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〜 雪月花 新撰組異聞 編 〜
〜 仲春の頃 梅が花散らずありこそ思ふ子が為 〜
〜 後編 〜
月日は過ぎ、今の新撰組に山南敬助は居ない。
梅の季節がもう直ぐ終わろうとしている。
梅の花も既に散り始めている場所もある。
少女は一人で梅の花が咲いている場所に居る。
しかし、梅の花を見ている様子には見えない。
沖田総司と一緒に遊んでいる子供達の何人かが、少女の近くを通り掛かった。
少女は子供達が傍に居る事に気が付いた。
子供達も少女が傍に居る事に気が付いた。
少女は微笑んで子供達を見た。
子供達は心配そうに少女のもとにやってきた。
少女は微笑んで子供達に静かに話し掛ける。
「こんにちは。」
子供達は少女の様子を見ると、心配そうに話し掛ける。
「お姉ちゃん。大丈夫?」
少女は微笑んで子供達を見ながら頷いた。
子供達は少女に心配そうに話し掛ける。
「お姉ちゃん。やっぱり辛そうに見えるよ。総司お兄ちゃんを呼んでくる。だから、少しだけ待っていてね。」
少女は微笑んで子供達に静かに話し掛ける。
「お願い。誰も呼ばないで。」
子供達は少女を心配そうに見た。
少女は微笑んで子供達に静かに話し掛ける。
「総司さんはお仕事をしている日なの。迷惑を掛ける事は出来ないの。」
子供達は少女に心配そうに話し掛ける。
「でも、お姉ちゃん。辛そうに見えるよ。僕達だって、お姉ちゃんを置いて帰れないよ。」
少女は微笑んで子供達に静かに話し掛ける。
「気を遣ってくれてありがとう。でも、総司さんは呼ばないで。お願い。」
子供達は心配そうに少女を見ながら頷いた。
少女は子供達を微笑んで見ている。
子供達は相談を始めた。
少女は不思議そうに子供達を見ている。
子供達のなかの一人が少女のもとに残った。
残りの子供達は走っていなくなった。
子供達は辺り見回しながら歩いている。
斉藤一と藤堂平助が一緒に歩いている姿が見えた。
子供達はお互いの顔を見合わせた。
斉藤一は子供達の様子を見ると、藤堂平助に普通に話し掛ける。
「悪いが少し待っていてくれ。」
藤堂平助は不思議そうに斉藤一を見ながら頷いた。
斉藤一は子供達の居る方に歩き出した。
斉藤一は子供達の前に来ると、普通に話し掛ける。
「何かあったのか?」
子供達は斉藤一に心配そうに話し掛ける。
「お姉ちゃんが辛そうなんだ。でも、総司お兄ちゃんには知られたくないんだって。」
斉藤一は子供達を黙って見ている。
子供達は斉藤一に心配そうに話し掛ける。
「お姉ちゃんが心配なんだ。だから、はじめお兄ちゃんを探していたんだ。」
斉藤一は子供達に普通に話し掛ける。
「悪いが、美鈴さんの所には直ぐには行けない。少しだけ待っていてくれ。」
子供達は困った様子で顔を見合わせた。
藤堂平助は斉藤一と子供達のもとにやってきた。
斉藤一は藤堂平助を一瞥した。
藤堂平助は微笑んで子供達に話し掛ける。
「みんな。こんにちは。何かあったのかな?」
子供達は藤堂平助に困った様子で話し出す。
「お姉ちゃんの調子が悪いみたいなんだ。でも、総司お兄ちゃんには知られたくないんだって。はじめお兄ちゃんは仕事だから、直ぐにはお姉ちゃんの所に行けないんだって。」
藤堂平助は斉藤一に恐る恐る話し出す。
「斉藤さん。体調が悪い人を放って置く訳にもいきませんよね。」
斉藤一は藤堂平助を黙って見た。
藤堂平助は斉藤一に恐る恐る話し出す。
「今日の仕事は、だいたい終わっていますよね。後の事は、私一人でも大丈夫だと思います。早く行った方が良いのではないでしょうか?」
斉藤一は藤堂平助を見ると黙って頷いた。
藤堂平助は斉藤一に普通に話し掛ける。
「もし、あの子の体調が悪くなければ、戻ってきてください。」
斉藤一は藤堂平助を見ながら黙って頷いた。
子供達は安心した表情で、斉藤一と藤堂平助を見ている。
斉藤一と子供達は、少女のもとへと向かった。
藤堂平助は心配そうな表情のまま、その場を後にした。
斉藤一と子供達は、少女のともにやってきた。
斉藤一は少女を見ながら普通に話し掛ける。
「調子が悪そうだな。」
少女は微笑んで斉藤一に静かに話し出す。
「大丈夫です。」
斉藤一は少女に普通に話し掛ける。
「俺の前で無理をするな。」
少女は微笑んで斉藤一に静かに話し出す。
「少しだけ辛いです。」
斉藤一は少女に普通に話し掛ける。
「別な場所に行くぞ。」
少女は斉藤一を見ながら黙って頷いた。
斉藤一は子供達に普通に話し掛ける。
「後の事は心配するな。もう帰っていいぞ。」
子供達は心配そうに斉藤一を見ながら黙って頷いた。
斉藤一は子供達を黙って見ている。
子供達は少女の様子を気遣いながらも、その場を後にした。
斉藤一は少女を連れて、いつも出掛けている寺にやってきた。
少女は熱がある様子。
斉藤一は少女を横にさせると、住職にいろいろと話しをしている。
少女は床の上で横になっている。
斉藤一は少女を黙って見ている。
少女は微笑んで横になったまま、斉藤一に静かに話し掛ける。
「いつもいすません。」
斉藤一は少女を見ると普通に話し掛ける。
「気にするな。」
少女は横になったまま、斉藤一に心配そうに話し掛ける。
「総司さんや家の人には黙っていてください。」
斉藤一は少女を見ながら黙って頷いた。
少女は微笑んで横になったまま、斉藤一に静かに話し掛ける。
「明日、総司さんと会うんです。」
斉藤一は少女に普通に話し掛ける。
「今日は、家で静かにしていた方が、良かったんじゃないのか?」
少女は微笑んで横になったまま、斉藤一に静かに話し掛ける。
「体調があまりよくない事を、家の人が知ったら出掛けられません。総司さんが知ったら心配します。」
斉藤一は少女を黙って見ている。
少女は微笑んで横になったまま、斉藤一に静かに話し出す。
「最近の総司さんはいつも辛そうにしています。出来るだけ一緒に居てあげたいです。総司さんの笑顔が早く見たいです。だから、いつもどおりにしていないといけません。」
斉藤一は少女に普通に話し掛ける。
「だったら、ここに居る間だけでも休んでいろ。ここに居る間は俺が傍に居る。だから、安心して休んで良いぞ。」
少女は横になったまま、斉藤一に微笑んで頷いた。
斉藤一は少女を黙って見ている。
少女は横になったまま、直ぐに目を閉じた。
それから少しだけ日付が過ぎた。
少女は熱を出して寝込んでいるらしい。
沖田総司は毎日のように少女を見舞っているらしい。
藤堂平助のもとには詳しい事は伝わってこない。
沖田総司が屯所に居る時は、斉藤一などごく一部の隊士の前でしか少女の話しをしない。
そのため、少女の体調や状況については、ほとんどわからない。
藤堂平助は思い切った様子で斉藤一に声を掛ける。
「斉藤さん。聞きたい事があります。」
斉藤一は藤堂平助を黙って見ている。
藤堂平助は斉藤一に心配そうに話し掛ける。
「斉藤さんや沖田さんと良く一緒に居る、美鈴さんと言う名前の子が、体調を崩したと聞きました。」
斉藤一は藤堂平助を黙って見ている。
藤堂平助は斉藤一に恐る恐る話し掛ける。
「沖田さんには美鈴さんの事は聞けません。斉藤さんしか訊ねる人が居ません。だから・・・」
斉藤一は藤堂平助を黙って見ている。
藤堂平助は続きを話し出す事が出来ずに、困った表情で斉藤一を見ている。
斉藤一は藤堂平助に普通に話し掛ける。
「体調の件だが、話しのとおりだ。でも、いずれ良くなる。心配しなくても良いと思う。」
藤堂平助は斉藤一に心配そうに話し出す。
「本当に大丈夫なのですか?」
斉藤一は藤堂平助を黙って見ている。
藤堂平助は心配そうに斉藤一を見ている。
斉藤一は黙って居なくなった。
藤堂平助は心配そうな表情でため息を付くと、寂しそうにその場を後にした。
藤堂平助は寺を訪れた。
本堂の前に来ると、真剣な表情で何かを祈っている。
毎日の様に寺を訪れては、真剣な表情で何かを祈っている。
沖田総司は、少女と一緒によく訪ねている寺を訪れている。
寺の境内に在る梅の木には、花がまだ咲いている。
沖田総司は梅の木に手を当てると、微笑んで話し出す。
「今日も咲いているね。鈴ちゃんが元気になるまで咲いていてね。私が無理をさせたから、鈴ちゃんが梅の花を見る事が出来なくなってしまった。私は鈴ちゃんの喜ぶ顔が見たいんだ。だから、もう少しだけ咲いていてね。」
梅の花は沖田総司の気持ちがわかるのか綺麗に咲いている。
沖田総司は微笑んで梅の花の様子を見ると、寺を後にした。
そんな出来事があってから、間もないある夜の事。
土方歳三と斉藤一は一緒に酒を飲んでいる。
土方歳三は微笑んで斉藤一に話し掛ける。
「総司も平助もあの子の事を心配しているらしいな。」
斉藤一は土方歳三を見ながら黙って頷いた。
土方歳三は黙って酒を飲んだ。
斉藤一も黙って酒を飲んだ。
土方歳三はほとんど散ってしまった梅の木を見ながら、斉藤一に話し掛ける。
「もう梅の季節も終わりだな。」
斉藤一は梅の木を一瞥すると黙って頷いた。
土方歳三は杯に注いだ酒を見ながら、斉藤一に微笑んで話し出す。
「鶯の 待ちかてにせし 梅が花 散らずありこそ 思ふ子が為」
斉藤一は土方歳三を黙って見た。
土方歳三は酒を飲むと、微笑んで斉藤一に話し掛ける。
「今の歌なんだが、あの二人の心境と同じかなと思って詠んでみた。どうかな?」
斉藤一は土方歳三を見ながら黙って頷いた。
土方歳三は斉藤一を見ながら、微笑んで酒を飲んだ。
斉藤一は土方歳三を見ながら、普通の表情で酒を飲んだ。
土方歳三は微笑んで斉藤一を見ながら話し出す。
「もうそろそろ鶯が鳴く季節になるな。」
斉藤一は土方歳三を見ながら黙って頷いた。
土方歳三は斉藤一に微笑んで話し掛ける。
「今度、出掛けたい所があるんだ。斉藤にも付き合ってもらう予定なんだ。よろしく頼むな。」
斉藤一は土方歳三を見ると、普通に話し出す。
「だいたいの想像は付きますが、土方さんには歌の相手の様な人はいないのですか?」
土方歳三は微笑んで斉藤一に話し掛ける。
「俺は、好きな相手全員に対して、そう思っているよ。」
斉藤一は土方歳三を黙って見ている。
土方歳三は自分で酒を注ぐと、杯を見ながら話し出す。
「鶯の 待ちかてにせし 梅が花 散らずありこそ 思ふ子が為、か・・・」
斉藤一は土方歳三を見ながら、黙って酒を飲んでいる
土方歳三は微笑んで杯を見ていたが、一気に酒を飲んだ。
斉藤一は土方歳三の様子を黙って見ている。
土方歳三は微笑んで斉藤一に話し掛ける。
「かなり時間が経ったな。」
斉藤一は土方歳三を見ながら黙って頷いた。
土方歳三は斉藤一に微笑んで話し掛ける。
「もう少しだけ飲みたいんだ。付き合えるか?」
斉藤一は土方歳三を見ると黙って頷いた。
土方歳三は微笑んで斉藤一の杯に酒を注いだ。
斉藤一は土方歳三に軽く礼をすると、黙って酒を飲んだ。
土方歳三と斉藤一は、僅かに咲く梅の花を見ながら、二人だけの酒宴を続けた。
それから少しだけ日付が過ぎた。
梅の花が咲いている場所も少なくなってきた。
梅の花を咲いている場所を探すのも大変になってきた。
少女の熱も下がり、体調も安定してきた。
今は、沖田総司と一緒に出掛ける事が出来るくらいにまで回復している。
沖田総司と少女は、いつも訪れている寺で梅の花を見ている。
少女は梅の花を微笑んで見ている。
沖田総司は少女の様子を微笑んで見ている。
少女は沖田総司に微笑んで話し掛ける。
「総司さん。梅の花が咲いています。嬉しいです。」
沖田総司は少女に微笑んで話し掛ける。
「鈴ちゃんは良い子だから、梅の木も鈴ちゃんに見て欲しくて、ずっと咲いていたんだと思う。」
少女は沖田総司を恥ずかしそうに見ている。
沖田総司は心配そうに少女に話し掛ける。
「鈴ちゃん。調子が悪いの? それともまた何か変な事を言ったのかな?」
少女は沖田総司を微笑んで見ながら話し掛ける。
「総司さんに褒めて頂けたので、恥ずかしくなってしまいました。でも、嬉しいです。」
沖田総司は少女に微笑んで話し掛ける。
「鈴ちゃんは良い子だよ。もっと褒めても良いと思っているんだ。」
少女は沖田総司に微笑んで話し出す。
「総司さんに褒めて頂けると、とても嬉しいです。でも、やっぱり恥ずかしいです。」
沖田総司は少女を微笑んで見ている。
沖田総司と少女は梅の木を見た。
青い空が沖田総司と少女の上に広がっている。
沖田総司は少女に微笑んで話し掛ける。
「鈴ちゃん。もしかして、今、鶯が鳴かなかった?」
少女は沖田総司を見ると微笑んで頷いた。
沖田総司と少女が寺に居るのと、ちょうど同じ頃。
土方歳三と藤堂平助は、京の町を歩いている。
土方歳三が藤堂平助に微笑んで話し掛ける。
「そういえば、総司が梅の花が咲いている場所を探していたんだ。良い場所が見つからなくて苦労していたんだ。でも、まだ綺麗に咲いている場所があったらしくて、とても喜んでいたんだ。」
藤堂平助は土方歳三の話しを嬉しそうに聞いている。
土方歳三は藤堂平助の様子を微笑んで見ている。
藤堂平助は土方歳三に不思議そうに話し掛ける。
「今、鶯が鳴いたような気がします。」
土方歳三は周りを見回すと、籐堂平助に微笑んで話し掛ける。
「そうだな。確かに鶯が鳴いたな。」
藤堂平助は微笑んで歩き出した。
土方歳三も微笑んで歩き出す。
土方歳三と藤堂平助の上にも青い空が広がっている。
「鶯の 待ちかてにせし 梅が花 散らずありこそ 思ふ子が為」
遅くまで咲いている梅の花に、鶯が止まって鳴いています。
春の花の咲き乱れる季節は、もうそこまで来ています。
〜 完 〜
はじめに
前編
後書き
目次
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