このページは、2019年3月に保存されたアーカイブです。最新の内容ではない場合がありますのでご注意ください |
船舶に使われる機関の中には、クランク軸の回転方向が自分で反転することのできる「自己逆転式」 というのがある。
船舶には陸上の車両のようにブレーキがない。港に入るためには、速度を落とし、岸壁に着岸する ためには停まらなければならない。船舶のブレーキはプロペラを逆転させる。
逆転させる、と書いたが、逆推進力が得られればよいので、このための方法の一つとしてプロペラ 羽根のねじり方向を変える手段がある。可変ピッチプロペラといって、ねじり角度、方向が 変えられるようにつくられたプロペラを使う。YS-11という航空機のプロペラが可変ピッチプロペラ だったことはその業界なら誰でも知っていることだろう。
この方法では、プロペラ軸の回転する方向はそのままで、プロペラ羽根のねじり方向を逆にして、 逆推進力を得る。
(注)YS-11のプロペラはゼロピッチ(ネジリ角度=0)まではできるが逆ピッチ(リバース) までは動くようにはなっていなかった。
今、一つの方法は、自動車のように機関とプロペラの間に歯車機構を置いて、逆回転させる方法。 これは、誰でも思いつく。
4ストローク中速機関では出力回転速度が400rpmから700rpmでそのままプロペラを回すには速すぎる。 そこで、このような場合は機関とプロペラの間に歯車による減速機構を必要とする。ついでに、 減速機の中に一緒に逆転歯車とクラッチ機構を組み込む。さらにプロペラの大きな推進力を船体に 伝えるための推力受けも組み込む。ただし、自動車と違って、扱う動力が桁違いに大きいので、 歯車もクラッチもその大きさは半端ではない。自動車の逆転機構のように、歯車を移動させて噛み 合わせを変えるのではなく、正転方向の歯車と逆転用の歯車の両方にクラッチが装備されていて、 接続するクラッチをかえて、正転・逆転させる。
さらに、もう一つの方法は、クランク軸そのものが逆回転するようにつくられた機関を使う方法。
4ストロークの機関ならば、給・排気と燃料噴射のタイミングを変えると逆転することができる。
1本のカム軸に正転用のカムと逆転用のカムが作られていて、カム軸を軸方向に移動させて回転 方向を変える。(もちろん、一旦、停止させる)正転用と逆転用のカムの間はなめらかにつながれて いて、カム軸の軸端に設けた空気シリンダか油圧シリンダで移動する。
2ストローク機関は、給気をポートで行なっているから給気のタイミングを変えることはできない。 が、排気、燃料噴射、始動タイミングを変えると、始動する方向を変えることができる。
始動は空気始動式で、動作がいかにも煩雑だが、意外な程、素早く逆転する。
以前、自動車のエンジンが逆回転してしまった話を聞いたことがある。詳しいことは忘れて しまったが、昔の2ストローク2気筒360ccの軽自動車のエンジンだと、登り坂でエンストを 起こすと、場合によっては逆回転してしまうかもしれない。
※写真は宇高連絡船上で撮影(1975.10.)
このページは、2019年3月に保存されたアーカイブです。最新の内容ではない場合がありますのでご注意ください |