このページは、2019年3月に保存されたアーカイブです。最新の内容ではない場合がありますのでご注意ください

─ エバリエント(沸騰冷却)システム(ガスエンジン) ─




(ガスエンジン解説のつづき)
取扱った何台かの発電装置のうち、エバリエント(沸騰冷却)システムというのがあった。
エンジン内冷却水の温度を約120℃(華氏250度)まで上げる方式で、これにより、 約1kg/cm2の低圧蒸気が得られるという方式である。
水が蒸発すると、気化熱という形で熱は蒸気に移るので、冷却することができる。
1kg/cm2の飽和蒸気の温度が約120℃なので、エンジン内を循環する水の温度も だいたいこの位の温度になる。
「スーパーヒータ」の項で説明した通り、水が100℃で沸騰するのは大気圧(1013hPa)での話。 水圧を上げると100℃を越えても沸騰しない。

ドラム缶を横倒しにしたような汽水分離器をエンジンより高い位置、高さ3mぐらいの ヤグラをつくって設置する。この直下に循環ポンプが設置されていて、吸い込み管を 汽水分離器に接続する。ポンプは120℃以上の高温に耐えるものになっている。 汽水分離器から吸込んだ水はポンプで加圧されてエンジンに送り込まれる。 エンジン内で部分的に蒸発して蒸気が溜まると冷却が悪くなり、熱歪みを生じて、 破損につながるので、水漏れを起こさない範囲で、充分に加圧されている。
蒸気溜まりができないように、エンジンからの冷却水の出口管は斜めに施工して、 汽水分離器に接続されている。汽水分離器の接続部のフランジには絞り板をはさんで、 ここで減圧する。
絞り板を通って、汽水分離器に入った水は圧力が下がる(といっても大気圧より 1kg/cm2高い)ので、沸騰して一部は蒸気となる。 過熱された水のエネルギは水蒸気という気体に状態を変化させるのに使われる。 エンジンの熱は気化熱として蒸気に移っていくわけである。
分離された蒸気は、利用する設備に送り出される。残った水は再び、 循環ポンプで加圧されて、エンジン内へと循環する。

蒸気が出ていった分だけ循環水量が減っていくので、 これを補給する小型のポンプも設置する。
水が蒸発すると、「蒸留」「錆び」で説明したように、残った水は不純物が濃縮されていく。 これを防止するため、補給する水は軟水器といって、イオン交換樹脂の中を通して硬度成分を 除去する。汽水分離器にはブロー弁といって、不純物が濃くなる個所の水を捨てる弁を設ける。 また、「錆び」を防止するため、製缶剤といって、水中の溶存酸素を除去するなどの効果を もった各種の薬剤を補給水に混ぜる。
エンジンの熱を利用して蒸気を得る、といっても、簡単ではない。
「ボイラ」としての周辺機器を一通り装備しなければならない。 もちろん、汽水分離器もボイラとしての検査に合格したものでなければならない。


添付写真はデイトン(Superior工場の近く)でのAIR SHOWで展示されていたMARTIN404とその機関(星型機関)。
エバリエント(沸騰冷却)システムとは関係がない。


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