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〜 雪月花 新撰組異聞 編 〜


〜 限りの月 山里は冬ぞさびしさまさりける 〜


登場人物

山南敬助、沖田総司、斉藤一、明里、少女[鈴、美鈴]



「山里は 冬ぞさびしさ まさりける 人目も草も かれぬと思へば」

「小倉百人一首 第二十八番」、及び、「古今集」より

作者:源宗于朝臣(みなもとのむねゆきあそん)



今は冬。



ここは、京の町。



寒い日が続いている。



ここは、島原。



仕事や用事を終えた人達がたくさん集まっている。



ここは、明里という名前の遊女が働いている店。



山南敬助は明里の元を微笑んで訪れた。



ここは、店の中に在る一室。



山南敬助と明里は、部屋の中に入ってきた。



明里は山南敬助に嬉しそうに抱き付いた。

山南敬助は明里を微笑んで受け止めた。

明里は山南敬助に抱き付きながら、微笑んで話し出す。

「先生。逢いたかったです。」

山南敬助は明里を抱きながら、微笑んで頷いた。

明里は山南敬助に抱き付きながら、嬉しそうな表情になった。

山南敬助は明里を微笑みながら優しく離した。

明里は山南敬助を寂しそうに見た。

山南敬助は明里に微笑んで話し出す。

「来たばかりです。時間はたくさん有ります。寂しそうな顔をせずに、楽しみましょう。」

明里は山南敬助に寄り掛かると、微笑んで話し出す。

「先生と一緒に居ると、時間が早く過ぎてしまいます。先生が帰られる時を想像したら寂しくなってしまいました。」

山南敬助は明里の肩を微笑んで抱いた。

明里は山南敬助に寄り掛かりながら、微笑んで話し出す。

「山南先生。」

山南敬助は明里の肩を抱きながら、微笑んで様子を見た。

明里は山南敬助から離れると、微笑んで話し出す。

「先生だけで呼ぶのは寂しいので、お名前も呼んでみました。」

山南敬助は明里を微笑んで見た。

明里は山南敬助に微笑んで話し出す。

「ご希望のお酒や肴はありますか?」

山南敬助は明里に微笑んで話し出す。

「明里に任せます。」

明里は山南敬助に微笑んで話し出す。

「先生。私に任せたら、物凄く高い物を頼んでしまいますよ。」

山南敬助は明里に微笑んで話し出す。

「私は構いません。」

明里は山南敬助に微笑んで話し出す。

「先生。本当に良いのですか?」

山南敬助は明里に微笑んで話し出す。

「念を押されると、不安になりますね。」

明里は山南敬助を微笑んで見た。

山南敬助は明里に微笑んで話し出す。

「途中で話しを変えるのは止めます。最初の返事の通り、明里に任せます。」

明里は山南敬助に微笑んで話し出す。

「分かりました。私も途中で話しを変えずに、物凄く高い物を用意します。」

山南敬助は明里を苦笑しながら見た。

明里は山南敬助に微笑んで話し出す。

「先生。無茶な品物は用意しません。安心してください。」

山南敬助は明里に安心した様子で話し出す。

「よろしくお願いします。」

明里は山南敬助に微笑んで話し出す。

「はい。」

山南敬助は明里を微笑んで見た。



それから暫く後の事。



ここは、明里と山南敬助が居る部屋。



山南敬助の帰る時間が近づいてきたため、部屋の中を僅かに寂しさが包み始めた。



明里は山南敬助に寂しそうに話し出す。

「先生と一緒に居ると、いつも時間が早く過ぎます。」

山南敬助は明里に微笑んで話し出す。

「私も同じです。」

明里は山南敬助に微笑んで話し出す。

「直ぐに逢いに来てくださいね。」

山南敬助は明里に微笑んで話し出す。

「出来るだけ日を空けずに逢いに来るようにします。」

明里は山南敬助に寂しそうに話し出す。

「出来るだけはなく、直ぐに逢いに来てください。」

山南敬助は明里に微笑んで話し出す。

「努力して日を空けずに逢いに来るようにします。」

明里は山南敬助に寂しそうに話し出す。

「出来るだけも努力も、言葉が違うだけで、意味はほとんど同じです。」

山南敬助は明里を僅かに困惑した表情で見た。

明里は山南敬助に微笑んで話し出す。

「先生。困った顔をしていますね。何かありましたか?」

山南敬助は明里を不思議そうに見た。

明里は山南敬助に微笑んで話し出す。

「先生は笑顔だけでなく困った顔を素敵ですね。」

山南敬助は明里を苦笑して見た。

明里は山南敬助を微笑んで見た。

山南敬助は明里に微笑んで話し出す。

「明里に寂しい思いをさせないように、早く逢いに来ます。」

明里は山南敬助に嬉しそうに話し出す。

「先生。嬉しいです。ありがとうございます。」

山南敬助は明里を微笑んで見た。

明里は山南敬助に微笑んで話し出す。

「先生。今夜も気を付けてお帰りください。」

山南敬助は明里に微笑んで頷いた。



ここは、店の外。



山南敬助は屯所へと戻るために歩き始めた。



明里は山南敬助の後姿に向かって、微笑んで手を振った。



山南敬助が明里から離れていくに連れて、たくさんの人達に紛れて見えなくなっていく。



明里は手を振るのを止めると、山南敬助の後ろ姿を見ながら、寂しそうに呟いた。

「山里は 冬ぞさびしさ まさりける 人目も草も かれぬと思へば」



山南敬助の後姿は、たくさんの人達に紛れてほとんど見えなくなっている。



明里は山南敬助の後ろ姿を見ながら、寂しそうな表情で軽くため息をついた。



明里の馴染み客の明るい声が、明里の後ろから聞こえてきた。

「明里! ここに居たのか!」



明里は後ろを見ると、馴染み客を嬉しそうに見た。

馴染み客は明里を抱きしめると、嬉しそうに話し出す。

「都合が付かなくて、時間が空いてしまった! 明里に逢えなくて寂しかった! 明里も寂しかっただろ!」

明里は馴染み客に抱き付くと、微笑んで話し出す。

「私も寂しくて早く逢いたかったです。」

馴染み客は明里を嬉しそうに抱きしめた。

明里は馴染み客に抱き付きながら、山南敬助が去った方向を寂しそうに見た。



山南敬助の姿は既に見えなくなっている。



明里は馴染み客に抱き付きながら、微笑んで話し出す。

「落ち着いた場所に早く行きましょう。」

馴染み客は明里を放すと、微笑んで頷いた。

明里は馴染み客を微笑んで見た。


それから少し後の事。


ここは、京の町。



屯所。



山南敬助の部屋の前に在る縁。



山南敬助は自分の部屋へと戻るために、微笑んで歩いている。



山南敬助の部屋の前に、沖田総司と斉藤一の姿が見えた。



沖田総司は寒そうな仕草を見せながらも、微笑んで立っている。

斉藤一は普通の表情で立っている。



山南敬助は沖田総司と斉藤一の前に来ると、不思議そうに話し出す。

「こんばんは。何かありましたか?」

沖田総司は山南敬助に微笑んで話し出す。

「山南さんと話しがしたくて待っていました。」

斉藤一は山南敬助に普通の表情で軽く礼をした。

山南敬助は沖田総司と斉藤一に心配そうに話し出す。

「細かい話しは後です。早く部屋の中に入ってください。」

沖田総司は山南敬助を見ると、微笑んで話し出す。

「はい。」

斉藤一は山南敬助に普通の表情で軽く礼をした。



山南敬助は微笑んで部屋の中へと入って行った。

沖田総司は山南敬助に続いて、微笑んで部屋の中へと入って行った。

斉藤一は沖田総司の後に続いて、普通に部屋の中へと入って行った。



ここは、山南敬助の部屋の中。



山南敬助、沖田総司、斉藤一は、一緒に居る。



山南敬助は沖田総司と斉藤一に心配そうに話し出す。

「私の帰りを部屋の前でずっと待っていたのですか? 風邪をひいてしまいますよ。」

沖田総司は山南敬助に微笑んで話し出す。

「斉藤さんの部屋で一緒に話しをしていました。山南さんが帰る頃だと思ったので、私が斉藤さんに部屋の前で待とうと話しをしました。外ではほとんど待っていません。安心してください。」

山南敬助は斉藤一を確認するように見た。

斉藤一は山南敬助に普通の表情で軽く礼をした。

山南敬助は沖田総司と斉藤一に微笑んで話し出す。

「風邪をひいたら心配です。無理をしては駄目ですよ。」

斉藤一は山南敬助に普通の表情で軽く礼をした。

沖田総司は山南敬助に微笑んで話し出す。

「はい。気を付けます。」

山南敬助は沖田総司に微笑んで話し出す。

「総司には、美鈴さんにも心配を掛けてはいないという意味で言ったのですよ。」

沖田総司は山南敬助を困惑した表情で見た。

山南敬助は沖田総司に微笑んで話し出す。

「寒い日はもう少し続きます。無理をしないように、気を付けてください。今夜は直ぐに寝た方が良いと思います。」

沖田総司は山南敬助に微笑んで話し出す。

「山南さん。部屋に戻る前に、少しだけ話をしても良いですか?」

山南敬助は沖田総司に微笑んで頷いた。

沖田総司は懐から紙を出すと、山南敬助に微笑んで差し出した。

山南敬助は沖田総司から微笑んで紙を受け取った。

沖田総司は山南敬助に微笑んで話し出す。

「鈴ちゃんに歌を贈ろうと思って、斉藤さんと一緒に調べていました。山南さんが明里さんに贈るのに良い歌を小倉百人一首の中に見付けました。明里さんに贈ってください。」

山南敬助は紙を持ちながら、沖田総司に微笑んで話し出す。

「総司。ありがとう。次に明里に逢う時に歌を贈ります。」

沖田総司は山南敬助を微笑んで見た。

山南敬助は紙を持ちながら、沖田総司を微笑んで見た。

斉藤一は山南敬助と沖田総司を普通の表情で見た。

沖田総司は山南敬助に微笑んで話し出す。

「山南さん。斉藤さん。私は先に休みます。」

山南敬助は紙を持ちながら、沖田総司に微笑んで頷いた。

斉藤一は沖田総司に普通の表情で頷いた。



沖田総司は微笑んで部屋から出て行った。



山南敬助は紙に書いてある歌を微笑んで読み始めた。

斉藤一は山南敬助を普通の表情で見た。

山南敬助は紙を持ちながら、斉藤一を見ると、微笑んで話し出す

「寂しい歌ですね。」

斉藤一は山南敬助に普通に話し出す。

「美鈴さんに贈る歌も、今回のように気の利く歌を自分で選べれば良いのにと思います。」

山南敬助は紙を持ちながら、斉藤一に微笑んで話し出す。

「美鈴さんに良い歌を贈ろうと気負い過ぎているのかも知れませんね。もう一つの理由は、総司自身の身にいろいろと有るようなので落ち着かないのでしょう。」

斉藤一は山南敬助に普通の表情で軽く礼をした。

山南敬助は紙を持ちながら、斉藤一に微笑んで話し出す。

「美鈴さんは不安で寂しい思いをしているはずです。これからも総司や美鈴さんの相談に乗ってあげてください。」

斉藤一は山南敬助に普通の表情で軽く礼をした。

山南敬助は紙を持ちながら、斉藤一を微笑んで見た。



その翌日の事。



ここは、京の町。



朝から寒い日となっている。



ここは、沖田総司、斉藤一、少女が良く訪れる寺。



寺の中。



沖田総司、斉藤一、少女は、一緒に居る。



沖田総司は少女に微笑んで話し出す。

「斉藤さんと一緒に歌について調べていたら、山南さんが明里さんに贈るのに良いと思う歌を、小倉百人一首の中に見付けたんだ。山南さんに歌を教えてあげたんだ。」

少女は沖田総司に微笑んで話し出す。

「どのようなお歌ですか?」

沖田総司は少女に微笑んで話し出す。

「“山里は 冬ぞさびしさ まさりける 人目も草も かれぬと思へば”という歌だよ。」

少女は沖田総司に不思議そうに話し出す。

「寂しいお歌ですね。」

沖田総司は少女に微笑んで話し出す。

「この歌を見付けた時に、山南さんが明里さんに贈るとしたら良い歌だと思ったんだ。」

少女は沖田総司に微笑んで話し出す。

「私も山南さんが明里さんに贈るのに良いお歌だと思います。」

沖田総司は少女に嬉しそうに話し出す。

「鈴ちゃんも同じ考えなんだ! 良かった!」

少女は沖田総司を微笑んで見た。

沖田総司は斉藤一を見ると、嬉しそうに話し出す。

「斉藤さんも良いと言ってくれたし、鈴ちゃんも私と同じ考えです! 嬉しいです!」

斉藤一は沖田総司に普通の表情で頷いた。

沖田総司は斉藤一と少女に笑顔で話し出す。

「山南さんと明里さんが喜んでくれるといいな!」

少女は沖田総司に微笑んで話し出す。

「お二人も喜ぶと思います。」

沖田総司は少女の手を笑顔で取った。

少女は沖田総司を驚いた表情で見た。

沖田総司は少女の手を取りながら、心配そうな表情になった。

少女は沖田総司を不思議そうに見た。

沖田総司は少女の手を優しく握ると、心配そうに話し出す。

「鈴ちゃん。手が冷たいよ。辛いところはない? 大丈夫?」

少女は沖田総司に微笑んで話し出す。

「大丈夫です。」

沖田総司は少女を抱き寄せると、心配そうに話し出す。

「無理をしては駄目だよ。」

少女は沖田総司に微笑んで頷いた。

斉藤一は沖田総司と少女を普通の表情で見た。



その日の夜の事。



ここは、島原。



今夜もたくさんの人達が集まってきている。



ここは、明里の働いている店。



店の中に在る一室。



山南敬助と明里は、一緒に居る。



山南敬助は明里に微笑んで話し出す。

「約束どおり直ぐに来ました。」

明里は山南敬助に微笑んで話し出す。

「嬉しいです。」

山南敬助は明里に微笑んで話し出す。

「総司が私から明里に贈るのに良い歌を見つけたと喜んで教えてくれました。」

明里は山南敬助に微笑んで話し出す。

「どのような歌ですか?」

山南敬助は明里に微笑んで話し出す。

「山里は 冬ぞさびしさ まさりける 人目も草も かれぬと思へば」

明里は山南敬助に微笑んで抱き付いた。

山南敬助は明里を驚いた様子で受け止めた。

明里は山南敬助に微笑んで話し出す。

「寂しい歌ですが、私は大好きな歌です。」

山南敬助は明里を微笑んで抱いた。

明里は山南敬助を抱き付きながら、微笑んで話し出す。

「先生。沖田様と斉藤様と美鈴様に、お礼がしたいです。」

山南敬助は明里を抱きながら、微笑んで話し出す。

「今の時期は、外で花を見るのは寒いですよね。五人で美味しい物を食べに行くというのは、どうでしょうか?」

明里は山南敬助に抱き付きながら、微笑んで頷いた。

山南敬助は微笑みながら、明里を僅かに強く抱きしめた。



今は冬。

京の町は、草が枯れても、たくさんの想いと共に、季節の花がたくさんの花が咲いている。

明里と少女には、季節に関係なく訪ねてくる人がいる。

山南敬助と沖田総司は、季節に関係なく逢いに行く人がいる。

斉藤一は、季節に関係なく重なり合う想いを静かに見守っている。




*      *       *      *      *      *




ここからは後書きになります。

この物語に登場する歌は、「小倉百人一首 第二十八番」、及び、「古今集」です。

「山里は 冬ぞさびしさ まさりける 人目も草も かれぬと思へば」

ひらがなの読み方は、「やまさとは ふゆぞさびしさ まさりける ひとめもくさも かれぬとおもへば」です。

作者は、「源宗于朝臣(みなもとのむねゆきあそん)」です。

意味は、「山里は冬は特に寂しさまさるものですね。人も訪ねてこなくなり、草も枯れてしまうと思うと」となるそうです。

「山里(やまさと)」は、「山間の村里。山間に在る人里。山郷の別荘。」をいいます。

貴族の人達は、「山里」を「京近郊に在る景勝地に富んだ別荘・山荘」という意味で使う事が多いそうです。

「山里」は、山南敬助さんの「山」と、明里さんの「里」で、「山里」となります。

「山里」を題名に使って、山南敬助さんと明里さんが登場する「新撰組異聞 短編 山里の緑の紅葉」という物語を書きました。

百人一首の歌を改めて読み返していた時に、この「山里」が詠み込まれている歌を見て、山南敬助さんと明里さんを直ぐに思い浮かべました。

「雪月花 新撰組異聞 編」でも、山南敬助さんと明里さんが登場する物語を書こうと思いました。

山南敬助さんと明里さんが逢っている頃は、「池田屋事変」が起きた年になります。

「池田屋事変」では、沖田総司さんは斬り込みの最中に倒れています。

「限りの月(かぎりのつき)」は、「一年の最後の月。十二月。」をいいます。

「限り月(かぎりづき)」と書いて読む事もあります。

楽しんで頂けると嬉しいです。





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