このページは、2019年3月に保存されたアーカイブです。最新の内容ではない場合がありますのでご注意ください

─ ピストンリング ─




ピストンの外径はシリンダよりごくわずか小さくつくられている。ピストンとシリンダの スキマが大きいと燃焼ガスは漏れてしまうし、スキマが小さいと、摩擦抵抗が大きくなるし、 通常、ピストンの方が温度が高いので、熱膨張して相互に固着(焼付き)してしまう。
燃焼室の気密を保つためにピストンにはピストンリングが嵌められている。

最近の自動車のエンジンに使われているピストンリングは3本。上部の2本を コンプレッションリングといって、気密を保つためのリング。 下の1本はオイルリングといって、余分の油をカキ落とすリング。
合口(あいくち)といって、1ヶ所、口があいていて、C型の形状をしている。この合口を 専用の工具で広げて、ピストンの溝に嵌め込む。 見た目には単純な部品なのだが、合口スキマ、張力、断面形状、表面処理、材料など 難しい要素があって、見た目ほど簡単なものではない。
新潟地方の地震で、このピストンリングの工場の操業が止まり、日本中の自動車工場が 震え上がったことはよく知られている。

鉄道車両用のエンジン、DML61Zでは5本のリングが使われている。
上部の3本がコンプレッションリングで、その下、ピストンピンの上下に1本ずつ、オイル リングが配置されている。3本のコンプレッションリングもそれぞれ微妙に異なっている。
最上部、第一リングは高温・高圧の燃焼ガスにさらされるので、全周に硬質クロムメッキが されている。とくに、シリンダと接する外面は他より厚くメッキされている。
第二リングはごく一般的な長方形断面のリング。
第三リングはピストン上部に向かってごくわずかに上すぼまりにしたテーパーリングで、 外周下部を切り欠いたアンダーカットという形状。

ピストンリングというのは、ピストン、シリンダから外した自由状態では、合口が開いて いる。これをピストンのリング溝に嵌め、シリンダに入れるとリング自身のバネ力で、 適度な力でシリンダに押し付けられて、気密を保つようになっている。
容易にわかる通り、シリンダの中に装填されたとき、真円にならなければならないから、 自由状態で真円に作っても意味がない。

写真はDML61ZAのピストン。この写真では上下逆。ウラ向けに伏せて置かれている。 ピストンリングの嵌まる溝が5ヶ所つくられている。
オイルリングの嵌まる溝はカキ落とした油がリング溝の奥からピストン裏側へ抜けて オイルパンに落ちるように、油穴があけられている。

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