このページは、2019年3月に保存されたアーカイブです。最新の内容ではない場合がありますのでご注意ください

─ 逆転機 ─



DMH17系機関を搭載した気動車は、台車内の動輪に逆転機を備えている。これは、トルク コンバータ内に逆転機を備えていないため。この逆転機はカサ歯車を3個組み合わせてあり、 自動車の差動装置(ディファレンシャル)に似ている。が、鉄道車両の左右の車輪は軸で つながれていて常に同じ速度で回転し、差動装置は持っていない。(注1)
鉄道車両が曲線を何の問題もなく通過することができるのは、曲線では左右のレールの幅が わずかに広げてあることと、車輪が外へ向かってテーパー(円錐の一部)になっているから。 車輪は直進しようとするから、曲線では外側に振られて外側の車輪は大きい直径の部分で回り、 内側の車輪はわずかに直径の小さい部分でレールの上をころがって、曲線を無理なく、 なめらかに回っていく。(だから、自動車のように差動装置を必要としない。)

DMH17系(180PS)のように台車内に逆転機を装備している気動車は機関出力が小さく1軸 駆動で充分なので、台車内の2軸のうち、1軸だけを駆動する。
機関出力を大きくしたDML30HS系(500PSまたは440PS)を搭載した気動車は、1軸駆動では 空転してしまうおそれがあるので、台車の2軸の両方をカサ歯車と推進軸でつないで、2軸とも 駆動するようになっている。台車側に逆転機を装備するスペースがない(注2)ので、逆転機構 をトルクコンバータ内に備えている。
歯車機構で逆回転させるのだが、自動車の手動変速機のように歯車をスライドさせて噛み合わ せを変えるのではない。すべての歯車は常時噛み合わせてあって、2組のクラッチを入切して 回転方向を変えるようになっている。(注3)
クラッチは湿式多板クラッチといって、何枚かのクラッチ板を重ねて、冷却油が流れるように なっている。枚数が重ねてあるから、外径が小さい割に大きな動力を伝達することができる。
(自動車の自動変速機や二輪車に使われているのと同じ。もちろん、レバーやペダル、手足を 使って入切するわけではない。油圧作動になっている。)

(注1)自動車の駆動輪は左右直結されておらず、差動装置が組み込まれている。 カーブするときに内側は小回り、外側は大回りしなければならないから、直結されていたら、 軸はねじ切れてしまう。この左右の車輪の回転差を無理なく吸収するためにカサ歯車を組み 合わせて差動装置(ディファレンシャル)という機構が装備されている。
カサ歯車のことをディファレンシャルと記述している雑誌、解説誌をみかけたことがあるが、 (カサ歯車を使って、差動装置=ディファレンシャルという装置をつくることができるが、) カサ歯車を使って、動力の方向を変えるだけの機構はディファレンシャルではない。

(注2)台車側の減速機、逆転機はバネ下重量となり、車軸からの振動を受ける。台車側に 逆転機を置く、というのは、故障の一因となる。単にスペースがない、というだけの理由 ではない、と思われる。

(注3)初期の181系ディーゼル車他(キハ65、キハ90、91/DW4系)の逆転機は歯車を揺動させて 正・逆を切替えるようになっていた。(後日、解説の予定)

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