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〜 雪月花 新撰組異聞 編 〜
〜 木香薔薇 我れと笑まして 〜
〜 改訂版 〜
登場人物
土方歳三、沖田総司、斉藤一、綺麗な女性、少女[美鈴・鈴]
「青山を 横ぎる雲の いちしろく 我れと笑まして 人に知らゆな」
「万葉集 第四巻 六八八番」より
作者:坂上郎女(さかのうえのいつらめ)
今は、初夏。
ここは、京の町。
過ごしやすい日が続いている。
ここは、町中。
沖田総司は微笑んで歩いている。
少女も微笑んで歩いている。
沖田総司は少女に微笑んで話し出す。
「今日は、途中から任務があるんだ。逢う時間が短いんだ。ご免ね。」
少女は沖田総司に微笑んで話し出す。
「総司さんが短い時間でも楽しんで過ごせるならば、とても嬉しいです。私は総司さんと話しが出来るので嬉しいです。」
沖田総司は少女を微笑んで見た。
町中から、騒がしい声が聞こえた。
「斬り合いが始まったぞ!」
沖田総司は厳しい表情で止まった。
少女は驚いて止まった。
沖田総司は厳しい表情で声の聞こえる方向を見た。
少女は沖田総司を不安な様子で見た。
沖田総司は少女を慌てて見た。
少女は下を辛い表情で見た。
沖田総司は少女に心配して話し出す。
「鈴ちゃん。調子が悪くなったのかな?」
少女は下を見て、辛い表情で小さい声で話し出す。
「大丈夫です。」
沖田総司は少女に心配して話し出す。
「急に騒がしくなったから疲れたよね。近くに寺が在るよね。少し休もう。」
少女は下を見て、辛い表情で小さい声で話し出す。
「はい。」
沖田総司は少女に心配して話し出す。
「肩を抱いて歩くと目立つから困るよね。ゆっくりと歩こうね。」
少女は下を見て、辛い表情で小さい声で話し出す。
「はい。」
沖田総司は少女を心配して見た。
沖田総司は少女を心配しながら、ゆっくりと歩いた。
少女は辛い表情でゆっくりと歩き出した。
少し後の事。
ここは、沖田総司と少女が居た場所の近くに在る寺。
一室。
沖田総司は心配な様子で居る。
少女は床の中で辛い様子で横になっている。
少女は床の中で、沖田総司を静かに泣いて見た。
沖田総司は少女に心配して話し出す。
「鈴ちゃん。辛いの?」
少女は床の中で、沖田総司を見て、静かに泣いて小さい声で話し出す。
「大丈夫です。」
沖田総司は少女を心配して見た。
少女は床の中で、沖田総司を見て、静かに泣いて小さい声で話し出す。
「総司さん。お仕事は?」
沖田総司は少女に微笑んで話し出す。
「時間に余裕があるから大丈夫だよ。」
少女は床の中で、沖田総司を静かに泣いて見た。
沖田総司は少女に微笑んで話し出す。
「鈴ちゃん。少し眠って。」
少女は床の中で、沖田総司を静かに泣いて見た。
沖田総司は少女を微笑んで見た。
少女は床の中で、静かに泣いて、ゆっくりと目を閉じた。
少し後の事。
ここは、沖田総司と少女が居る寺。
一室。
沖田総司は心配な様子で居る。
少女は床の中で静かに寝ている。
少女は床の中でゆっくりと目を開けた。
沖田総司は少女を心配して見た。
少女は床の中で、沖田総司に不安な様子で話し出す。
「総司さん。お仕事。大丈夫ですか?」
沖田総司は少女に微笑んで話し出す。
「鈴ちゃん。心配しないで。大丈夫だよ。」
少女は床の中で、沖田総司に不安な様子で話し出す。
「総司さん。ごめんなさい。」
沖田総司は少女に微笑んで話し出す。
「鈴ちゃんは私に謝る言動をしていないよ。」
少女は床に横の中で、沖田総司に不安な様子で話し出す。
「総司さん。ごめんなさい。」
沖田総司は少女に微笑んで話し出す。
「鈴ちゃん。疲れているんだよ。無理をしないでね。」
少女は床に横の中で、沖田総司を悲しく見た。
沖田総司は少女に微笑んで話し出す。
「鈴ちゃん。少し休んで。」
少女は床の中で、ゆっくりと目を閉じた。
暫く後の事。
ここは、京の町。
夜空に、月と星が、浮かんでいる。
ここは、屯所。
斉藤一の部屋。
斉藤一は普通に居る。
沖田総司は部屋を申し訳なく訪れた。
斉藤一は沖田総司を普通の表情で見た。
沖田総司は斉藤一に申し訳なく話し出す。
「斉藤さん。無理な願い事を頼んでしまいました。申し訳ありませんでした。」
斉藤一は沖田総司に普通に話し出す。
「総司は面倒な内容しか頼まない。気にしていない。」
沖田総司は斉藤一を苦笑して見た。
斉藤一は沖田総司に普通に話し出す。
「美鈴さんの具合は良くなったのか?」
沖田総司は斉藤一に心配して話し出す。
「最初は、とても辛い様子でした。帰る時も、調子は悪いはずなのに、笑顔でした。」
斉藤一は沖田総司を普通の表情で見た。
沖田総司は斉藤一に心配して話し出す。
「今日、鈴ちゃんと一緒に町中を歩く最中に、斬り合いが始まったと話す声が聞こえました。私の居る場所からは、斬り合いをしている様子は確認ができませんでした。鈴ちゃんを見ました。鈴ちゃんはとても調子が悪い様子でした。鈴ちゃんは私が人を斬る姿を思い出しと思います。」
斉藤一は沖田総司を普通の表情で見た。
沖田総司は斉藤一に心配して話し出す。
「鈴ちゃんの調子が悪くなった原因は、私です。」
斉藤一は沖田総司を普通の表情で見た。
沖田総司は斉藤一に心配して話し出す。
「私は今日の途中から任務があると話しました。鈴ちゃんは私が傍に居たのでとても心配しました。鈴ちゃんが眠る最中に、私が斉藤さんと土方さんに連絡を頼んだ内容を話せませんでした。鈴ちゃんは今も私を心配していると思います。」
斉藤一は沖田総司を普通の表情で見た。
沖田総司は斉藤一に心配して話し出す。
「斉藤さん。明日、鈴ちゃんの様子を確認して欲しいです。」
斉藤一は沖田総司に普通に話し出す。
「総司は美鈴さんに逢わないのか?」
沖田総司は斉藤一に心配して話し出す。
「鈴ちゃんの調子が良いならば、逢いたいです。鈴ちゃんの調子が悪ければ、逢えません。」
斉藤一は沖田総司に普通に話し出す。
「明日、美鈴さんの様子を確認する。美鈴さんが元気ならば、三人で逢う予定を決める。」
沖田総司は斉藤一に心配して話し出す。
「斉藤さん。お願いします。」
斉藤一は沖田総司に普通の表情で頷いた。
翌日の事。
ここは、屯所。
土方歳三の部屋。
土方歳三は微笑んで居る。
机の上には、文が置いてある。
斉藤一は部屋を普通に訪ねた。
土方歳三は斉藤一を微笑んで見た。
斉藤一は土方歳三に普通の表情で軽く礼をした。
土方歳三は斉藤一に微笑んで話し出す。
「斉藤。今から外出する予定があるのだろ。」
斉藤一は土方歳三に普通の表情で軽く礼をした。
土方歳三は斉藤一に微笑んで話し出す。
「外出の間に、文を届けて欲しい場所、確認を頼みたい場所、が在る。確認を頼みたい場所は、文を届けて欲しい場所と同じだ。」
斉藤一は土方歳三に普通の表情で軽く礼をした。
土方歳三は文を持つと、斉藤一に文を微笑んで渡した。
斉藤一は土方歳三から普通の表情で文を受け取った。
土方歳三は斉藤一に微笑んで話し出す。
「俺が外出しない時間ならば、総司と斉藤とあの子で、外出をして良いぞ。」
斉藤一は文を懐に仕舞うと、土方歳三に普通の表情で軽く礼をした。
土方歳三は斉藤一に微笑んで話し出す。
「あの子が本当の意味で元気になると良いな。」
斉藤一は土方歳三を普通の表情で見た。
土方歳三は斉藤一に微笑んで話し出す。
「斉藤。話は終わった。外出して良いぞ。」
斉藤一は土方歳三に普通の表情で軽く礼をした。
土方歳三は斉藤一に微笑んで頷いた。
斉藤一は部屋を普通に出て行った。
少し後の事。
ここは、少女の住む家。
玄関。
斉藤一は普通に訪ねた。
少女は微笑んで来た。
斉藤一は少女に普通に話し出す。
「美鈴さん。部屋で話したい。」
少女は斉藤一に心配な様子で話し出す。
「はい。」
斉藤一は少女を普通の表情で見た。
斉藤一は家の中に普通に入って行った。
少女は家の中に心配な様子で入って行った。
僅かに後の事。
ここは、少女の住む家。
少女の部屋。
斉藤一は普通に居る。
少女は心配な様子で居る。
斉藤一は少女に普通に話し出す。
「想像より元気に見える。安心した。」
少女は斉藤一に申し訳なく話し出す。
「斉藤さんにも心配を掛けたのですね。申し訳ありません。」
斉藤一は少女に普通に話し出す。
「俺への気遣いは無用だ。」
少女は斉藤一を申し訳なく見た。
斉藤一は少女を普通の表情で見た。
少女は斉藤一に不安な様子で話し出す。
「総司さん。私を怒っていませんか? 私を呆れていませんか?」
斉藤一は少女に普通に話し出す。
「総司は、美鈴さんへの気配りが不足していた言動を後悔している。」
少女は斉藤一に心配して話し出す。
「私の調子が悪くなったから、総司さんはお休みの時間を楽しめませんでした。総司さんのお仕事に迷惑を掛けたのに、お仕事について困る様子を見せませんでした。私と一緒に居られて楽しいと話しました。」
斉藤一は少女に普通に話し出す。
「美鈴さんは総司の任務の迷惑にならない。総司が美鈴さんと共に居て楽しいと話すならば、心配するな。」
少女は斉藤一を不安な様子で見た。
斉藤一は少女に普通に話し出す。
「美鈴さん。総司を信じずに不安になると、総司も不安になる。総司を信じて、たくさんの笑顔を見せろ。」
少女は斉藤一を微笑んで見た。
斉藤一は少女に普通に話し出す。
「総司と俺と美鈴さんで、数日以内に出掛けたい。都合の悪い日を教えてくれ。」
少女は斉藤一に微笑んで話し出す。
「私は、今日も明日も明後日も、全て大丈夫です。」
斉藤一は少女に普通に話し出す。
「二日後に、総司か俺が、美鈴さんを迎えに来る。」
少女は斉藤一に微笑んで話し出す。
「分かりました。楽しみに待っています。」
斉藤一は少女に普通の表情で頷いた。
少女は斉藤一を微笑んで見た。
二日後の事。
沖田総司、斉藤一、少女が出掛ける日になる。
ここは、京の町。
綺麗な青空に白い雲が浮かんでいる。
ここは、穏やかな雰囲気の屋敷。
庭。
広くはないが、丁寧に手入れがしてある。
斉藤一は普通に居る。
沖田総司は微笑んで来た。
少女も微笑んで来た。
斉藤一は沖田総司と少女を普通の表情で見た。
少女は斉藤一に微笑んで軽く礼をした。
斉藤一は少女に普通の表情で頷いた。
少女は庭の一点を微笑んで見た。
斉藤一は少女を普通の表情で見た。
沖田総司は斉藤一と少女を微笑んで見た。
少女の視線の先には、藤棚のような棚に、小さくて黄色の木香薔薇の花が、たくさん垂れ下がっている。
木香薔薇は、青空の下でたくさんの黄色い花を咲かせている。
少女は沖田総司と斉藤一を見ると、沖田総司と斉藤一に微笑んで話し出す。
「とても綺麗です。」
沖田総司は少女に微笑んで話し出す。
「木香薔薇、という名前なんだ。」
少女は沖田総司に微笑んで話し出す。
「木香薔薇。初めて見ました。」
沖田総司は少女に微笑んで話し出す。
「斉藤さんに教えてもらったんだ。」
少女は斉藤一に微笑んで話し出す。
「斉藤さん。ありがとうございます。」
斉藤一は少女に普通の表情で頷いた。
少女は木香薔薇を微笑んで見た。
沖田総司は少女を微笑んで見た。
斉藤一は沖田総司と少女を普通の表情で見た。
翌日の事。
ここは、京の町。
綺麗な青空に白い雲が浮かんでいる。
ここは、沖田総司、斉藤一、少女が前日に訪れた屋敷。
庭。
綺麗な黄色の木香薔薇の花が、陽の光を受けながら咲いている。
土方歳三は微笑んで居る。
綺麗な女性も微笑んで居る。
斉藤一は、土方歳三と綺麗な女性から少し離れた場所に、普通に居る。
綺麗な女性は木香薔薇を微笑んで見た。
土方歳三は綺麗な女性に微笑んで話し出す。
「木香薔薇。気に入った様子だね。」
綺麗な女性は土方歳三を見ると、土方歳三に微笑んで話し出す。
「木香薔薇。青空に黄色の花がとても良く映えます。豪華なのに清楚な雰囲気も感じます。とても気に入りました。」
土方歳三は綺麗な女性を微笑んで見た。
綺麗な女性は土方歳三に抱き付くと、土方歳三に微笑んで話し出す。
「“青山を 横ぎる雲の いちしろく 我れと笑まして 人に知らゆな”。」
土方歳三は綺麗な女性を抱くと、綺麗な女性の耳元で微笑んで囁いた。
「抱き付いていたら、歌のように微笑み掛けられない。良いのかな?」
綺麗な女性は土方歳三から微笑んでゆっくりと離れた。
土方歳三は綺麗な女性を微笑んで見た。
綺麗な女性は土方歳三を微笑んで見た。
「青山を 横ぎる雲の いちしろく 我れと笑まして 人に知らゆな」
青い空に浮かぶ白い雲。
陽の光の中で咲く黄色の木香薔薇の花。
たくさんの笑顔。
初夏の時間は、たくさんのものに包まれながら、穏やかに過ぎていく。
* * * * * *
ここからは後書きになります。
この物語は既に掲載している物語の改訂版です。
改訂前の物語の展開や雰囲気を出来るだけ残して改訂しました。
改訂前の後書きを加筆訂正して書きました。
以上、ご了承願います。
ここからは改訂前の後書きを加筆訂正して書きます。
この物語に登場する歌は「万葉集 第四巻 六八八番」
「青山を 横ぎる雲の いちしろく 我れと笑まして 人に知らゆな」
作者は「坂上郎女(さかのうえのいつらめ)」
ひらがな読み方は「あおやまの よこぎるくもの いちしろく われとえまして ひとにしらゆな」
歌の意味は「緑の山を横切って行く雲のように、私にはっきりと分かるように微笑みかけて、そして人には分からない様に。」となるそうです。
原文は「青山乎 横■雲之 灼然 吾共咲為児 人二所知名」
「■」は文字変換が出来ない字のようです。
「木香薔薇(もっこうばら)」についてです。
中国原産です。
つる性のバラです。
現在見掛けるバラの中では早く咲き始め、現在見かけるバラが見頃を迎える頃に終わりを迎えます。
現在の暦で、4月下旬頃から5月中旬に掛けて、見頃になる所が多いと思います。
「木香薔薇」は、「黄木香薔薇」と「白木香薔薇」があります。
共に八重咲きです。
木香の香りがある事から、「木香薔薇」の名前で呼ばれるようになったそうです。
江戸時代の中期頃に観賞用として渡来したそうです。
この物語の補足です。
この物語に登場する歌の作者は女性です。
その関係から、当初は、沖田総司さんが、女性の作者と知らずに、または、誰かに教えてもらって、鈴ちゃんに詠んだ事にしようとして物語を書いていました。
しかし、土方歳三さんが登場する事もあり、沖田総司さんと鈴ちゃんの間では歌を詠むのを止めました。
楽しんで頂けると嬉しいです。
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