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〜 雪月花 新撰組異聞 編 〜


〜 梅見月の頃 夢のごと君に逢はむかも 〜


〜 前編 〜


「夢のごと 君を相見て 天霧し 降りくる雪の 消ぬべく思ほゆ」

「万葉集 第十巻 二三四二番」より

作者:詠み人知らず



「梅の花 しだり柳に 折り交へ 花に手向けば 君に逢はむかも」

「万葉集 第十巻 一九〇四番」より

作者:詠み人知らず



梅の花の見頃がそろそろ終わろうかという頃。

山南敬助が新撰組を脱走した。

山南敬助を追い掛けて捕まえたのは沖田総司。

山南敬助と沖田総司は、一緒に新撰組に戻ってきた。



山南敬助は脱走をした隊士となった。

脱走の理由に関係なく、いつもと同じ様にはしていられない。

山南敬助は一室に幽閉される事となった。



現在の山南敬助は一室に幽閉されている。

山南敬助のもとを訪れる隊士は、当たり前の事だが誰も居ない。

一人だけで時を過ごす毎日を過ごしている



山南敬助の幽閉は続いている。

そんな山南敬助のもとを訪れる人物が現れた。

山南敬助は自分を訪ねてきた人物を、少しだけ驚いた表情で見ている。

訪ねてきた人物は山南敬助を黙って見ている。

山南敬助は訪ねてきた人物に微笑んで話し掛ける。

「一つだけお願いがあります。」

訪ねてきた人物は山南敬助を見ると黙って頷いた。

山南敬助は訪ねてきた人物に微笑んで話し掛ける。

「もし、万が一、私が切腹という事になったら、介錯をお願いしたい人がいます。」

訪ねてきた人物は山南敬助に真剣な表情で話し掛ける。

「山南さん。まだ切腹と決まった訳ではない。希望を捨ててはいけない。」

山南敬助は訪ねてきた人物に微笑んで話し掛ける。

「私は生きる希望を捨てた訳ではありません。ただ、もし、切腹という事になった時に、介錯の相手を頼む時間を与えてもらえないと困るので、今のうちに言うだけです。」

訪ねてきた人物は山南敬助を見ながら黙って頷いた。

山南敬助は訪ねてきた人物に微笑んで話し掛ける。

「介錯は総司にお願いしたい。」

訪ねてきた人物は山南敬助に真剣な表情で話し掛ける。

「もし、断ったら?」

山南敬助は訪ねてきた人物に微笑んで話し掛ける。

「もし総司が断ったら、次に介錯をして欲しい人に、頼むだけの事です。」

訪ねてきた人物は山南敬助に真剣な表情で話し掛ける。

「次に、山南さんが頼みたい人の名前を、教えてください。」

山南敬助は訪ねてきた人物に微笑んで話し掛ける。

「次に頼みたい人の名前は、総司が断ったらお話しします。」

訪ねてきた人物は山南敬助を黙って見ている。

山南敬助は訪ねてきた人物に微笑んで話し掛ける。

「総司の返事がわからないうちに、次の依頼者として話しを聞いてしまったら、総司もその人物も落ち着かないでしょう。」

訪ねてきた人物は山南敬助を見ると黙って頷いた。

山南敬助は訪ねてきた人物に微笑んで話し掛ける。

「以上の件、よろしくお願いします。」

訪ねてきた人物は山南敬助を見ると黙って頷いた。

山南敬助は訪ねてきた人物に深く頭を下げた。

訪ねてきた人物は山南敬助を見ると小さく頷いた。

山南敬助は訪ねてきた人物を微笑んで見た。

訪ねてきた人物は山南敬助のもとから静かに居なくなった。



その翌日の事。

土方歳三は沖田総司を部屋に呼んだ。

沖田総司は土方歳三の部屋を、普段と同じ様に訪れた。

土方歳三は沖田総司に普通に話し掛ける。

「総司。山南さんの事について話しがある。」

沖田総司は驚いた表情で土方歳三を見た。

土方歳三は沖田総司に普通に話し掛ける。

「もし、山南さんが切腹をする事になったら、総司に介錯をしてもらいたいと、話しをしていたそうだ。」

沖田総司は驚いた表情で土方歳三を見ている。

土方歳三は沖田総司に普通に話し掛ける。

「総司。返事は?」

沖田総司は土方歳三に不安そうに話し掛ける。

「山南さんは切腹になるのですか?」

土方歳三は沖田総司に普通に話し掛ける。

「まだ決まっていない。」

沖田総司は土方歳三に不安そうに話し掛ける。

「私の返事で、山南さんの処遇は変わるのですか?」

土方歳三が沖田総司に普通に話し掛ける。

「変わらない。」

沖田総司は土方歳三に不安そうに話し掛ける。

「直ぐに返事が必要なのですか?」

土方歳三は沖田総司に普通に話し掛ける。

「返事は直ぐでなくてもいい。ただ、あまり時間はない。」

沖田総司は困った表情で考え込んでしまった。

土方歳三は沖田総司に普通に話し掛ける。

「山南さんの介錯の依頼の話しだが、知っている者はほとんどいない。ただ、もし切腹となった時の山南さんの願いがあるから、総司に話しをした。」

沖田総司は土方歳三に考え込みながら話し出す。

「土方さん。少しだけ時間をください。」

土方歳三は沖田総司に普通に話し掛ける。

「明日、返事を聞く。」

沖田総司は考え込みながら、土方歳三を見て頷いた。

土方歳三は沖田総司に普通に話し掛ける。

「話しは終わりだ。」

沖田総司は土方歳三を見ながら黙って頷くと、静かに部屋から出て行った。



沖田総司が部屋から出て行った後の事。

土方歳三は大きなため息をついた。

ゆっくりと目を閉じたが、直ぐに眼を開けた。

静かに立ち上がると、部屋を出て行った。



土方歳三は近藤勇の部屋を訪れた。

近藤勇は心配そうに土方歳三に話し掛ける。

「歳。大丈夫か?」

土方歳三は近藤勇を見ると微笑んで頷いた。

近藤勇は土方歳三に微笑んで話し掛ける。

「総司に話しをしてくれてありがとう。」

土方歳三は近藤勇に微笑んで話し掛ける。

「気にしないでくれ。山南さんの話しは、まだ決まった訳じゃない。だったら、近藤さんに話しはさせられない。俺から総司に話しをするしかないだろ。」

近藤勇は土方歳三に微笑んで話し掛ける。

「ありがとう。」

土方歳三は近藤勇に微笑んで話し掛ける。

「礼を言われるほどの事はしていない。」

近藤勇は心配そうに土方歳三に話し掛ける。

「総司には酷な頼みだな。」

土方歳三は近藤勇を心配そうに見ながら頷いた。

近藤勇は土方歳三に心配そうに話し掛ける。

「総司の返事の期限はいつにしたんだ?」

土方歳三は近藤勇に微笑んで話し掛ける。

「明日にした。」

近藤勇は心配そうに土方歳三に話し掛ける。

「返事は明日でなくても良かったんじゃないのか?」

土方歳三は近藤勇に心配そうに話し掛ける。

「返事を延ばせば、総司の悩む時間が増えるだけだ。承諾するにしても断るにしても、早く決めた方がいいだろ。」

近藤勇は土方歳三に心配そうに話し掛ける。

「そうだな。」

土方歳三は心配そうに近藤勇を見たまま黙っている。



沖田総司は土方歳三の部屋を出ると、直ぐに斉藤一のもとを訪れた。

斉藤一は沖田総司を見ると、普通に話し掛ける。

「総司。暗いぞ。」

沖田総司は悩んだ表情のまま、斉藤一を見ている。

斉藤一は沖田総司に普通に話し掛ける。

「今日は美鈴さんと会う日だろ。辛そうな顔をするなよ。美鈴さんが心配するぞ。」

沖田総司は斉藤一に悩みながら話し掛ける。

「鈴ちゃんに、どんな話しをすればよいのか、わかりません。」

斉藤一は沖田総司に普通に話し掛ける。

「だったら、美鈴さんと逢うのを止めたらどうだ?」

沖田総司は斉藤一に辛そうに話し掛ける。

「でも、物凄く鈴ちゃんに逢いたいです。鈴ちゃんの笑顔が見たいです。矛盾していますよね。」

斉藤一は沖田総司を見ながら、ゆっくりと首を横に振った。

沖田総司は悩みながら斉藤一を見ている。

斉藤一は沖田総司に普通に話し掛ける。

「俺は少し遅れる。」

沖田総司は悩んだ表情のまま、斉藤一を見ながら頷いた。

斉藤一は沖田総司に普通に話し掛ける。

「総司。出掛けなくて良いのか? 遅くなると美鈴さんが心配するぞ。」

沖田総司は斉藤一を見ながら黙って頷いた。



見頃の梅は少なくなってきたが、遅咲きの梅は、まだ綺麗に咲いている。

沖田総司は梅の花の様子を見る事もなく、少女の家へと向かって歩いている。



沖田総司は少女の家に到着した。

少女は沖田総司を微笑んで出迎えた。

沖田総司は少女に微笑んで話し掛ける。

「鈴ちゃん。出掛けよう。」

少女は沖田総司を見ながら頷いた。

沖田総司は少女に微笑んで話し掛ける。

「斉藤さんは少し遅れるんだ。二人で先に出掛けようね。」

少女は沖田総司を見ながら微笑んで頷いた。

沖田総司と少女は一緒に出掛けて行った。



沖田総司と少女は、いつもの様に寺へと向かっている。

少女は沖田総司に微笑んで話し掛ける。

「今日は寒いですね。もしかしたら雪が降るかもしれませんね。」

沖田総司は少女を見る事もなく黙って歩いている。

少女は心配そうに沖田総司を見ている。

沖田総司は我に帰った様子で少女を見ると、慌てて話し出す。

「鈴ちゃん。返事をしなくてごめんね。今日は寒いよね。大丈夫?」

少女は微笑んで沖田総司に話し掛ける。

「はい。大丈夫です。」

沖田総司は少女を微笑んで見ている。

少女は微笑んで沖田総司に話し掛ける。

「総司さんは大丈夫ですか?」

沖田総司は少女に返事をせずに黙って歩いている。

少女は沖田総司を心配そうに見ながら歩いている。



沖田総司と少女の二人は寺に到着した。

二人はそのまま寺の中へと入っていく。



沖田総司はずっと何かを考えている様子に見える。

少女は心配そうに沖田総司を見ている。

沖田総司は弥勒菩薩を黙って見始めた。

少女は沖田総司に微笑んで話し掛ける。

「総司さん。ここにはまだ梅の花が咲いています。縁の傍に行って梅の花を見ませんか?」

沖田総司は返事をせずに黙って弥勒菩薩を見ている。

少女は沖田総司を心配そうに見ている。

沖田総司は少女を不機嫌そうに見た。

少女は心配そうに沖田総司を見ている。

沖田総司は少女に不機嫌そうに話し出す。

「梅の花が見たいなら早く見に行けば良いだろ。」

少女は沖田総司を見ながら、申し訳なさそうに話し掛ける。

「すいません。」

沖田総司は少女に不機嫌そうに話し掛ける。

「早く行ったらどうだ?」

少女は心配そうに沖田総司を見ている。

沖田総司は少女に不機嫌そうに話し掛ける。

「私はいろいろと考える事があるんだ。明日までに、大切な用件の返事をしないといけない。少しの間だけで良いから、一人でゆっくりと考えさせてくれ。」

少女は沖田総司を見ながら、申し訳なさそうに話し掛ける。

「いろいろと気が付かずに、ご迷惑をお掛けいたしました。」

沖田総司は少女を不機嫌そうに見ている。

少女は沖田総司に申し訳なさそうに話し掛ける。

「私は一人で梅の花を見てきます。」

沖田総司は不機嫌そうに少女を見ている。

少女は静かに立ち上がると、縁へと向かっていった。

沖田総司は少女が立ち上がるのを確認すると、再び弥勒菩薩を見ながら考え込み始めた。



この季節にしては珍しく雪が降り始めた。

沖田総司は寒さを感じて縁のある方向を見た。

障子の隙間から、季節はずれの雪の降る様子が見える。

雪が降っているため寒さは感じるが、冬ほどの寒さは感じない。



少女の姿が縁の傍にない。

沖田総司は心配そうに寺の中を見回したが、少女の姿がない。

心配そうな表情のまま立ち上がると、縁の様子を見るために歩き出した。



斉藤一は沖田総司と少女の居る寺へと歩いている。

寺に着く前に季節はずれの雪が降り始めた。

斉藤一は雪の降るなかを、いつもと同じ様に歩いている。



それから少し後の事。

斉藤一は雪が降るなかを寺の境内へと入っていった。



少女が雪を避けながら、縁の近くで寒そうに一人で立っている。

斉藤一は少女に近づくと、普通に話し掛ける。

「何をやっているんだ?」

少女は斉藤一を見ると、寒そうな様子だが、微笑んで話し掛ける。

「梅の花を一人で見ていたら、雪が降ってきました。だから、ここで雪を避けていました。」

斉藤一は普通に少女に話し掛ける。

「総司はどうした?」

少女は微笑んで斉藤一に話し掛ける。

「総司さんはお仕事の事で、いろいろと考える事があるそうです。私が傍に居ると邪魔になるかと思って、境内で待つ事にしました。」

斉藤一は少女に普通に話し掛ける。

「ずっと外で待っていたのか?」

少女は微笑んで斉藤一を見ながら頷いた。

斉藤一は少女に普通に話し掛ける。

「外は雪も降っているし寒いだろ。寺の中で総司から少し離れて待っていれば良いだろ。」

少女は斉藤一を見ながら微笑んで話し掛ける。

「総司さんはお仕事の事を静かな場所で考えたくて、ここに来たと思います。私はお仕事の事はわかりません。相談にものれません。傍に居て迷惑を掛けると困ります。だから、外に出ました。私はここで総司さんの考えがまとまるのを待っています。斉藤さんは中に入ってください。」

斉藤一は少女を黙って見ている。

少女は寒そうな様子を見せながらも、斉藤一を微笑んで見ている。


雪は話しをしている最中もずっと降り続いている。



沖田総司は縁の方に来て心配そうに辺りを見回している。

すると、入り口の近くから話し声が聞こえてきた。

沖田総司は入り口の方に向かって歩き出した。



沖田総司が入り口の近くで、声のする方を覗き込んだ。

少女と斉藤一の二人が話しをしている姿が見えた。

沖田総司は少女に不機嫌そうに話し掛ける

「鈴ちゃん。こんな所で何をやっているんだ?」

少女は沖田総司を見ると、申し訳なさそうに話し掛ける。

「斉藤さんが来られたので、こちらでお話しをしていました。」

沖田総司は少女に不機嫌そうに話し掛ける。

「なぜ一人で私から見えない場所に動いたんだ?」

少女は沖田総司を見たまま、困った様子で話し掛ける。

「総司さんはお仕事の事でいろいろと考えているご様子でした。だから、迷惑を掛けると困るので外に出ました。」

沖田総司は少女に不機嫌そうに話し掛ける。

「外に居る時は何が起こるかわからないから、気を付けるようにと言っただろ。」

少女は沖田総司を見ながら小さく頷いた。

沖田総司は少女に不機嫌そうに話し掛ける。

「私と一緒に居る時は、傍に居るか、目の届く場所に居るようにと言っただろ。」

少女は沖田総司を見ながら小さく頷いた。

沖田総司は少女に不機嫌そうに話し掛ける。

「本当にわかっているのか?」

少女は下を向いて黙ってしまった。

沖田総司が不機嫌そうに少女に話し掛けようとした。

斉藤一は沖田総司が話し出す前に、普通に話し始めた。

「総司。美鈴さんは総司が自分の都合で勝手に考えている間、ずっと一人だけで外で待っていたんだぞ。雪の降る中を、外でずっと待っていた、美鈴さんの気持ちを考えろ。」

沖田総司は驚いた様子で少女のもとに近づいた。

少女は沖田総司を一瞥すると、困った様子で下を向いて黙っている。

沖田総司は少女の手を心配そうに握った。

少女は下を向いたまま黙っている。

沖田総司が握った少女の両手は、とても冷たかった。

少女は下を向いたまま黙っている。

沖田総司は少女の両手を握ったまま、少し強い調子で話し出す。

「雪の降る寒い日に、外で待っているなんて、何を考えているんだ? 風邪を引いたらどうするんだ?」

少女は下を向いたまま、沖田総司に小さい声で話し出す。

「すいません。」

沖田総司は少女の頬を優しく触ると、心配そうに話し掛ける。

「体だってこんなに冷たい。暖かい場所に行こう。体を暖かくして少し休もう。」

少女は沖田総司を心配そうに見ると小さく頷いた。

沖田総司は斉藤一に心配そうに話し掛ける。

「斉藤さん。一緒に来てもらっても良いですか?」

斉藤一は沖田総司を見ると黙って頷いた。

三人は寺への中へと入っていった。



斉藤一は寺の住職に話しをしている。

沖田総司は少女を心配そうに抱き寄せた。

少女は沖田総司の腕の中で、申し訳なさそうに話し掛ける。

「総司さんに迷惑を掛けないつもりで外に出ました。でも、余計に迷惑を掛けてしまいました。申し訳ありません。」

沖田総司は少女を抱きながら、心配そうに話し掛ける。

「今はそんな事は気にしなくても良いよ。」

少女は沖田総司の腕の中で黙っている。

沖田総司は少女を抱きながら、心配そうに話し掛ける。

「鈴ちゃん。体が冷たくなっている。早く気が付かなくてごめんね。」

少女は沖田総司の腕の中で、微笑んで話し掛ける。

「少し寒いですが、そんなに心配しないでください。」

沖田総司は少女を心配そうに抱いている。



斉藤一は沖田総司と少女に、普通に話し掛ける。

「用意が出来たそうだ。」

沖田総司は少女をゆっくりと離した。

少女は沖田総司を心配そうに見ている。

三人はその場から居なくなった。



ここは寺の一室。

少女は背中に半纏を羽織ると、手をかざしながら火鉢の前に居る。

沖田総司は心配そうに少女に湯飲みを差し出した。

少女は微笑んで沖田総司から湯飲みを受取ると、暖かそうに飲み始めた。

沖田総司は心配そうに少女を見ている。

少女は沖田総司に微笑んで話し掛ける。

「温かいです。」

沖田総司は少女を心配そうに見ながら頷いた。



少女は半纏を羽織りながら、火鉢の前で手をずっとかざしている。

沖田総司は少女を心配そうに抱き寄せた。

少女は沖田総司の腕の中で不安そうにしている。

沖田総司は少女を抱いたまま、申し訳なさそうに話し掛ける。

「鈴ちゃん。今日はごめんね。実は、明日までに返事をするようにと言われている、仕事の依頼があったんだ。その事をずっと考えていたんだ。鈴ちゃんと逢っているのに仕事の事しか考えていなかった。ごめんね。」

少女は沖田総司の腕の中で、微笑んで話し掛ける。

「総司さん。お返事は、決まりましたか?」

沖田総司は困った表情をしたまま、少女を抱いている。

少女は沖田総司の腕の中で微笑んで話し掛ける。

「総司さんのお仕事の返事が決まるまで、ここで待っています。今は斉藤さんが居ます。私の事は気にしないでください。」

沖田総司は少女を抱きながら、微笑んで話し掛ける。

「返事は決まったよ。鈴ちゃんが気を遣ってくれたから早く決まった。ありがとう。」

少女は沖田総司の腕の中で微笑んでいる。

沖田総司は少女を抱きながら、心配そうに話し掛ける。

「鈴ちゃん。心配を掛けてごめんね。」

少女は沖田総司の腕の中で微笑んだまま、小さく首を横に振った。



それから少し後の事。

沖田総司は少女を家へ送るために寺を後にした。

斉藤一は一人で先に屯所へと戻っていった。



沖田総司は屯所に戻ってくると、直ぐに斉藤一のもとを訪れた。

斉藤一は沖田総司に普通に話し掛ける。

「美鈴さんの様子はどうだ?」

沖田総司は斉藤一に心配そうに話し掛ける。

「鈴ちゃんは、私が辛くないかと訊ねても、大丈夫だと言って笑っているだけでした。」

斉藤一は沖田総司を黙って見ている。

沖田総司は斉藤一に心配そうに話し掛ける。

「鈴ちゃんの体は、ずっと冷えたままでした。辛くないはずないですよね。」

斉藤一は沖田総司を黙って見ている。

沖田総司は斉藤一に不安そうに話し掛ける。

「仕事の返事を、ずっと考えていていました。」

斉藤一は沖田総司を黙って見ている。

沖田総司は斉藤一に不安そうに話し掛ける。

「気が付いたら、鈴ちゃんは私の事を気遣っていました。私の事を心配そうに見ていました。私のために気を遣っている鈴ちゃんの姿を見ていると、可哀想になりました。だから、鈴ちゃんに心配そうな顔をして欲しくなくて、いろいろと言ってしまいました。でも、そのせいで、鈴ちゃんは寒くて雪が降っているなかを、外に出て待つ事になってしまったんですね。」

斉藤一は沖田総司に普通に話し掛ける。

「総司は相変わらず駄目だな。何を悩んでいるのかは知らないが、美鈴さんと一緒に居る時はきちんと気を配ってあげないと駄目だろ。」

沖田総司は心配そうに斉藤一に話し掛ける。

「そうですよね。もし、鈴ちゃんの体調が悪くなれば、私のせいですよね。」

斉藤一は沖田総司を見ながら黙って頷いた。

沖田総司は斉藤一に辛そうに話し掛ける。

「ある事を頼まれました。明日までに、返事をしないといけません。」

斉藤一は沖田総司に普通に話し掛ける。

「返事は決まったのか?」

沖田総司は辛そうな表情で斉藤一を見ながら、黙って頷いた。

斉藤一は沖田総司を黙って見ている。

沖田総司は斉藤一に微笑んで話し掛ける。

「今日は、斉藤さんにも鈴ちゃんにも、たくさん迷惑を掛けてしまいました。」

斉藤一は沖田総司を黙って見ている。

沖田総司は斉藤一に軽く頭を下げた。

斉藤一は沖田総司を見ながら黙って頷いた。

沖田総司は斉藤一のもとを後にした。



その翌日の事。

沖田総司は土方歳三の部屋を訪れた。

土方歳三と沖田総司は、静かな声で話しをしている。

部屋の外には話しの内容までは聞こえてこない。



それから少し後の事。

沖田総司は土方歳三の部屋から出て行こうとした。

土方歳三は沖田総司を普通に呼び止めた。

「総司。なぜ、この話しを受けたんだ?」

沖田総司は振り返らずに、土方歳三に背を向けたまま、静かに話し出す。

「とても世話になった人からの頼みだからです。」

土方歳三は真剣な表情で沖田総司を見ている。

沖田総司は土方歳三に背を向けたまま、静かに話し出す。

「何より、私は武士です。だから、今回の話を受けました。」

土方歳三は真剣な表情で、沖田総司を見ている。

沖田総司は土方歳三に背を向けたまま、部屋を出て行った。



今は、まだ、山南敬助の頼みについての詳しい内容を知っている者は、ほとんどいない。





はじめに       後編       後書き

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