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〜 雪月花 新撰組異聞 編 〜


〜 春 花菜の綾 折りはやし 〜


〜 改訂版 〜


登場人物

土方歳三、沖田総司、斉藤一、少女[美鈴・鈴]




「上野の 佐野の茎立 折りはやし あれは待たむゑ 今年来ずとも」

「万葉集 第十四巻 三四〇六番」より

作者:詠み人知らず




今は春。



ここは、京の町。



寒さを感じる時があるが、暖かさも感じるようになった。



ここは、落ち着いた雰囲気の寺。



本堂。



沖田総司は微笑んで居る。

少女も微笑んで居る。



沖田総司は少女に微笑んで話し出す。

「菜の花を見たんだ。菜の花が鮮やかで眩しく感じたんだ。」

少女は沖田総司に微笑んで話し出す。

「菜の花は鮮やかで眩しい色だと思います。菜の花を見ると、気持ちが明るくなります。」

沖田総司は少女に微笑んで話し出す。

「油菜は、油を採る、食用、鮮やかで眩しい花の色で明るい気持ちになる。とても良い植物だね。」

少女は沖田総司に微笑んで話し出す。

「はい。」

沖田総司は少女に微笑んで話し出す。

「菜の花は鈴ちゃんの笑顔に似ているね。菜の花を見ると、鈴ちゃんを思い出すよ。」

少女は沖田総司に恥ずかしく話し出す。

「お世辞でも褒めて頂いてありがとうございます。」

沖田総司は少女に微笑んで話し出す。

「お世辞ではないよ。」

沖田総司は少女を微笑んで見た。

少女は沖田総司を恥ずかしく見た。



暫く後の事。



ここは、屯所。



斉藤一の部屋。



斉藤一は普通に居る。



沖田総司は部屋の中に微笑んで入ってきた。



斉藤一は沖田総司を普通の表情で見た。

沖田総司は斉藤一に微笑んで話し出す。

「鈴ちゃんに、鈴ちゃんの笑顔と菜の花が似ていると話しました。鈴ちゃんは恥ずかしい仕草を見せましたが、喜んでくれました。」

斉藤一は沖田総司に普通の表情で頷いた。

沖田総司は斉藤一に微笑んで話し出す。

「斉藤さん。菜の花を詠んだ歌を知っていたら教えてください。」

斉藤一は沖田総司に普通に話し出す。

「菜の花ではなく、菜を詠んだ歌で良いか?」

沖田総司は斉藤一に微笑んで話し出す。

「はい。」

斉藤一は沖田総司に普通に話し出す。

「“上野の 佐野の茎立 折りはやし あれは待たむゑ 今年来ずとも”。」

沖田総司は斉藤一に微笑んで話し出す。

「鈴ちゃんに斉藤さんが詠んだ歌を贈ります。斉藤さん。歌を覚えたいです。歌を紙に書いてください。お願いします。」

斉藤一は沖田総司に普通に話し出す。

「総司。歌の意味を確認しないのか?」

沖田総司は斉藤一に微笑んで話し出す。

「斉藤さん。素晴らしい指摘をありがとうございます。歌の意味を教えてください。」

斉藤一は沖田総司に普通に話し出す。

「素晴らしい指摘ではなく、普通の指摘だ。総司は美鈴さんの関係になると、後先を考えない言動になる。総司が俺の話で落ち着くから、俺の指摘が素晴らしく感じるだけだ。」

沖田総司は斉藤一を恥ずかしく見た。

斉藤一は沖田総司に普通に話し出す。

「歌の意味は、“上野の佐野の、菜を折って、料理して、私は待っていますわ、とたえ今年は、あなたがいらっしゃらなくても・・・”、となるそうだ。“私は待っていますわ”の部分には、“いつまでも”を含んでいるそうだ。」

沖田総司は斉藤一に考えながら話し出す。

「“上野の佐野の、菜を折って、料理して、私は、いつまでも、待っていますわ、とたえ今年は、あなたがいらっしゃらなくても・・・”」

斉藤一は沖田総司に普通の表情で頷いた。

沖田総司は斉藤一に考えながら話し出す。

「鈴ちゃんに贈り難い歌ですね。」

斉藤一は沖田総司に普通の表情で頷いた。

沖田総司は斉藤一に考えながら話し出す。

「斉藤さん。他の歌を教えてください。」

斉藤一は沖田総司に普通に話し出す。

「知らない。」

沖田総司は斉藤一を困惑して見た。

斉藤一は沖田総司に普通に話し出す。

「総司。近藤さんか土方さんに相談しろ。」

沖田総司は斉藤一に慌てて話し出す。

「駄目です!」

斉藤一は沖田総司に普通に話し出す。

「近藤さんか土方さんに相談しないならば、美鈴さんに、“上野の 佐野の茎立 折りはやし あれは待たむゑ 今年来ずとも”、を贈れ。」

沖田総司は斉藤一に慌てて話し出す。

「駄目です!」

斉藤一は沖田総司に普通に話し出す。

「美鈴さんに今回は歌を贈るな。」

沖田総司は斉藤一に慌てて話し出す。

「駄目です!」

斉藤一は沖田総司に普通に話し出す。

「総司は美鈴さんに歌を贈る約束していないのだろ。総司が美鈴さんに歌を贈らなくても、美鈴さんは悲しまない。」

沖田総司は斉藤一に拗ねて話し出す。

「私は〜 菜の花の咲く間に〜 菜を詠んだ歌を〜 鈴ちゃんに贈りたいです〜 鈴ちゃんの笑顔がたくさん見たいです〜 斉藤さんは意地悪です〜」

斉藤一は沖田総司に普通に話し出す。

「菜の花の咲く期間は暫く続く。菜を詠んだ歌を探す。暫く待て。」

沖田総司は斉藤一に笑顔で話し出す。

「斉藤さん! ありがとうございます!」

斉藤一は沖田総司に普通の表情で頷いた。

沖田総司は斉藤一を笑顔で見た。



数日後の事。



ここは、落ち着いた雰囲気の寺。



本堂。



斉藤一は普通に居る。

少女は微笑んで居る。



少女は斉藤一に微笑んで話し出す。

「総司さんは楽しい趣向を用意すると話して居なくなりました。楽しみです。」

斉藤一は少女に普通の表情で頷いた。

少女は斉藤一を微笑んで見た。



沖田総司は菜の花の花束を抱えて、本堂の中に微笑んで入ってきた。



少女は沖田総司と菜の花を微笑んで見た。

斉藤一は沖田総司を普通の表情で見た。

沖田総司は菜の花の花束を抱えて、少女に微笑んで話し出す。

「菜の花の花束を用意したんだ。」

少女は沖田総司に微笑んで話し出す。

「今の時期に菜の花をたくさん用意するのは大変でしたよね。」

沖田総司は菜の花の花束を抱えて、少女に微笑んで話し出す。

「野原に咲いた菜の花を摘んで、油菜畑の外の管理していない場所に咲く菜の花を分けてもらったんだ。今の時期は菜の花がたくさん咲いていないけれど、斉藤さんに手伝ってもらって、幾つかの所で菜の花の咲き具合を確認して、幾つかの家で頼んだんだ。想像より楽だったよ。」

少女は沖田総司と斉藤一を微笑んで見た。

沖田総司は少女に菜の花の花束を渡すと、少女に微笑んで話し出す。

「鈴ちゃん。菜の花を受け取ってくれると嬉しいな。」

少女は沖田総司から菜の花の花束を受け取ると、沖田総司と斉藤一に微笑んで話し出す。

「ありがとうございます。」

沖田総司は少女を微笑んで見た。

斉藤一は少女に普通の表情で頷いた。

沖田総司は少女に微笑んで話し出す。

「鈴ちゃんに菜の花と菜の花を詠んだ歌を贈りたいと考えたんだ。斉藤さんが該当する歌を一首だけ知っていたけれど、鈴ちゃんへの贈り物に相応しい歌ではなかったんだ。斉藤さんに、鈴ちゃんへの贈り物に相応しい菜の花を詠んだ歌を探してもらったけれど、見付からなかったんだ。斉藤さんと相談して、今回は菜の花だけを贈り物にしたんだ。」

少女は菜の花の花束を抱えて、沖田総司と斉藤一に微笑んで話し出す。

「斉藤さんがご存知の菜の花を詠んだお歌。知りたいです。」

沖田総司は少女に微笑んで話し出す。

「“上野の 佐野の茎立 折りはやし あれは待たむゑ 今年来ずとも”。」

少女は菜の花の花束を抱えて、沖田総司と斉藤一に微笑んで話し出す。

「万葉集に掲載しているお歌ですか?」

斉藤一は少女に普通の表情で頷いた。

沖田総司は少女に僅かに慌てて頷いた。

少女は菜の花の花束を抱えて、沖田総司と斉藤一に微笑んで話し出す。

「総司さん。斉藤さん。“上野の 佐野の茎立 折りはやし あれは待たむゑ 今年来ずとも”。今回の贈り物の候補のお歌も頂きたいです。」

沖田総司は少女に不思議な様子で話し出す。

「私も斉藤さんも、鈴ちゃんへの贈り物に相応しい歌だと考えていないよ。鈴ちゃん。歌も受け取るの?」

少女は菜の花の花束を抱えて、沖田総司と斉藤一に微笑んで話し出す。

「総司さんと斉藤さんが、私のための贈り物の候補にしたお歌です。菜の花とお歌の両方を頂きます。ありがとうございます。」

沖田総司は少女を微笑んで見た。

斉藤一は少女に普通の表情で頷いた。

少女は菜の花の花束を抱えて、沖田総司と斉藤一を微笑んで見た。



数日後の事。



ここは、料亭。



一室。



土方歳三は杯の酒を微笑んで飲んでいる。

斉藤一は杯の酒を普通の表情で飲んでいる。

土方歳三の膳と斉藤一の膳には、酒と肴が載っている。



土方歳三は杯の酒を飲みながら、斉藤一に微笑んで話し出す。

「あの子は斉藤が知る歌を贈り物として受け取ったんだ。」

斉藤一は杯の酒を飲みながら、土方歳三に普通の表情で軽く礼をした。

土方歳三は杯の酒を飲みながら、斉藤一に微笑んで話し出す。

「総司は斉藤の指導を受けながら、贈り物にしない歌を渋々と覚えていたな。総司は歌を覚えて正解だったな。」

斉藤一は杯の酒を飲みながら、土方歳三に普通の表情で軽く礼をした。

土方歳三は杯の酒を飲みながら、斉藤一に微笑んで話し出す。

「斉藤。異国には花に意味を持たせる言葉がある。」

斉藤一は杯の酒を飲みながら、土方歳三に普通の表情で軽く礼をした。

土方歳三は杯の酒を飲みながら、斉藤一に微笑んで話し出す。

「菜の花には、小さな幸せ、予期せぬ出会い、豊かさ、快活、財産、などの意味があるそうだ。」

斉藤一は杯の酒を飲みながら、土方歳三を普通の表情で見た。

土方歳三は杯の酒を飲みながら、斉藤一に微笑んで話し出す。

「予期せぬ出逢い。予期した出逢い。総司とあの子の該当する出逢いは、どちらだと思う?」

斉藤一は杯の酒を飲みながら、土方歳三を普通の表情で見ている。

土方歳三は杯の酒を飲みながら、斉藤一に微笑んで話し出す。

「予期せぬ出逢い。予期した出逢い。総司と斉藤。斉藤とあの子。それぞれに該当する出逢いは、どちらだと思う?」

斉藤一は杯の酒を飲みながら、土方歳三を普通の表情で見ている。

土方歳三は杯の酒を飲みながら、斉藤一に微笑んで話し出す。

「分かりきった質問をしたな。」

斉藤一は杯の酒を飲みながら、土方歳三に普通の表情で軽く礼をした。

土方歳三は杯の酒を飲みながら、斉藤一を微笑んで見た。



「上野の 佐野の茎立 折りはやし あれは待たむゑ 今年来ずとも」

少女は、沖田総司と斉藤一が贈り物にしなかった歌だが、喜んで受け取った。

菜の花は、鮮やかで眩しい色の花が咲く。

菜の花の花言葉には、小さな幸せ、予期せぬ出会い、豊かさ、快活、財産、などがある。

沖田総司は斉藤一と少女にとって、斉藤一は沖田総司と少女にとって、少女は沖田総司と斉藤一にとって、菜の花の花言葉に該当する人物になっている。




*      *      *      *      *      *




ここからは後書きになります。

この物語は既に掲載している物語の改訂版です。

改訂前の物語の展開や雰囲気を出来るだけ残して改訂しました。

改訂前の物語を掲載するのは止めました。

以上、ご了承願います。

ここからは改訂前の後書きを加筆訂正して書きます。

この物語に登場する歌は「万葉集 第十四巻 三四〇六番」

「上野の 佐野の茎立 折りはやし あれは待たむゑ 今年来ずとも」

ひらがなの読み方は「かみつけの さののくくたち おりはやし あれはまたむゑ ことしこずとも」

作者は「詠み人知らず」

歌の意味は「上野(かみつけ)の佐野の、菜を折って、料理して、私は(いつまでも)待っていますわ、とたえ今年は、あなたがいらっしゃらなくても・・・」となるそうです。

原文は「可美都氣野 左野乃九久多知 乎里波夜志 安礼波麻多牟恵 許登之許受登母」

「折りはやし」の「はやし」とは、「(切って)料理して」というような意味だと考えられるそうです。

最近まで、包丁で切ったり、野菜などを切ったりする事を「はやす」と言う地方(仙台、青森、秋田、新潟、富山、など)があったそうです。

菜を若芽のときから、料理して待っていたけれどあなたはいらっしゃらなくて、もう菜のとうがたってしまったようになって、それでも、私はその菜を折って、あなたのために美味しく料理して待っていますわ・・・

などの意味を含んでいるそうです。

「茎立(くくたち)」は、菜とうのたった「蕪(かぶ)」や「油菜(あぶらな)」の事をいうようです。

古代の食料として重要だったようですが、万葉集では一首にしか登場しないそうです。

「菜の花(なのはな)」についてです。

「油菜(あぶらな)の花」、「菜種(なたね)の花」です。

「花菜(はなな)」とも呼びます。

「菜の花」や「花菜」は、アブラナ属の栽培品種を差します。

「野菜の花」という意味です。

食用、観賞用、修景用、油の採取用、などのために栽培しています。

食用、観賞用、修景用、油の採取用などで種類が違う事があるそうですが、花の色や姿が似ているため、全て菜の花と呼ぶ事があります。

桃の節句の時に、桃の花と共に飾る風習があるそうです。

桃の節句の時に、桃の花と共に飾る風習は、江戸時代から始まったようです。

日本では、弥生時代に渡来し、弥生時代以降から栽培などで利用されていたそうです。

古事記には別な名前で登場しているそうです。

万葉集に「茎立(くくたち)」が登場します。

「茎立」が菜の花ではないかと考えられています。

植物油の採取のために栽培されるようになったのは、江戸時代からのようです。

現在は、植物油の原料として生産される菜の花の多くは「西洋油菜(せいようあぶらな)」だそうです。

現在は、在来種の「油菜(あぶらな)」は、野菜として生産される事が多く、開花前に収穫する事が多いそうです。

菜の花の花言葉は「快活。活発。豊かさ。財産。快活な愛。競争。元気いっぱい。小さな幸せ。予期せぬ出会い。」などです。

花言葉は、姿、色、解釈、などで変わります。

花言葉・歴史などの詳細は、各自でご確認お願いします。

楽しんで頂けると嬉しいです。





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