このページは、2019年3月に保存されたアーカイブです。最新の内容ではない場合がありますのでご注意ください |
ピストン、シリンダ機構のフタとなる部分はシリンダヘッドという。ここには、給排気の通路と バルブ、バルブの開閉機構が組み込まれている。予燃焼室式ならば、予燃焼室と噴口、燃料ノズル、 予熱プラグも組み込まれている。
給排気の通路の周囲は水室が取り巻いていて、内部は冷却水の流れる通路がつくられている。 このような部品を製造するには「鋳造(ちゅうぞう)」という方法をとる。溶けた鉄(湯という) を型に流し込んで、冷えて固まったところで、型から取り出す。クランクケースや水ポンプの 渦巻室など、鋳造という製造法でつくられるエンジン部品は多い。
自動車部品ではダイキャストといって、鉄で型をつくってアルミニウムを流して部品を製造する ことが多いが、鉄道車両のエンジン部品は砂型を使う。
砂で型をつくるのだ、というと「へぇ〜ッ!」と思うかもしれない。材木で「木型」をつくり、 これを砂に押しつける。と、砂に木型のとおりの凹みができる。木型を抜き取って、湯(鉄)を 流し込めば、木型と同じ形の製品ができる。次々に木型を砂に押しつけていけば、一つの木型で 同じものを何個でもつくることができる。原理的にはこれだけのことだが、シリンダヘッドは 内部に水の通る空洞がつくられている。
このように内部に空洞をつくり込むには、「中子(なかご)」というものをつくる。内部形状の 形をした砂の型をつくって外型の中に仕込んでおく。砂だけでは崩れてしまうので、バインダと いって、樹脂の粉末を砂に混ぜて焼いて、適度な固さをもった型をつくる。
湯を流し込んで、できた製品は内部に砂が残る。中子を支えるための孔があいているから、 ここから砂を出す。ショットブラストといって、鋼球を製品にぶつけて、砂を落とす。
製品には、湯を流し込んだ部分(湯口)と空気を抜いた部分(湯上り)が余分に付いているから これを切り離す。
砂を落とし、余分な部分を取り除いた製品は削り加工や孔あけを施し、砂を抜いたあとの穴には フタをする。
一つの木型から次々と同じ製品が作れるので、大量生産向きの製造方法だが、反面、不良品も 出易い。湯が隅々まで行きわたってくれればいいが、湯が途中で凝固してしまったり、うまく 空気が抜けず、所定の製品ができない場合もあるし、砂型がずれて、水室の壁が薄くなって しまう場合もある。
シリンダヘッドのように、内部に水通路があるような部品は最後に水圧試験を実施して水漏れが ないことをチェックする。手間をかけて完成させても、水漏れがあってスクラップとなる場合も ある。
なお、木型は、完成品より大きくつくっておかなければならない。なぜなら、型に流し込むのは 溶けた鉄、凝固して収縮し、さらに室温まで温度が下がるまでに熱収縮(熱膨張の反対)して しまうから。熱収縮を考慮して大きめの型をつくっておかないと、所定の寸法の製品にならない。 絶妙なノウハウが必要な製造方法でもある。(当然のことながら、製品の材料によって熱収縮率 が違うから、たとえば、鉄製品とアルミ製品とでは木型を作るときの拡大率は異なる。) 何度も木型屋さんのところへ足を運び、型の割り方などを教わりながら作図した頃が懐かしい。
(写真はDMF31S系機関のシリンダヘッド:削り加工前の鋳造素材。側面の6個の穴が中子支えの跡)
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