このページは、2019年3月に保存されたアーカイブです。最新の内容ではない場合がありますのでご注意ください

〜 雪月花 新撰組異聞 編 〜


〜 夏初月 藤波の花は盛りに成りにけり 〜


登場人物。

土方歳三、沖田総司、斉藤一、少女[鈴・美鈴]



「藤波の 花は盛りに 成りにけり 平安の都を 思ほすや君」

「万葉集 第三集 三三〇番」より

作者:大伴四綱(おおとものよつな)



一重桜の花が散り始め、次々に葉桜へと変わり始めた。

今は、八重桜が咲き始めている。

そんな頃の事。



沖田総司と少女は、葉桜になりかけている桜の木の下で、楽しそうに話しをしている。

沖田総司が少女に微笑んで話し掛ける。

「鈴ちゃん。そろそろ藤の花の季節だね。」

少女は沖田総司を見ながら微笑んで頷いた。

沖田総司は微笑んで少女に話し掛ける。

「藤の花が咲いたら一緒に見に行こうね。」

少女は沖田総司を見ながら微笑んで頷いた。



それから何日か過ぎた頃の事。

藤の花が咲き始めた。

沖田総司は少女の家を訪れた。

少女は沖田総司を微笑んで出迎えた。

沖田総司と少女は、楽しそうに話をしながら出掛けて行った。



沖田総司と少女は、藤棚に来ている。

少女は咲き始めたばかりの藤の花を、微笑んで見ている。

沖田総司は少女に微笑んで話し掛ける。

「藤の花の見頃は、もう少し先だね。」

少女は沖田総司を見ながら微笑んで頷いた。

沖田総司は少女に微笑んで話し掛ける。

「鈴ちゃん。楽しい?」

少女は沖田総司を見ながら微笑んで頷いた。

沖田総司は少女を微笑んで見ている。

少女は沖田総司に微笑んで話し掛ける。

「総司さんと一緒に、藤の花を見る事が出来て、嬉しいです。」

沖田総司は少女を微笑んで見ている。

少女は沖田総司に微笑んで話し掛ける。

「藤の花の見頃はまだ先なので、人が少なくてゆっくりと見る事が出来ますね。」

沖田総司は少女を見ながら微笑んで頷いた。

少女は沖田総司に微笑んで話し掛ける。

「総司さん。別の藤棚を見に行きませんか?」

沖田総司は少女を見ながら微笑んで頷いた。

沖田総司と少女は、別な藤棚を見に行った。



少女は楽しそうに藤棚を見ている。

沖田総司は少女の様子を微笑んで見ている。

少女は沖田総司を微笑んで見た。

沖田総司は少女の反対側を見て、ため息を付いている。

少女は沖田総司の様子を不赤そうに見た。

沖田総司は少女を見ると、微笑んで話し掛ける。

「鈴ちゃん。これからどうする?」

少女は沖田総司に申し訳なさそうに話し掛ける。

「総司さんの事を考えずに、私一人で楽しんでしまいました。申し訳ありませんでした。」

沖田総司は少女に心配そうに話し掛ける。

「鈴ちゃん? 何かあったの?」

少女は申し訳なさそうに下を向いてしまった。

沖田総司は少女に心配そうに話し掛ける。

「私も鈴ちゃんと一緒に藤の花を見る事が出来て、とても楽しいよ。」

少女は顔を上げて沖田総司を見ると、微笑んで話し出す。

「藤の花はまだ見頃ではないので、飽きてしまいました。総司さん。どこか別な場所に行きたくなりました。」

沖田総司は少女に心配そうに話し掛ける。

「鈴ちゃん。私は何か変な事をしたのかな?」

少女は沖田総司を見ながら小さく首を横に振った。

沖田総司は少女に心配そうに話し掛ける。

「鈴ちゃん。本当は楽しいのに、飽きたなんて、嘘を付いちゃ駄目だよ。私に気兼ねをする必要はないよ。」

少女は沖田総司を困った表情で見ている。

沖田総司は少女に微笑んで話し掛ける。

「鈴ちゃんが楽しんでいる姿を見ていると、私も楽しくなるんだ。」

少女は沖田総司に微笑んで話し掛ける。

「私も総司さんが楽しんでいるお姿を見ていると、楽しくなります。」

沖田総司は少女に微笑んで話し掛ける。

「私は鈴ちゃんと一緒に藤の花を見たいな。」

少女は沖田総司に困った表情で話し掛ける。

「私は別な所に行きたいです。」

沖田総司は少女に心配そうに話し掛ける。

「私は何か鈴ちゃんを困らせる事を言ったのかな? 教えてくれないかな?」

少女は沖田総司に心配そうに話し掛ける。

「総司さん。楽しいですか?」

沖田総司は少女に微笑んで話し掛ける。

「楽しいよ。」

少女は沖田総司に微笑んで話し掛ける。

「安心しました。」

沖田総司は少女を安心した表情で見た。



沖田総司と少女は、他の場所には行かずに、咲き始めの藤棚の傍で話しを続けている。

沖田総司は少女に楽しそうに話し掛ける。

「鈴ちゃん。藤の花といえば、江戸に美味しいくず餅を食べられる店があるんだ。」

少女は沖田総司を微笑んで見た。

沖田総司は少女に楽しそうに話し掛ける。

「くず餅という名前だけど、葛を使っていないんだよ。」

少女は沖田総司に不思議そうに話し掛ける。

「葛を使わないくず餅ですか?」

沖田総司は少女に楽しそうに話し掛ける。

「そうなんだ。黒蜜をかけて、黄な粉を振りかけて食べるんだ。もちもちとした食感で美味しいんだよ。」

少女は沖田総司に微笑んで話し掛ける。

「総司さんのお話しを聞いて、くず餅を食べたくなりました。」

沖田総司は少女に笑顔で話し掛ける。

「鈴ちゃんにも食べてもらいたいな〜!」

少女は沖田総司を微笑んで見ている。

沖田総司は少女に楽しそうに話し掛ける。

「鈴ちゃんもくず餅を食べたら、きっと美味しいって言うと思うんだ。」

少女は沖田総司を微笑んで見ている。

沖田総司は少女に懐かしそうに話し出す。

「あの頃は楽しかったな。試衛館に居た頃に、くず餅を食べに行ったんだ。藤の花を見に行くと話をして出掛けたけど、その後に食べるくず餅がとても楽しみだったんだ。何度も出掛ける事は出来なかったけれど、とても楽しかったな。」

少女は沖田総司の様子を微笑んで見ている。

沖田総司は藤棚を見上げると、少女に懐かしそうに話し出す。

「あの頃は本当に楽しかったな〜 また食べたいな〜」

少女は沖田総司の様子を寂しそうに見ている。


沖田総司は少女を見ると、心配そうに話し掛ける。

「鈴ちゃん。何かあったの?」

少女は沖田総司に寂しそうに微笑んで話し出す。

「総司さん。ごめんなさい。」

沖田総司は少女に心配そうに話し掛ける。

「なぜ鈴ちゃんが謝るの? 何かあったの?」

少女は沖田総司に寂しそうに話し掛ける。

「私は何も出来ないからです。総司さん。ごめんなさい。」

沖田総司は少女を困った表情で見ている。

少女は沖田総司に申し訳なさそうに話し掛ける。

「私はまた総司さんを困らせてしまいました。」

沖田総司は少女に微笑んで話し掛ける。

「鈴ちゃんが私を困らせた事なんてないよ。安心していいよ。」

少女は沖田総司に微笑んで話し掛ける。

「総司さんのお話しを聞いて、安心しました。」

沖田総司は少女に微笑んで話し掛ける。

「鈴ちゃん。葛餅を食べに行こうか。」

少女は沖田総司を見ながら微笑んで頷いた。

沖田総司と少女は、咲き始めの藤棚を背にしながら、葛餅を食べるために去っていった。



その日の夜の事。

土方歳三と斉藤一の二人は、酒を飲んでいる。

土方歳三が酒を飲みながら藤の花を見た。

斉藤一は藤の花を一瞥しながら酒を飲んでいる。

土方歳三は藤の花を見ながら、呟くように詠い出した。

「藤波の 花は盛りに 成りにけり 平安の都を 思ほすや君」

斉藤一は土方歳三を普通の表情で見た。

土方歳三は酒を飲むと、斉藤一に微笑んで話し掛ける。

「藤の花は、まだ盛りじゃないけど、いいよな。」

斉藤一は土方歳三に普通に話し掛ける。

「平安の都を変えれば、いろいろと使える歌になりますね。」

土方歳三は斉藤一を見ると、微笑んで話し掛ける。

「確かにいろいろと使える歌だな。」

斉藤一は土方歳三を黙って見ている。

土方歳三は斉藤一に微笑んで話し掛ける。

「斉藤はこういう事にも気が回るんだ。さすがだな。」

斉藤一は土方歳三を黙って見ている。

土方歳三は藤の花を見ながら、微笑んで酒を飲んだ。

斉藤一は土方歳三に普通に話し掛ける。

「藤波の 花は盛りに 成りにけり 江戸の都を 思ほすや君」

土方歳三は斉藤一を微笑んで見た。

斉藤一は土方歳三を普通の表情で見ている。

土方歳三は夜空を見てから、藤の花を見た。

斉藤一は土方歳三の様子を黙って見ている。

土方歳三は斉藤一を見ると、普通に話し出す。

「さて、何と答えようかな。」

斉藤一は土方歳三を黙って見ている。

土方歳三は酒を飲むと、斉藤一に静かに話し掛ける。

「思う場所は、ここだな。」

斉藤一は土方歳三を黙って見ている。

土方歳三は斉藤一に微笑んで話し掛ける。

「藤波の 花は盛りに 成りにけり 京の都を 思ほすや君」

斉藤一は土方歳三を黙って見ている。

土方歳三は斉藤一を微笑んで見ている。

斉藤一は土方歳三から藤の花に視線を動かすと、黙って酒を飲み始めた。

土方歳三は斉藤一の様子を見ながら、微笑んで酒を飲み始めた。



土方歳三と斉藤一は、藤の花を見ながら静かに酒を飲んで居る。

少し離れた場所から、沖田総司が隠れるようにして、土方歳三と斉藤一を見ている姿が在る。

土方歳三は沖田総司の様子を一瞥すると、斉藤一を見ながら苦笑して話し出す。

「総司は、さっきから俺達の事を見ているのに、なかなか傍に来ないな。」

斉藤一は沖田総司の方を一瞥すると、土方歳三を見ながら黙って頷いた。

土方歳三は斉藤一に微笑んで話し掛ける。

「全く、総司は何をやっているんだか。」

斉藤一は土方歳三を黙って見ている。

土方歳三は斉藤一に微笑んで話し掛ける。

「俺は先に戻る。後の事は頼むな。」

斉藤一は土方歳三を見ながら黙って頷いた。

土方歳三は静かに立ち上がると、その場から去って行った。



斉藤一は一人で静かに酒を飲み始めた。

沖田総司が斉藤一のもとに向かって歩いてくる気配を感じた。

斉藤一は沖田総司が来る様子を、普通の表情で見た。



沖田総司は斉藤一の前に来ると、微笑んで話し出す。

「斉藤さん。こんばんは。」

斉藤一は沖田総司を見ながら黙って頷いた。

沖田総司は斉藤一に微笑んで話し掛ける。

「先程まで、土方さんと一緒に飲んでいましたよね。」

斉藤一は沖田総司に普通に話し掛ける。

「土方さんなら、さっき帰った。」

沖田総司は斉藤一に微笑んで話し掛ける。

「隣に座っても良いですか?」

斉藤一は沖田総司を見ながら黙って頷いた。

沖田総司は斉藤一の横に座った。

斉藤一は沖田総司が座るのを確認すると、黙って酒を飲み始めた。

沖田総司は斉藤一に寂しそうに話し出す。

「今日、鈴ちゃんと話しをしている時に、悲しい思いをさせてしまいました。私は、また何か変な事を言ってしまったようです。」

斉藤一は沖田総司を黙って見ている。

沖田総司は斉藤一に寂しそうに話し掛ける。

「今日、咲き始めたばかりの藤棚を、鈴ちゃんと一緒に見ていました。鈴ちゃんは楽しんで見ていたのですが、急に飽きたと言いました。普段の鈴ちゃんは、花を見ている時には、飽きたとは言いません。おそらく、私に気を遣ったのだと思います。」

斉藤一は沖田総司に普通に話し掛ける。

「総司は、美鈴さんが悲しい顔をする直前に、何をしていたんだ?」

沖田総司は斉藤一に考え込みながら話し出す。

「藤棚を見ていたら、くず餅の事を思い出しました。鈴ちゃんにも、くず餅を食べてもらいたいと思いました。でも、京ではくず餅は簡単には手に入りません。だから、鈴ちゃんにくず餅を食べてもらう事が出来ないなと思ったら、いろいろな事を考え始めてしまいました。」

斉藤一は沖田総司に普通に話し掛ける。

「総司が考えた事は、他にもあるだろ。」

沖田総司は斉藤一に寂しそうに話し掛ける。

「江戸に居た時に、藤の花を見に出掛けた後に、くず餅を食べた時の話しをしました。」

斉藤一は沖田総司を黙って見ている。

沖田総司は斉藤一に懐かしそうに話し出す。

「藤の花を見た後に食べたくず餅は、美味しかったです。試衛館に居た頃は、私が出掛けたいと話しをして、何人かで出掛けたりもしました。藤の花を見た後には、必ずくず餅を食べました。美味しかったです。楽しかったです。」

斉藤一は沖田総司の話しを聞き終わると、普通に話し出す。

「美鈴さんが今の総司の話を聞いていたら、確かに落ち込むな。」

沖田総司は斉藤一を不安そうに見た。

斉藤一は沖田総司に普通に話し掛ける。

「美鈴さんが楽しんで藤の花を見ている時に、総司は昔の事を考えていたんだろ。しかも、昔の話を懐かしそうに話し始めたんだろ。」

沖田総司は斉藤一に不思議そうに話し掛ける。

「鈴ちゃんは、私の話しを楽しそうに聞いてくれました。」

斉藤一は沖田総司に普通に話し掛ける。

「懐かしそうに、江戸に居た頃は楽しかっただの、みんなで出掛けて楽しかっただの、くず餅は美味しいだの、と話しをしていたんだろ。」

沖田総司は斉藤一を不思議そうに見ている。

斉藤一は沖田総司に普通に話し掛ける。

「京に居る時より江戸に居る時が楽しかったと、懐かしそうに話しをする総司の横に居たら、誰だって悲しくなるな。」

沖田総司は斉藤一に不安そうに話し出す。

「私は江戸に居た頃に戻りたかった訳ではありません。鈴ちゃんと一緒に居ると、とても楽しいです。私は、鈴ちゃんに楽しんでもらいたかっただけなんです。」

斉藤一は沖田総司に普通に話し掛ける。

「それで、総司は美鈴さんと一緒に、江戸に行って、藤の花を見て、くず餅を食べるつもりなのか?」

沖田総司は斉藤一を困った様子で見ている。

斉藤一は沖田総司を黙って見ている。

沖田総司は下を向くと、黙ってしまった。

斉藤一は沖田総司に普通に話し掛ける。

「藤波の 花は盛りに 成りにけり 平安の都を 思ほすや君」

沖田総司は顔を上げると、斉藤一を不思議そうに見た。

斉藤一は沖田総司に普通に話し掛ける。

「今の歌を詠んだ後に、土方さんに言い換えて詠ったんだ。」

沖田総司は斉藤一を不思議そうに見ている。

斉藤一は沖田総司に普通に話し掛ける。

「藤波の 花は盛りに 成りにけり 江戸の都を 思ほすや君」

沖田総司は斉藤一に確認するように話し出す。

「藤波の 花は盛りに 成りにけり 江戸の都を 思ほすや君」

斉藤一は沖田総司を見ながら黙って頷いた。

沖田総司は斉藤一に確認するよう話し掛ける。

「土方さんは何と言い換えたのですか?」

斉藤一は沖田総司に普通に話し掛ける。

「総司だったら、何と言い換えるんだ?」

沖田総司は斉藤一を見ていたが、考え込み始めた。

斉藤一は沖田総司に普通に話し掛ける。

「総司の答えは?」

沖田総司は藤の花を一瞥すると、斉藤一に微笑んで話し出す。

「私の思う場所は江戸ではありません。京の町です。」

斉藤一は沖田総司に普通に話し掛ける。

「美鈴さんに早く会って、元気付けてやれよ。」

沖田総司は斉藤一に微笑んで話し出す。

「はい。」

斉藤一は沖田総司を見ると、黙って酒を飲んだ。

沖田総司は斉藤一に微笑んで話し掛ける。

「私も少しだけ酒を飲んでも良いですか?」

斉藤一は酒を飲み終わると、沖田総司に普通に話し掛ける。

「今日は止めておけ。」

沖田総司は斉藤一を見ながら微笑んで頷いた。

沖田総司と斉藤一の二人は、月夜に咲いている藤の花を見ている。



それから数日後の事。

藤の花が綺麗に咲いている。

沖田総司は少女のもとを心配そうに訪れた。

少女は包みを持って現れると、沖田総司に微笑んで話し掛ける。

「総司さん。こんにちは。」

沖田総司は少女に微笑んで話し掛ける。

「鈴ちゃん。その包みを持って出掛けるの?」

少女は沖田総司を見ながら微笑んで頷いた。

沖田総司は少女に微笑んで話し掛ける。

「鈴ちゃん。包みを持つよ。」

少女は沖田総司に微笑んで話し掛ける。

「ありがとうございます。」

沖田総司は少女から包みを受取ると、微笑んで話し掛ける。

「出掛けようか。」

少女は沖田総司を見ながら微笑んで頷いた。

沖田総司と少女は、一緒に出掛けて行った。



沖田総司と少女は藤棚の下に居る。

藤の花が見頃になっているため、辺りには人がたくさん居る。

沖田総司は少女と離れないように、辺りに気を配りながら歩いている。

少女が沖田総司に微笑んで話し掛ける。

「総司さん。藤の花はもう良いです。どこか別な場所に行きませんか?」

沖田総司は少女に心配そうに話し掛ける。

「疲れた?」

少女は沖田総司を見ながら微笑んで頷いた。

沖田総司は少女に微笑んで話し掛ける。

「確かに人が多いと疲れるよね。どこか別の場所に行って、休もうね。」

少女は沖田総司を見ながら微笑んで頷いた。



沖田総司と少女は、藤棚から少し離れた場所にやってきた。

藤の花の咲いている場所に人が集まっているため、辺りには僅かな人しか居ない。

沖田総司は少女に心配そうに話し掛ける。

「鈴ちゃん。今は藤の花の見頃だよね。本当は藤の花が見たいよね。気を遣わせてしまって、ごめんね。」

少女は沖田総司に微笑んで話し掛ける。

「私は藤の花より、総司さんが楽しんでいるお姿を見たいです。」

沖田総司は少女に包みを見せながら、微笑んで話し掛ける。

「鈴ちゃん。この包みは何?」

少女は沖田総司に微笑んで話し掛ける。

「葛餅です。甘い物がお好きな方と一緒に食べてください。」

沖田総司は少女と包みを不思議そうに見た。

少女は沖田総司に微笑んで話し掛ける。

「江戸のくず餅を知っている方に、お話しを聞きました。こちらでもくず餅が手に入らないかと思って探してみました。でも、見つかりませんでした。代わりに美味しい葛餅を売っているお店を探して買いました。味は違いますが、親しい方達と江戸の話しをしながら食べてください。」

沖田総司は少女に微笑んで話し掛ける。

「だったら、鈴ちゃんと一緒に食べたいな。」

少女は沖田総司に微笑んで話し掛ける。

「私は江戸の事はわかりません。くず餅も食べた事がありません。知らない事ばかりです。お話しのお相手にはなれません。聞くだけになってしまいます。」

沖田総司は少女を優しく抱き寄せると、寂しそうに話し掛ける。

「鈴ちゃん。そんなに気を遣わなくても良いよ。私がもっと気を配れば良かったね。ごめんね。」

少女は沖田総司の腕の中で微笑んで話し掛ける。

「私は気にしていません。大丈夫です。」

沖田総司は少女を抱きながら、寂しそうに話し掛ける。

「鈴ちゃん。私は、鈴ちゃんが江戸の藤の花を見たり、くず餅を美味しそうに食べていたり、笑顔で話をしている姿を、思い浮かべていたんだ。でも、無理な事だと気が付いて、寂しいなと思ったんだ。だから、ため息を付いてしまったんだ。」

少女は沖田総司の腕の中で、黙って話を聞いている。

沖田総司は少女を抱きながら、寂しそうに話し掛ける。

「私が関係のない事を考えてしまったから、鈴ちゃんに寂しい思いをさせてしまったね。」

少女は沖田総司の腕の中で黙っている。

沖田総司は少女を抱きながら、微笑んで話し掛ける。

「私は鈴ちゃんと葛餅が食べたいな。」

少女は沖田総司の腕の中で微笑んで話し掛ける。

「私も総司さんと葛餅が食べたいです。でも、その葛餅は江戸の話しをしながら、みなさんで食べてください。」

沖田総司は少女を抱きながら、微笑んで話し掛ける。

「鈴ちゃん。ありがとう。でも、鈴ちゃんが選んでくれた葛餅を、一緒に食べたいな。」

少女は沖田総司の腕の中で微笑んでいる。

沖田総司は少女をゆっくりと離すと、微笑んで話し掛ける。

「これから一緒に葛餅を食べないか?」

少女は沖田総司を見ながら微笑んで頷いた。



沖田総司と少女は、楽しそうに話しをしながら、葛餅を食べ始めた。



土方歳三と斉藤一は、藤の花を見ている。

土方歳三が藤の花を見ながら、斉藤一に微笑んで呟いた。

「藤波の 花は盛りに 成りにけり 鈴の都を 思ほすや君」

斉藤一は土方歳三を普通の表情で見た。

土方歳三は斉藤一を見ると、微笑んで話し掛ける。

「総司にとっては、その名前が一番良い場所なかと思って、詠んでみたんだ。」

斉藤一は土方歳三を黙って見ている。

土方歳三が斉藤一に微笑んで話し掛ける。

「間違えたな。藤波の 花は盛りに 成りにけり 都の鈴を 思ほすや君。」

斉藤一は土方歳三を見ながら黙って頷いた。



藤の花が咲いています。

藤の花が咲くとどの場所を思い出しますか?




*      *      *      *      *      *




ここからは後書きになります。

「葛餅」ですが、藤の花が咲いている時期に葛餅というと、時期的に少し早いかなと感じる頃でしょうか?

江戸の「くず餅」ですが、沖田総司さんが鈴ちゃんに話しをしているお店は、江戸時代に開業してします。

そして、現在(2006年5月)も、くず餅を売っています。

「葛粉」を使っていないので、「くず餅」という字を使っているそうです。

藤の花の季節になると、そのお店はとても込んでいます。

現在でも、常温で数日程しかもちません。

そのため、遠い場所に出店はしていないようです。

当時の京都に住んでいる人が、くず餅を食べようとすると、早馬などを使って運んで食べるという、凄い事をしないと食べられない事になります。

そうすると、鈴ちゃんがくず餅を手に入れるのは、かなり難しい事になります。

沖田総司さんなら、本人が馬に乗る必要はありませんが、無理をすれば、手に入るかもという感じだったと思います。

物語のなかで、地名をいろいろと言い換えて歌を詠んでいます。

「江戸の都」とは普通は言いません。

この場合は、歌の文字数の関係で「江戸の都」と言っています、

「江戸の町」でも良いのですが、この物語の中では、文字数を合わせて詠みやすくしたと思ってください。

この物語に登場する歌は万葉集です。

「万葉集 第三集 三三〇番」の歌です。

作者は、「大伴四綱(おおとものよつな)」です。

「藤波の 花は盛りに 成りにけり 平安の都を 思ほすや君」

ひらがなの読み方は、「ふじなみの はなはさかりに なりにけり ならのみやこを おもほすやきみ」となります。

原文は、「藤浪之 花者盛尓 成来 平城京乎 御念八君」です。

意味は、「藤の花がいっぱい咲きましたね。これを見ていると奈良の都のことを思ってしまいますでしょ。」となるそうです。

大宰府で、大伴四綱が大伴旅人に贈った歌だそうです。

「夏初月」ですが、「なつはづき」と読みます。

「陰暦四月の異称」です。

楽しんで頂けると嬉しいです。





←前            目次            次→


このページは、2019年3月に保存されたアーカイブです。最新の内容ではない場合がありますのでご注意ください