の「高島屋フィーバー」を除いて、中央 線の輸送量は前年割れが続いています。ここまで来ると、前年割の原因は単に不景気による利用者減少 ではないということを示しているのでしょう。


19.座席指定席制度の問題点(その1)
『JR中央線の中津川〜名古屋を走るセントラルライナー。従来の快速より早く、 座れるのが売りだ。だが、欠点もある。乗車整理券が必要なのに、自由に座席を選べないのだ。首都圏 や関西圏を走るライナーの場合は、乗る車両だけを指定する方式のため混乱は少ないと言うが…。(中略) 1月に乗り合わせた30代の主婦3人は驚いた。席が「2号車13番」「2号車10番」などとなっていて並んで 座れないのだ。空いている席に移りたいと車掌に頼んだのだが、「指定された席に」といわれたという。 (中略)同型のライナーは首都圏や関西圏でも走っている。JR東日本、JR西日本とも席の指定はせず、 車両だけを示している。移動距離が長く、「どの席でもいいから絶対に座りたい」客を想定している。 一方、セントラルライナーは、車内でも整理券が買えるので「飛び乗り」もできる利点がある。JR東海の担当者は「今のところ席の苦情は寄せられていない」と話す。特急列車のように、希望した席をそろえられるようにするとソフトの変更で費用が かさむという。このため変更の予定はない。結局、客同士が席を譲り合うのが一番手っ取り早い解決策 のようだ。』
(「朝日新聞」名古屋本社版2001年2月5日夕刊)


これまで静観の構えだった朝日新聞が、ダイヤ改正直前に「CL」の座席指定席問題を取り上げました。 この問題は「CL」登場時から不便な点として指摘されていました。その原因は座席整理券制度の根本 的な欠陥でした。それは既存の快速列車を振り替えたという「CL」の事情が考えられます。しかし、 乗車整理券販売のオンライン化や車掌にその端末を携帯させることでこの問題は早期に解決できたはず です。後半の「今のところ席の苦情は寄せられていない」という、JR東海担当者のコメントに早速反論 が届きます。

20.座席指定席制度の問題点(その2)
『…記事を興味深く読んだ。私もよく利用し、何度も苦い経験をしているからだ。 その記事中、JR東海の担当者が「いまのところ席の苦情はない」と言っているが、私が二度もJRに訴えて いるのに、この説明は一体どういうことなのか。一度は昨年3月に子どもと一緒に乗ったが号車も違う 席となってしまった時。二度目は5月ごろ東京から訪ねてきた年老いた両親が、大きな荷物を抱えてバ ラバラの席になり難儀したと聞いた時だ。いずれも電話で苦情を言って改善を要望した。JR東海は認識 を改め、早急に改善に着手して欲しい。』
(「朝日新聞」名古屋本社版2001年2月7日夕刊)


「CL」登場で最も不便になった土岐市の方からの投稿です。「今のところ席の苦情は寄せられていな い」という、 19 でのJR東海関係者のコメントは一体なんだったのでしょうか。JR 東海が利用者の声を無視し、こんな酷い対応をしていたとは思いませんでした。本当に残念です。JR東 海は 自社の公式ホームページ のなかにお客様相談窓口の 電話番号を掲載しているにも関わらず、利用者の声を聞く機能は持ち合わせていなかったのでしょうか。

21.JR東海、「CL」座席指定席制度を一部変更
『JR東海は、中央線の新型快速列車「セントラルライナー」で不評だった指定席 制度を一部変更し、なるべく希望通りの席 に座れるように改める。各列車の「調整席」を今までの3席から最大46席に増やし、並んで座り たい客に座ってもらう。従来の制度だと自由に席が選べず、朝日新聞社などに投書が寄せられていた。 13日から試行し、3月3日から本格的に実施する。(中略)この改正により、隣同士を希望する乗客は、車掌に申し出れば、空いている調整席に移ることができる。調整席がいっ ぱいの時だけ希望に添えない。JR東海は「これまでも席に余裕があれば、 お客様の希望通りにしていたが、徹底していなかったようだ。今後はかな り改善される」と話している。』
(「朝日新聞」名古屋本社版2001年2月11日朝刊)


「CL」に問題点については、登場後早々に読売 「セントラルライナー」関連報 道1999〜2000・4を参照) ・中日 同・5〜7を参照) の両紙が取り上 げましたが、まだ「CL」登場後1〜2ヶ月程度であったので、JR側も出足をくじかれてはいけないと思 ったのか必死の反論をしており、まだ見極める段階でなかった当時の「CL」に対する早期改善は私自身 も期待していませんでした。しかし、「CL」も2年目に突入したことで列車自体を改善する必要性を感 じたのか、今回の朝日新聞記事に対しては妙に態度を軟化しており、JRもタイミング良く改善策を発表 したのが印象的でした。「CL」のシステム変更は「CL」登場後初めてのことです。しかし、JR担当者の 「かなり改善される」の「かなり」という表現は曖昧です。また、「調整席」の利用とはどういうこと なのか、「車掌への申し出を必要とする点や希望に添えないことがある」というところも気になります。 そこで今回の座席指定席制度変更が一体どの程度のものか、そして座席指定券制度は本当に改善される のか、これについては こちら で考察してみます。

22.2001年3月輸送概況
『JR東海は新幹線、在来線などの3月(25日まで)の輸送概況を発表した。(中略) <在来線>普通列車は<1日平均輸送量は前年比>合計で98%で、名古屋−四日市が103%、同−大府98%、 同−岐阜99%、同−高蔵寺97%だった。葛西社長は「在来線の伸びが鈍化したのは、JR高島屋百貨店などの 開業効果が一巡したため。景気の先行きには不透明感があるが、輸送量に反映してくるとすれば4月以降に なると懸念している。来年度も今年度実績並みならよい方だと思う」と話した。』(中部経済新聞 2001年3月27日・<>内は当方で加筆)

久しぶりに在来線の輸送概況が発表されましたが、またもや前年割れでした。社長がJR高島屋開業効果の一 巡を認めていますが、中央線の概況が前年を上回ったのは開業直後のみでした。前年割れの原因を不景気に 転嫁していないかという疑問を感じます。社長が輸送量に反映すると懸念している、4月以降の輸送概況に 興味を持っています。

23.強力ライバル出現、名古屋〜多治見・可児都市間高速バス計画登場
『名古屋鉄道(名古屋市)と東濃鉄道(岐阜県多治見市)のバス会社2社は4日、 岐阜県の可児市の皐ヶ丘、桜ヶ丘、多治見市の希望ヶ丘、旭ヶ丘、明和町の計5つの団地と名古屋中心部と を、高速道路経由で共同運行する都市間高速バスの路線免許申請を国土交通省中部運輸局に出した。(中略) 運行距離47.6km。始発の可児市皐ヶ丘9丁目から名古屋・栄まで53分、名鉄バスセンターまで62分。それぞ れの運賃は850円、900円。1日600人の利用を見込んでいる。』(朝日新聞名古屋本社版2001年4月 5日朝刊)

『…認可を得て、6月上旬に運行開始する予定。5団地9ヵ所に停留所を設け、 中央自動車道多治見I.Cから高速道路を走行、名古屋高速道路・東新町出口を出て、栄、名駅に向かう。』(中部経済新聞2001年4月5日)

『…JR東海の土壇場になっている岐阜県東濃地方の足を名鉄が狙う格好だ。(中略) 高速バスは乗り換えなしをアピールし、名古屋高速の尾北線(小牧南−楠)が3月に開業したメリットも 生かして所要時間も1時間足らず。運賃も850円(皐ヶ丘9丁目−栄)などと、「栄なら今より早く行ける し、値段も8割ほどで済むはず」とPRする。』(中日新聞2001年4月5日朝刊)

岐阜県東濃地方で以前から噂のあった高速バスがついに運行されることになりました。JRの土壇場で かつ「CL」のメインターゲットである東濃地方にライバルが登場します。これは「CL」だけでなく、 中央線の利用者数に影響を与える可能性すらあります。この高速バスについては こちら で考察してみたいと思います。

24.2000年度累計輸送概況
『2000年度の累計は、新幹線のぞみ8%増、ひかり前年度横ばい、こだま1%増、 合計2%増。特急は合計3%減、普通列車は4%増。「ダイヤ改正や新横浜停車本数の倍増が功を奏し、 後半は堅調だった」。来年度の見通しでは「強気に見積もっても前年度並み」とした。』(中部経済新聞2001年4月20日)

2000年度のJR在来線は、JR名古屋高島屋とセントラルタワーズの開業効果で華々しい成績が出ると見ら れていましたが、1年経ってみると結局4%増にとどまったのは予想外でした。この2大プロジェクト がなかったら、どうなっていたのでしょうか。

25.「CL」は定番商品?
『中央本線名古屋−中津川間を走る座席定員制の「セントラルライナー」は、 わずか310円の乗車整理券をプラスするだけで座席の保障がされるため、同線の“定番商品”に成長した。』(「鉄道ピクトリアル」No.702、2000年6月号・徳田耕一「JR東海3月3日ダイヤ改正の話題」)

名古屋の交通ライターとして有名な徳田耕一氏は、貴重な「CL」擁護論者である。これまでも「CL」 に関する擁護記事が新聞や専門誌に何度も掲載されている。しかし、沿線利用者の声とはまったく逆で あるのはなぜだろうか。(また、個人的には列車に「定番商品」という表現はおかしいように思えるが、 ここではそれには触れないこととします。)更に「CL」の乗車整理券料金は「わずか」「だけ」で済む程度なのだろうか。 そうであるなら、なぜ利用者から「実質値上げ」批判が出たり、「CL」自体の乗車率が芳しくないことが 起こったのだろうか。そこで、「CL」の乗車整理券料金(310円)は、乗客が利用するうえで適正な価格 であるかどうか こちらで 考えてみたいと思う。

26.読者投稿Ⅱ
『JR中央線の高蔵寺駅から美乃坂本駅まで乗る予定でした。ちょうどセントラル ライナー号に乗れる時間だったので、ホームの時刻表を見て料金などの掲示を探したが見つからず、「乗 車整理券が必要」とあるだけです。列車に乗ったら「名古屋−多治見間は整理券310円必要」とありました。 セントラルライナー号の停車駅には、整理券の必要な区間と料金を掲示してほしいです。』(「中日新聞」2000年5月14日夕刊・「ハイ編集局です」)

「CL」利用における、JRの説明不足は運行1年を経過しても改善されていません。JRは「CL」利用者に対し て、各停車駅の案内に「乗車整理券が必要です」としか書いておらず、その料金や整理券の必要な区間に ついての詳細な案内が行なわれていません。特にややこしい、高蔵寺駅で下り(中津川行き)「CL」利用 者への案内はするべきです。いつも、この列車には過剰なほどの対応をしてきたJR東海ですが、今回の 読者投稿についてはコメントがありません。どうしたことでしょうか。
【補足】
中央線各駅のホーム上にある時刻表には、下の方に小さな字で「セントラルライナー乗車の場合は乗車 整理券が必要です。」と記載されているだけでしたが、後日その横にテプラのようなもので(310円)という案内が されていました。改善の兆候が見られますが、全般的にJR東海の案内は不親切なものが多いです。

27.クルマ社会への挑戦?
『平成12年12月4日のダイヤ改正で座席定員制列車「セントラルライナー」が 登場。クルマ社会へ挑戦する“新商品”として話題を集め、着実に成長しつつある。(徳田耕一「まるごとJR東海ぶらり沿線の旅Ver.2.DX」七賢出版・2001年)

「CL」はクルマ社会に挑戦を挑んだのでしょうか? そうすると、これまでJR東海が発表してきた輸送 概況を参考にすれば、「CL」は全面的敗北となってしまうでしょう。「CL」は何にどのような挑戦して いるのかといえば、「既存の利用者に新しいサービスを提供する列車を、その選択肢として新たに加え 増収を図る」ということがメインであり、クルマ社会への挑戦はその期待の延長線上にあるもので、 現時点ではまだ「CL」はクルマ社会に挑戦する段階に至っていないと私は思います。

28.川島令三氏の見解
『JR東海は中央線の名古屋−中津川間に、座席指定快速のセントラルライナー を1時間ごとに走らせている。車両は東海道線を走る新快速用と同じ形式のものだが、指定料金が必要 なので、回転式クロスシートにして、座りごこちをよくしている。しかし、リクライニングしない。 一方、JRと競争している名古屋鉄道の本線特急は、リクライニングシート装備する指定席車2両と転換 クロスシートを装備する一般席車4両の計6両で走る。このため、JRの新快速、快速、特別快速に指定 席を設ける計画があるが、現状のままの転換クロスシートで指定席にするのでは、名鉄にくらべて見劣 りがする。そこで名鉄と同程度の豪華な回転リクライニングシートを装備した指定席車が考えられてい るのだ。(中略)料金310円が加わる指定席を利用するなら名鉄の方が得だ。座席を豪華にするだけ でなく、テレビ設置やおしぼりサービスなど付加価値も必要である。』(川島令三「鉄道未来地図」東京書籍、2001年)

『並行路線のない中央線や犬山線では競争がないために、いずれも指定席料金 を取る電車も頻繁に走らせている。それ自体悪いとは思わないが、独占線区なので快適乗車の推進を図る については、ややなおざりである。』(川島令三「私鉄大国の凋落」草思社、2001年)

「全国鉄道事情研究」シリーズなど、精力的な執筆活動をされている鉄道アナリストの川島令三氏。 以前から「CL」を取り上げてくれないかと待っていたところ、そのコメントがほぼ同時に発刊された著 書に出ていました。「CL」が310円の価値に乏しい列車であることや、「CL」によってJRが中央西線 利用者に対しての快適乗車推進をなおざりにしているという指摘は、的を射ていると思います。なお、「CL」の座席は回転クロスシートではなく、転換クロスシートの誤りです。
29.名古屋〜多治見・可児都市間高速バスついに登場
『名鉄系地方バス会社の東濃鉄道(本社多治見市、山田幸治社長)は、多治見 市・可児市内の住宅団地5ヵ所と名古屋市の名駅・名鉄バスセンターを約1時間で直結する「都市間高速 バス・名古屋線」を名鉄と共同で、10月20日にも運行開始する方針を固めた。(中略)当初は6月の運行 開始予定だったが、利便性を考えて、工事中の名神高速道路小牧IC−名濃道路小牧南IC間2.8kmの開通ま で見合わせていた。このほど同区間の開通が10月19日に決定し、路線免許も取得見通しとなったため、 10月20日の運行開始へ準備を開始した。』(中部経済新聞2001年9月14日)

3ヶ月前に 新聞報道(No.23参照) されながら、その後、一切続報が無く、名鉄 ・東濃鉄道双方とも運行開始する気配が無かったのですが、ようやく運行開始されるようです。記事の 「利便性を考えて」という文が気になりました。おそらく、朝の通勤・通学時に多治見・可児の団地から 名古屋都心に向かう際、名神高速道路小牧IC−名濃道路小牧南IC間2.8kmの一般道路(国道41号)の渋滞に よるダイヤの遅れを心配していたのではないでしょうか? 不安要素を払拭したうえでの運行開始になり そうです。この高速バスについては こちら で考察して みたいと思います。

1999〜2000年における「セントラルライナー」関連記事はこちら。
2002年における「セントラルライナー」関連記事はこちら。

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