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〜 雪月花 新撰組異聞 編 〜


〜 雪の降る頃 ふたり見ませばいくばくか 〜


〜 前編 〜


「我が背子と ふたり見ませば いくばくか この降る雪の 嬉しくあらまし」

「万葉集 第八巻 一六五八番」より

作者:光明皇后(こうみょうこうごう)



京の町に雪が降っている。

京の町が少しずつ白くなっていく。



ここは、屯所の一室。

沖田総司と斉藤一は一緒に居る。

二人はたくさんの手紙を並べながら仕事をしている。



沖田総司は手紙を持ちながら、ため息を付いた。

斉藤一は沖田総司を一瞥だけすると、直ぐに手紙を見た。

沖田総司は斉藤一に寂しそうに話し掛ける。

「雪ですね。」

斉藤一は沖田総司を見ながら、黙って頷いた。

沖田総司は手紙を見つめながら、ため息を付いている。

斉藤一は沖田総司に普通に話し掛ける。

「ため息を付くのはかまわないが、仕事が進んでいないぞ。さっさとやれ。」

沖田総司はため息を付きながら頷いた。

斉藤一は沖田総司を見ながら、普通に話し掛ける。

「ため息を付いている理由は何だ?」

沖田総司は斉藤一に心配そうな表情で話し出す。

「書類を見ながらの仕事って楽しくないですね。」

斉藤一は沖田総司を見ながら、普通に話し掛ける。

「確かにそうだな。でも、総司の顔と言っている言葉は違うな。」

沖田総司は斉藤一を不思議そうに見ている。

斉藤一は沖田総司を見ながら、普通に話し掛ける。

「心配事があるという顔だな。」

沖田総司は突然顔を赤くすると、斉藤一に話し出す。

「斉藤さん! 何を言っているんですか!」

斉藤一は沖田総司を見ながら、普通に話し出す。

「何をむきになっているんだ?」

沖田総司は顔を赤くしたまま、斉藤一をじっと見ている。

斉藤一は沖田総司に普通に話し掛ける。

「総司がむきになる理由がぜひ知りたい。」

沖田総司は顔を赤くしたまま、斉藤一を見ている。

斉藤一は沖田総司に普通に話し掛ける。

「さっさと言え。言わないと斬るぞ。」

沖田総司は顔を赤くしたまま、斉藤一に慌てて話し出す。

「斉藤さん! その程度の事で斬るなんて言わないでください!」

斉藤一は沖田総司を見ながら普通に話し掛ける。

「総司相手にこんな事で斬るわけ無いだろ。」

沖田総司は顔を赤くしたままだが、安心した表情で斉藤一を見ている。

斉藤一は沖田総司に普通に話し掛ける。

「総司は、さっきその程度って言ったよな。だったら、むきになった理由を言えるよな。」

沖田総司は顔を赤くしたまま、困った様子で黙っている。

斉藤一は沖田総司を黙って見ている。

沖田総司は顔を赤くしたまま、斉藤一に話し出す。

「今日は雪が降っていて寒いですよね。鈴ちゃんが元気にしているか心配なんです。でも、今日は仕事だし会いに行けません。何も起こっていないかどうか心配なんです。」

斉藤一は沖田総司に普通に話し掛ける。

「美鈴さんとは直ぐに会うんだろ。その時に様子は確認出来るよな。美鈴さんだって雪の降る日を過ごすのは、今日が初めてではないだろ。あまり心配するな。今は仕事をしっかりとしろ。逆に鈴さんが総司の事を心配してしまうぞ。」

沖田総司は微笑んで斉藤一を見ながら頷いた。

二人は再びたくさんの手紙を見ながら仕事を始めた。



一方、こちらは少女の家。

少女は火鉢の近くで暖を取りながら歌集を広げている。

脇には何冊か歌集が重ねておいてある。

少女は、先程まで読んでいた歌集を横に置くと、別な歌集を手に取って読み始めた。



少女は、歌集の中の一首に目を留めると、呟く様に詠み始めた。

「我が背子と ふたり見ませば いくばくか この降る雪の 嬉しくあらまし。」

少女は部屋の外に視線を動かした。

外の景色は見えないが、雪が降っている事は気配でわかる。

少女は再び歌集を手に取ると、小さい声だがはっきりとした様子で詠いだした。

「我が背子と ふたり見ませば いくばくか この降る雪の 嬉しくあらまし。光明天皇。」

再び外に視線を動かすと呟いた。

「総司さんと一緒に雪が降るところを見たいな。そうしたら、きっとこの歌のように・・・」

少女は顔を赤くすると、途中で呟くのを止めてしまった。

外は雪が降っているため部屋の中も寒い。

火鉢に視線を動かすとほのかな暖かさが伝わってくる。

少女は外の方を見ると、心配そうに呟いた。

「総司さん。寒いなかのお仕事は大丈夫かな? お体の調子を悪くしたりしていないかな? 逢いたいな。」

外では変わらずに雪が降っている事が気配でわかる。

少女は再び歌集を読み始めた。



京の町には雪が静かに降り続いている。

静かに降ってくる雪で、京の町は白く覆われていく。



翌日の事。

京の町は白い世界となっている。

外は雪が残っているせいか寒い。

空は青く澄み渡っている。



沖田総司と斉藤一は、白い世界の中で任務についている。

少女は外に出掛ける事も無く、家の中で一日を過ごしている。

三人の一日は、雪が積もっている事を除けば、いつもと同じ様に過ぎていく。



更にその翌日の事。

京の町にはまだ雪が残っているが、寒さは前日より感じなくなっている。



沖田総司は少女のもとを訪れた。

少女は沖田総司を見ると微笑んで話し掛ける。

「こんにちは。」

沖田総司は少女を見ながら微笑んで話し掛ける。

「鈴ちゃん。元気そうだね。」

少女は沖田総司を見ながら微笑んで話し掛ける。

「はい。元気です。総司さんもお元気そうですね。」

沖田総司は少女を見ながら微笑んで話し掛ける。

「元気だよ。鈴ちゃん。心配してくれてありがとう。」

少女は沖田総司を微笑んで見ている。

沖田総司は少女を微笑んで見ながら話し掛ける。

「鈴ちゃん。早く出掛けよう。子供達も待っているよ。斉藤さんも後から来るよ。」

少女は微笑んで沖田総司を見ながら頷いた。

二人は一緒に出掛けて行った。



沖田総司と少女は寺を訪れた。

子供達が沖田総司と少女のもとに楽しそうにやってきた。

沖田総司が子供達に笑顔で話し出す。

「こんにちは。」

子供達は沖田総司に微笑んで話し出す。

「こんにちは!」

沖田総司は子供達に笑顔で話し掛ける。

「何をして遊ぼうか。」

子供達は沖田総司に笑顔で話し出す。

「雪合戦をしたいな!」

沖田総司は子供達に笑顔で話し掛ける。

「雪合戦をしよう!」

子供達は沖田総司に確認するように話し掛ける。

「総司お兄ちゃんが入った組は有利にならない?」

沖田総司は子供達を見ながら微笑んで話し掛ける。

「私が入る組は人数を減らすという事で良いかな?」

子供達は沖田総司に確認するように話し掛ける。

「総司お兄ちゃんと僕達で六人だよ。どれくらいの人数を減らすの?」

沖田総司は子供達を見ながら考えている。

子供達は沖田総司に微笑んで話し掛ける。

「僕達だけで雪合戦をしても良い?」

沖田総司は子供達を少し寂しそうな表情で見ている。

子供達は沖田総司を不思議そうに見ている。

沖田総司は子供達に微笑んで話し掛ける。

「みんな。そうしたら、私は二人で雪合戦をする。それで良い?」

子供達は沖田総司を見ながら笑顔で頷いた。

沖田総司と子供達の雪合戦が始まった。



少女は寺の中に入ると縁の傍にやってきた。

沖田総司と子供達の様子を微笑んで見ている。



子供達だけの組は先に雪の玉をたくさん作っている。

沖田総司と子供が一人だけの組はその場で作る事になった。

沖田総司が笑顔で子供達に声を掛ける。

「始めるよ〜!」

子供達は沖田総司に微笑んで返事をした。

「は〜い!」

沖田総司と子供達の雪合戦が始まった。



一人の子供が沖田総司に雪の玉を投げた。

沖田総司は軽くかわした。

沖田総司の隣に居る子供が雪の玉を投げた。

子供達だけの組の子が全員で雪の玉を投げてきた。

沖田総司は素早く雪の玉をかわすと、子供達に向かって素早く雪の玉を投げた。

子供達のなかの一人に当たった。

沖田総司と子供は微笑んで顔を見合わせた。

子供達は沖田総司に向かって雪の玉を投げる。

沖田総司は素早く雪の玉を避ける。

子供達は、沖田総司の横に居る子供に向かって、雪の玉を投げた。

子供は素早く避けてしまった。

沖田総司は横に居る子供を一瞥すると、雪の玉を素早く投げた。

子供達のなかの一人に当たった。

沖田総司が素早く雪の玉を投げた。

子供達の一人に当たった。

沖田総司は嬉しそうな表情になった。

子供達は沖田総司に投げるが、素早く避けるために当たらない。

逆に、沖田総司や一緒に居る子は、連携を取りながら雪の玉を当ててしまう。

子供達は避けきる前に、沖田総司達の投げる雪の玉が当たってしまう。

雪合戦の結果は沖田総司と子供の組の勝利で終わった。



子供達は沖田総司に笑顔で話し掛ける。

「総司お兄ちゃん。次は僕達だけでやっても良い?」

沖田総司は微笑んで子供達を見ながら頷いた。

子供達は雪合戦の組み合わせの話しを始めた。

沖田総司は寺の中へと入って行った。



子供達のなかの一人が不思議そうに話し掛ける。

「ねぇ、どうして総司お兄ちゃんと一緒に雪合戦をやらないの?」

子供達のなかの一人が答える。

「僕達が総司お兄ちゃんに雪を投げる時に、お姉ちゃんが心配そうな顔をするんだ。気が付かなかった?」

子供達のなかの一人が苦笑しながら話し出す。

「気が付いていたよ。総司お兄ちゃんに雪を投げるのが辛くなってきた。」

子供達のなかの一人が笑顔で話し出す。

「お姉ちゃんは、総司お兄ちゃんと話しをしている時は、笑顔になっているよね。僕はお姉ちゃんの笑顔を見ている方が良いな。」

子供達は全員で頷いた。



沖田総司と少女には子供達の話しは聞こえていない。



沖田総司が少女に心配そうに話し掛ける。

「鈴ちゃん。一人にしてごめんね。」

少女は沖田総司を見ながら微笑んで話し掛ける。

「総司さんと子供達の雪合戦を見ていました。楽しかったです。」

沖田総司は少女に微笑んで話し掛ける。

「鈴ちゃんも楽しかったんだ。良かった。」

少女は沖田総司を見ながら微笑んで頷いた。

沖田総司が少女に微笑んで話し掛ける。

「鈴ちゃん。これから、子供達だけで雪合戦をするんだって。一緒に見ようよ。」

少女は微笑んで沖田総司を見ながら頷いた。



沖田総司と少女は縁の傍から子供達の雪合戦を見ている。

二人は楽しそうに雪合戦を見ている。

沖田総司は笑顔で子供達の雪合戦を見ながら、少し小さめの声を出している。

「今だ! よそ見をしているぞ! 今投げろ! そうだ!」

少女は沖田総司の様子を微笑んで見ている。

沖田総司は笑顔で雪合戦を見ながら声を出す。

「よし! そこだ!」

少女は沖田総司に微笑んで話し掛ける。

「総司さん。子供達も楽しそうですよね。」

沖田総司は笑顔で子供達を見ているため返事が無い。

少女は不思議そうに沖田総司を見ると話し出す。

「総司さん?」

沖田総司には少女の話しは聞こえて居ないらしい。

少女は寂しそうな表情で沖田総司を見ている。

沖田総司は少女の表情の変化に気が付いていないため、雪合戦を笑顔で見ている。

少女は立ち上がると中の方へと歩き出した。





はじめに       後編       後書き

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