このページは、2019年3月に保存されたアーカイブです。最新の内容ではない場合がありますのでご注意ください
─ 点火システム(ガスエンジン) ─
(ガスエンジン解説のつづき)
自動車用のガソリンエンジンと同様に、多くのガスエンジンは吸気管から 吸い込んだ可燃ガスに点火プラグで火をつけて燃やす。
Superior社のガスエンジンにはアルトロニック社(USA)の点火システムが装備されていた。
エンジンのクランク軸からいくつかの歯車を経て、点火装置が駆動される。 点火装置はオルタネータ(発電機)とピックアップコイル、SCR(シリコン制御整流素子= サイリスタ)とキャパシタ(コンデンサ)他の電気部品で構成されている。
オルタネータの出力は整流器を通って、直流に変換され、ツェナダイオード(定電圧ダイオード) で電圧を一定に保たれる。この電気がキャパシタ(コンデンサ)に蓄えられる。
オルタネータの後端には1組の歯車を介して、タイミングアームが回転するようになっている。
タイミングアームの周囲には、エンジンのシリンダ数だけのピックアップコイルが並んでいる。 タイミングアームには磁石が付いていて、これがピックアップコイルの前を通ると、コイルにパルスが 発生する。
このパルスがトリガとなってSCRをONさせ、キャパシタに蓄えられた電力がイグニションコイルに流れる。
イグニションコイルは鉄芯に電線が巻いてあり、キャパシタ(コンデンサ)の放電電力の電圧を上げる 動作をする。
イグニションコイルで高圧となった電力が点火プラグに加えられると、プラグの電極間に火花が飛ぶ。
ピックアップコイルからイグニションコイルまで、シリンダの数だけ装備されていて切替式ではない ので、ディストリビュータ(分配器)のような接点がなく、接点の掃除などの手間がかからない。
4ストロークのエンジンなので、クランク軸が2回転して全シリンダの点火が終了する。 Superior社のエンジンは歯車でオルタネータの軸がクランク軸の半分に減速されるようになって いるので、オルタネータとタイミングアームとの間の歯車は1:1で同じ速度で回る。
この歯車は何種類かの減速比が選択でき、また、点火順序も反転させることができるようになっていて、 エンジン設計上の都合に柔軟に対応できるようになっていた。
点火プラグはピストンが圧縮上死点に達したところで、点火するのか、というとそうではない。
火花が飛んで、燃料が燃え広がり、シリンダ内の圧力が上がるまでに時間がかかるので、 上死点の手前で点火する。
オルタネータ、点火装置全体の取り付け角度が変えられるようになっていて、微調整できるようになっていた。
何台か取り扱ううち、CPU90という装置を採用するエンジンもあった。 名の通り、マイクロコンピュータを使って制御するようになって、点火時期が精密になった。 また、点火時期の調整も容易になった。
これは、フライホイールに点火トリガ用のピンを立てておき、これが磁束を切るように 電磁ピックアップを取り付ける。このピックアップのパルスで点火システムがスタートし、 クランク軸が所定の角度を回ると点火プラグが点火する、というシステムだった。
点火のタイミングを計測するには「タイミングライト」という器具を使う。 点火プラグに高圧の電流が流れると高圧コードの周囲に磁界が生ずる。 パルス性の電流なので外部に漏れ易い。雷が鳴ったり、近くをバイク(原付級)が通ると ラジオに雑音が入るのと類似の現象である。このパルス性の磁束から電流を検出し、 これをトリガとして、クセノンランプ(カメラのスピードライト=ストロボ)を光らせる。 このランプは閃光持続時間が短いので、このランプでフライホイールを照らすと、 フライホイールは止まって見える。
フライホイールには各シリンダの上死点の位置と角度の刻印がしてある。クセノンランプが 点火プラグの点火に対応して点滅すると、回転するフライホイールの刻印は止まって見える。
これを読めば、上死点から何度手前で点火しているかわかる、というシカケである。
旧型の点火システムでは、刻印が常にふらついて見えていたが、CPU90ではクッキリと止まって見えた。
添付写真は自由の女神像のあるリバティ島に渡る船上から見るマンハッタン島(1992年6月)
本文と関係なし
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