このページは、2019年3月に保存されたアーカイブです。最新の内容ではない場合がありますのでご注意ください

─ 給気冷却器 ─

インタークーラという装置がある。和文ではそのまま翻訳して中間冷却器という。 給気冷却器ともいう。
DML61Zなど、-Zの付いている機関に装備されている。
Zというのは一説にはドイツ語のZwischenküler(ツヴィッシェン・キーラ)のZだという。
Zwischenは中間、külerは冷却器のことなのだが、実はドイツ語でインタークーラのことは Ladeluftkühler(ラーデ・ルフト・キーラ)という。ladeは押し込むとか充填する、という意味。 (充電の意味もあり)luftは空気。
「過給空気の冷却器」ということでは、ドイツ語がもっとも正しく装置の機能を 言い表している。

ターボチャージャ(メカニカルチャージャでも)で急に空気を圧縮すると断熱圧縮 (外部への放熱が殆どない状態で圧縮)されて空気の温度が上がる。
ディーゼル機関で燃料を燃やせるのも、吸い込んだ空気をピストン、シリンダ機構で圧縮 することにより、断熱圧縮で空気の温度が上昇するから。
この温度は圧縮比から理論計算することができる。 61Zの場合、圧縮比14.8、下記の通り、吸入空気温度を60℃と仮定すると、 圧縮後の温度は540〜600℃となる。
過給機で空気を圧縮した場合も同様で、ディーゼル機関のように過給圧が高いと、温度上昇も 大きい。
これも、61Zの場合で、過給圧を1.8kg/cm2、 吸入空気温度を15℃と仮定すると、過給機出口温度は約150℃となる。
温度が上がると気体の密度は低下するから、圧力が上がっても、燃焼室に送り込める酸素量は 圧力に比例して増加してくれない。そこで、冷却水を使って、空気を冷却して体積を小さくして 密度を上げる。
これが中間冷却器、給気冷却器の役目。過給機と機関の間に設置されているから「中間冷却器」
当然のことながら、過給機と併設される。

構造は自動車のラジエータと同じと思っていい。
管を押し潰したような扁平なチューブをたくさん並べ、チューブの間を波型の薄い板(フィン) でつないでいる。チューブの中を水が流れ、フィンの間を空気が流れる。
自動車のラジエータは前から入ってくる空気で水を冷やすのだが、インタークーラは水で空気を 冷やす。
冷やす、とはいっても、冷却水はラジエータの循環水なので、その温度は50〜60℃。当然のこと ながら、インタークーラを出てくる燃焼用空気の温度も60℃前後ということになる。 (それでも、元が150℃であることを考えれば充分冷却していることになる)
ついでながら、急に空気を膨張させると断熱膨張といって、空気の温度は下がる。夏季、雷雨 とともに、雹(ひょう)が降ったりするのは、地表で暖められた空気が上空へ上昇し、気圧が下がり、 断熱膨張して、空気の温度が下がることによる。

ところで、技術の者でも時に、「気化潜熱と断熱変化」とを混同することがある。
家庭で使うプロパンガスのボンベに霜、露がつくのを見ることがある。ボンベの中でガスは液化 して、液体の状態で保存されている。ガスを使うと、液状のプロパンが気化するときに気化熱を 奪うので、液状プロパンの温度が下がり、容器に霜がつく。(夏なら露がつく)
一方、南方の国で地面から湧いて出るメタンガスを圧縮してボンベに詰めて使うことがある。 圧縮天然ガスという。このガスを常圧に戻すときに、ガスの温度が下がり、機器が凍結する。 こちらは断熱膨張して温度が下がることによる。容器の中で、メタンは液化していない。

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