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〜 雪月花 新撰組異聞 編 〜


〜 春待ち月 吉野の里にふれる白雪 〜


〜 後編 〜


今は早朝。

しかし、外はまだ薄暗い。



沖田総司はぐっすりと寝ているところを突然誰かに起こされた。

眠そうなままゆっくりと目を開けると、不思議そうに辺りを見回した。

斉藤一が、半ば呆れた様子で沖田総司を見ながらも、普通に話し掛ける。

「総司の寝込みを襲えば簡単に斬る事が出来るな。一度だけでも良いからやってみたくなった。」

沖田総司は驚いた表情で起き上がった。

斉藤一は沖田総司を半ば呆れた様子のまま黙って見ている。

沖田総司は驚いた表情のまま斉藤一に話し掛ける。

「何があったのですか? 寝込みを襲って斬るって、そんな事はやらないでくださいね。それに、斉藤さんはいつも気配も殺気も感じません。普通は気が付きません。」

斉藤一は沖田総司に普通に話し掛ける。

「最初に、何かがあるからここに居る。次に、総司を相手にそんな事はしないから安心しろ。最後に、殺気や気配を撒き散らしていたら相手が逃げて斬る時に面倒だろ。これで総司の質問には全部答えたよな。」

沖田総司は斉藤一を不思議そうに見ながら黙っている。

斉藤一は沖田総司に普通に話し掛ける。

「さっさと支度をしろ。これから出掛ける。」

沖田総司は斉藤一に不思議そうに話し掛ける。

「これからですか?」

斉藤一は沖田総司に普通に話し掛ける。

「だが、日が完全に昇る頃には戻ってくる。」

沖田総司は不安そうに斉藤一を見ている。

斉藤一は沖田総司に普通に話し掛ける。

「土方さんも山南さんもこの事は知っている。一応、仕事で出掛ける事になっている。心配するな。」

沖田総司は不思議そうに斉藤一を見ながら頷いた。

斉藤一は沖田総司を普通に見ている。

沖田総司は直ぐに準備を始めた。



二人は屯所の外に出た。

雪は止んでいる。

まだ薄暗いため人通りはほとんどない。

そのせいか、夜の内に降った雪がそのまま積もっている。

沖田総司は斉藤一に心配そうに話し掛ける。

「斉藤さん。この道を歩いて出掛ける事になる訳ですよね。」

斉藤一は沖田総司に普通に話し掛ける。

「当たり前の事を言うな。」

沖田総司は辺りを黙って見回している。

斉藤一は雪道を黙って歩き出した。

沖田総司は斉藤一の後を慌てて付いていく。



沖田総司は途中から楽しそうに歩き出した。

斉藤一は沖田総司の様子を気にせずに黙って歩いている。



沖田総司は急に立ち止まると斉藤一の袖を掴んだ。

斉藤一は沖田総司に袖を掴まれたために一緒に立ち止まった。

沖田総司は顔を赤くして斉藤一を見ながら話し掛ける。

「斉藤さん。どこに行くのですか? 本当に仕事なのですか?」

斉藤一は普通に沖田総司に話し掛ける。

「仕事に決まっているだろ。ただ、その前に雪道を歩いて疲れたから、少し休憩をしに行くんだ。」

沖田総司は顔を赤くしたまま斉藤一に話し掛ける。

「まさかとは思いますが、鈴ちゃんの家に行くという事はないですよね?」

斉藤一は沖田総司を見ながら普通に話し掛ける。

「そのまさかだ。」

沖田総司は顔を赤くしたまま斉藤一に話し掛ける。

「こんな時間に鈴ちゃんの家に行ったら、鈴ちゃんにも家族の人達にも迷惑が掛かります。」

斉藤一は沖田総司を見ながら普通に話し掛ける。

「とにかく行くぞ。早く行かないと遅れるぞ。」

沖田総司は不思議そうに斉藤一を見ている。

斉藤一は沖田総司の様子を気にする事もなく歩き出した。

沖田総司は慌てて斉藤一の後を付いていく。



沖田総司と斉藤一は、少女の家に到着した。

少女は二人が声を掛ける前に家から出てきた。

沖田総司は少女を不思議そうに見ている。

少女は微笑んで沖田総司と斉藤一に話し掛ける。

「総司さん。斉藤さん。おはようございます。よろしくお願いします。」

斉藤一は少女を見ると黙って頷いた。

少女は沖田総司を微笑んで見ながら話し掛ける。

「総司さんと一緒に朝の雪を見る事が出来て嬉しいです。」

沖田総司は辺り一面の雪を一瞥すると、少女を微笑んで見ながら頷いた。

三人は一緒に歩き出した。



少女は歩きにくいらしく、いつもよりゆっくりと歩いている。

沖田総司は、自分の後ろを歩く少女の様子を、心配そうに何度も振り返って確認をする。

少女は申し訳なさそうに沖田総司に話し掛ける。

「歩くのが遅くてすいません。」

沖田総司は少女を微笑んで見ながら話し掛ける。

「歩きにくいよね。荷物を持つよ。気が付かなくてごめんね。」

少女は沖田総司を微笑んで見ながら荷物を手渡した。

沖田総司は少女から微笑んで荷物を受取ると歩き出した。



斉藤一が立ち止まった。

目的の場所に到着したらしい。

少女の事も考えて距離としてはほとんど歩いていない。



三人は少しだけ見晴らしの良い場所にやってきた。

少女は空を指すと沖田総司に微笑んで話し掛ける。

「総司さん。見てください。空が明るくなってきています。でも、まだ月が見えます。綺麗です。」

沖田総司は空を見上げながら微笑んで話し掛ける。

「本当だね。月が見えるね。」

まだ薄暗い空には淡く光った月が浮かんでいる。

沖田総司と少女は顔を見合わせると微笑んだ。

少女は沖田総司に微笑んで話し掛ける。

「早朝の雪を総司さんと一緒に見る事が出来るとは思いませんでした。嬉しいです。」

沖田総司は少女を見ながら微笑んで頷いた。

少女は辺りの雪景色を微笑んで見ている。

沖田総司は少女に微笑んで話し掛ける。

「朝ぼらけ 有明の月と みるまでに 吉野の里に ふれる白雪。」

少女は沖田総司を微笑んで見ながら話し掛ける。

「総司さん。そのお歌は百人一首の歌ですよね。」

沖田総司は恥ずかしそうに少女に話し掛ける。

「そうだよ。ここは吉野じゃないけれど、歌に似ているなと思って。」

少女は沖田総司を見ながら微笑んで話し掛ける。

「私にとって、ここは吉野です。嬉しいです。総司さん。ありがとうござまいす。」

沖田総司は少女に微笑んで話し掛ける。

「いつか一緒に吉野で歌のような雪を見たいね。」

少女は微笑んで沖田総司を見ながら頷いた。

沖田総司は微笑んで少女を見ている。

少女も微笑んで沖田総司を見ている。

沖田総司は斉藤一に微笑んで話し掛ける。

「斉藤さん。綺麗ですよね。」

斉藤一は沖田総司を見ると黙って頷いた。

少女は斉藤一に微笑んで話し掛ける。

「綺麗な雪と月ですよね。総司さんや斉藤さんと一緒に見る事が出来て嬉しいです。ありがとうございます。」

斉藤一は少女を見ると黙って頷いた。



空が少しずつ明るくなってきている。

逆に、月は少しずつ見えなくなっていく。

斉藤一は沖田総司に普通に話し掛ける。

「総司。そろそろ美鈴さんを家に送らないといけない。」

沖田総司は少女に微笑んで話し掛ける。

「鈴ちゃん。帰ろう。」

少女は沖田総司を見ると微笑んで頷いた。

沖田総司は不思議そうに少女に話し掛ける。

「鈴ちゃん。この包みは何?」

少女は恥ずかしそうに沖田総司に話し掛ける。

「今日は朝からお仕事があるそうですね。その前に雪を見るので、私も一緒に見ないかという文を頂きました。もし、お食事をする時間がなかったら、お二人に食べて頂こうと思って用意をしました。」

沖田総司は少女に微笑んで話し掛ける。

「包みを開けても良いかな?」

少女は沖田総司を見ると恥ずかしそうに話し出す。

「火が使えなかったので、たいした物は用意出来ませんでした。期待しないでください。」

沖田総司は少女に微笑んで話し掛ける。

「鈴ちゃんが私達のために用意をしてくれた物だよね。そうしたら、きっとおいしいよ。」

少女は恥ずかしそうに沖田総司を見ている。

沖田総司は包みを開けると少女に微笑んで話し掛ける。

「ありがとう。食べても良いかな。」

少女は沖田総司を恥ずかしそうに見ながら話し掛ける。

「どうぞ。」

沖田総司は少女に微笑んで話し掛ける。

「楽しみだな。ちょうどお腹が空いてきていたんだ。」

少女は微笑んで沖田総司を見ている。

沖田総司は斉藤一に微笑んで話し掛ける。

「斉藤さんも早く一緒に食べましょう。」

斉藤一は沖田総司を見ながら頷いた。

沖田総司と斉藤一の二人は包みの中の食事を食べ始めた。



沖田総司と斉藤一は少女が用意した食事を食べ終わった。

沖田総司は少女に微笑んで話し掛ける。

「ごちうさま。おいしかったよ。」

斉藤一は少女を見ると普通に話し掛ける。

「ごちそうさま。」

少女は恥ずかしそうに二人を見ている。

沖田総司は少女に微笑んで話し掛ける。

「鈴ちゃん。家に送るよ。」

少女は微笑んで沖田総司を見ながら頷いた。



三人は少女の家の前にやってきた。

少女は沖田総司と斉藤一に微笑んで話し掛ける。

「今日はありがとうございました。一緒に雪を見る事が出来て嬉しかったです。」

沖田総司は少女を微笑んで見ながら頷いた。

斉藤一は少女を普通に見ながら頷いた。

少女は二人に礼をすると家の中へと入っていった。



沖田総司は斉藤一に笑顔で話し掛ける。

「楽しかったですね。」

斉藤一は沖田総司に普通に話し掛ける。

「行くぞ。」

沖田総司は斉藤一に不思議そうに話し掛ける。

「ところで、仕事って何ですか?」

斉藤一は沖田総司に普通に話し掛ける。

「もちろん、土方さんの関係に決まっているだろ。」

沖田総司は斉藤一を不思議そうに見ている。

斉藤一は沖田総司に普通に話し掛ける。

「朝の内に何ヶ所か回って受取る物がある。」

沖田総司は怪訝そうに斉藤一に話し掛ける。

「それって、もしかして。」

斉藤一は沖田総司を黙って見ている。

沖田総司は斉藤一を見ながら怪訝そうに話し掛ける。

「なぜ黙っているのですか?」

斉藤一は普通に歩き出した。

沖田総司はその後を慌てて付いていく。



ちょうど同じ頃。

山南敬助が土方歳三を見ながら微笑んで話し掛ける。

「三人は早朝の雪景色を楽しんで見ているのでしょうか?」

土方歳三は山南敬助に微笑んで話し掛ける。

「見ていると思います。」

山南敬助は土方歳三に微笑んで話し掛ける。

「もっといろいろと気を遣ってあげたいのですが、出来ない事も多いですね。」

土方歳三は山南敬助を見ながら微笑んで頷いた。

山南敬助は土方歳三に微笑んで話し掛ける。

「優しいですね。」

土方歳三は山南敬助に微笑んで話し掛ける。

「俺は恋する者の見方ですから。」

山南敬助は苦笑しながら土方歳三に話し掛ける。

「だとすると、斉藤君はこの場合はどうなるのですか?」

土方歳三は山南敬助に微笑んで話し掛ける。

「お目付け役。」

山南敬助は苦笑しながら土方歳三に話し掛ける。

「斉藤君が少し可哀想ですね。」

土方歳三は山南敬助に微笑んで話し掛ける。

「今回の話しを斉藤本人が嫌がっていませんでした。斉藤も楽しんでいると思います。もしくは、二人の事を放って置けないのかもしれません。両方の可能性もありますね。」

山南敬助は土方歳三に微笑んで話し掛ける。

「そうかもしれませんね。」

土方歳三は山南敬助に微笑んで話し掛ける。

「もう一つ言わせてもらうと、あいつらにはいつも無茶な事をさせているから、息抜きも兼ねているかな。」

山南敬助は土方歳三に微笑んで話し掛ける。

「優しいですね。」

土方歳三は微笑んで山南敬助に話し掛ける。

「ありがとうございます。」

山南敬助は土方歳三に微笑んで話し掛ける。

「ところで、あの二人にどんな仕事を頼んだのですか?」

土方歳三は山南敬助に微笑んで話し掛ける。

「秘密です。」

山南敬助は苦笑しながら土方歳三を見ている。



本日の京の町は雪景色となっています。

僅かな日々とはなりますが、白い雪の世界が続きます。




〜 完 〜





はじめに       前編       後書き

目次


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