このページは、2019年3月に保存されたアーカイブです。最新の内容ではない場合がありますのでご注意ください

─ ピストン ─




「平均ピストン速度」の解説の中で、DML61Zを例に、ピストンの速度を計算した。
DML61Zを定格の1500rpm(毎分回転速度)で運転したときの、ピストンの最高速度を時速という単位で表すと、 それは58km/hとなる。
ピストンは上下で必ず速度が0km/hとなる。その間は1500rpmでクランク軸が回っていれば、 1500÷60=25で1秒間に25回転。
1回転に要する時間は1÷25=1/25=4/100=0.04秒。
上死点から下死点、または下死点から上死点まで、ピストン片道ならば0.02秒。
この0.02秒の間にピストンの速度は0km/h→58km/h→0km/hとめまぐるしく変化する。最高速度はクランク角度で 約80度のときなので、上死点から最高速度に達するまでの時間は0.01秒以下。
恐ろしいほど短時間で速度が変化することがわかるであろう。加速、減速というより「衝突」している、 という方がふさわしいかもしれない。そして、それが1回転のうちに2回、1秒間に50回という頻度で必然性をもって発生している。 当然のことながら、往復運動する部分はもちろん、回転する部分もこれに耐えるだけの強度をもっていなければならない。

ピストンはこの衝撃のような荷重に耐えながら、同時に燃焼ガスの温度にも耐えなければならない。 DML61Zのピストンはアルミ合金でつくられている。軽い材料でつくることによって、衝撃荷重を低減する。 同時に、コンロッド小端部からは小端部を潤滑した油がピストンの裏面に噴き出て、油で冷却するようになっている。 アルミは熱伝導が良いので、冷却さえしていれば、溶融することはない。 アルミの鍋を火にかけても、水がある限り溶けないのと同じ理屈である。

DML61Zの1100PSに対し、1250PSまで出力を上げたDML61ZAのピストンでは、耐熱性をさらに向上させるために、ピストンの上部だけを鋼製にした。 アルミ合金のピストン体に鋼製クラウン(ちょうど王冠を載せるように)をボルトで固定した。 そして、両者の合わせ面には冷却のための油の通路を設けた。 ピストンとコンロッドの間には摺動する金具が付けられて、油が確実に届くような構造になっている。

さらに、出力1350PSのDML61ZBでは、総アルミ合金のピストンに戻り、クランクケースの中に冷却油(潤滑油と兼用)の 噴射ノズルが付けられた。ピストンの裏側に潤滑油が当たり、ピストンを冷却するようになっている。

写真はDML61Z系のピストン。写真では大きさがわかりにくいが直径18cmである。この写真では上下逆。ウラ向けに伏せて置かれている。

※キハ181系の駆動機構に引き続き、DD51の駆動機構の話を予定しておりましたが、3次元の駆動機構を平面のイラストにするのに 行き詰まっています。このままでは、今年もエンジンの話が止まってしまうので、先にエンジン機械本体の話をすすめることにします。 駆動機構の話はまだまだ続きます。

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