このページは、2019年3月に保存されたアーカイブです。最新の内容ではない場合がありますのでご注意ください

─ コンデンサ ─


ピストンを押して動輪を動かす仕事をした蒸気は、最後には煙突の下にある吐出管から上方へ 向かって吐き出される。これによって、煙を一緒に吸い出し、通風を助けて燃焼を良くする。 このときにボッ、という音がする。シリンダの1行程毎に蒸気が排気されるからボッボッ、と、 独特の音がする。蒸気機関車がタンクに持っている水は、こうして水蒸気、という形となって 大気中に放散される。一方通行で水は消費されていくので、石炭よりも水の方が多く消費される。 D51やC57型はテンダといって、石炭と水を積む車を機関車本体の後部に連結している。D51の場 合、石炭8トンに対し、水は20トン積むことができる。はるか遠い昔、東海道を走った超特急 つばめ号が東京-名古屋間を無給水で運転するために、水タンク車を連結したことは鉄道関係の 本に書いてあったりする。

外国には水事情の悪い国もあり、水を大気に放出せず、再利用する機関車が存在した。
1967年8月の「鉄道ファン」という雑誌に南アフリカの鉄道事情が紹介されており、ここに、 水を回収する蒸気機関車の解説が掲載されている。
ピストンで動輪を押して仕事をした蒸気はまだ勢いが残っているので、蒸気タービンに導いて ファンを駆動する。このファンは煙突の下に設置されており、煙を排出して石炭燃焼の通風を 助ける。蒸気タービンを出た蒸気は太い排気管(圧力が下がって体積が増しているから太い管 が必要)を通って、機関車後部に連結されたテンダに送られる。テンダは整備重量約110トン。 機関車本体と大きさも重量も同じぐらい。ここに「復水器(コンデンサ)」と呼ばれる機械が 備えてある。エンジンのラジエータのようなものを考えていただければよい。送られてきた蒸 気を空気で冷やし、水に戻す機構である。復水器に空気を通すため、大きなファンが5基備え てあり、このファンは蒸気タービンで駆動されている。
テンダを含めた全長33m、整備重量234トン、4軸の動輪の上に載ったボイラは車両限界一杯の 巨大さなのだが、恐ろしくテンダが長く、機関車本体が小さく見えてしまう。

「ボッボッボッ」という断続した排気音とともに煙突から煙を吐くのが蒸気機関車の見慣れた 姿なのだが、この機関車はどんな音がしたのだろう。電気機関車の送風機と同じように 「ブォーッ」という連続音とともに通過し、テンダが通過していくときにはさらに大きな送風 機音がしたのであろうか。

※蒸気を冷やして水に戻す装置を復水器、コンデンサという。コンデンス(condense)とは 凝縮するという意味。蒸気を凝縮して水にするから凝縮器でコンデンサである。コンデンサ とは電気部品の方が一般的であるが、こちらは凝縮するわけではない。

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