このページは、2019年3月に保存されたアーカイブです。最新の内容ではない場合がありますのでご注意ください

─ 熱効率(舶用主機) ─


(舶用機関の話、3回の予定でしたが、1回分追加します)
舶用機関1回目の写真の船は名古屋から仙台を経由して苫小牧とを結ぶ太平洋フェリーの「きたかみ」 である。
パンフレットにこの船の推進機関の型式が記載されている。8L58/64というエンジンで、直列8気筒、 シリンダ径58cm、ストローク64cmと知れる。(オイオイそんな簡単なモノかよ、ってそんな簡単な のだよ)
1基の出力が10591kW(14400PS)でこれを2基据付けている。総排気量は1353リットル、 MAN(Maschinenfabrik Augsburg Nürnberg)社のHPを検索すると、定格回転速度400rpmとあるの で、これからトルクを計算すると約25780kg-mとなる。
燃料消費率は174g/kWh、これは1時間、1kWあたり174gの燃料を消費する、という意味。鉄道のよ うに勾配区間はあり得ないので、登り坂で全力10591kWを出すことはないが、仮にフルパワー を出すとすると、
174×10591÷1000=1843(kg/h)
1時間あたり1843kgの燃料を消費する。1分あたりにすると30.7kg、仮に燃料の比重を1リットル あたり0.9kgとすると、30.7÷0.9=34.1(リットル/min)ということになる。家庭用の灯油缶1缶が 30秒でなくなり、約5分でドラム缶1本の燃料を消費する。
大変な燃料使用量なのだが、全長約200m、排水量約14000トンの船体を動かすことを考えると当然 の帰結といえる。

燃料消費率ということでは舶用機関というのは熱効率がよい。
同じ時間、同じ出力(kW)で比較しているので、この燃料消費率、g/kWhの数値ならば、エンジン の大小に関わりなく比較することができる。そして、燃料消費率、燃料使用量が少ないほど熱効率 はいい、ということになる。
DD51のDML61Zの燃料消費率は約238g/kWh、燃費を向上したというDF200やDD51の更新機関でさえ 210g/kWh前後である。
鉄道車両の燃料は軽油だが、船の燃料は重油である。仮に重油の発熱量を10000kcal/kgとすると、 174gの燃料は
174×10000÷1000=1740(kcal)
を発生する。860kcal=1kWhだから、1740kcalは約2.0kWhに相当する。つまり、2kWhの燃料を燃やし て1kWhの動力を得ているので、熱効率は約50%ということになる。一般的に鉄道車両のディーゼル 機関が35%前後、自動車のガソリン機関が約25%前後だから、舶用機関の熱効率がいかに高いかが わかるであろう。
ここで、熱効率は
1/(燃料消費率[g/kWh]×燃料発熱量[kcal/kg]÷1000÷860)×100(%)
で計算することができる。
軽油の発熱量は11000kcal/kgが妥当な数値

※太平洋フェリーの就航船は「きたかみ」の他に「きそ」と「いしかり」がある。パンフレット の記載によれば、
「きそ」の推進機関は9L58/64、
「いしかり」の推進機関は14V52/55Bと公表されている。それぞれ、
直列9気筒、シリンダ径58cm、ストローク64cmと
V型14気筒、シリンダ径52cm、ストローク55cmと知れる。

※写真は客船にっぽん丸(全長約167m、排水量約21900トン)

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