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〜 雪月花 新撰組異聞 編 〜
〜 春待ち月 一目見し人に恋ふらく 〜
〜 改訂版 〜
登場人物
近藤勇、土方歳三、沖田総司、斉藤一、美雪太夫[お雪]、少女[美鈴・鈴]
「一目見し 人に恋ふらく 天霧し 降りくる雪の 消ぬべく思ほゆ」
「万葉集 第十巻 二三四〇番」より
作者:詠み人知らず
今は冬の初め。
ここは、京の町。
島原。
一軒の建物。
一室。
酒宴の主催者と数人の招待客が居る。
近藤勇と土方歳三も、招待客の中に居る。
美雪太夫が居る。
美雪太夫は京でも指折りの太夫になる。
近藤勇は杯の酒を飲みながら、美雪太夫を見て、土方歳三に不思議な様子で囁いた。
「美雪太夫に似た女性に京の町で会った時がある。」
土方歳三は杯の酒を飲みながら、近藤勇に微笑んで囁いた。
「美雪太夫ほどの綺麗な女性は幾人もいない。同一人物かも知れない。」
近藤勇は杯の酒を飲みながら、美雪太夫を見て、土方歳三に不思議な様子で囁いた。
「私が美雪太夫に似た女性に会った時は、花街で働いていなかった。同一人物なのか悩む。」
土方歳三は杯の酒を飲みながら、近藤勇に微笑んで囁いた。
「美雪太夫ほどの綺麗な女性が二人も居るのか、事情があって花街で働くようになったのか。」
近藤勇は杯の酒を飲みながら、美雪太夫を不思議な様子で見た。
土方歳三は杯の酒を飲みながら、近藤勇と美雪太夫を微笑んで見た。
美雪太夫が微笑んで来た。
近藤勇は杯の酒を飲みながら、美雪太夫を微笑んで見た。
土方歳三も杯の酒を飲みながら、美雪太夫を微笑んで見た。
美雪太夫は近藤勇と土方歳三に微笑んで話し出す。
「新撰組の局長さんの、近藤先生。新撰組の副長さんの、土方先生。ですよね。」
近藤勇は杯の酒を飲みながら、美雪太夫に微笑んで頷いた。
土方歳三も杯の酒を飲みながら、美雪太夫に微笑んで頷いた。
美雪太夫は近藤勇と土方歳三を微笑んで見た。
土方歳三は杯の酒を飲みながら、美雪太夫に微笑んで話し出す。
「天女に喩えられる美雪太夫が、私達を知っている。嬉しいです。」
美雪太夫は土方歳三に微笑んで話し出す。
「新撰組は一番に勢いが有ると噂されます。近藤先生は新撰組の局長さんです。土方先生は新撰組の副長さんです。島原で近藤先生と土方先生を知らない人物は居ません。」
近藤勇は杯の酒を飲みながら、美雪太夫に微笑んで話し出す。
「土方は、新撰組の副長で、容姿端麗だ。土方に憧れる女性は物凄く多い。二つの理由が合わさって、島原で土方を知らない人物が居ないのだろ。」
美雪太夫は近藤勇に微笑んで話し出す。
「土方先生に会いたいと願う女性は、島原だけでなく、京の町にも多いです。土方先生は容姿端麗です。多くの女性が土方先生に憧れる気持ちが分かります。」
土方歳三は杯の酒を飲みながら、美雪太夫に微笑んで話し出す。
「美雪太夫に名前を忘れられないために、様々な面に精進します。」
美雪太夫は土方歳三に微笑んで話し出す。
「土方先生は立派な人物です。様々な面に精進しなくても忘れません。」
土方歳三は杯の酒を飲みながら、美雪太夫を微笑んで見た。
近藤勇は杯の酒を飲みながら、土方歳三と美雪太夫を微笑んで見た。
美雪太夫は近藤勇の耳元に近付くと、近藤勇に微笑んで囁いた。
「お久しぶりです。近藤さん。」
近藤勇は美雪太夫を僅かに驚いた様子で見た。
美雪太夫は土方歳三の耳元に近付くと、土方歳三に微笑んで囁いた。
「お久しぶりです。土方さん。」
土方歳三は美雪太夫に微笑んで頷いた。
美雪太夫は近藤勇と土方歳三に微笑んで軽く礼をした。
近藤勇は杯の酒を飲みながら、美雪太夫に不思議な様子で頷いた。
土方歳三は杯の酒を飲みながら、美雪太夫に微笑んで頷いた。
美雪太夫は他の客の傍に微笑んで行った。
近藤勇は杯の酒を飲みながら、土方歳三を不思議な様子で見た。
土方歳三は杯の酒を飲みながら、近藤勇を微笑んで見た。
暫く後の事。
ここは、屯所。
近藤勇の部屋。
近藤勇は部屋の中に普通に入ってきた。
土方歳三は部屋の中に普通に入ってきた。
近藤勇は土方歳三に苦笑して話し出す。
「歳。私が美雪太夫に似た女性に京の町で会った時があると話した時に、黙っていた理由を教えてくれ。」
土方歳三は近藤勇に微笑んで話し出す。
「近藤さんは、多摩にツネさんが居る。近藤さんは、京の町で様々な女性と付き合っている。近藤さんが付き合う女性を更に増やす必要はないから黙っていた。」
近藤勇は土方歳三を苦笑して見た。
土方歳三は障子を空けると、外を微笑んで見た。
近藤勇は外を微笑んで見た。
綺麗な夜空が見える。
土方歳三は夜空を見ながら、近藤勇に微笑んで話し出す。
「“一目見し 人に恋ふらく 天霧し 降りくる雪の 消ぬべく思ほゆ”」
近藤勇は土方歳三を不思議な様子で見た。
土方歳三は近藤勇を見ると、近藤勇に微笑んで話し出す。
「状況は少し違うが、良い歌だろ。」
近藤勇は土方歳三に微笑んで頷いた。
土方歳三は近藤勇に微笑んで話し出す。
「部屋に戻る。」
近藤勇は土方歳三に微笑んで話し出す。
「歳。部屋に戻る前に、聞いて欲しい内容がある。」
土方歳三は近藤勇を不思議な様子で見た。
近藤勇は土方歳三に真剣な表情で話し出す。
「私は美雪太夫を身請けする。」
土方歳三は近藤勇に困惑して話し出す。
「近藤さん。本気なのか?」
近藤勇は土方歳三に真剣な表情で話し出す。
「本気だ。」
土方歳三は近藤勇を見ながら、困惑してため息をついた。
幾日か後の事。
ここは、島原。
美雪太夫が過ごす建物。
一室。
近藤勇は真剣な表情で居る。
土方歳三は普通の表情で居る。
美雪太夫が部屋の中に微笑んで入ってきた。
近藤勇は美雪太夫に真剣な表情で話し出す。
「土方から、美雪太夫が私に身請けについて確認したい内容があると聞いた。今日は私が美雪太夫の確認したい内容に答えるために来た。」
美雪太夫は近藤勇に微笑んで話し出す。
「身請けのお話を聞いた時は、嬉しい気持ちになりました。近藤先生の傍で末永く過ごすために、近藤先生に確認したいと思いました。」
近藤勇は美雪太夫に真剣な表情で話し出す。
「私は美雪太夫を身請けしたい。私は真剣だ。遠慮せずに話してくれ。」
美雪太夫は近藤勇に微笑んで話し出す。
「近藤先生には、幾人かの親しい女性が傍に居ると聞いた時があります。私を身請けした後も、状況は同じですか?」
近藤勇は美雪太夫に真剣な表情で話し出す。
「私は京の町では美雪太夫以外の女性と付き合わない。安心してくれ。」
美雪太夫は近藤勇を微笑んで見た。
近藤勇は美雪太夫を真剣な表情で見た。
美雪太夫は近藤勇に微笑んで話し出す。
「近藤先生。身請けのお話を喜んでお受けいたします。」
近藤勇は美雪太夫の手を握ると、美雪太夫に微笑んで話し出す。
「美雪太夫。ありがとう。」
美雪太夫は近藤勇に微笑んで話し出す。
「近藤先生。よろしくお願いいたします。」
近藤勇は美雪太夫の手を握り、美雪太夫に微笑んで話し出す。
「美雪太夫。よろしく頼む。」
美雪太夫は近藤勇に微笑んで話し出す。
「近藤先生。私に何を頼むのですか?」
近藤勇は美雪太夫を握り、美雪太夫を考え込んで見た。
美雪太夫は近藤勇を微笑んで見た。
土方歳三は近藤勇と美雪太夫を僅かに安心した様子で見た。
幾日か後の事。
近藤勇が美雪太夫を身請けする日が近付いている。
ここは、屯所。
土方歳三の部屋。
土方歳三は普通に居る。
沖田総司は微笑んで居る。
斉藤一は普通に居る。
沖田総司は土方歳三に苦笑して話し出す。
「近藤さんが美雪太夫を身請けする日が近付いていますね。屯所内が、近藤さんの身請けする女性の話題で盛り上がっています。近藤さんの身請けする女性について質問する隊士がいます。困ります。」
土方歳三は沖田総司に微笑んで話し出す。
「近藤さんが美雪太夫を身請けする内容は、隊士に正式な形で話していない。美雪太夫は、綺麗で性格が良く素敵な女性だ。美雪太夫に憧れる隊士は多い。近藤さんの身請けする女性の詳細を知りたい隊士は多いと思う。」
沖田総司は土方歳三に不思議な様子で話し出す。
「近藤さんは、多摩にツネさんが居ます。美雪太夫を身請けして大丈夫なのですか?」
土方歳三は沖田総司に普通に話し出す。
「総司。近藤さんが美雪太夫を身請けすると決めて、美雪太夫は近藤さんからの身請けの話を受けた。深く追求するな。」
沖田総司は土方歳三を考え込んで見た。
土方歳三は沖田総司に確認するように話し出す。
「総司。念のために確認する。ツネさんに近藤さんが美雪太夫を身請けする出来事を連絡していないよな。」
沖田総司は土方歳三に苦笑して話し出す。
「連絡していません。」
土方歳三は斉藤一に普通に話し出す。
「斉藤。総司が、ツネさんに近藤さんが美雪太夫を身請けする出来事を連絡する言動をした時には、頼む。」
斉藤一は土方歳三に普通に話し出す。
「承知。」
沖田総司は土方歳三と斉藤一に苦笑して話し出す。
「斉藤さん。私は何もしません。信じてください。」
土方歳三は沖田総司に微笑んで話し出す。
「総司は一番の危険人物だ。斉藤に総司が怪しい言動をした時の始末を頼むのは当然だ。」
沖田総司は土方歳三を苦笑して見た。
土方歳三は沖田総司と斉藤一に微笑んで話し出す。
「美雪太夫は天女に喩えられる女性だ。近藤さんがたくさんの女性と付き合う考えを起こさない可能性が高い。安心だな。」
沖田総司は土方歳三に微笑んで話し出す。
「美雪太夫は綺麗な女性ですよね。土方さんも安心して過ごせますね。」
土方歳三は沖田総司を不思議な様子で見た。
沖田総司も土方歳三を不思議な様子で見た。
土方歳三は斉藤一に不思議な様子で話し出す。
「斉藤。総司の顔が赤くならない。総司が普通だ。」
斉藤一は土方歳三に普通の表情で軽く礼をした。
沖田総司は土方歳三と斉藤一を不思議な様子で見た。
土方歳三は斉藤一に普通に話し出す。
「総司は細やかな感情の関連で天才的な鈍さを発揮するから、直ぐに分からなかった。俺も更に精進が必要だ。」
斉藤一は土方歳三に普通に話し出す。
「土方さんは細やかな感情の関連の達人です。総司が細やかな感情の関連で天才的な鈍さを発揮するために、気付き難い状況になっているだけです。土方さんは気付きました。安心してください。」
土方歳三は斉藤一に微笑んで話し出す。
「斉藤。ありがとう。」
斉藤一は土方歳三に普通の表情で軽く礼をした。
沖田総司は土方歳三と斉藤一を不思議な様子で見ている。
土方歳三は沖田総司の肩に軽く手を置くと、沖田総司と斉藤一に微笑んで話し出す。
「総司。斉藤。歌を教える。」
沖田総司は土方歳三を不思議な様子で見た。
斉藤一は土方歳三に普通の表情で軽く礼をした。
土方歳三沖田総司の肩に軽く手を置いて、沖田総司と斉藤一に微笑んで話し出す。
「“一目見し 人に恋ふらく 天霧し 降りくる雪の 消ぬべく思ほゆ”」
沖田総司は土方歳三を不思議な様子で見ている。
斉藤一は土方歳三に普通の表情で軽く礼をした。
土方歳三沖田総司の肩に軽く手を置いて、沖田総司と斉藤一を微笑んで見た。
数日後の事。
ここは、落ち着いた雰囲気の寺。
境内。
椿が咲いている。
沖田総司は微笑んで居る。
少女も微笑んで居る。
少女は椿を見て、沖田総司に微笑んで話し出す。
「椿が綺麗に咲いています。嬉しいです。」
沖田総司は少女に微笑んで頷いた。
冷たい風が僅かに吹いた。
少女は椿を見ながら、一瞬だけ寒い仕草を見せた。
沖田総司は少女に心配して話し出す。
「鈴ちゃん。寒い?」
少女は沖田総司を見ると、沖田総司に微笑んで話し出す。
「大丈夫です。」
沖田総司は少女の手を優しく握ると、沖田総司に微笑んで話し出す。
「僅かだと思うけれど、暖かくなったかな?」
少女は沖田総司に微笑んで話し出す。
「ありがとうございます。暖かいです。」
沖田総司は少女の手の優しく握り、少女を微笑んで見た。
少女は沖田総司を微笑んで見た。
雪が静かに降ってきた。
少女は空を不思議な様子で見た。
沖田総司と少女の手の優しく握り、空を不思議な様子で見た。
雪が静かに降っている。
沖田総司は少女の手を優しく握り、少女を見ると、少女に微笑んで話し出す。
「雪が降り始めたね。」
少女は沖田総司を見ると、沖田総司に微笑んで頷いた。
沖田総司は少女の手を優しく放した。
少女は掌を空に向けて、空を微笑んで見た。
沖田総司は少女を見ながら、微笑んで呟いた。
「“一目見し 人に恋ふらく 天霧し 降りくる雪の 消ぬべく思ほゆ”」
少女は掌を空に向けて、空を微笑んで見ている。
沖田総司は少女を赤面して見た。
少女は沖田総司を微笑んで見た。
沖田総司は少女を赤面して見ている。
少女は沖田総司に心配して話し出す。
「総司さん。お顔が赤いです。大丈夫ですか?」
沖田総司は少女に赤面して話し出す。
「大丈夫だよ。」
少女は沖田総司を心配して見た。
沖田総司は少女に赤面して話し出す。
「鈴ちゃんが、雪が、可愛い。」
少女は沖田総司を恥ずかしい様子で見た。
沖田総司は少女に赤面して心配して話し出す。
「鈴ちゃん。大丈夫? 私は変な内容を話したのかな?」
少女は沖田総司に恥ずかしい様子で小さく首を横に振った。
沖田総司は少女に心配して話し出す。
「私は変な内容を話したんだね。鈴ちゃん。ごめんね。」
少女は沖田総司に恥ずかしい様子で小さく首を横に振った。
沖田総司は少女を心配して抱いた。
少女は沖田総司に微笑んで話し出す。
「総司さん。私は大丈夫です。」
沖田総司は少女を抱いて、少女を安心して見た。
少女は空を微笑んで見た。
沖田総司は少女を抱いて、空を微笑んで見た。
雪が静かに止んだ。
沖田総司は少女を抱いて、少女を見ると、少女に微笑んで話し出す。
「鈴ちゃん。雪が止んだね。」
少女は沖田総司を見ると、沖田総司に微笑んで頷いた。
沖田総司は少女を抱いて、少女を微笑んで見た。
少女は沖田総司を微笑んで見た。
沖田総司は少女をゆっくりと放すと、少女を微笑んで見た。
少女は沖田総司を微笑んで見ている。
沖田総司は少女に微笑んで話し出す。
「鈴ちゃんの笑顔を見ると、嬉しくなるんだ。鈴ちゃんの笑顔を見ると、元気になるんだ。」
少女は沖田総司を微笑んで見た。
沖田総司も少女を微笑んで見た。
「一目見し 人に恋ふらく 天霧し 降りくる雪の 消ぬべく思ほゆ」
一目見た人に恋をする事は、雪のように消え入りそうに思う事と、同じらしい。
京の町を守る新撰組の隊士達も同じ想いになるのか。
空から降る雪は、答えを知っているかも知れない。
空から降る雪は、たくさんの想いを包んで様々な場所に紛れてしまう。
空から降る雪に尋ねても、答える前に様々な場所に紛れてしまう。
答えを知りたいが、答えを知るのが難しい。
* * * * * *
ここからは後書きになります。
この物語に登場する歌は「万葉集 第十巻 二三四〇番」
「一目見し 人に恋ふらく 天霧し 降りくる雪の 消ぬべく思ほゆ」
ひらがなの読み方は「ひとめみし ひとにこふらく あまぎらし ふりくるゆきの けぬべくおもほゆ」
作者は「詠み人知らず」
歌の意味は「一目見た人に恋すること。空を曇らせて降ってくる雪のように、消え入りそうに思う・・・」となるそうです。
原文は「一眼見之 人尓戀良久 天霧之 零来雪之 可消所念」
この歌に「一目」の言葉が出てきます。
万葉集の中では、「一目」を、実際の一目だけでなく、親しい人にも使っている歌があるそうです。
お雪さんが美雪太夫と名乗った頃の物語です。
近藤勇さんが美雪太夫を身請けする頃は、お雪さんが亡くなる年の初めの頃と思われます。
この物語は、近藤勇さんが美雪太夫を身請けする直前の前年の冬を想定して書きました。
この物語の設定時は陰暦のため、現在の暦に合わせると、一月前後の頃になると思います。
近藤勇さん、土方歳三さん、お雪さんが、以前に会っていたかについては、実際は分かりません。
小説やテレビなどで、近藤勇さんとお雪さんは、以前に何かの形で会っていて、美雪太夫となってから近藤勇さんと再び会う作品がありました。
以前に会っていた状況の方が物語として良いと考えて、以前に会っている設定にしました。
「春待ち月(はるまちつき)」は「陰暦十二月の異称」です。
楽しんで頂けると嬉しいです。
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