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〜 雪月花 新撰組異聞 編 〜


〜 春の雪 君がため春の野に出でて 〜


登場人物。

土方歳三、沖田総司、斉藤一、少女[鈴・美鈴]



「君がため 春の野に出でて 若菜つむ わが衣手に 雪はふりつつ」

小倉百人一首 第十五番」、及び、「古今集」より

作者:光孝天皇(こうこうてんのう)



少しずつだが冬の寒さを感じなくなってきた。

冬から春の季節に移っていく気配が現れるようになってきた。



沖田総司は少女の家を訪れた。

少女は微笑んで沖田総司を出迎えた。

二人は楽しそうに話しをしながら、一緒に出掛けて行った。



沖田総司と少女は寺に到着した。

寺の中に入ると楽しそうに話しを始めた。



斉藤一が少し遅れて寺に到着した。

少女が斉藤一に微笑んで話し掛ける。

「こんにちは。」

斉藤一は少女を見ると黙って頷いた。

沖田総司が笑顔で斉藤一に話し掛ける。

「斉藤さん。遅かったですね。」

斉藤一は沖田総司を見ると普通に話し掛ける。

「遅れてないぞ。」

沖田総司は不思議そうに斉藤一を見ている。

少女が沖田総司に微笑んで話し掛ける。

「総司さん。斉藤さんは遅れていません。」

沖田総司は少女を見ると恥ずかしそうに話し掛ける。

「楽しくて早く時間が経ったような気がしてしまった。」

少女は微笑んで沖田総司を見ている。

沖田総司は斉藤一を見ると微笑んで話し掛ける。

「斉藤さん。すいませんでした。早く一緒に話しをしましょう。」

斉藤一は黙って頷くと二人の傍に座った。

少女が微笑んで沖田総司に包みを差し出した。

「総司さん。どうぞ。」

沖田総司は包みを覗くと嬉しそうに話し掛ける。

「いなり寿司だ。おいしそうだね。」

少女は微笑んで沖田総司に話し掛ける。

「お口に合うとよいのですが。どうぞ。」

沖田総司は嬉しそうに少女に話し掛ける。

「鈴ちゃんの持ってきてくれる物は、いつもおいしいよ! だから心配しなくても大丈夫だよ!」

少女は恥ずかしそうに沖田総司を見ている。

沖田総司はいなり寿司を手に取ると、笑顔で少女に話し掛ける。

「いただきます〜!」

少女は微笑んで沖田総司の様子を見ている。

沖田総司はおいしそうにいなり寿司を食べている。

少女は微笑んで斉藤一に包みを差し出した。

「斉藤さんも、いかがですか?」

斉藤一は少女を見て頷くと、いなり寿司を手に取った。

少女は微笑んで斉藤一の様子を見ている。

斉藤一は少女に普通に話し掛ける。

「うまいぞ。」

少女は斉藤一の様子を見ると微笑んで話し掛ける。

「ありがとうございます。嬉しいです。」

斉藤一は少女を見ると黙って頷いた。

沖田総司は少女に微笑んで話し掛ける。

「鈴ちゃん。今日のいなり寿司もとてもおいしいよ。」

少女は微笑んで沖田総司に話し掛ける。

「ありがとうございます。」

沖田総司は笑顔で少女を見ながら、いなり寿司を食べている。

斉藤一は沖田総司と少女の様子を黙って見ている。

沖田総司は微笑んで少女に話し掛ける。

「鈴ちゃん。次は花を見に行こうね。いろいろと教えてね。」

少女は微笑んで沖田総司を見ながら頷いた。

沖田総司は微笑んで斉藤一に話し掛ける。

「斉藤さんも一緒ですよ。」

斉藤一は沖田総司を見ると黙って頷いた。

少女が少し眠そうなしぐさをする時がある。

沖田総司は少女に心配そうに話し掛ける。

「鈴ちゃん? 大丈夫?」

少女は微笑んで沖田総司を見ながら話し掛ける。

「大丈夫です。」

沖田総司は心配そうに少女に話し掛ける。

「鈴ちゃん。辛いなら無理しないで。寝ても良いよ。お寺の人に話しをしてくるよ。」

少女は微笑んで沖田総司を見ながら話し掛ける。

「辛くなったら寝ます。でも、今は大丈夫です。総司さんとたくさんお話しがしたいです。」

沖田総司は心配そうに少女に話し掛ける。

「辛くなったら無理しないで言ってね。」

少女は沖田総司を見ると微笑んで頷いた。



沖田総司は少女の様子を気遣いながらも、おいしそうにいなり寿司を食べている。

少女が再び眠そうなしぐさをした。

沖田総司は心配そうに少女に話し掛ける。

「鈴ちゃん。調子が悪いの?」

少女は微笑んで沖田総司に話し掛ける。

「ご心配をお掛けしてすいません。大丈夫です。」

沖田総司は心配そうに少女に話し掛ける。

「でも、眠そうに見えるよ。体の調子は大丈夫?」

少女は微笑んで沖田総司に話し掛ける。

「今日はいつもより早く目が覚めてしまいました。眠いのはそのせいです。体調は悪くないです。心配しないでください。」

沖田総司は心配そうに少女に話し掛ける。

「もしかして、いなり寿司を作るために朝早く起きたの?」

少女は微笑んで沖田総司に話し掛ける。

「違います。」

沖田総司は心配そうに少女を見ている。

少女は沖田総司に微笑んで話し掛ける。

「総司さん。そんなに心配しないでください。私は大丈夫です。」

沖田総司は心配そうに少女を見ながら話し出す。

「鈴ちゃん。無理しないでね。」

少女は微笑んで沖田総司を見ながら頷いた。



帰る時間になった。

沖田総司は少女を家に送ってから屯所へ戻ることにした。

斉藤一は沖田総司より先に屯所へ戻っていった。



沖田総司は屯所に戻ってくると、直ぐに斉藤一のもとを訪れた。

斉藤一は沖田総司を黙って見た。

沖田総司は心配そうに斉藤一に話し出す。

「鈴ちゃんが早く起きたのは、いなり寿司を作るためですよね。」

斉藤一は沖田総司を見ながら普通に話し掛ける。

「総司はいつもたくさん食べるからな。美鈴さんはいなり寿司を作るために早く起きたと思う。」

沖田総司は微笑んで斉藤一に話し出す。

「鈴ちゃんの買ってきてくれる物や、作ってくれる物は、いつもおいしいです。おいしいからいつも思い切り食べてしまいます。」

斉藤一は沖田総司に普通に話し掛ける。

「美鈴さんは総司の事を考えて選んだり、作ったりしているからな。総司が気に入るのも当然だよな。」

沖田総司は心配そうに斉藤一に話し掛ける。

「斉藤さん。鈴ちゃんは、何か心配な事でもあるのでしょうか?」

斉藤一は沖田総司を見てはいるが返事はない。

沖田総司は心配そうに斉藤一に話し掛ける。

「鈴ちゃんが心配そうな表情になる時があります。」

斉藤一は沖田総司を見てはいるが返事はない。

沖田総司は心配そうに斉藤一に話し掛ける。

「鈴ちゃんの心配な事って何でしょうか?」

斉藤一は沖田総司を見ながら普通に返事をする。

「総司の事だろ。」

沖田総司は少し不機嫌そうに斉藤一を見た。

斉藤一は沖田総司を見ながら普通に話し掛ける。

「質問されたから思った事を言っただけだ。違う答えが良かったのか? 総司の希望の答えではなくて悪かったな。」

沖田総司は申し訳なさそうな表情で斉藤一に話し掛ける。

「斉藤さん。すいませんでした。鈴ちゃんの心配な事といえば、やはり私の事ですよね。」

斉藤一は沖田総司に普通に話し掛ける。

「総司が笑顔でいれば、美鈴さんも嬉しいし安心すると思う。」

沖田総司は斉藤一に心配そうに話し掛ける。

「それだけで良いのですか?」

斉藤一は沖田総司を見ながら黙って頷いた。

沖田総司は微笑んで斉藤一に話し出す。

「斉藤さん。ありがとうございます。」

斉藤一は沖田総司を見ながら黙って頷いた。

沖田総司は微笑んで斉藤一に話し掛ける。

「いつもは無理ですが、私も鈴ちゃんの好きなお菓子を買いたいと思います。」

斉藤一は沖田総司を見ると黙って頷いた。



沖田総司は土方歳三のもとを訪れた。

土方歳三は沖田総司を普通の表情で見た。

沖田総司は土方歳三に微笑んで話し掛ける。

「土方さん。百人一首のかるたを貸してください。」

土方歳三は沖田総司に不思議そうに話し掛ける。

「子供達とかるたでもやるのか?」

沖田総司は微笑んで土方歳三に話し掛ける。

「違います。歌の勉強です。」

土方歳三は微笑みながら、沖田総司に百人一首のかるたを手渡した。

沖田総司はかるたを受取ると、真剣な表情で一枚ずつ見始めた。

土方歳三は微笑んで沖田総司の様子を見ながら話し掛ける。

「今日は百人一首の勉強をするのか? 他の歌も知りたければ教えてやるぞ。」

沖田総司は微笑んで土方歳三に話し掛ける。

「春の初めの頃の歌か、春の雪の歌を探しています。」

土方歳三は微笑んで沖田総司に話し掛ける。

「何首もあるぞ。」

沖田総司は笑顔で土方歳三を見ながら話し出す。

「本当ですか?!」

土方歳三は微笑んで沖田総司を見ながら頷いた。

沖田総司は笑顔で土方歳三に近寄ってきた。

土方歳三は微笑んで沖田総司を見ている。

沖田総司は笑顔で土方歳三に話し出す。

「教えてください!」

土方歳三は苦笑して沖田総司を見ながら頷いた。



そんなある日の事。

今日は朝から少し寒い。

沖田総司が微笑んで斉藤一に話し掛ける。

「斉藤さん。寄る所があるので少し遅れます。鈴ちゃんを迎えに行ってもらっても良いですか?」

斉藤一は沖田総司を見ると黙って頷いた。

沖田総司は微笑んで斉藤一に話し掛ける。

「先に二人で出掛けてください。私は後から行きます。斉藤さん。よろしくお願いします。」

斉藤一は沖田総司に普通に話し掛ける。

「早く来いよ。」

沖田総司は微笑んで斉藤一を見ると頷いた。

斉藤一は沖田総司の返事を確認すると、少女の家に出掛けて行った。

沖田総司も屯所から急いで居なくなった。



沖田総司は野原のような場所にやってきた。

灰色の空が広がっている。

沖田総司は空を見上げると心配そうに呟いた。

「今日は寒いから、もしかして雪が降ったりするのかな?」

視線を元に戻して辺りを見回すと、笑顔で声を出した。

「さぁ〜! 始めるぞ〜!」

沖田総司は笑顔で歩き出した。



斉藤一が少女の家にやってきた。

少女は心配そうに斉藤一を見た。

斉藤一は少女に普通に話し掛ける。

「総司は少し遅れるそうだ。先に行くぞ。」

少女は安心した表情で斉藤一を見ながら頷いた。

斉藤一と少女は一緒に出掛けて行った。



沖田総司は辺りを見回しながら何かを探している。

しかし、目的の物が見つからない。

沖田総司は辺りを見回しながら呟いた。

「春の花が見つからない。まだ早いのかな?」

暖かい日も増えてきたが、春の花がたくさん咲く季節には少し早い。

辺りには、わずかではあるが、春の花が咲き始めてきている。

沖田総司は辺りを見回すと明るく話し出す。

「もし、良い春の花が見つからなければ、冬の花にしよう。」

灰色の空が重そうに広がっている。

沖田総司は空を見上げながら、心配そうに呟いた。

「早く春の花を見つけて鈴ちゃんの所に行かないと。きっと心配して待っているよね。」

辺りが少しずつ寒くなってきている。

沖田総司は辺りを見回しながら、再び春の花を探し始めた。



少女は出入り口を心配そうに見ている。

斉藤一はいつもと同じ表情のまま、少女の様子を黙って見ている。

少女は斉藤一を見ると、微笑んで話し出す。

「お話しをしないで余所見をしていました。すいません。」

斉藤一は少女を見ると黙って首を横に振った。

少女は微笑んで斉藤一に話し掛ける。

「今日は寒いですね。」

斉藤一は少女を見ながら普通に話し掛ける。

「雪が降るかもしれないな。」

少女は心配そうに出入り口を見ながら、斉藤一に話し出す。

「総司さんは大丈夫でしょうか?」

斉藤一は少女を見ながら普通に話し掛ける。

「総司は雪が降っても気にする奴じゃない。心配するな。」

少女は斉藤一を見ると、心配そうに話し出す。

「雪の降る中に居たら総司さんが風邪をひくかもしれません。」

斉藤一は少女を見ながら普通に話し掛ける。

「総司が心配か?」

少女は斉藤一を見ながら、心配そうに頷いた。

斉藤一は少女を見ながら普通に話し掛ける。

「何か心配な事でもあるのか?」

少女は心配そうに頷くと、斉藤一に話し出す。

「お仕事は無事に終わったのかな、元気に過ごされているのかな、などと毎日考えてしまいます。」

斉藤一は少女を黙って見ている。

少女は微笑んで斉藤一に話し出す。

「総司さんはとても強い方なんですよね。私が心配しなくても総司さんは大丈夫ですよね。」

斉藤一は少女に普通に話し掛ける。

「総司は強い。だから、あまり心配するな。美鈴さんがそんな顔をしていると、総司が心配するぞ。」

少女は心配そうに斉藤一に話し掛ける。

「総司さんが誰かに、私と逢っていても楽しくないとか、気を遣ってお休み出来ないとか、話しをしている事はないですか?」

斉藤一は少女を見ながら普通に話し掛ける。

「そんな事は一言も言っていない。安心しろ。」

少女は微笑んで斉藤一を見ながら話し掛ける。

「安心しました。」

斉藤一は少女を見ながら黙って頷いた。



沖田総司は春の花を探していると、地面に白い物が落ちてきた。

空を見上げると、雪が僅かだが降っている。

沖田総司は心配そうに空を見上げながら呟いた。

「鈴ちゃんと斉藤さんの所に早く行かないと。二人とも心配しているよね。」

寂しそうな表情のまま、二人の待つ場所に向かおうとした。

すると、雪のちらつく中に黄色い花の咲いている姿が目に留まった。

沖田総司は嬉しそうに花を見ながら声を出した。

「菜の花が咲いている!」

春の雪が早く咲き始めた菜の花を白く覆ってゆく。

沖田総司はしゃがみ込むと微笑んで菜の花を摘み始めた。

春の雪は沖田総司にも菜の花にも僅かずつだが降ってくる。

沖田総司は菜の花を摘み終わった。



沖田総司は僅かに降る雪の中を、斉藤一と少女の居る寺へと急いで向かっている。



少女が外を見ながら、心配そうに斉藤一に話し掛ける。

「斉藤さん。雪が降っています。」

斉藤一も外を見た。

少女は心配そうに斉藤一に話し掛ける。

「総司さん。遅いです。大丈夫でしょうか?」

斉藤一は少女を見ながら普通に話し掛ける。

「もう少ししたら来るはずだ。心配するな。」

少女は心配そうに斉藤一を見ながら小さく頷いた。



沖田総司が笑顔で寺の中に入ってきた。

斉藤一と少女は同時に沖田総司を見た。

沖田総司は二人に笑顔で話し出す。

「遅くなりました!」

少女は心配そうに沖田総司に近づいてきた。

沖田総司は微笑んで少女に話し掛ける。

「鈴ちゃん。遅くなってごめんね。」

少女は心配そうに沖田総司に話し掛ける。

「総司さん。雪で濡れています。大丈夫ですか?」

沖田総司は微笑んで少女に話し掛ける。

「大丈夫だよ。」

少女は心配そうに沖田総司に話し掛ける。

「濡れたままだと風邪をひきます。」

沖田総司は微笑んで少女に話し掛ける。

「これくらい大丈夫だよ。」

少女は心配そうに沖田総司を見ている。

沖田総司は微笑んで少女に菜の花と文を差し出した。

少女は菜の花と文を沖田総司から不思議そうに受取った。

沖田総司は少女に微笑んで話し掛ける。

「鈴ちゃんにあげる。文も見て。」

少女は菜の花を見ながら、沖田総司に心配そうに話し出す。

「菜の花の季節には少し早いですよね。菜の花を探すのは大変だったのではないですか?」

沖田総司は微笑んで少女に話し掛ける。

「偶然に見つけたんだ。」

少女は菜の花を抱えたまま文を読んでいる。

沖田総司は微笑みながら少女を見ている。

少女は文を読み終わると、菜の花を抱えたまま沖田総司をじっと見た。

沖田総司は恥ずかしそうに少女に話し出す。

「この歌の通りに若菜を摘んでも鈴ちゃんが困ると思ったんだ。だから、春の花を見つけようと思ったんだ。そうしたら、雪が降ってくるし驚いたよ。花は菜の花だけど、歌の内容とだいだい同じになっているよね。」

少女は菜の花を抱いたまま、下を向いて黙ってしまった。

沖田総司は心配そうに少女に話し掛ける。

「鈴ちゃん。大丈夫? 私は何か変な事を言ったのかな? ごめんね。」

少女は菜の花を抱いて下を向いたまま、小さく首を横に振った。

沖田総司は少女を心配そうに抱き寄せた。

少女は沖田総司の腕の中で静かに泣き始めた。

沖田総司は心配そうに少女を抱いている。

少女は沖田総司の腕の中で、静かに泣きながら話し出す。

「私のために雪が降っているのに菜の花を探してくれたんですね。総司さんは忙しい方なのに無理をさせてしまいました。ごめんなさい。」

沖田総司は少女を抱きながら、微笑んで話し掛ける。

「いつも菓子などを作ってくれたり、買ってきてくれたりするお礼だよ。」

少女は沖田総司の腕の中で静かに泣いている。

沖田総司は少女を優しく抱いている。



暫くすると少女が泣き止んだ。

沖田総司は少女を優しく抱いている。

少女は沖田総司の腕の中で微笑んで話し出す。

「総司さん。ありがとうございます。嬉しいです。」

沖田総司は少女を優しく離した。

少女は微笑んで沖田総司を見た。

沖田総司は少女を微笑んで見ている。

少女は微笑んで菜の花と文を見ている。



斉藤一は沖田総司より先に屯所へと戻っていった。

沖田総司は少女を家に送ってから屯所に戻る事にした。



沖田総司は屯所に戻ってくると、直ぐに斉藤一のもとを訪れた。

斉藤一は沖田総司を黙って見ている。

沖田総司は斉藤一に微笑んで話し掛ける。

「鈴ちゃんが喜んでいました。斉藤さん。ありがとうございました。」

斉藤一は沖田総司を見ながら黙って頷いた。

沖田総司は何かを思い出した様子で、斉藤一に話し出す。

「あっ! 菓子を買うのを忘れていた!」

斉藤一は沖田総司に普通に話し掛ける。

「次に会う時に買えば良いだろ。」

沖田総司は斉藤一に心配そうに話し掛ける。

「でも、鈴ちゃんが菓子を買ってしまうかも知れません。」

斉藤一は沖田総司に普通に話し掛ける。

「だったら、次に会う時に、総司が菓子を買う日を決める話しをすれば良いだろ。」

沖田総司は微笑んで斉藤一に話し掛ける。

「そうですよね。」

斉藤一は沖田総司を見ながら黙って頷いた。



ここは少女の部屋。

少女は菜の花を微笑んで見ている。

菜の花は綺麗な黄色い花を咲かせている。

少女は微笑んで菜の花を見ながら呟いた。

「君がため 春の野に出でて 若菜つむ わが衣手に 雪はふりつつ。総司さんから頂いたお歌なの。」

菜の花も嬉しそうに咲いているように見える。

少女は微笑んで菜の花を見ながら呟いた。

「ずっとずっと一緒に居たいな。」

菜の花も嬉しそうに少女の話しを聞きながら咲いています。



空から静かに降ってくる春の雪は、直ぐに止んでしまいました。

菜の花を覆っていた雪は、直ぐに解けてしまいました。

たくさんの春の花が咲く季節は、もう直ぐ傍にきています。




*      *      *      *      *      *




ここからは、後書きになります。

「若菜」ですが、「わかな」と読みます。

「早春に芽生えたばかりの、食用になる草の総称。」を表している言葉です。

ただし、「若菜」には、「春の七種をさす言葉。」という意味もあります。

七種をお粥などにして食べる事を宮中でやっています。

厄除けなどの意味があるそうです。

どちらの若菜を採りに行ったとしても、この歌が詠んでいる季節は、「早春」と考えて良いのかなと思いました。

当時は陰暦なので、早春といっても現在の時期と少し違います。

現在の暦にすると二月頃になります。

沖田総司さんが歌の通りに「若菜を採りに行った」という物語を考えると、鈴ちゃんのために採りに行ったと考えると一番しっくりとします。

ただし、この「新撰組異聞」のなかの鈴ちゃんや家の事などを考えると、沖田総司さんが鈴ちゃんのために若菜を採りに行く事は、しないように考えました。

いろいろと考えて、採りに行く物を替えて、物語を考えました。

この物語に登場する歌は、「小倉百人一首 第十五番」、及び、「古今集」からの歌です。

「君がため 春の野に出でて 若菜つむ わが衣手に 雪はふりつつ」

ひらがなの読み方にすると、「きみがため はるののにいでて わかなつむ わがころもでに ゆきはふりつつ」となります。

作者は、「光孝天皇(こうこうてんのう)」です。

歌の意味は、「あなたのために、春の野に出かけて若菜を摘んでいる私の袖に、雪は降り続いていますよ。」となります。

楽しんで頂けると嬉しいです。





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