このページは、2019年3月に保存されたアーカイブです。最新の内容ではない場合がありますのでご注意ください

─ 歯車 ─


蒸気機関車による旅客列車を運行していることで知られている大井川鉄道は「アプト式鉄道」 でも知られている。これは、蒸気機関車を運転している区間より上流部の井川線にその区間が ある。旧国鉄線にも、かつて、アプト式鉄道があった。信越線の横川-軽井沢の碓氷峠である。 このアプト式というのは急な勾配を登り下りするために、左右のレールの中央にラックレール という歯型のレールを設置し、車両側にもこの歯型に噛み合うように歯車を備えた方式である。

碓氷峠の昔の写真を見ると中央のラックレールは薄い鋼板製のレール3枚を少しずつずらして 施工されていることに気がつく。
歯型のレールと歯車を噛み合わせて急な勾配を登り下りする鉄道のうち、ラックレールを薄い 鋼板で2〜3枚に分割する方式を「アプト式」という。これは曲線路での施工を容易にするため なのだそうだ。確かに幅の広い直線のラックレールを現場に持ち込んでも、曲線に施工するのは 容易ではないだろう。薄い鋼板ならば、線路の敷設現場でも容易に曲げて施工できそうだ。 他にもラックレールを横に背中合わせに施工して左右から機関車の歯車を噛み合わせる方式もあ るのだそうだ。ただし、多くの歯車式鉄道は分岐器で車両の歯車と分岐するレールとが ぶつかってしまうので、ごく限られた専用線でしか使われていない。
碓氷峠のラックレールは両側のレールより高く施工されていて、機関車の歯車が分岐器の分岐 線路とぶつからないようになっていた。(満員で車体床面の下がった客車の床下の水タンクが ラックレールとぶつかったことがあるのだそうだ)

ところで、碓氷峠も大井川鉄道も3枚のラックを使い、これを進行方向に1/3ピッチずらして いる。
歯車というのは、1組の歯が噛み合いを終わって離れていき、次の歯が噛み合い始めるまでの 間、一時的に動力を充分伝達できない瞬間ができてしまう。そこで、1/3ピッチずらして常に どれかの歯車が噛み合い、なめらかに動力伝達できるようにしている。
これはラックレールだけではなく、一般の機械の歯車も同様であって、一般の機械の場合は歯を 削り出すときに、歯を斜めにする。このような歯車を「ハスバ歯車(ヘリカルギヤ)」という。
DD51やキハ181などの台車に組み込まれた減速機の歯車はこのようなハスバ歯車が使われてい る。

※写真はハスバ歯車の例。鉄道車両とは関係がない。

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