このページは、2019年3月に保存されたアーカイブです。最新の内容ではない場合がありますのでご注意ください

─ 2軸駆動 ─



DML30HS系を搭載した気動車は、台車の2軸の両方を駆動するようになっている。
上の図はキハ181系の駆動系の概念を描いたもので、右端の青色のフタマタ部が機関・変速機に 接続された推進軸の十字継手を示している。
トルクコンバータから出た動力はこの第一推進軸で台車内の第一減速機を動かす。 第一推進軸で駆動される軸にはカサ歯車(青紫色)が付いていて、第一の動輪(図の右側車輪)を駆動する。
軸の他端には第二推進軸が接続されていて、台車内の第二減速機を動かす。 第二減速機内にも同様のカサ歯車が付いていて、第二の動輪(図の左側車輪)を駆動する。
こうして台車内の2軸が駆動されるようになっている。
動輪2軸はそれぞれ軸バネがあって、線路の継ぎ目や分岐器を通過するときに、 それぞれ勝手な動きをするから、第二推進軸も十字継ぎ手とスプライン(注1)で 自由に動けるようになっている。
キハ181系の台車では、カサ歯車(青紫色と薄緑色)の歯数は28:23で一旦増速される。
増速された軸と動輪の間に歯数16:46の減速歯車(水色と黄色)があって動輪を駆動している。
これらの歯車は動力を滑らかに伝達するため、斜めに歯が切られている。 それぞれ「まがりばかさ歯車(曲がり歯傘歯車)」「はすば歯車」という。
はすば歯車は上下に設置されていて、薄緑のカサ歯車のほぼ真下に車軸が通っている。 上の図ではこれを展開して描いている。

キハ181系の変速機(DW4)内部には逆転機構が組み込まれていて、 歯数48:49の減速歯車がある。変速機が機関と直結になっているとすれば、 エンジンクランク軸が1600rpmで回ったとき、 変速機の出力軸は
1600×(48/49)=1567(rpm)
で回る。これが推進軸の回転速度であって、減速機のカサ歯車で一旦増速され、
1567×(28/23)=1908(rpm)
となり、次の減速歯車で
1908×(16/46)=663(rpm)
となる。これが動輪の回転速度であり、動輪径を860mm(公称)とすれば、
663×(0.86×π)×(60/1000)=107(km/h)
となる。

容易にわかる通り、もし動輪径に差があると、動軸2軸間に回転差を 生じてしまい、歯車に無理がかかって壊れてしまうおそれがある。
2軸の動輪径の差は整備の際、1mm以内に収めるよう指定されている。

注1)スプライン:上の図の濃青色と灰色の部分は、濃青色部の外歯と灰色部の内歯(歯数同じ)がごくわずかの隙間が あって、噛み合っている。歯面で動力を伝達しつつ、軸方向にスライドできるようになっている。
(参考文献:ディーゼル車設計経緯(日本鉄道車両工業会他)、181系特急形気動車説明書)

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