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〜 雪月花 新撰組異聞 編 〜
〜 春夏秋冬 弥生 母とふ花の 〜
〜 改訂版 〜
登場人物
土方歳三、沖田総司、斉藤一、少女[美鈴・鈴]
「時々の 花は咲けども 何すれぞ 母とふ花の 咲き出来ずけむ」
「万葉集 第二十巻 四三二三番」より
作者:丈部真麻呂(はせべのままろ)
今は春。
ここは、京の町。
穏やかな気候の日が続いている。
季節の花がたくさん咲いている。
ここは、落ち着いた雰囲気の寺。
境内には季節の花がたくさん咲いている。
少女が季節の花を微笑んで見ている。
土方歳三の穏やかな声が、少女の後ろから聞こえた。
「こんにちは。」
少女は後ろを不思議な様子で見た。
土方歳三が少女を微笑んで見ている。
少女は土方歳三に不思議な様子で軽く礼をした。
土方歳三は少女に微笑んで話し出す。
「せっかく逢えたんだ。声を聞かせてくれ。」
少女は土方歳三に小さい声で話し出す。
「こんにちは。」
土方歳三は少女を微笑んで見た。
少女は土方歳三を不思議な様子で見た。
土方歳三は少女に微笑んで話し出す。
「俺が現れたのが不思議なんだ。」
少女は土方歳三に小さい声で話し出す。
「いいえ。」
土方歳三は少女に微笑んで話し出す。
「本当に不思議に思わないの?」
少女は土方歳三を僅かに困惑した様子で見た。
土方歳三は少女に微笑んで話し出す。
「俺が怖い?」
少女は土方歳三に小さい声で話し出す。
「いいえ。」
土方歳三は少女を微笑んで見た。
少女は土方歳三を僅かに困惑した様子で見た。
土方歳三は少女に微笑んで話し出す。
「突然だけど、春は数多の種類の花が咲くよね。」
少女は土方歳三に小さい声で話し出す。
「はい。」
土方歳三は少女に微笑んで話し出す。
「“時々の 花は咲けども 何すれぞ 母とふ花の 咲き出来ずけむ”。今の歌を知っているかな?」
少女は土方歳三に僅かに困惑した様子で話し出す。
「はい。」
土方歳三は少女に微笑んで話し出す。
「さすがだな。」
少女は土方歳三に僅かに困惑した様子で話し出す。
「褒めて頂いてありがとうございます。」
土方歳三は少女に微笑んで話し出す。
「母という名前の花は無いが、母を想像する花は有るよな。」
少女は土方歳三に僅かに困惑した様子で話し出す。
「はい。」
土方歳三は少女に微笑んで話し出す。
「総司に質問したら、何と答えると思う?」
少女は土方歳三に困惑した様子で話し出す。
「総司さんはお母様を早くに亡くされたと聞きました。総司さんに質問できません。」
土方歳三は少女に微笑んで話し出す。
「美鈴さん。俺に今の質問をしてくれるかな?」
少女は土方歳三に小さい声で話し出す。
「土方様がお母様を想像する花は有りますか?」
土方歳三は少女に微笑んで話し出す。
「俺も総司と同様に、母親を早くに亡くしている。更に俺も総司と同様に、父親も早くに亡くしている。更に、俺の場合は、生まれる前に父親を亡くしている。総司より俺の方が可哀想だろ。」
少女は土方歳三に申し訳なく話し出す。
「申し訳ありません。」
土方歳三は少女に微笑んで話し出す。
「話を戻す。俺の記憶の中に残る母親の様子で答えて良いかな?」
少女は土方歳三に申し訳なく話し出す。
「申し訳ありません。」
土方歳三は少女に微笑んで話し出す。
「美鈴さんは俺について知らない内容が多い。謝る必要はないだろ。」
少女は土方歳三に申し訳なく話し出す。
「申し訳ありません。」
土方歳三は少女に微笑んで話し出す。
「“時々の 花は咲けども 何すれぞ 母とふ花の 咲き出来ずけむ”。今の歌を知った時に、誰かと話したいと思った。美鈴と話せば、噂が広がらないから都合が良いと思った。美鈴に同情してもらうために話した訳ではない。」
少女は土方歳三を不思議な様子で見た。
土方歳三は少女に微笑んで話し出す。
「美鈴。再び逢おう。」
少女は土方歳三を不思議な様子で見ている。
土方歳三は微笑んで居なくなった。
少し後の事。
ここは、京の町。
土方歳三は普通に歩いている。
斉藤一は土方歳三の傍に普通に現れた。
土方歳三は斉藤一を微笑んで見た。
斉藤一は土方歳三を普通の表情で見た。
土方歳三は斉藤一に微笑んで話し出す。
「斉藤。今は任務中だろ。」
斉藤一は土方歳三に普通の表情で軽く礼をした。
土方歳三は斉藤一に微笑んで話し出す。
「俺を見付けて、何かを感じて様子を見ていたんだ。」
斉藤一は土方歳三を普通の表情で見た。
土方歳三は斉藤一に微笑んで話し出す。
「斉藤。あの子を名前だけで呼んだ。あの子は可愛くて優しいな。あの子と長く一緒に居たくなる。」
斉藤一は土方歳三を普通の表情で見ている。
土方歳三は斉藤一に微笑んで話し出す。
「今回の言動も、さり気なく高度な技を使用した。」
斉藤一は土方歳三に普通の表情で軽く礼をした。
土方歳三は斉藤一に微笑んで話し出す。
「斉藤。今日は俺からあの子に話し掛ける予定はない。安心して予定する任務に戻ってくれ。」
斉藤一は土方歳三に普通の表情で軽く礼をした。
土方歳三は斉藤一を微笑んで見た。
斉藤一は普通に居なくなった。
土方歳三も普通に居なくなった。
数日後の事。
ここは、落ち着いた雰囲気の寺。
境内には季節の花がたくさん咲いている。
本堂。
沖田総司は微笑んで居る。
斉藤一は普通に居る。
少女は考えながら居る。
沖田総司は少女に心配して話し出す。
「鈴ちゃん。何か遭ったの?」
少女は沖田総司に微笑んで話し出す。
「何も起きていないです。」
沖田総司は少女を心配な様子で見た。
斉藤一は沖田総司に普通に話し出す。
「総司。突然だが、土方さんと総司は、付き合いが長いだろ。」
沖田総司は斉藤一に不思議な様子で話し出す。
「はい。」
斉藤一は沖田総司に普通に話し出す。
「土方さんは女性に非常に人気が有る。多くの女性は、土方さんの話題になると、非常に盛り上がるそうだ。」
沖田総司は少女に大きな声で話し出す。
「鈴ちゃん! 土方さんの話題で盛り上がって話したの?! 誰と話したの?! 何処で話したの?!」
少女は沖田総司を驚いた表情で見た。
斉藤一は沖田総司に普通に話し出す。
「総司。落ち着け。」
沖田総司は斉藤一に大きな声で話し出す。
「土方さんは女性に非常に人気があります! 鈴ちゃんが土方さんについて詳しく知ると、土方さんに興味を持ちます! 鈴ちゃんが、土方さんに興味を持つと、土方さんとたくさん話すようになります! 鈴ちゃんは私と話さなくなります! 寂しいです!」
少女は沖田総司を恥ずかしい様子で見た。
沖田総司は斉藤一と少女を恥ずかしい様子で見た。
斉藤一は少女に普通に話し出す。
「美鈴さん。意味不明な言動の多い総司だが、今後も呆れずに一緒に居てくれ。」
少女は斉藤一に恥ずかしい様子で話し出す。
「はい。」
沖田総司は斉藤一と少女を恥ずかしい様子で見ている。
斉藤一は沖田総司と少女を普通の表情で見た。
翌日の事。
ここは、少女の住む家。
玄関。
斉藤一は普通に訪ねてきた。
少女は不思議な様子で来た。
斉藤一は少女に普通に話し出す。
「美鈴さん。出掛けながら話したい。」
少女は斉藤一に不思議な様子で話し出す。
「はい。」
斉藤一は少女を普通の表情で見た。
斉藤一は普通に居なくなった。
少女は不思議な様子で居なくなった。
少し後の事。
ここは、落ち着いた雰囲気の寺。
境内には季節の花がたくさん咲いている。
本堂。
斉藤一は普通に居る。
少女は不思議な様子で居る。
斉藤一は少女に普通に話し出す。
「土方さんが、万葉集に掲載している歌と土方さん本人の生い立ちを話したそうだな。」
少女は斉藤一に不思議な様子で話し出す。
「はい。」
斉藤一は少女に普通に話し出す。
「土方さんが美鈴さんに話した生い立ちは事実だ。美鈴さんも土方さんに関する噂をたくさん聞くと思う。土方さんは美鈴さんが困らないように話したらしい。」
少女は斉藤一を微笑んで見た。
斉藤一は少女に普通に話し出す。
「土方さんが話した生い立ちに補足する。土方さんの父親は、土方さんが生まれる数ヶ月前に亡くなった。土方さんの姉の一人が、土方さんが四歳の時に亡くなった。土方さんの母親は、土方さんが六歳の時に亡くなった。土方さんは兄夫婦に育てられた。」
少女は斉藤一に寂しい様子で話し出す。
「総司さんの生い立ちに似ています。」
斉藤一は少女に普通の表情で頷いた。
少女は斉藤一を寂しい様子で見た。
斉藤一は少女に普通に話し出す。
「美鈴さん。全ての人達が、本人の望む生い立ちに成る訳ではない。本人の望む生い立ちに成ったとしても、幸せな日々を過ごせる訳ではない。寂しい気持ちになるな。悩むな。」
少女は斉藤一に微笑んで話し出す。
「はい。」
斉藤一は少女に普通の表情で頷いた。
暫く後の事。
ここは、京の町。
月が綺麗に輝いている。
ここは、酒と料理を提供する店。
一室。
土方歳三は杯の酒を微笑んで飲んでいる。
斉藤一は杯の酒を普通の表情で飲んでいる。
土方歳三の膳と斉藤一の膳には、豪華な肴と美味しい酒が載っている。
土方歳三は杯の酒を飲みながら、斉藤一に微笑んで話し出す。
「斉藤。ありがとう。」
斉藤一は杯の酒を飲みながら、土方歳三に普通に話し出す。
「俺を幾度も巻き込まないでください。」
土方歳三は杯の酒を飲みながら、斉藤一に微笑んで話し出す。
「俺は斉藤を巻き込んでいない。仮に斉藤を巻き込んだとしても、斉藤は美味しい酒や美味しい肴を味わっている。斉藤は損をしていない。」
斉藤一は杯の酒を飲みながら、土方歳三を普通の表情で見た。
土方歳三は杯の酒を飲みながら、斉藤一に微笑んで話し出す。
「“時々の 花は咲けども 何すれぞ 母とふ花の 咲き出来ずけむ”。母という名前の花は無い。斉藤が母を想像する花を教えて欲しい。」
斉藤一は杯の酒を飲みながら、土方歳三に普通に話し出す。
「土方さん。俺が同じ質問をしたら、何の花を答えますか?」
土方歳三は杯の酒を飲みながら、斉藤一に微笑んで話し出す。
「多過ぎるから、幾つかに絞る。春の花は、梅、桜、桃、椿、満作、沈丁花、花菜、蒲公英、菫、山吹。夏の花は、牡丹、芍薬、撫子、紫陽花、百合、杜若、菖蒲、花菖蒲、鷺草、蓮、茨。秋の花は、朝顔、露草、葛、萩、桔梗、女郎花、藤袴、芙蓉、菊、金木犀。冬の花は、山茶花、侘助、寒椿、蝋梅、水仙、八手、冬桜、石蕗、茶、枇杷。以上だ。」
斉藤一は杯の酒を飲みながら、土方歳三に普通に話し出す。
「答えた花の種類。多いですね。」
土方歳三は杯の酒を飲みながら、斉藤一を微笑んで見た。
斉藤一は杯の酒を飲みながら、土方歳三に普通に話し出す。
「土方さんの答えた花を聞くと、あの子を思い出します。」
土方歳三は杯の酒を飲みながら、斉藤一に微笑んで話し出す。
「さすが。斉藤。勘が良いな。」
斉藤一は杯の酒を飲みながら、土方歳三に普通に話し出す。
「答えを訂正しないのですか?」
土方歳三は杯の酒を飲みながら、斉藤一に微笑んで話し出す。
「訂正しない。」
斉藤一は杯の酒を飲みながら、土方歳三を普通の表情で見た。
土方歳三は杯の酒を飲みながら、斉藤一を微笑んで見た。
「時々の 花は咲けども 何すれぞ 母とふ花の 咲き出来ずけむ」
母という名前の花は無くても、母を想像する花は有ると思う。
土方歳三、斉藤一、沖田総司が、母を想像する花は何か。
京の町を護る天才達の答えを知るのは、相当に難しい。
* * * * * *
ここからは後書きになります。
この物語は既に掲載している物語の改訂版です。
改訂前の物語の展開や雰囲気を出来るだけ残して改訂しました。
改訂前の物語を掲載するのは止めました。
以上、ご了承願います。
ここからは改訂前の後書きを加筆訂正して書きます。
この物語に登場する歌は「万葉集 第二十巻 四三二三番」です。
「時々の 花は咲けども 何すれぞ 母とふ花の 咲き出来ずけむ」
ひらがなの読み方は「ときどの はなはさけども なにすれぞ ははとふはなの さきでこずけむ」
作者は「丈部真麻呂(はせべのままろ)」
意味は「季節ごとに花は咲くのに、どうして“母”という花は咲かないのだろうか。(咲くのだったら手折っていっしょに行くのに。)」となるそうです。
原文は「等伎騰吉乃 波奈波佐家登母 奈尓須礼曽 波々登布波奈乃 佐吉泥己受祁牟」
天平勝寶(てんぴょうほうしょう)七年(755年)二月六日に、交代要員として筑紫(ちくし)に派遣された防人(さきもり)達が詠んだ歌の一首だそうです。
「防人(さきもり)」について簡単に説明します。
防人は、筑紫(つくし)・壱岐(いき)などの北九州の防衛にあたった兵士達の事です。
一説には、崎守(さきもり)の意味があるそうです。
防人には東国の人達が選ばれたそうです。
東国の人達が選ばれた理由については、よく分かってないそうです。
一説には、東国の力を弱めるためともいわれているそうです。
任期は三年で、毎年二月に兵員の三分の一が交替となっていたそうですが、実際には簡単には国に帰してもらえなかったそうです。
東国から行く時は、部領使(ぶりょうし)という役割の人が連れて行ったそうです。
北九州へは徒歩で行ったそうです。
稀な場合だと思いますが、幸運な場合は、船で行く事もあったようです。
帰りは自費だったそうです。
そのため、故郷に帰りたくても帰れない人、無理に帰ろうとして故郷まで帰れずに行き倒れとなる人がいたそうです。
防人の詳細に関しては各自でご確認ください。
沖田総司さんについての補足です。
生年は、天保十三年(1842年)、または、天保十五年[{弘化元年}の可能性あり](1844年)と伝わっています。
「新撰組異聞」関連では、天保十三年(1842年)を採用しています。
弘化二年(1844年)頃(沖田総司さんが二歳〜四歳頃)に、父親の沖田勝次郎さんが亡くなったそうです。
母親も幼少期に亡くなったようです。
姉の沖田みつさん([ミツ]とも書く)が、沖田総司さんを母親代わりとして面倒をみたそうです。
嘉永三年(1850年)〜嘉永五年(1852年)頃(沖田総司さんが九歳頃)に、試衛館に内弟子として入門します。
幼少期の沖田総司さんに二つの年号が登場する事が多いのは、生年が確定していない事が理由の一つになっていると思われます。
土方歳三さんについてです。
天保六年五月五日(1835年5月31日)の誕生です。
土方歳三さんの誕生の数ヶ月前に、父親が亡くなったそうです。
天保九年(1838年)六月(土方歳三さんが四歳)に、姉の一人が亡くなります。
天保十一年(1840年)(土方歳三さんが六歳)に、母親が亡くなります。
母親が亡くなってからは、次男の土方喜六さん(土方歳三さんの兄)が当主になります。
土方歳三さんは土方喜六さん夫婦に育てられます。
この物語に登場する花関連の季語についてです。
季語と現在の暦の開花や見頃の時期が違うと感じる方がいると思います。
開花や見頃の時期は省略して季語のみ書きます。
「満作(まんさく)」・「沈丁花(じんちょうげ)」・「花菜(はなな)」・「蒲公英(たんぽぽ)」・「菫(すみれ)」・「山吹(やまぶき)」は、春の季語です。
「梅(うめ)」は春の季語で、「梅の実」は夏の季語です。
「桜(さくら)」・「桃(もも)」・「椿(つばき)」は、花は春の季語で、実は秋の季語です。
「牡丹(ぼたん)」・「芍薬(しゃくやく)」・「撫子(なでしこ)」・「紫陽花(あじさい)」・「百合(ゆり)」・「杜若(かきつばた)」・「菖蒲(しょうぶ)」・「花菖蒲(はなしょうぶ)」・「鷺草(さぎそう)」は、夏の季語です。
「蓮(はす)」・「茨(いばら)」は、花は夏の季語で、実は秋の季語です。
「朝顔(あさがお)」・「露草(つゆくさ)」・「葛(くず)」・「萩(はぎ)」・「桔梗(ききょう)」・「女郎花(おみなえし)」・「藤袴(ふじばかま)」・「芙蓉(ふよう)」・「菊(きく)」・「金木犀(きんもくせい)」は、秋の季語です。
「山茶花(さざんか)」・「侘助(わびすけ)」・「寒椿(かんつばき)」・「蝋梅(ろうばい)」・「水仙(すいせん)」・「八手(やつで)」・「冬桜(ふゆざくら)」・「石蕗(つわぶき)の花」・「茶(ちゃ)の花」は、冬の季語です。
「枇杷(びわ)」は、実は夏の季語で、花は冬の季語です。
「弥生(やよい)についてです。
「陰暦三月の異称」です。
春の季語です。
「弥生(いやおい)」についてです。
「草木がますます生い茂ること。陰暦三月の異称。」です。
楽しんで頂けると嬉しいです。
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