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〜 雪月花 新撰組異聞 編 〜
〜 向暑の候 来ぬ人をまつほの浦の夕なぎに 〜
登場人物
近藤勇、土方歳三、沖田総司、斉藤一、お雪、お孝、少女[鈴・美鈴]
「来ぬ人を まつほの浦の 夕なぎに 焼くや藻塩の 身もこがれつつ」
「小倉百人一首 九十七番」、及び、「新勅撰集」より
作者:権中納言定家(ごんちゅうなごんさだいえ)
初夏の季節を迎えた。
お雪が近藤勇に身請けをされてから迎える、初めて夏の季節になる。
お雪の妹のお孝は大阪に住んでいる。
お雪は近藤勇の薦めもあり、京で一緒に住もうという誘いの文を、お孝に何度も書いている。
お孝からの文は一度も届いていない。
ここは大阪。
お孝は親戚の家に世話になっている。
お孝のもとにお雪からの文が届いた。
書いてある事は今回も同じ。
お孝の体調を気遣う内容と、京で一緒に住もうという誘いの文だった。
お孝は文を読み終わると、庭に出た。
大坂の町には初夏の青空が広がっている。
お孝は青空を見上げながら呟いた。
「やっぱり京の町を見たいな。素敵な人がたくさんいるような気がする。」
視線を戻すと、微笑んで呟いた。
「直ぐに返事を書こう。」
部屋に戻り机に座ると、文の返事を書き始めた。
それから何日か後の事。
ここは京都。
お雪のもとにお孝からの文が届いた。
お雪は微笑んで文を読み始めた。
その日の夜の事。
お雪の家に近藤勇が訪ねてきた。
お雪は近藤勇を微笑んで出迎えた。
近藤勇はお雪に微笑んで話し掛ける。
「お雪。嬉しそうだな。何か良い事でもあったのか?」
お雪は近藤勇に微笑んで話し掛ける。
「妹のお孝から返事が来ました。京に来てくれるそうです。」
近藤勇はお雪に微笑んで話し掛ける。
「良かったな。」
お雪は近藤勇に微笑んで話し掛ける。
「お孝の返事の文には、京に遊びに来ると書いてありました。でも、一緒に住むとは書いていません。つまらなかったら大阪に帰るかもしれません。」
近藤勇はお雪に微笑んで話し掛ける。
「京を気に入ってお雪と一緒に住んでくれるように、何とかしないといけないな。私に出来る事があれば、話しをしてくれ。」
お雪は近藤勇に微笑んで話し掛ける。
「お気遣いいただいてありがとうございます。」
近藤勇はお雪を微笑んで見た。
それから暫く後の事。
大坂からお孝がやってきた。
お孝は近藤勇を見ると、素っ気無く話し出す。
「人斬りで武士になれるのね。」
近藤勇は苦笑しながらお孝の話を聞いている。
お孝は沖田総司には笑顔で話し掛ける。
「沖田さんは武士ですよね。一番組組長さんですよね。若いのに偉いなんて凄いですね。」
沖田総司はお孝の話しを戸惑った様子で聞いている。
お雪はお孝の話しを不安そうに聞いている。
お孝は沖田総司に京の町を案内させて、楽しんでいる。
沖田総司はお孝に連れまわされている状態になっている。
お雪はお孝の行動や言動に、気の休まらない日々を過ごしている。
お孝はお雪に微笑んで話し掛ける。
「姉さん。土方さんに会いたい。」
お雪はお孝を不思議そうに見た。
お孝はお雪に微笑んで話し掛ける。
「土方さんってかっこいいんでしょ! 会って話しがしたい! 連絡を取ってくれるかな?」
お雪はお孝を不安そうに見た。
お孝はお雪に微笑んで話し掛ける。
「土方さんに直ぐに会えると思ったんだ。でも、家に来ないよね。一度で良いから会って話しがしたいの。」
お雪はお孝を心配そうに見ている。
お孝はお雪に笑顔で話し掛ける。
「楽しみだな〜!」
お雪はお孝に諦めた様子で話し掛ける。
「土方先生は近藤先生と同じくらい忙しい方なのよ。連絡をとっても良いけれど、都合が付かなければ、会えないのよ。」
お孝はお雪に微笑んで話し掛ける。
「せっかく京に来たのだから、土方さんに会いたいな。姉さん。よろしく頼むわね。」
お雪はお孝を不安そうに見ている。
お孝はお雪に微笑んで話し掛ける。
「姉さん。土方さんが来る日には、沖田さんと斉藤さんも呼んでね。」
お雪はお孝を不思議そうに見た。
お孝はお雪に微笑んで話し掛ける。
「沖田さんに、京の町の案内にずっと付き合ってくれたお礼がしたいの。」
お雪はお孝に微笑んで話し掛ける。
「わかったわ。土方先生に連絡を取るわね。」
お孝はお雪に微笑んで話し掛ける。
「姉さん。よろしくね。」
お雪はお孝を微笑んで見ている。
その翌日の事。
ここは屯所。
お雪から近藤勇宛と土方歳三宛の二通の文が届けられた。
土方歳三宛の文は、なぜか少し厚めになっている。
土方歳三は不思議に思いながら、文を読もうとした。
文のなかには、沖田総司宛と斉藤一宛の文も一緒に入っていた。
土方歳三は、沖田総司宛と斉藤一宛の文を、不思議そうに見た。
直ぐに何かを悟ったのか、微笑んだ表情に変わった。
土方歳三は、沖田総司宛と斉藤一宛の文を机に置くと、自分宛の文を微笑んで見始めた。
土方歳三がお雪からの文を受け取ってから少し後の事。
お雪のもとに土方歳三から返事の文が届いた。
お雪は土方歳三からの文を読みはじめた。
お雪はお孝に土方歳三の文の返事を伝えた。
「明日、土方先生が家に来てくださるそうなの。お孝とも話しをしてくださるそうよ。」
お孝はお雪に微笑んで話し掛ける。
「土方さんに会えるんだ! 嬉しいな!」
お雪はお孝に心配そうに話し掛ける。
「土方先生に迷惑を掛けては駄目よ。」
お孝はお雪を見ながら微笑んで頷いた。
その翌日の事。
土方歳三がお雪の家を訪れた。
お孝は土方歳三を出迎えると、笑顔で話し掛ける。
「土方さん! お会い出来て嬉しいです! 噂どおりかっこいいですね!」
土方歳三はお孝に微笑んで話し掛ける。
「ありがとう。褒めてもらえて嬉しいよ。」
お孝は土方歳三を嬉しそうに見ている。
お雪は土方歳三に申し訳なさそうに話し掛ける。
「土方先生。ご迷惑をお掛けして申し訳ありません。」
土方歳三はお雪に微笑んで話し掛ける。
「お孝さんはお雪さんの大切な妹さんです。気にしないでください。」
お雪は土方歳三を微笑んで見た。
土方歳三はお雪に微笑んで話し掛ける。
「沖田と斉藤は、少し遅れて来ます。後の事はお願いします。」
お雪は土方歳三に微笑んで話し掛ける。
「わかりました。」
土方歳三はお雪を微笑んで見た。
お孝は土方歳三に微笑んで話し掛ける。
「土方さん! 早く出掛けようよ!」
土方歳三はお孝を見ると、微笑んで頷いた。
土方歳三とお孝は、一緒に出掛けて行った。
お孝は嬉しそうに土方歳三の横を歩いている。
土方歳三はお孝を微笑んで見ている。
お孝は土方歳三に笑顔で話し掛ける。
「一度で良いから土方さんと会って話しがしたかったんです!」
土方歳三はお孝に微笑んで話し掛ける。
「これで俺と話しが出来たのだから、もう誘わないでくれよな。」
お孝は土方歳三を不思議そうに見た。
土方歳三はお孝に微笑んで話し掛ける。
「俺は我がままな女性は好きだけど、傍迷惑な女性は嫌いなんだ。」
お孝は土方歳三に不機嫌そうに話し掛ける。
「私は土方さんの上役の近藤勇さんの最愛の人の妹よ。」
土方歳三はお孝に微笑んで話し掛ける。
「それがどうかしたのか?」
お孝は土方歳三に不機嫌そうに話し掛ける。
「近藤さんに土方さんが言った事を言い付けるからね。」
土方歳三はお孝に微笑んで話し掛ける。
「なるほど。そうやって美鈴さんを困らせたんだ。」
お孝は土方歳三に不機嫌そうに話し掛ける。
「もしかして、美鈴さんが土方さんに言いつけたの?」
土方歳三はお孝に微笑んで話し掛ける。
「美鈴さんがそんな事をする訳が無いだろ。本気で話しをしていると判断してもいいかな?」
お孝は土方歳三に申し訳なさそうに話し掛ける。
「ごめんなさい。言い過ぎたみたい。」
土方歳三はお孝に微笑んで話し掛ける。
「誰に対して言っているんだ?」
お孝は土方歳三に言い難そうに話し掛ける。
「土方さんはもちろんだけど、美鈴さんとか、沖田さんとか、後はいろいろな人。」
土方歳三はお孝に微笑んで話し掛ける。
「少しはわかっているんだ。」
お孝は土方歳三を不安そうに見た。
土方歳三はお孝に微笑んで話し掛ける。
「俺と付き合いたい?」
お孝は土方歳三を不思議そうに見た。
土方歳三はお孝に微笑んで話し掛ける。
「お孝さんはお雪さんにも美鈴さんにも遠く及ばない。もう少し勉強が必要だな。」
お孝は土方歳三に少し拗ねた様子で話し出す。
「土方さんに、今日のこの日に私と付き合いたいと言えば良かったと、必ず言わせてみせるもん。」
土方歳三はお孝に微笑んで話し掛ける。
「頼もしい言葉を聞いたな。その時は、ぜひ口説かせてもらうよ。」
お孝は土方歳三を少し拗ねた様子で見ている。
土方歳三はお孝に微笑んで話し掛ける。
「話しは終わったが、直ぐに戻る訳にはいかないよな。せっかく京に来たのだから、面白いものを見に行こう。」
お孝は土方歳三を不思議そうに見た。
土方歳三はお孝の様子を気にする事もなく、微笑んで京都の町を歩いている。
お孝は土方歳三を不思議そうに見ながら、一緒に歩いている。
沖田総司と斉藤一は、隊服を着る事もなく、京都の町を歩いている。
沖田総司は斉藤一に不思議そうに話し掛ける。
「お雪さんの頼み事とは何でしょうか? 隊服を着ないで家に来て欲しいと書いてあったという事は、どこかに出掛けたいのでしょうか?」
斉藤一は沖田総司に普通に話し掛ける。
「お雪さんに会えばわかる事だろ。」
沖田総司は斉藤一に苦笑しながら話し掛ける。
「確かに斉藤さんの言う通りですね。」
斉藤一は沖田総司を一瞥すると、普通に歩いている。
沖田総司と斉藤一は、お雪の家を訪れた。
お雪は沖田総司と斉藤一を出迎えると、申し訳なさそうに話し掛ける。
「実は、お孝からお二人を呼ぶように頼まれたので、文を書きました。お孝からの頼みなのですが、美鈴さんの様子を確認して欲しいそうです。お元気で過ごされているならば、返事は要らないそうです。」
沖田総司は斉藤一を不思議そうに見た。
斉藤一は沖田総司を見ると黙って頷いた。
お雪は沖田総司と斉藤一に微笑んで話し掛ける。
「私やお孝では確認が取れないので、よろしくお願いします。」
沖田総司はお雪に微笑んで話し掛ける。
「わかりました。これから様子を確認してきます。」
斉藤一はお雪に黙って礼をした。
お雪は沖田総司と斉藤一を微笑んで見た。
沖田総司と斉藤一は、お雪の家を後にした。
沖田総司と斉藤一は、少女の家へと向かって歩いている。
沖田総司は斉藤一に微笑んで話し掛ける。
「鈴ちゃんに会えますね。」
斉藤一は沖田総司を見ながら黙って頷いた。
沖田総司は斉藤一に微笑んで話し掛ける。
「鈴ちゃんの様子を確認だけして、直ぐに帰ると、寂しがると思います。だから、少し話しをしていきませんか?」
斉藤一は沖田総司を見ながら黙って頷いた。
沖田総司は斉藤一に微笑んで話し掛ける。
「斉藤さん。早く行きますよ。」
斉藤一は沖田総司を黙って見ている。
沖田総司は少し歩調を速めた。
斉藤一も沖田総司に合わせて歩調を少し速めた。
沖田総司と斉藤一は、少女の家に到着した。
少女は沖田総司と斉藤一を不思議そうに出迎えた。
沖田総司は少女に微笑んで話し掛ける。
「鈴ちゃん。少し時間に余裕が出来たんだ。もし良かったら一緒に出掛けないか?」
少女は沖田総司を見ながら微笑んで頷いた。
沖田総司、斉藤一、少女の三人は、直ぐに出掛けて行った。
沖田総司は少女に微笑んで話し掛ける。
「鈴ちゃん。どこか出掛けたい場所はある?」
少女は沖田総司に微笑んで話し掛ける。
「総司さんと斉藤さんのお出掛けしたい場所に、私も行きたいです。」
沖田総司は少女に微笑んで話し掛ける。
「いつも行く寺で、三人で話しをしようよ。」
少女は沖田総司を見ながら微笑んで頷いた。
土方歳三とお孝は、家の前に着た。
お孝は土方歳三を複雑な表情で見ている。
土方歳三はお孝に微笑んで話し掛ける。
「何か言いたい事があるなら、早く話をしろ。」
お孝は土方歳三に少しだけふてくされた様子で話し出す。
「私は土方さんに後悔したと思わせるからね。」
土方歳三はお孝に微笑んで話し掛ける。
「後悔させたいと思っているなら、まず歌の勉強から始めてみろ。」
お孝は土方歳三を不思議そうに見た。
土方歳三はお孝に微笑んで話し掛ける。
「俺に歌を贈ってくれ。良い歌だったら、返歌をするよ。」
お孝は土方歳三を不思議そうに見た。
土方歳三はお孝に微笑んで話し掛ける。
「どうする?」
お孝は土方歳三に不思議そうに話し掛ける。
「良い歌でなかったらどうなるの?」
土方歳三はお孝に微笑んで話し掛ける。
「返歌はしない。」
お孝は考え込んでいる。
土方歳三はお孝に微笑んで話し掛ける。
「自信がないんだ。」
お孝は土方歳三を少しふてくされた様子で見た。
土方歳三はお孝に微笑んで話し掛ける。
「少しでも良い歌だなと思ったら、添削をしてやるよ。」
お孝は土方歳三に微笑んで話し掛ける。
「わかった。土方さんに歌を贈るから、楽しみに待っていてね。」
土方歳三はお孝に微笑んで話し掛ける。
「期待しないで待っているよ。」
お孝は土方歳三に拗ねた様子で話し掛ける。
「返歌をよこさないつもりね。負けないもん。」
土方歳三はお孝の様子を気にする事もなく、普通に話し掛ける。
「家の前で長々と話をする必要もないだろ。早く入れ。」
お孝は土方歳三を複雑な表情で見ていたが、家の中へと入っていった。
土方歳三はお孝が家の中に入ったのを確認すると、屯所へと戻っていった。
お雪はお孝を微笑んで出迎えた。
お孝はお雪に笑顔で話し掛ける。
「土方さんに歌を贈る事にしたの! 良い歌だったら返歌をくれるんだって! 姉さん! 手伝って!」
お雪はお孝を不思議そうに見ている。
お孝はお雪に笑顔で話し掛ける。
「姉さん! 私は負けないから! 絶対に返歌をもらうんだ!」
お雪はお孝を心配そうに見た。
それから数日後の事。
土方歳三のもとにお孝から文が届いた。
土方歳三はお孝からの文を普通の表情で読み始めたが、途中から微笑んだ表情に変わった。
それから更に数日後の事。
お孝が大阪に帰る日になった。
土方歳三からの返歌も返事も着ていない。
お孝はお雪に微笑んで話し掛ける。
「姉さん。土方さんから文が着たら、大阪に必ず送ってね。」
お雪はお孝を見ながら微笑んで頷いた。
お孝が大阪に帰ってから数日後の事。
土方歳三は斉藤一と一緒に酒を飲んでいる。
土方歳三は斉藤一に微笑んで話し掛ける。
「来ぬ人を まつほの浦の 夕なぎに 焼くや藻塩の 身もこがれつつ」
斉藤一は酒を飲むと、土方歳三を黙って見た。
土方歳三は斉藤一に微笑んで話し掛ける。
「斉藤と総司がお雪さんの家に出掛け日に、お孝さんと会ったんだ。話しのなかで、お孝さんが俺に歌を贈る事になったんだ。」
斉藤一は酒を飲むと、土方歳三を普通の表情で見た。
土方歳三は酒を飲むと、斉藤一に微笑んで話し掛ける。
「今の歌がお孝さんから俺に贈った歌なんだ。」
斉藤一は土方歳三に普通に話し掛ける。
「初めて会った人に贈る歌ではないですよね。」
土方歳三は斉藤一に微笑んで話し掛ける。
「俺の話しをいろいろと聞いていたらしいから、初めて会った気がしなかったのかもしれないな。」
斉藤一は黙って酒を飲んでいる。
土方歳三は斉藤一に微笑んで話し掛ける。
「せっかくなら、女性の詠み手からの歌を贈ってもらいたかったな。お孝さんはお雪さんの言う事をほとんど聞かないで、歌を決めたような気がする。」
斉藤一は土方歳三を見ながら、黙って酒を飲んでいる。
土方歳三は斉藤一に微笑んで話し掛ける。
「斉藤。総司とあの子は楽しそうにしていたな。」
斉藤一は土方歳三を見ながら黙って酒を飲んでいる。
土方歳三は斉藤一に微笑んで話し掛ける。
「お孝さんとお雪さんは、全く似ていないが、やっぱり姉妹だな。」
斉藤一は土方歳三を見ながら黙って頷いた。
土方歳三は斉藤一を見ながら、微笑んで酒を飲んだ。
それから少し後の事。
ここは大坂のお孝の住んでいる家。
お孝のもとに土方歳三から文が届いた。
お孝は微笑んで文を読み始めた。
直ぐにふてくされた表情に変わると、文を見ながら呟いた。
「決めた。もっと歌の勉強をする。やっぱり良い男性と付き合うためには、教養も必要よね。」
庭に出ると空を見上げた。
大坂の町には青空が広がって居る。
「向暑の候。来ぬ人を まつほの浦の 夕なぎに 焼くや藻塩の 身もこがれつつ。小倉百人一首の歌だから、とても良い歌だ。だが、お雪さんの話しを聞かないで選んだな。まだまだだな。精進しろよ。」
* * * * * *
ここからは後書きになります。
土方歳三さんとお雪さんの妹のお孝さんの物語です。
史実の中の土方歳三さんはとてもかっこよい人だった事もあり、女性にとてももてた人です。
「新撰組異聞」のなかの土方歳三さんも、いろいろな女性に声を掛けたり、出掛けたりしています。
「新撰組異聞」の中のお孝さんは、玉の輿に乗りたいと思っているふしがあります。
もしこんな二人で出会う事があったならば、どうなるのかと考えました。
この場合、お孝さんが土方歳三さんに声を掛けるかどうかと考えました。
土方歳三さんがお孝さんから話しが合った時に、どう考えるかを考えました。
土方歳三さんは歌を詠んだりする風流な面を持っている人でした。
それならば今回の物語は、「雪月花」で書こうと思いました。
「新撰組異聞」のお孝さんですが、京の町に夏の初めの頃に来ますが、直ぐに大阪に戻ります。
そして再びお雪さんの体調の関係で、京に戻って来ます。
この物語は京に来てから直ぐに大阪に帰るまでの物語です。
この物語ですが、「新撰組異聞 短編 向暑の砌」の物語と平行して物語が進んでいます。
しかし、基本的には独立した短編集なので、一部は重なっていますが、全てが同じ状況ではない部分があります。
この物語に登場する歌は、「小倉百人一首 九十七番」、及び、「新勅撰集」の歌です。
「来ぬ人を まつほの浦の 夕なぎに 焼くや藻塩の 身もこがれつつ」
ひらがなの読み方ですが、「こぬひとを まつほのうらの ゆうなぎに やくやもしおの みもこがれつつ」です。
作者は、「権中納言定家(ごんちゅうなごんさだいえ)」です。
意味ですが、「いくら待っても来ることのないあなたを、こうして待ち続けている私の身は、松帆の浦の夕凪のころに焼く藻塩のように、あなたをずっと恋こがれているのですよ」となります。
「向暑」ですが、「こうしょ」と読みます。
「暑い季節に向かっていくこと。」という意味です。
「候」ですが、「こう」と読みます。
「季候。時候。」という意味があります。
「向暑」も「候」も手紙の挨拶や文などに良く使われています。
楽しんで頂けると嬉しいです。
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