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〜 雪月花 新撰組異聞 編 〜


〜 秋の夜長の夢語り 古の名の薔薇 常に 〜


〜 改訂版 〜


登場人物

土方歳三、沖田総司、斉藤一、少女[美鈴・鈴]

夜の国の住人 夢




「世の中は 常にもがもな 渚こぐ あまの小舟の 綱でかなしも」

「小倉百人一首 九三番」、及び、「新勅撰集」

作者:鎌倉右大臣(かまくらうだいじん)




秋の季節。



ここは、京の町。



日中は過ごしやすいが、陽が落ちると肌寒さを感じるようになってきた。



今は夜。



夜空には月と星が綺麗に輝いている。



ここは、屯所。



沖田総司の部屋。



沖田総司は床の中で静かに寝ている。



部屋の中が不思議な空気に包まれた。



沖田総司は床の中でゆっくりと目を開けた。



少女が沖田総司を笑顔で覗き込んでいる。



沖田総司には、夜の国の住人で少女と同じ姿の“夢”だと直ぐに分かった。



沖田総司は床の中で、夢に微笑んで話し出す。

「夢ちゃん。今晩は。」

夢は沖田総司から微笑んでゆっくりと離れた。

沖田総司は床の上に微笑んで体を起こした。

夢は沖田総司に微笑んで抱き付いた。

沖田総司は床の上に体を起こして、赤面して動きを止めた。



夢は沖田総司を微笑んで抱いて、不思議な空気に包まれた。

沖田総司は床の上に赤面して動きを止めて、不思議な空気に包まれた。



一瞬の後の事。



ここは、夜の国。



夜空には月と満天の星が綺麗に輝いている。



心地良い気空に包まれている。



見渡す限りの草原。



夢は沖田総司を微笑んで抱いて、静かに現れた。

沖田総司は赤面して動きを止めて、静かに現れた。



夢は沖田総司から微笑んでゆっくりと放れた。

沖田総司は夢を赤面して見た。

夢は沖田総司に微笑んで話し出す。

「こんばんは。照れ屋の総司さん。」

沖田総司は夢に赤面して話し出す。

「私は照れ屋ではないよ。」

夢は沖田総司に抱き付くと、沖田総司に微笑んで話し出す。

「総司さん。否定をしないでください。素直になってください。」

沖田総司は夢を赤面して見た。

夢は沖田総司から微笑んで放れた。

沖田総司は夢に赤面して話し出す。

「夢ちゃん。突然に何をするの?」

夢は沖田総司に微笑んで話し出す。

「総司さんは、私が抱き付くと、赤面して、動きが止まるか黙ります。総司さんの照れ屋さんが証明されました。」

沖田総司は夢に赤面して話し出す。

「夢ちゃんが驚かす言動をするからだよ。」

夢は沖田総司に微笑んで話し出す。

「総司さんが照れ屋さんだと証明されたので、本題に移ります。」

沖田総司は夢に赤面して話し出す。

「だから、私は照れ屋ではないよ。」

夢は沖田総司に微笑んで話し出す。

「総司さん。恥ずかしがらないでください。本題に移れません。」

沖田総司は夢を赤面して困惑して見た。



薔薇の花の甘い香りが、沖田総司の元と夢の元に、届いた。



沖田総司は辺りを赤面して不思議な様子で見た。

夢は沖田総司に微笑んで話し出す。

「本題が届きました。」

沖田総司は夢を赤面して不思議な様子で見た。

夢は沖田総司に微笑んで話し出す。

「後は、斉藤さんに質問してください。私は、一旦失礼します。」

沖田総司は夢を赤面して不思議な様子で見ている。



夢は微笑んで、静かに居なくなった。



斉藤一は普通の表情で、静かに現れた。



沖田総司は斉藤一に微笑んで話し出す。

「斉藤さん。今晩は。」

斉藤一は沖田総司に普通の表情で頷いた。

沖田総司は斉藤一に苦笑して出す。

「夢ちゃんは私の照れ屋が証明されたと話しました。私は照れ屋ではありません。夢ちゃんの勘違いを訂正する方法を知りませんか?」

斉藤一は沖田総司に普通に話し出す。

「総司。事実を訂正したいのか?」

沖田総司は斉藤一に拗ねて話し出す。

「斉藤さんまで私を照れ屋だと話すのですか?」

斉藤一は沖田総司に普通の表情で頷いた。

沖田総司は斉藤一を拗ねて見た。

斉藤一は沖田総司に普通に話し出す。

「総司。どうでも良い話題で時間を使うな。本題に入れない。」

沖田総司は斉藤一に拗ねて頷いた。

斉藤一は沖田総司に普通に話し出す。

「総司。夜の国では、春と秋に見頃を迎える薔薇が多いそうだ。」

沖田総司は斉藤一を不思議な様子で見た。

斉藤一は沖田総司に普通に話し出す。

「総司。“清水冠者物語”を知っているか?」

沖田総司は斉藤一に不思議な様子で話し出す。

「清水冠者物語。木曽義仲の嫡男の源義高と鎌倉の幕府の嫡女の大姫の悲恋物語ですか?」

斉藤一は沖田総司に普通の表情で頷いた。

沖田総司は斉藤一を不思議な様子で見た。

斉藤一は沖田総司に普通に話し出す。

「総司。“世の中は 常にもがもな 渚こぐ あまの小舟の 綱でかなしも”。小倉百人一首に掲載している歌だ。知っているか?」

沖田総司は斉藤一を不思議な様子で見ている。

斉藤一は沖田総司を普通の表情で見た。

沖田総司は斉藤一に不思議な様子で話し出す。

「斉藤さん。何時から本題に入るのですか?」

斉藤一は沖田総司に普通に話し出す。

「既に本題に入っている。」

沖田総司は斉藤一を不思議な様子で見た。

斉藤一は沖田総司を普通の表情で見た。

沖田総司は斉藤一に微笑んで話し出す。

「斉藤さん。私も本題に入ります。鈴ちゃんは夜の国に着ていますよね。」

斉藤一は沖田総司に普通に話し出す。

「総司。俺の本題は終わっていない。」

沖田総司は斉藤一に微笑んで話し出す。

「鈴ちゃんとたくさん一緒に居たいです。鈴ちゃんも斉藤さんの本題を聞いても良いですよね。」

斉藤一は沖田総司を普通の表情で見た。

沖田総司は斉藤一に微笑んで話し出す。

「斉藤さん。鈴ちゃんの居場所を知っていますか?」

斉藤一は沖田総司を普通の表情で見ている。

沖田総司は斉藤一を微笑んで見た。

斉藤一は沖田総司に普通に話し出す。

「総司の望むとおり、美鈴さんを呼ぶ。少し待っていろ。」

沖田総司は斉藤一に微笑んで話し出す。

「はい。」



斉藤一は普通の表情で、静かに居なくなった。



沖田総司は薔薇の花を微笑んで見た。



薔薇の花は、月と満天の星の輝きを受けて淡く輝いている。



沖田総司は薔薇の花を見ながら、微笑んで呟いた。

「鈴ちゃんに薔薇の花を早く見て欲しいな。鈴ちゃんの笑顔を見る時が楽しみだな。」



斉藤一は普通の表情で、静かに現れた。

少女は微笑んで、静かに現れた。



沖田総司は斉藤一と少女を微笑んで見た。

少女は沖田総司に微笑んで話し出す。

「総司さん。こんばんは。」

沖田総司は少女に微笑んで話し出す。

「鈴ちゃん。今晩は。」

少女は沖田総司を微笑んで見た。

沖田総司は少女を見ながら、薔薇の花を微笑んで指した。

少女は薔薇の花を見ると、沖田総司に微笑んで話し出す。

「薔薇の花が綺麗に咲いています。薔薇の花の香りも素敵です。」

沖田総司は薔薇の花を指すのを止めると、少女に微笑んで話し出す。

「夜の国では、薔薇は春と秋に見頃を迎えるんだって。秋の薔薇の花も綺麗に咲くね。秋の薔薇の花の香りも素敵だよね。」

少女は沖田総司を見ると、沖田総司に微笑んで話し出す。

「はい。」

沖田総司は少女を微笑んで見た。

少女は沖田総司に微笑んで話し出す。

「総司さん。赤色の花の咲く薔薇の名前。知っていますか?」

沖田総司は斉藤一を確認する様子で見た。

斉藤一は少女に普通に話し出す。

「赤い薔薇の花は、古の鎌倉に居た“大姫”を想像して作出されたそうだ。」

少女は沖田総司に微笑んで話し出す。

「古の鎌倉に居た大姫さん。源頼朝さんと北条政子さんの嫡女さんですか?」

斉藤一は少女に普通に話し出す。

「さすが。美鈴さん。正解だ。」

少女は斉藤一に微笑んで話し出す。

「大姫さんの登場する物語を読んだ時が有るので答えられました。褒められると照れます。」

斉藤一は少女を普通の表情で見た。

少女は斉藤一に微笑んで話し出す。

「斉藤さん。何故、夜の国の方達が大姫さんをご存知なのですか?」

斉藤一は少女に普通に話し出す。

「様々な状況から、総司や俺の住む場所に関する物などに興味を持つ人物が多いそうだ。大姫を知った人物が、大姫を想像して薔薇を作出したそうだ。」

少女は斉藤一を微笑んで見た。

斉藤一は少女を普通の表情で見た。

沖田総司は少女に僅かに慌てて話し出す。

「鈴ちゃん。話を少し戻すね。清水冠者物語を読んだんだ。」

少女は沖田総司を見ると、沖田総司に微笑んで話し出す。

「はい。」

沖田総司は少女を微笑んで見た。

斉藤一は少女に普通に話し出す。

「美鈴さん。大姫に繋がる作者の歌が、小倉百人一首に掲載している。知っているか?」

少女は斉藤一に微笑んで話し出す。

「“世の中は 常にもがもな 渚こぐ あまの小舟の 綱でかなしも”、でしょうか?」

斉藤一は少女に普通に話し出す。

「さすが。美鈴さん。悩まずに歌を詠んだ。」

少女は斉藤一に恥ずかしく話し出す。

「褒めて頂いてありがとうございます。」

沖田総司は斉藤一を不思議な様子で見た。

斉藤一は沖田総司に普通に話し出す。

「総司の望むとおり、美鈴さんと一緒に本題の続きを話している。」

沖田総司は斉藤一を動揺して見た。

斉藤一は沖田総司に普通に話し出す。

「総司の希望を叶えた。動揺するな。喜べ。」

沖田総司は斉藤一に動揺して話し出す。

「無理かも知れません!」

斉藤一は沖田総司を普通の表情で見た。

少女は沖田総司と斉藤一を不思議な様子で見た。

斉藤一は少女に普通に話し出す。

「美鈴さん。薔薇の大姫は、総司が美鈴さんのために用意した。」

沖田総司は斉藤一を驚いて見た。

少女は沖田総司に微笑んで話し出す。

「総司さん。ありがとうございます。」

沖田総司は少女を驚いて見た。

少女は沖田総司を微笑んで見た。

沖田総司は少女に恥ずかしく話し出す。

「京の町に戻ったら、清水冠者物語と歌について、勉強するね。薔薇の大姫が咲く間に夜の国に再び訪れて、鈴ちゃんと斉藤さんと一緒に、たくさん話したいな。」

少女は沖田総司に微笑んで話し出す。

「薔薇の大姫を見ながら話す時間。楽しみです。」

斉藤一は沖田総司と少女に普通に話し出す。

「総司。夜の国の出来事は、京の町に戻ると思い出せない。勉強は出来ない。良いのか?」

沖田総司は斉藤一に微笑んで話し出す。

「夢を見た記憶が僅かに残っている時があります。今回の話の内容の一部を僅かだけ覚えている可能性があります。」

斉藤一は沖田総司に普通に話し出す。

「僅かでも覚えていない時の可能性は考えないのか?」

沖田総司は斉藤一に微笑んで話し出す。

「その時は、その時です。」

斉藤一は沖田総司を普通の表情で見た。

沖田総司は少女を微笑んで見た。

少女も沖田総司を微笑んで見た。

斉藤一は沖田総司と少女を普通の表情で見た。



暫く後の事。



ここは、京の町。



青空に白い雲が浮かんでいる。



ここは、屯所。



土方歳三の部屋。



土方歳三は机に普通の表情で向かっている。



沖田総司は部屋を微笑んで訪ねた。

斉藤一は部屋を普通に訪ねた。



土方歳三は沖田総司と斉藤一を微笑んで見た。

沖田総司は土方歳三に微笑んで話し出す。

「土方さん。斉藤さんから準備が出来たと聞きました。」

土方歳三は沖田総司の前にたくさんの本を置いた。

沖田総司は本を驚いた表情で見た。

斉藤一は土方歳三と本を普通の表情で見た。

土方歳三は沖田総司に微笑んで話し出す。

「総司。清水冠者物語には幾つもの伝本がある。出来る範囲で用意した。清水冠者物語の登場人物の大姫には、源実朝、という名前の弟がいる。源実朝の詠んだ歌は、“金槐和歌集”として残っている、小倉百人一首にも掲載している。源実朝の詠んだ歌ではないが、鎌倉を詠んだ歌がある。物語も歌も、じっくりと教える。」

沖田総司は土方歳三に苦笑して話し出す。

「歌については、少しだけ教えてください。」

土方歳三は沖田総司に微笑んで話し出す。

「総司。俺は嬉しいんだ。遠慮するな。」

沖田総司は斉藤一を苦笑して見た。

斉藤一は土方歳三に普通に話し出す。

「総司は喜びの余り言葉になりません。俺も一緒に学べて嬉しいです。」

沖田総司は斉藤一を驚いた表情で見た。

土方歳三は沖田総司と斉藤一を微笑んで見た。

沖田総司は土方歳三と斉藤一を見ながら、苦笑して軽く息をはいた。



「世の中は 常にもがもな 渚こぐ あまの小舟の 綱でかなしも」

古の姫の登場する悲恋物語。

古の姫の弟の詠んだ歌。

土方歳三、沖田総司、斉藤一と共に、未来の人達に知られている。




*      *      *      *      *      *




ここからは後書きになります。

この物語は既に掲載している物語の改訂版です。

改訂前の物語の展開や雰囲気を出来るだけ残して改訂しました。

改訂前の物語を掲載するのは止めました。

以上、ご了承願います。

ここからは改訂前の後書きを加筆訂正して書きます。

この物語に登場する歌は「小倉百人一首 九三番」、及び、「新勅撰集」

「世の中は 常にもがもな 渚こぐ あまの小舟の 綱でかなしも」

ひらがなの読み方は「よのなかは つねにもがもな なぎさこぐ あまのこぶねの つなでかなしも」

作者は「鎌倉右大臣(かまくらうだいじん)」

歌の意味は「この平和な世の中は、永遠に変わらないで欲しいものです。なぎさを漕いでいく漁師の小船の引き綱にでさえも心を動かされるのですから。」となるそうです。

「鎌倉右大臣」は「源実朝(みなもとのさねとも)」です。

源頼朝と北条政子の間に生まれた次男です。

「大姫(おおひめ)」の弟です。

「金槐和歌集」が残っています。

「薔薇(ばら)」について簡単に説明します。

「浜茄子(はまなす)」や「野茨[“野薔薇”とも書く](のいばら)」など、日本には古くから咲いているバラが有ります。

「野茨(のいばら)」は、万葉集にも登場します。

現在の良く見掛ける姿のバラの多くは、沖田総司さん達の時代より後に作られています。

沖田総司さん達も一部の種類のバラは見られた事になります。

バラの「大姫(おおひめ)」について簡単に説明します。

源頼朝と北条政子の間に生まれた嫡女の「大姫」をイメージして作出と名付けたバラだそうです。

2008年に登録された新しいバラです。

明るい赤色で微香のあるバラだそうです。

今回の物語に登場するバラは、「大姫」をイメージして書きました。

「清水冠者物語(しみずのかんじゃものがたり)」について簡単に説明します。

鎌倉時代末期から室町時代の間に成立した物語と伝えられています。

作者は不明です。

「大姫」と「源義高(みなもとのよしたか)」の悲恋物語です。

物語にするための関係だと思いますが、源義高も大姫も史実で伝わる年齢より高い年齢の設定になっているそうです。

幾つもの伝本が伝わっているそうです。

大姫の存在は江戸時代には既に知られていた事になります。

「大姫」、「源義高」、「源実朝」は、簡単な説明になりますが「鎌倉夢語り 登場人物について」をご参照ください。

「古(いにしえ)」についてです。

「過ぎ去った古い時代。過ぎ去った月日。」と「亡くなった人」という意味があります。

楽しんで頂けると嬉しいです。





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