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〜 雪月花 新撰組異聞 編 〜


〜 紫陽花迷路 〜


〜 改訂版 〜


登場人物

沖田総司、斉藤一、男の子



「言問わぬ 木すら紫陽花 諸弟らが 練の村戸に あざむけかえり」

「万葉集 第四巻 七七三番」より

作者:大伴家持(おおとものやかもち)



「紫陽花の 八重咲く如く 弥つ代にを いませわが背子 見つつ思はぬ」

「万葉集 第二十巻 四四四八番」より

作者:橘諸兄(たちばなのもろえ)



ここは、京の町。



今は紫陽花の咲く頃。



曇り空や雨の降る日が続いている。



ここは、辺り一面に色とりどりの紫陽花が咲く場所。



沖田総司は微笑んで来た。

斉藤一は普通に来た。



沖田総司と斉藤一は、色とりどりの紫陽花に包まれた。



沖田総司は斉藤一に笑顔で話し出す。

「斉藤さん! 綺麗ですね!」

斉藤一は沖田総司に普通の表情で頷いた。

沖田総司は斉藤一に苦笑しながら話し出す。

「斉藤さん。もっと感動してください。」

斉藤一は沖田総司に普通に話し出す。

「綺麗だから同意した。総司は今の俺の返事が不服なのか?」

沖田総司は斉藤一に苦笑しながら話し出す。

「不服ではありません。」

斉藤一は沖田総司を普通の表情で見た。

沖田総司は斉藤一を苦笑しながら見た。

斉藤一は紫陽花を普通の表情で見た。

沖田総司は斉藤一を苦笑しながら見ている。

斉藤一は紫陽花を普通の表情で見ている。

沖田総司は斉藤一を真剣な表情で見た。

斉藤一は沖田総司を見ると、普通に話し出す。

「総司。俺に話か相談があるのか?」

沖田総司は斉藤一を笑顔で見た。

斉藤一は沖田総司を普通の表情で見た。

沖田総司は斉藤一に笑顔で話し出す。

「斉藤さんが元気になって良かったです!」

斉藤一は沖田総司に普通に話し出す。

「総司はいつの出来事について話しているんだ?」

沖田総司は斉藤一に笑顔で話し出す。

「いろいろです!」

斉藤一は沖田総司に普通に話し出す。

「俺が何度も体調不良や気持ちが落ち込むなどが起きたように聞こえる。総司。誤解を招く話をするな。」

沖田総司は斉藤一に笑顔で話し出す。

「斉藤さんの元気な姿を見ていると安心します!」

斉藤一は沖田総司を普通の表情で見た。

沖田総司は斉藤一を笑顔で見た。

斉藤一は沖田総司に普通に話し出す。

「あの時はいろいろと助かった。」

沖田総司は斉藤一を驚いた表情で見た。

斉藤一は沖田総司を普通の表情で見た。

沖田総司は斉藤一に嬉しそうに話し出す。

「斉藤さんに感謝されました〜!! とても嬉しいです〜!!」

斉藤一は沖田総司に普通に話し出す。

「大騒ぎする程に嬉しいのか?」

沖田総司は斉藤一に嬉しそうに話し出す。

「嬉しいです!! 全くと言って良いほど、人を褒めず、礼を言わない、斉藤さんが、私を褒めてくれました!! 話す間にも嬉しさが増していきます!!」

斉藤一は沖田総司に普通に話し出す。

「俺は総司を褒めた覚えは無い。」

沖田総司は斉藤一を嬉しそうに見ている。

斉藤一は沖田総司に普通に話し出す。

「総司は、あの程度の内容を話すだけで、物凄く嬉しくなるのか?」

沖田総司は斉藤一に物凄く嬉しそうに話し出す。

「はい!! 任務以外で斉藤さんに感謝されるのは、全くと言って良いほどありません!! 再び感謝されるように、更に努力します!!」

斉藤一は沖田総司に普通に話し出す。

「総司。俺に再び調子が悪くなって欲しいらしいな。」

沖田総司は斉藤一に慌てた様子で話し出す。

「私は斉藤さんに元気で過ごして欲しいです! 誤解を招く言い方をして申し訳ありませんでした!」

斉藤一は沖田総司を普通の表情で見た。

沖田総司は斉藤一を心配そうに見た。

斉藤一は紫陽花を普通の表情で見た。

沖田総司は寂しそうに下を向いた。

斉藤一は紫陽花を見ながら、沖田総司に普通に話し出す。

「紫陽花もたくさん種類があるな。」

沖田総司は斉藤一を不思議そうに見た。

斉藤一は沖田総司を普通の表情で見た。

沖田総司は斉藤一を微笑んで見た。

斉藤一は沖田総司を普通の表情で見ている。

沖田総司は紫陽花を微笑んで見た。

斉藤一は沖田総司を普通の表情で見ている。

沖田総司は斉藤一を見ると、微笑んで話し出す。

「斉藤さんの言う通り、紫陽花はたくさんの種類がありますね。」

斉藤一は沖田総司に普通の表情で頷いた。

沖田総司は斉藤一を微笑んで見た。

斉藤一は沖田総司を普通の表情で見た。

沖田総司は斉藤一に楽しそうに話し出す。

「斉藤さん! 紫陽花がたくさん咲く中に居ると、紫陽花の迷路に居るみたいですね!」

斉藤一は沖田総司に普通の表情で頷いた。

沖田総司は斉藤一に嬉しそうに話し出す。

「斉藤さんも私と同じく感じたのですね! 嬉しいです!」

斉藤一は沖田総司に普通に話し出す。

「総司は紫陽花の迷路の中で直ぐに迷子になりそうだ。更に、総司は紫陽花の迷路の中で迷子になったために、不安になって泣きそうだ。」

沖田総司は斉藤一にふてくされた様子で話し出す。

「私は迷路のような所で何度も斬り合いをしましたが、迷わずに戻っています! 私は大人です! 迷子になっても不安になって泣きません!」

斉藤一は沖田総司に普通に話し出す。

「刀を持つ時や斬り合いの時の総司は、様々な状況を瞬時に把握して、的確な判断や最善の判断が出来る。斬り合いや危険と関係の無い時の総司は、後先を考えない言動を頻繁にとる。同一人物とは思えない程の違いがある。この場所は、斬り合いなどの危険が起きる気配が無い。以上の状況から、総司は帰るまでに絶対に迷子になる。」

沖田総司は斉藤一に苦笑しながら話し出す。

「斉藤さん。私はそれ程に酷い状態で過ごしていません。もう少しだけ良い表現をしてください。」

斉藤一は沖田総司に普通に話し出す。

「俺は事実を言っただけだ。総司は俺の表現では不服なんだ。仕方が無い、今回は総司の望みを受けて、更に正確に言う。」

沖田総司は斉藤一に苦笑しながら話し出す。

「斉藤さん。私は・・・」



男の子の大きめの泣き声が聞こえた。



斉藤一は男の子の泣き声が聞こえる方向を普通の表情で見た。

沖田総司は話しを止めると、男の子の泣き声が聞こえる方向を普通の表情で見た。



沖田総司と斉藤一の視線の先に、男の子が一人で泣く姿が見えた。



沖田総司は斉藤一を普通の表情で見た。

斉藤一は沖田総司を見ると、普通の表情で頷いた。



沖田総司は普通に歩きだした。

斉藤一も普通に歩き出した。



それから僅かに後の事。



ここは、辺り一面に色とりどりの紫陽花が咲く場所。



男の子が大きめの声で泣いている。



沖田総司は普通に来た。

斉藤一も普通に来た。



男の子は大きめの声で泣いている。

沖田総司は男の子に心配そうに話し出す。

「怪我をしたのかな?」

男の子は泣きながら沖田総司を見ると、首を小さく横に振った。

沖田総司は男の子に心配そうに話し出す。

「泣いている理由を教えてくれるかな?」

男の子は沖田総司に泣きながら話し出す。

「紫陽花の咲く中から外へ出る道が分からない。家に帰れない。」

沖田総司は斉藤一を見ると、微笑んで話し出す。

「斉藤さん。この子を外に連れて行きます。」

斉藤一は沖田総司に普通に話し出す。

「一緒に行く。」

沖田総司は斉藤一に微笑んで話し出す。

「私一人で大丈夫です。斉藤さんは紫陽花をゆっくりと見ていてください。」

斉藤一は沖田総司を普通の表情で見た。

沖田総司は男の子を見ると、微笑んで話し出す。

「男の子がいつまでも泣いていては駄目だろ。紫陽花の咲く中から外に出るまで一緒に行くから、早く泣き止むんだ。」

男の子は泣くのを我慢しながら、沖田総司に頷いた。

沖田総司は男の子の手を微笑んで取った。

男の子は泣くのを我慢しながら、沖田総司の手を握った。



沖田総司は男の子と手を繋ぎながら、微笑んで歩き出した。

男の子は沖田総司と手を繋ぎながら、泣くのを我慢して歩き出した。



斉藤一は沖田総司と男の子を普通の表情で見た。



それから僅かに後の事。



ここは、辺り一面に色とりどりの紫陽花が咲く場所。



沖田総司は男の子と手を繋ぎながら、微笑んで来た。

男の子は沖田総司と手を繋ぎながら、普通に来た。



沖田総司は男の子の手を放すと、男の子に微笑んで話し出す。

「男の子は簡単に諦めたら駄目だぞ。男の子は簡単に泣いては駄目だぞ。」

男の子は沖田総司に微笑んで頷いた。

沖田総司は男の子を微笑んで見た。

男の子は沖田総司に笑顔で話し出す。

「お兄ちゃん! ありがとう!」

沖田総司は男の子に微笑んで頷いた。



男の子は元気良く走り出した。



沖田総司は男の子を微笑んで見た。



男の子の姿は見えなくなった。



沖田総司は辺りを見ると、微笑んで呟いた。

「斉藤さんの元に早く戻ろう。」



沖田総司は微笑んで歩き出した。



それから少し後の事。



ここは、辺り一面に色とりどりの紫陽花が咲く場所。



沖田総司は困惑した様子で歩いている。



沖田総司は立ち止まると、辺りを困惑した様子で見た。



紫陽花は曇り空の下で綺麗な姿で咲いている。



沖田総司は辺りを見ながら、困惑した様子で呟いた。

「先程も通った道に感じる。」



沖田総司は辺りを見ながら、不安そうに呟いた。

「全て同じ景色にしか見えない。斉藤さんは私がこの場所に居るのを知る訳がないよね。恥ずかしいけれど、大きな声を出して、斉藤さんを呼ぼうかな。」



沖田総司は辺りを不安そうに見た。



斉藤一の姿は見えない。



沖田総司は辺りを見ながら、大きな声を出した。

「さ・・・!!」



斉藤一の普通の声が、沖田総司の近くから聞こえてきた。

「総司。何をしているんだ?」



沖田総司は大きな声を出すのを止めると、斉藤一の声が聞こえた方向を不安そうな嬉しそうな表情で見た。



斉藤一は沖田総司を普通の表情で見ている。

斉藤一の傍には、青色の紫陽花がたくさん咲いている。



斉藤一は沖田総司に普通に話し出す。

「やはりこの場所に居たな。」



沖田総司は斉藤一に不安そうな嬉しそうな表情で話し出す。

「斉藤さん〜!」



斉藤一は沖田総司を普通の表情で見た。



沖田総司は斉藤一の元へと不安そうな嬉しそうな表情で走り出した。



斉藤一は沖田総司を普通の表情で見ている。



沖田総司は斉藤一の元に不安そうな嬉しそうな表情で走ってきた。



斉藤一は沖田総司に普通に話し出す。

「総司。今にも泣きそうな顔をしているぞ。」

沖田総司は斉藤一に強い調子で話し出す。

「今にも泣きそうな顔はしていません!」

斉藤は沖田総司に普通に話し出す。

「なぜむきになるんだ?」

沖田総司は斉藤一に強い調子で話し出す。

「むきになっていません!」

斉藤一は沖田総司を普通の表情で見た。

沖田総司も斉藤一をふてくされた表情で見た。

斉藤一は紫陽花を普通の表情で見た。

沖田総司は紫陽花をふてくされた様子で見た。



青色の紫陽花が綺麗に咲いている。



斉藤一は沖田総司に普通に話し出す。

「紫陽花が綺麗に咲いているな。」

沖田総司は紫陽花を見ながら、斉藤一に静かに話し出す。

「はい。」

斉藤一は沖田総司と紫陽花を普通の表情で見た。

沖田総司は斉藤一を微笑んで見た。

斉藤一は沖田総司を普通の表情で見た。

沖田総司は紫陽花を見ると、斉藤一に微笑んで話し出す。

「来年も、再来年も、ずっと、ずっと、斉藤さんと紫陽花を見たいです。」

斉藤一は沖田総司に普通に話し出す。

「来年や再来年には、俺と紫陽花を見られないような言い方だな。」

沖田総司は斉藤一を見ると、微笑んで話し出す。

「斉藤さんには、そのような内容に聞こえましたか?」

斉藤一は沖田総司に普通に話し出す。

「本当に俺と来年も再来年もずっとずっと紫陽花を見たいと思うのならば、俺と来年も再来年もずっとずっと紫陽花を見られると信じろ。来年や再来年以降も過ごせるか不安に思う人物に、来年や再来年以降を過ごす日々は訪れない。」

沖田総司は斉藤一に微笑んで話し出す。

「斉藤さんの言う通りですね。」

斉藤一は沖田総司に普通の表情で頷いた。

沖田総司は斉藤一に笑顔で話し出す。

「斉藤さん! 来年も再来年もずっとずっと紫陽花を見ましょう! 約束ですよ!」

斉藤一は沖田総司に普通の表情で頷いた。

沖田総司は斉藤一に笑顔で話し出す。

「楽しみですね!」

斉藤一は沖田総司に普通の表情で頷いた。

沖田総司は斉藤一を笑顔で見た。

斉藤一は沖田総司を普通の表情で見た。

沖田総司は紫陽花を微笑んで見た。

斉藤一は沖田総司と紫陽花を普通の表情で見た。

沖田総司は斉藤一を見ると、微笑んで話し出す。

「“紫陽花の 八重咲く如く 弥つ代にを いませわが背子 見つつ思はぬ”」

斉藤一は沖田総司を普通の表情で見た。

沖田総司が斉藤一に微笑んで話し出す。

「斉藤さんと紫陽花を見ている時に、今の歌を思い出しました。斉藤さんへ歌を贈ります。今の私の気持ちです。受取ってください。」

斉藤一は沖田総司に普通に話し出す。

「歌に関して疎い総司が、俺と紫陽花を見て思い出した歌を贈ってくれた。総司の気持ちは理解できるが、今の歌を贈る相手に相応しい人物は、俺ではないと思う。」

沖田総司は斉藤一に微笑んで話し出す。

「斉藤さんと紫陽花を見ている時に、他の紫陽花が登場する歌も思い出そうとしましたが、思い出せませんでした。今の私から斉藤さんに贈るのに相応しい歌だと思います。」

斉藤一は沖田総司に普通に話し出す。

「歌に疎い総司が思い出した歌だ。ありがたく受け取るよ。」

沖田総司は斉藤一に笑顔で話し出す。

「やった〜!」

斉藤一は沖田総司に普通に話し出す。

「総司。歌を受け取ったので、返歌をする。受け取れ。“言問わぬ 木すら紫陽花 諸弟らが 練の村戸に あざむけかえり”」

沖田総司は斉藤一に恥ずかしそうに話し出す。

「斉藤さん。返歌が聞き取れませんでした。返歌を再び詠んでくれませんか?」

斉藤一は沖田総司に普通に話し出す。

「“言問わぬ 木すら紫陽花 諸弟らが 練の村戸に あざむけかえり”。歌の意味は、“ものを言わない木でさえ、紫陽花のように色鮮やかに見せてくれますね。それ以上に言葉をあやつる諸弟たちの上手い言葉にすっかりとだまされてしまったことですよ。”」

沖田総司は斉藤一に不思議そうに話し出す。

「今の歌が返歌ですか? 普通にお礼を言い難く感じます。」

斉藤一が沖田総司に普通に話し出す。

「紫陽花がたくさん咲く中で迷子になる総司が考える以上に、しっかりとした返歌だ。」

沖田総司は斉藤一に怪訝そうに話し出す。

「斉藤さん。今の話はどのような意味ですか?」

斉藤一は沖田総司を普通の表情で見た。

沖田総司は斉藤一を怪訝そうに見た。

斉藤一は沖田総司を普通の表情で見ている。

沖田総司は斉藤一に不思議そうに話し出す。

「斉藤さんからの返歌には、斉藤さんの説明以外に含む意味があるのですか?」

斉藤一は沖田総司に普通に話し出す。

「紫陽花の歌で返歌をしただけだ。」

沖田総司は斉藤一を不思議そうに見た。

斉藤一は沖田総司に普通に話し出す。

「総司。雨が降ると困る。戻るぞ。」

沖田総司は斉藤一に微笑んで話し出す。

「はい。」

斉藤一は沖田総司に普通の表情で頷いた。



斉藤一は普通に歩き出した。

沖田総司は微笑んで歩き出した。



沖田総司は斉藤一に微笑んで話し出す。

「斉藤さん。なぜ私の居場所が分かったのですか?」

斉藤一は沖田総司に普通に話し出す。

「総司の、性格、思考、言動は、物凄く分かりやすい。一緒に居ると楽だ。探す時も楽だ。」

沖田総司は斉藤一に苦笑しながら話し出す。

「一応、褒められたと解釈しておきます。」

斉藤一は沖田総司に普通の表情で頷いた。

沖田総司は斉藤一を苦笑しながら見た。

沖田総司は斉藤一と紫陽花を微笑んで見た。

斉藤一は沖田総司と紫陽花を普通の表情で見た。



「紫陽花の 八重咲く如く 弥つ代にを いませわが背子 見つつ思はぬ」

「言問わぬ 木すら紫陽花 諸弟らが 練の村戸に あざむけかえり」

紫陽花と万葉の時代の歌が、沖田総司と斉藤一に楽しい時を贈ったように感じた。




*      *      *      *      *      *




ここからは後書きになります。

この物語は「新撰組異聞 短編 紫陽花迷路」の再改訂版です。

物語の中に短歌を使用したいと考えて書きました。

後に「雪月花」のシリーズを始めたので、改訂前の物語の展開や雰囲気を残しながら、「雪月花 新撰組異聞 編 紫陽花迷路」として改訂して掲載しました。

今回の物語は「雪月花 新撰組異聞 編 紫陽花迷路」の改訂版です。

改訂前の物語の展開や雰囲気を出来るだけ残しながら改訂しました。

ここからは改訂前の後書きを加筆訂正して書きます。

この物語に登場する歌は、二首あります。

「万葉集 第二十巻 四四四八番」

「紫陽花の 八重咲く如く 弥つ代にを いませわが背子 見つつ思はぬ」

ひらがなの読み方は「あじさいの やえさくごとく やつよにを いませわがせこ みつつしのはぬ」

作者は「橘諸兄(たちばなのもろえ)」

意味は「紫陽花(あじさいの)の花が八重に咲くように、いついつまでも栄えてください。あなた様を見仰ぎつつお慕いいたします。」となるそうです。

原文は「安治佐為能 夜敝佐久其等久 夜都与尓乎 伊麻世和我勢故 美都々思努波牟」

「背子」は「夫子」とする時もあります。

「背子」は男性を差して使う事が多いです。

そこから、女性が男性(恋人、夫、子、兄弟など)に対して「背子」を良く使います。

しかし、男性同士で「背子」を使う事もあります。

万葉集には「背」が登場する歌が何首も掲載されています。

主に、女性が夫や恋人に対して歌の中で使っていますが、男性が男性に対して歌の中で使っている事もあります。

そのような事から、斉藤一さんが歌を贈った沖田総司さんに、いろいろと言う場面が登場します。

「万葉集 第四巻 七七三番」

「言問わぬ 木すら紫陽花 諸弟らが 練の村戸に あざむけかえり」

ひらがなの読み方は「こととわぬ きすらあじさい もろえらが ねりのむらとに あざむけかえり」

作者は「大伴家持(おおとものやかもち)」

意味は「ものを言わない木でさえ、紫陽花(あじさい)のように色鮮やかに見せてくれますね。それ以上に言葉をあやつる諸弟たちの上手い言葉にすっかりとだまされてしまったことですよ。」となるそうです。

原文は「事不問 木尚味狭藍 諸弟等之 練乃村戸二 所詐来」

「大伴家持(おおとものやかもち)」が「坂上大嬢(さかのうえのおおいつらめ)」に贈った歌の一つです。

そのような事から、沖田総司さんが歌を贈った斉藤一さんに、複雑な事を言う場面が登場します。

「万葉集」では「紫陽花」が登場する歌は二首だけになるそうです。

意外な感じがします。

紫陽花は万葉の時代から見る事が出来ますが、新撰組の人達が生きていた時代には見る事の出来ない紫陽花があります。

沖田総司さんや斉藤一さんが見た色とりどりの紫陽花は、現在の状況とは違う可能性があります。

楽しんで頂けると嬉しいです。





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