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〜 雪月花 新撰組異聞 編 〜


〜 仲春の頃 梅が花散らずありこそ思ふ子が為 〜


〜 前編 〜


「鶯の 待ちかてにせし 梅が花 散らずありこそ 思ふ子が為」

「万葉集 第五巻 八四五番」より

作者:門氏石足(もんじのいそたり)



今は梅の花咲く季節。

山南敬助と藤堂平助は一緒に歩いている。

藤堂平助は山南敬助に思い出したように話し掛ける。

「山南さん。もし時間があったら、梅の花を見に行きませんか?」

山南敬助は微笑んで藤堂平助に話し掛ける。

「かまいませんよ。見に行きましょう。」

藤堂平助は山南敬助に微笑んで返事をする。

「ありがとうございます。」

山南敬助と藤堂平助は、梅の花の咲く場所へと歩いていった。



山南敬助と藤堂平助は、梅の花の咲いている場所にやってきた。

藤堂平助は微笑んで辺りに咲いている梅を見ている。

山南敬助も微笑んで辺りに咲いている梅を見ている。

藤堂平助はある場所で視線を止めると、微笑んでずっと同じ場所を見ている。

山南敬助は藤堂平助と同じ場所を見ながら、微笑んで話し掛ける。

「今日は一人のようですね。」

藤堂平助は山南敬助に返事をせずに、同じ場所を微笑んで見ている。

山南敬助は藤堂平助を見ると、微笑んで話し掛ける。

「梅の花にも負けない可愛い子になりましたね。」

藤堂平助は不思議そうな表情で山南敬助を見た。

山南敬助は微笑んで藤堂平助に話し掛ける。

「あの子を見ていたのではないですか?」

藤堂平助は山南敬助を見ると、微笑んで話し掛ける。

「今日は沖田さんも斉藤さんも一緒ではないようですね。一人で居る姿を見たので、心配になってしまいました。」

山南敬助は藤堂平助に微笑んで話し掛ける。

「今日は総司も斉藤君も仕事の日ですよね。一人で居る姿を見ると、確かに心配になりますね。」

藤堂平助は山南敬助に不思議そうに話し掛ける。

「今までは、誰かが一人で居る姿を見ても、心配に思った事はありませんでした。あの子を見ていると、なぜか心配になります。妹を見ているような気持ちになるのでしょうか?」

山南敬助は藤堂平助に微笑んで話し掛ける。

「藤堂君が思っている不思議な感じは、妹を思う気持ちとは違うと思います。」

藤堂平助は不思議そうに山南敬助を見ている。

山南敬助は藤堂平助に微笑んで話し掛ける。

「それに、私の思う心配と藤堂君の思う心配も、違うと思います。」

藤堂平助は不思議そうに山南敬助を見ている。

山南敬助は微笑んで藤堂平助に話し掛ける。

「いずれわかる日がくるでしょう。」

藤堂平助は不思議そうに山南敬助を見ている。

山南敬助は藤堂平助に微笑んで話し掛ける。

「あの子と話しがしたくなりました。藤堂君。一緒に着いてきてください。」

藤堂平助は困った表情で山南敬助を見ている。

山南敬助は微笑んで藤堂平助に話し掛ける。

「嫌ですか? そうしたら、私が話しをしている間、ここで待っていますか?」

藤堂平助は慌てて山南敬助に話し出す。

「嫌だなんて、そんな事はありません。一緒に行きます。」

山南敬助は藤堂平助の様子を確認すると、少女のもとに歩き出した。

藤堂平助は山南敬助の後を黙って付いて行った。



少女は微笑みながら、一人だけで梅の花を見ている。

山南敬助は少女の後ろから、微笑んで話し掛ける。

「美鈴さん。こんにちは。今日は一人なのですね。」

少女はゆっくりと振り向いて、山南敬助を見ると微笑んで話し出す。

「こんにちは。今日は、総司さんも斉藤さんもお仕事をしている日なので、私一人で梅の花を見ています。」

山南敬助は微笑んで少女に話し掛ける。

「総司や斉藤君が一緒に居ないと、寂しいですよね。」

少女は少しだけ寂しそうな表情になった。

山南敬助は少女を微笑んで見ている。

少女は寂しそうな表情で山南敬助に話し出す。


「大丈夫です。総司さんも斉藤さんも大変なお仕事をしています。忙しい方です。私が我がままを言って、お二人に迷惑を掛ける訳にはいきません。」

山南敬助は微笑んで少女に話し掛ける。

「私達は美鈴さんに、いつも寂しい思いをさせてしまっているのですね。」

少女は微笑んで山南敬助に話し掛ける。

「私は大丈夫です。心配しないでください。」

山南敬助は微笑んで少女を見ている。

藤堂平助は、山南敬助と少女の様子を、黙って見ている。

山南敬助は藤堂平助を一瞥した。

藤堂平助は山南敬助を見ながら困った表情をしている。

山南敬助は少女に微笑んで話し掛ける。

「今日は、私一人だけで来た訳ではないのに、美鈴さんと私だけで話しをしてしまいました。」

藤堂平助は山南敬助を少しだけ驚いた表情で見た。

山南敬助は藤堂平助を微笑んで見た。

藤堂平助は微笑んで少女を見ながら話し出す。

「こんにちは。挨拶が遅くなって申し訳ありません。」

少女は微笑んで藤堂平助を見ながら話し出す。

「こんにちは。こちらこそ挨拶が遅くなってしまって申し訳ありません。」

藤堂平助は少女に微笑んで話し掛ける。

「私の名前ですが・・・」

少女は藤堂平助の話しを途中で遮ると、微笑んで話し出す。

「藤堂平助様ですよね。」

藤堂平助は少女に微笑んで話し出す。

「私の名前を覚えていてくれたのですね。嬉しいです。」

少女は微笑んで藤堂平助に話し出す。

「以前にお話しをした事がありますよね。それに、山南さんや皆様から、いろいろとお話しをおうかがいしています。」

藤堂平助は微笑んで少女に話し掛ける。

「私と話しをした事まで覚えていてくれたのですね。とても嬉しいです。」

少女は微笑んで藤堂平助を見ている。

山南敬助は微笑んで少女に話し掛ける。

「家に帰るなら途中まで送ります。どうしますか?」

少女は微笑んで山南敬助に話し掛ける。

「私はもう少しここに居ます。」

山南敬助は微笑んで少女に話し掛ける。

「私達に遠慮はいりません。」

少女は微笑んで山南敬助に話し掛ける。

「遠慮はしていません。お気遣い頂いてありがとうございます。」

山南敬助は微笑んで少女に話し掛ける。

「私達もそろそろ屯所に戻ろうと思っていたところです。ですから、心配しなくても大丈夫ですよ。」

少女は困った表情で山南敬助を見ている。

藤堂平助は少女に微笑んで話し掛ける。

「私はそろそろ失礼します。またお会いする機会があったら、一緒に話しをして頂けると嬉しいです。よろしくお願いします。」

少女は微笑んで藤堂平助を見ながら話し出す。

「こちらこそ、その時はお願いします。」

藤堂平助は山南敬助に微笑んで話し掛ける。

「私はこれで失礼します。」

山南敬助は藤堂平助に不思議そうに話し掛ける。

「藤堂君?」

藤堂平助は山南敬助に軽く礼をすると、梅の花咲く中を歩いていなくなった。



少女は心配そうに山南敬助に話し出す。

「私は藤堂様に、何か失礼な事をしたのでしょうか?」

山南敬助は微笑んで少女に話し掛ける。

「美鈴さんは何もしていません。藤堂君は先を急ぐ用があるそうです。先程その様な話しをしていました。」

少女は安心した様子で山南敬助を見ている。

山南敬助は微笑んで少女に話し掛ける。

「それでは、私もそろそろ帰ろうと思います。もし良かったら、途中まで一緒に帰りませんか?」

少女は微笑んで山南敬助に話し出す。

「途中までご一緒させてください。よろしくお願いします。」

山南敬助と少女は梅の花咲く中を、ゆっくりと歩きながら去っていった。



山南敬助は屯所に戻ってくると、直ぐに藤堂平助のもとを訪れた。

藤堂平助は不思議そうに山南敬助を見た。

山南敬助は藤堂平助に不思議そうに話し掛ける。

「藤堂君。なぜ、一人で帰ったのですか? あの子が何かしたのかと心配していましたよ。」

藤堂平助は微笑んで山南敬助に話し掛ける。

「あの子は私が一緒に居たので、いつもより気を遣っているのがわかりました。だから、先に帰りました。」

山南敬助は微笑んで藤堂平助に話し掛ける。

「藤堂君も気を遣うのですね。」

藤堂平助は不思議そうに山南敬助を見ている。

山南敬助は微笑んで藤堂平助を見ながら話し掛ける。

「藤堂君でもあまり話しをした事のない女の子に、気を遣ったりするのですね。不思議に感じます。」

藤堂平助は不思議そうに山南敬助に話し掛ける。

「相手は女の子です。それに、山南さんや沖田さんや斉藤さんが気を遣っている子です。気を遣うのは当然の事だと思います。」

山南敬助は微笑んで藤堂平助に話し掛ける。

「もし、次にあの子に会う機会があったら、先に帰った事を気にしていないか、確認してみてください。」

藤堂平助は微笑んで山南敬助に返事をする。

「わかりました。」

山南敬助は藤堂平助の返事を確認するとその場を後にした。



山南敬助は一人で屯所を歩いている。

土方歳三が後ろから山南敬助に声を掛けた。

「山南さん。こんにちは。」

山南敬助はゆっくりと後ろを振り向いた。

土方歳三は山南敬助に少しだけ笑いを堪えた表情で話し出す。

「山南さんが気を遣ったのに、平助は先に帰ったのですね。」

山南敬助は土方歳三に微笑んで話し出す。

「今の話を聞いていたのですか?」

土方歳三は笑いを堪えた表情で山南敬助を見ながら頷いた。

山南敬助は土方歳三に微笑んで話し掛ける。

「藤堂君は自分があの子に気を遣っている理由を、まだわかっていないようです。」

土方歳三は苦笑しながら山南敬助に話し掛ける。

「早く気が付けと言いたいです。」

山南敬助は土方歳三に微笑んで話し掛ける。

「私は藤堂君が、気が付かないまま終わった方が良いのではないかと、思うようになってきました。」

土方歳三は山南敬助に普通に話し掛ける。

「俺はそうは思いません。相手が誰であっても、気が付いた方が良いと思います。」

山南敬助は土方歳三を不思議そうに見ている。

土方歳三は微笑んで山南敬助に話し掛ける。

「そうしないと良い男になれないと思いませんか? それに、気になる女に気を遣ってやれないようじゃ、一人前の男とは言えません。」

山南敬助は土方歳三に微笑んで話し掛ける。

「気になる女性が、自分にとって敵わない相手を、好きでいてもですか?」

土方歳三は微笑んで山南敬助に話し出す。

「そうです。例え、気になる女性の想う相手が、刀を持ったら天才的だが他の事には天才的に鈍い奴でも、好きな女性の前で友達と訳のわからない事を言う奴でも、周りが気を遣ってやらないといけないくらい心配を掛ける奴でもです。」

山南敬助は苦笑しながら土方歳三を見ている。

土方歳三は微笑んで山南敬助に話し掛ける。

「それにしても、平助は本当に真面目な奴ですね。」

山南敬助は微笑んで土方歳三を見ながら頷いた。

土方歳三は微笑んで山南敬助に話し出す。

「刀を持ったら勇ましい平助が、年下のあまり話しをした事のない女の子の事を気遣っていると、周りの奴らが知ったら驚くでしょうね。」

山南敬助は微笑んで土方歳三を見ながら頷いた。



今は梅の花咲く季節。

後に山南敬助が切腹をする事を誰も知らない。

梅の花も後に起こる出来事を何も知らない。





はじめに       後編       後書き

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