このページは、2019年3月に保存されたアーカイブです。最新の内容ではない場合がありますのでご注意ください |
遠い昔、蒸気機関車が客車を引いていた頃は、客車の室内灯は車軸で発電機を回して電力を得ていた。 駅で停車したときに電灯が消えては具合が悪いので、蓄電池を積んでいた。
冷房装置を動かすほどの電力は得られないから、冷房なし。暖房は機関車から蒸気を分けてもらっていた。
(だから、客車牽引用の電気機関車やディーゼル機関車はボイラを備えていた)
生活水準の向上とともに、冷房装置が当然のようになって、車両の電力事情が変わってきた。 電車は架線から電力を得ているから、比較的容易に対応できる。
客車やディーゼルカーはディーゼルエンジンで発電機を回す電源装置を積むことにした。
ブルートレインと呼ばれる寝台特急の客車は編成端に連結した荷物車の2/3ほどを機械室にして 立型直6のDMF31SB-Gを積み、編成全体の冷暖房、照明、食堂車の調理器具への電力を供給した。
ディーゼル特急や客車(臨時列車用、編成を途中で分割する寝台列車など)には、 小型水平直6のDMF15HS-G(または15H-G)を編成中の何台かの床下に分散して積み、電力を供給した。
発電用の機関は走行用の機関のガバナとは異なり、常時一定回転を保つようになっている。 コンスタントガバナといって、電力使用量に関わりなく常に1800rpm(発電周波数60Hz)を保つ。
蒸気機関車が盛大に煙を吹き上げるのは駅の出発時と登り坂のときだけのように、鉄道車両が動力を 必要とするのは、力行時だけなので、走行用の機関は平均すると負荷が軽い。
これに対し、発電用の機関は営業に入ると、常時、電力を供給しなければならない。
春、秋の気候のいい頃は負荷が軽いが、冷房が必要となる夏は過酷である。 走行中はもちろん、駅で停車中もフル稼働である。しかも、周囲はうだるような暑さ。 停車中は走行風が入らないから、当然、ラジエータも能力一杯である。
発電用機関の過酷さを、「全速力で高速道路をすっとばすようなもの」と表現した方がいるが、 そんなナマヌルイものではない。「ローギヤで急な坂道を登り続けるようなもの」である。
なお、鉄道車両の電源は原則的にどこへ行っても60Hzである。家庭用の電源とは独立しているから、 関東、東北方面へ行っても、ディーゼルカーや客車の照明やクーラの電源は60Hz。
(追加)詳しい解説
ディーゼルエンジンで回す発電機は同期発電機を使います。この発電機の発電周波数は回転速度で 決まります。
キハ81の発電機はDMH17-Gで駆動し、1200rpm、6極の発電機で60Hzを得ていました。キハ181では DMF15H-GまたはDMF15HS-Gで発電機を駆動し、1800rpm、4極の発電機を搭載しています。
回転速度の違いは、発電機の極数を変えることで、同じ、60Hzを発生するようになっています。
同期発電機をモータとして使うのを、同期(シンクロナス)電動機といい、回転速度が周波数だけで 決まり、電圧が多少変動しても、回転速度が変わりません。この性質を利用して、電気時計や レコードプレーヤに使われました。
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