このページは、2019年3月に保存されたアーカイブです。最新の内容ではない場合がありますのでご注意ください

─ 平均ピストン速度 ─


どんなに高速で回転する機関のピストンであっても、往復機関である限り、上死点と下死点では、ピストンの速度は0になる。 高速で疾走する車両であっても、車輪の下面、レールと接する踏面は対地速度0なのと似ている。(滑りはないものとする)
さて、時々刻々その速度が変化する往復機関のピストンの平均速度はその機関のひとつの指標となるし、設計上の目安でもある。 ならば、この平均速度をどうやって求めるか。時々刻々変化するピストンの速度を幾何学的に求めて、それを平均して・・・ などと考えてはいけない。
クランク軸が1回転する間にピストンは上→下→上と1往復する。
DML61Zを例にとると、その行程は200mmだから、ピストンが1往復する間に動く距離は400mm(200mm×2)。 クランク軸が1回転する間にピストンが動く距離は400mm。
DML61Zの定格回転数は毎分1500回転。1秒間にすると、1500÷60=25(回転)。クランク軸は1秒間に25回転する。
クランク軸が1秒間に25回転するのだから、1秒間にピストンが動く距離は400mm×25回で=10,000mm、すなわち、 ピストンの平均速度は10m/secということになる。

これから、機関に関する一つの公式ができる
平均ピストン速度(m/sec)=行程(mm)×回転数(r.p.m.)÷30000
ちなみに、毎分1500回転のDML61Zのピストンの最高速度は約16.2m/sec(=58km/h:上死点より約80°の位置)となる。
(ごく幾何学的に求めた結果)

鉄道車両の機関の平均ピストン速度を走行用の定格回転速度で計算した結果を表にしてみた。
機関型式行程(mm)回転速度(rpm)平均ピストン速度(m/sec)
DMH17H160
1500
8.0
DMF15HS160
1600
8.53
DML30HS160
1600
8.53
DMF31S200
1500
10.0
DML61Z/ZA200
1500
10.0
DML61ZB200
1650
11.0
12V396185
1800
11.1
SA12V170170
1800
10.2

この計算式はあらゆる往復機関に適用できる。自動車のエンジンであろうと、船のエンジンであろうと同じ。
ふと、蒸気機関車にも適用できることを思いついたので、計算してみる。C6217号機が狭軌蒸気機関車の最高速(129km/h) の記録を残していることはよく知られている。
C62が120km/hで走行したとき、毎分2000m走行する。動輪径が1750mmなので、このときの動輪の回転速度は、
2000÷(1.75×π)≒363(rpm)
ピストン行程660mmだから、平均ピストン速度は660×363÷30000=約8m/sec となる。
ディーゼル機関とほぼ同じ、ということがわかる。(もっとも蒸気機関車の120km/hは常用速度ではないが・・・)

このページは、2019年3月に保存されたアーカイブです。最新の内容ではない場合がありますのでご注意ください