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〜 雪月花 新撰組異聞 編 〜


〜 桜月 向つ峯の桜の花 〜


登場人物

土方歳三、沖田総司、斉藤一、藤堂平助、原田左之助、少女[美鈴・鈴]



「暇あらば なづさひ渡り 向つ峯の 桜の花も 折らましものを」

「万葉集 第九巻 一七五〇番」より

作者:高橋虫麻呂(たかはしのむしまろ)歌集より



今は春。



ここは、京の町。



桜の花が咲き乱れている。



ここは、町中。



藤堂平助は普通に歩いている。

原田左之助も普通に歩いている。



藤堂平助が普通に立ち止まった。

原田左之助も普通に立ち止まった。



藤堂平助は前を微笑んで見た。

原田左之助は前を不思議な様子で見た。



辺りには桜の花が咲き乱れている。



原田左之助は藤堂平助を見ると、藤堂平助に微笑んで話し出す。

「桜の花が綺麗に咲いているな。」

藤堂平助は前を見ながら、原田左之助に微笑んで話し出す。

「はい。」

原田左之助は藤堂平助を不思議な様子で見た。

藤堂平助は前を微笑んで見た。

原田左之助は前を不思議な様子で見た。



藤堂平助と原田左之助から少し離れた場所。



少女が桜の花を微笑んで見ている。



藤堂平助は少女を微笑んで見ている。

原田左之助は藤堂平助と少女を不思議な様子で見た。

藤堂平助は少女を寂しい表情で見た。

原田左之助は藤堂平助と少女を不思議な様子で見た。



藤堂平助と原田左之助から少し離れた場所。



沖田総司が少女の傍に笑顔で走ってきた。

少女は沖田総司を笑顔で見た。

沖田総司は少女に笑顔で話し始めた。

少女は沖田総司に笑顔で頷いた。

沖田総司は桜を見ると、少女に笑顔で話し始めた。

少女は沖田総司と桜を笑顔で見た。



藤堂平助は原田左之助を見ると、原田左之助に微笑んで話し出す。

「任務中に余所見をしてしまいました。遅れると迷惑が掛かります。早く行きましょう。」

原田左之助は藤堂平助に不思議な微笑みで話し出す。

「薄々は気付いていたが〜 まさかとは思っていたが〜 俺の勘は当たっていたのか〜 俺は凄いな〜」

藤堂平助は原田左之助に動揺した様子で話し出す。

「私は変な言動をしましたか?」

原田左之助は藤堂平助に微笑んで話し出す。

「平助は変な言動をしていない。俺は誰にも言わない。平助。安心しろ。」

藤堂平助は原田左之助を動揺した様子で見た。

原田左之助は藤堂平助に微笑んで話し出す。

「或る人物に話してみたい気がするが、本当に話したら物凄く面倒な状況になる。だから、俺は誰にも言わない。平助。安心しろ。」

藤堂平助は原田左之助に苦笑して話し出す。

「原田さんと同じ内容を話す人物がいます。意味が分からないので困ります。」

原田左之助は藤堂平助に不思議な様子で話し出す。

「俺と同じ内容を話す人物は誰だ?」

藤堂平助は原田左之助に苦笑して話し出す。

「土方さんとお孝さんです。」

原田左之助は藤堂平助に微笑んで話し出す。

「土方さんとお孝さん。納得の人物だな。」

藤堂平助は原田左之助に苦笑して話し出す。

「私は土方さんにもお孝さんにも違うと話しました。お孝さんも土方さんも誤解をしているようです。困っています。」

原田左之助は藤堂平助に微笑んで話し出す。

「土方さんもお孝さんも、誤解をしていない。土方さんもお孝さんも、総司とあの子に伝えない可能性が非常に高い。安心して良いと思う。」

藤堂平助は原田左之助に苦笑して話し出す。

「僅かですが安心しました。」

原田左之助は藤堂平助に微笑んで話し出す。

「俺はあの子に伝えない。斉藤はあの子に絶対に伝えない。安心しろ。伊東さんはあの子に伝えない可能性が非常に高い。更に安心が出来るな。」

藤堂平助は原田左之助に不安な様子で話し出す。

「勘違いをしている人物が多くないですか?」

原田左之助は藤堂平助に笑いを堪えて話し出す。

「平助の表情や仕草にしっかりと現れている。勘違いの可能性は非常に低い。伊東さんは平助の知り合いで、伊東さんの性格から考えると、既に気付いている可能性が非常に高い。斉藤はあの子と付き合いの長くて、斉藤の性格から考えると、既に気付いている。ただし、あの子は平助が自分の想いに気付いてから近くで逢っていないから、気付いていない。平助。良かったな。」

藤堂平助は原田左之助を困惑した様子で見た。

原田左之助は藤堂平助に笑いを堪えて話し出す。

「総司は気付いていない。総司は特定の内容に関して、物凄く鈍いだろ。特定の内容に関して物凄く鈍い言動をする時があるだろ。だが、総司はあの子を守る時は鈍さが無くなる。総司が何かを気付いたら、物凄い状況になる。総司は平助に普通に接している。平助は総司に気付かれないように、注意して過ごせ。」

藤堂平助は原田左之助に苦笑して話し出す。

「忠告、助言、ありがとうございます。」

原田左之助は藤堂平助を微笑んで見た。



藤堂平助と原田左之助の後ろから、殺気は感じないが、鋭い視線を感じた。



原田左之助は後ろを僅かに注意して見た。

藤堂平助は後ろを不思議な様子で見た。



斉藤一は藤堂平助と原田左之助を普通の表情で見ている。



原田左之助は斉藤一を驚いて見た。

藤堂平助も斉藤一を驚いて見た。

斉藤一は藤堂平助と原田左之助を普通の表情で見ている。

原田左之助は斉藤一に僅かに慌てた様子で話し出す。

「俺と平助は、任務中に雑談していた訳ではないぞ。」

藤堂平助は斉藤一に僅かに困惑して話し出す。

「原田さんの話すとおりです。」

斉藤一は藤堂平助と原田左之助を普通の表情で見ている。

原田左之助は藤堂平助を見ると、僅かに慌てて話し出す。

「平助。行くぞ。」

藤堂平助は原田左之助を見ると、原田左之助に僅かに慌てて話し出す。

「はい。」

斉藤一は藤堂平助と原田左之助を普通の表情で見ている。



原田左之助は僅かに慌てて歩き出した。

藤堂平助も僅かに慌てて歩き出した。



斉藤一は藤堂平助と原田左之助を普通の表情で見ている。



藤堂平助の姿は見えなくなった。

原田左之助の姿も見えなくなった。



斉藤一は沖田総司と少女の居る方向を普通の表情で見た。



沖田総司の姿は見えない。

少女の姿も見えない。



桜の花が綺麗に咲き乱れている。



斉藤一は桜の花を見ながら、普通に歩き出した。



暫く後の事。



ここは、屯所。



庭。



藤堂平助は普通に来た。

原田左之助も普通に来た。



沖田総司の明るい声が、藤堂平助と原田左之助の元に聞こえた。

「斉藤さん!」



藤堂平助は沖田総司の声が聞こえた方向を普通の表情で見た。

原田左之助も沖田総司の声が聞こえた方向を普通の表情で見た。



藤堂平助と原田左之助少し離れた場所。



沖田総司は笑顔で居る。

斉藤一は普通に居る。



沖田総司は斉藤一に笑顔で話し出す。

「斉藤さん! 今日は土方さんから歌を教えてもらいました! 想像より早く歌を覚えられました!」

斉藤一は沖田総司に普通に話し出す。

「歌を詠んでみろ。」

沖田総司は斉藤一に笑顔で話し出す。

「“暇あらば、なづさひ渡り、向つ峯の、桜の花も、折らましものを”!」

斉藤一は沖田総司に普通に話し出す。

「確かに早く覚えたな。」

沖田総司は斉藤一に笑顔で話し出す。

「はい!」

斉藤一は沖田総司を普通の表情で見た。

沖田総司は斉藤一に微笑んで話し出す。

「私ならば、鈴ちゃんが桜を欲しいと言ったら、時間が無くても桜を取りに行きます。」

斉藤一は沖田総司に普通に話し出す。

「美鈴さんは総司に桜を取りに行って欲しいと話さないだろ。」

沖田総司は斉藤一微笑んで話し出す。

「確かに、鈴ちゃんは私に桜を取りに行って欲しいと話しません。もし、鈴ちゃんが悲しい様子や寂しい様子になったら、鈴ちゃんに早く笑顔になって欲しいです。私は鈴ちゃんの笑顔をたくさん見たいです。私は鈴ちゃんのために桜を取りに行きます。」

斉藤一は沖田総司を普通の表情で見た。

沖田総司は斉藤一に微笑んで話し出す。

「私が一人で桜を取りに行けない場合は、斉藤さんに手伝ってもらいます。」

斉藤一は沖田総司に普通に話し出す。

「時間がない時に、橋を渡るのは面倒だ。橋がなければ濡れるから更に面倒だ。総司が一人で桜を取りに行け。」

沖田総司は斉藤一に不安な様子で話し出す。

「斉藤さんは私と鈴ちゃんの友達ですよね。私は鈴ちゃんの笑顔をたくさん見たいです。斉藤さんは鈴ちゃんの笑顔をたくさん見たくないのですか?」

斉藤一は沖田総司に普通に話し出す。

「何時の間に、俺と総司は友達になったんだ?」

沖田総司は斉藤一に不安な様子で話し出す。

「私は斉藤さんに変な内容を話しましたか?」

斉藤一は沖田総司を普通の表情で見た。

沖田総司は斉藤一に不安に様子で話し出す。

「私は斉藤さんに変な内容を話したのですね。謝ります。」

斉藤一は沖田総司を普通の表情で見た。

沖田総司は斉藤一を不安な様子で見た。

斉藤一は沖田総司に普通に話し出す。

「分かった。出来る範囲で手伝う。」

沖田総司は斉藤一に笑顔で話し出す。

「私は斉藤さんに変な内容を話していなかったのですね! 安心しました! 斉藤さん! ありがとうございます!」

斉藤一は沖田総司に普通に話し出す。

「任務以外の総司は、幾度も変な内容を話している。今の話の内容では怒らない。安心しろ。」

沖田総司は斉藤一に不思議な様子で話し出す。

「任務以外の私は、幾度も変な内容を話しているのですか?」

斉藤一は沖田総司に普通の表情で頷いた。

沖田総司は斉藤一を不思議な様子で見た。



斉藤一は普通に歩き出した。

沖田総司は不思議な様子で歩き出した。



藤堂平助は沖田総司と斉藤一を普通の表情で見ている。



斉藤一の姿は見えなくなった。

沖田総司の姿は見えなくなった。



藤堂平助は横を普通の表情で見た。



原田左之助の姿は見えない。



藤堂平助は辺りを不思議な様子で見た。



藤堂平助の後ろから、普通の視線を感じた。



藤堂平助は後ろを不思議な様子で見た。



土方歳三が藤堂平助を普通の表情で見ている。



藤堂平助は土方歳三に普通の表情で軽く礼をした。

土方歳三は藤堂平助に普通に話し出す。

「平助は桜を取りに行くのか?」

藤堂平助は土方歳三を不思議な様子で見た。

土方歳三は藤堂平助を普通の表情で見た。

藤堂平助は土方歳三に普通に話し出す。

「渡って行く川の大きさによります。」

土方歳三は藤堂平助を微笑んで見た。

藤堂平助は土方歳三に普通に話し出す。

「沖田さんならば、川の広さや大きさに関係なく桜を取りに行きそうですよね。沖田さんは、一人で川を渡って行けない状況の時は、斉藤さんに頼みますよね。斉藤さんは沖田さんを手伝いますよね。沖田さんも斉藤さんも凄いです。」

土方歳三は藤堂平助に微笑んで話し出す。

「総司と斉藤と比較をするのは、時間無駄だ。総司と斉藤と比較をするのは止めろ。」

藤堂平助は土方歳三に普通の表情で軽く礼をした。

土方歳三は藤堂平助に微笑んで話し出す。

「平助。顔に想い人が居ると思い切り表れている。相手に気付かれたくないのだろ。気を付けろ。」

藤堂平助は土方歳三を驚いた表情で見た。



土方歳三は普通に歩き出した。



藤堂平助は土方歳三を驚いた表情で見ている。



土方歳三の姿は見えなくなった。



藤堂平助は下を向くと、軽く息をいいた。

藤堂平助は視線を戻した。



藤堂平助は普通に歩き出した。



夜の事。



ここは、京の町。



月が綺麗に輝いている。



ここは、料亭。



庭。



桜が月の光を受けて綺麗に咲いている。



一室。



土方歳三は杯の酒を杯の酒を飲みながら、桜を微笑んで見ている。

斉藤一は杯の酒を飲みながら、土方歳三と桜を普通の表情で見ている。

全には酒と肴が載っている。



土方歳三は杯の酒を飲みながら、斉藤一を見て、斉藤一に微笑んで話し出す。

「突然だが、平助は或る人物を想い続けているな。」

斉藤一は杯の酒を飲みながら、土方歳三に普通の表情で軽く礼をした。

土方歳三は杯の酒を飲みながら、斉藤一を微笑んで見た。

斉藤一は杯の酒を飲みながら、土方歳三を普通の表情で見た。

土方歳三は杯の酒を飲みながら、斉藤一に微笑んで話し出す。

「今の時点で気付いているのは、俺、近藤さん、伊藤さん、斉藤、原田、で良いかな。」

斉藤一は杯の酒を飲みながら、土方歳三に普通の表情で軽く礼をした。

土方歳三は杯の酒を飲みながら、斉藤一に微笑んで話し出す。

「俺の話す人物の中には、本人にいろいろと話す人物はいない。他に気付いた人物がいたとしても、後が怖いから口外は出来ない。心配の必要はないな。」

斉藤一は杯の酒を飲みながら、土方歳三に普通の表情で軽く礼をした。

土方歳三は杯の酒を飲みながら、斉藤一に微笑んで話し出す。

「総司が俺に歌を教えて欲しいと頼む回数が増えた。面白いので、総司に歌を教えている。斉藤は俺より総司に歌を教えて欲しいと頼まれる回数が多いだろ。」

斉藤一は杯の酒を飲みながら、土方歳三に普通の表情で軽く礼をした。

土方歳三は杯の酒を飲みながら、斉藤一を微笑んで見た。

斉藤一は杯の酒を飲みながら、土方歳三に普通に話し出す。

「総司に恋の歌を教えないのですか?」

土方歳三は杯の酒を飲みながら、斉藤一に微笑んで話し出す。

「今の総司に恋の歌を教えても、顔を赤くして騒いでしまう。俺は総司に無駄な内容は教えない。総司が本当に知りたいと思えば、斉藤に教えを欲しいと頼むか、斉藤に相談するだろ。」

斉藤一は杯の酒を飲みながら、土方歳三に普通の表情で軽く礼をした。

土方歳三は杯の酒を飲みながら、斉藤一に微笑んで話し出す。

「総司が斉藤に恋の歌について質問した時は、頼む。」

斉藤一は杯の酒を飲みながら、土方歳三に普通の表情で軽く礼をした。

土方歳三は杯の酒を飲みながら、斉藤一を微笑んで見た。

斉藤一は杯の酒を飲みながら、土方歳三を普通の表情で見た。

土方歳三は杯の酒を飲みながら、桜を微笑んで見た。

斉藤一は杯の酒を飲みながら、桜を普通の表情で見た。



数日後の事。



ここは、京の町。



桜の花が綺麗に咲いている。



ここは、桜の花がたくさん咲く場所。



沖田総司は微笑んで居る。

少女も微笑んで居る。



沖田総司は少女に微笑んで話し出す。

「鈴ちゃん。桜が綺麗に咲いているね。」

少女は沖田総司に微笑んで頷いた。

沖田総司は少女に恥ずかしい様子で話し出す。

「“暇あらば なづさひ渡り 向つ峯の 桜の花も 折らましものを”」

少女は沖田総司に微笑んで話し出す。

「総司さん。桜のお歌をたくさんご存知なのですね。凄いです。」

沖田総司は少女に恥ずかしい様子で話し出す。

「最近、桜の歌について調べたんだ。桜の歌はたくさんあるね。驚くね。」

少女は沖田総司に微笑んで話し出す。

「総司さんはたくさんの内容を調べていますね。凄いです。私も総司さんとたくさんお話が出来るように、たくさんの内容を調べたいと思うのですが、進んでいません。」

沖田総司は少女に慌てて話し出す。

「鈴ちゃん! 私も少しずつ覚えているんだ! 焦らないで!」

少女は沖田総司に微笑んで頷いた。

沖田総司は少女を微笑んで見た。

少女も沖田総司を微笑んで見た。

沖田総司は少女に微笑んで話し出す。

「私は鈴ちゃんの笑顔を見ると元気になるんだ。鈴ちゃんには笑顔で過ごして欲しいんだ。私は、鈴ちゃんの笑顔を見るためならば、時間が無くても桜を取りに行くよ。」

少女は沖田総司を驚いた表情で見た。

沖田総司は少女に微笑んで話し出す。

「“暇あらば なづさひ渡り 向つ峯の 桜の花も 折らましものを”。歌の内容と少し違うね。」

少女は沖田総司を恥ずかしく見た。

沖田総司は少女に心配して話し出す。

「鈴ちゃん。私は今回も変な内容を話したんだね。ごめんね。」

少女は沖田総司を恥ずかしく見ている。

沖田総司は辺りを慌てて見た。

少女は沖田総司を恥ずかしく見ている。

沖田総司は不思議な様子で視線を止めた。

少女は沖田総司を不思議な様子で見た。

沖田総司はしゃがむと、桜の花を手に取った。

少女は沖田総司を不思議な様子で見ている。

沖田総司は桜の花を握り、微笑んで立ち上がった。

少女は沖田総司を不思議な様子で見ている。

沖田総司は少女に桜の花を微笑んで差し出した。

少女は沖田総司と桜の花を不思議な様子で見た。

沖田総司は少女に桜の花を微笑んで差し出している。

少女は沖田総司から桜の花を受け取ると、沖田総司に微笑んで話し出す。

「総司さん。桜の花。ありがとうございます。」

沖田総司は少女に微笑んで話し出す。

「鈴ちゃんが元気になって良かった。桜の枝は気軽に折れないから焦ったけれど、桜の花が綺麗な姿のまま地面に落ちていた。鈴ちゃんが桜の花を見て笑顔になった。嬉しいな。」

少女は桜の花を持ち、沖田総司を微笑んで見た。

沖田総司は少女を微笑んで見た。

少女は桜の花を持ち、沖田総司を微笑んで見ている。

沖田総司は桜を微笑んで見た。

少女は桜の花を持ち、桜を微笑んで見た。



桜の枝の間から、青空が綺麗に見える。



時折だが風が吹く。



桜の花びらが風に舞う。



沖田総司は少女を微笑んで見た。

少女は桜の花を持ち、沖田総司を微笑んで見た。



優しい風が吹いた。



桜の花びらが沖田総司と少女を包むように舞い始めた。



沖田総司は桜の花びらの舞う様子を微笑んで見た。

少女は桜の花を持ち、桜の花びらの舞う様子を微笑んで見た。



「暇あらば なづさひ渡り 向つ峯の 桜の花も 折らましものを」

沖田総司は少女のために時間が無くても桜を用意する。

少女は沖田総司の桜の贈り物を笑顔で受け取る。

藤堂平助は桜の花に想いを静かに隠している。

京の町に咲く桜の花には、たくさんの想いが込められている。




*      *      *      *      *      *




ここからは後書きになります。

この物語の中に登場する歌は「万葉集 第九巻 一七五〇番」

「暇あらば なづさひ渡り 向つ峯の 桜の花も 折らましものを」

ひらがなの読み方は読み方は「いとまあらば なづさひわたり むこつをの さくらのはなも おらましものを」

高橋虫麻呂(たかはしのむしまろ)の歌集から。

歌の意味は「時間があったら、川を渡ってでも、向こう岸の峰の桜の花を折ってこられるのに」となるそうです。

原文は「暇有者、魚津柴比渡、向峯之、櫻花毛、折末思物緒」

年月は不明ですが、宮人たちが奈良の都から難波に行く時に詠んだ歌のようです。

ここで「なづさひ渡り」と詠まれている「川(この言葉自体は詠まれていませんが)」は、「大和川」と考えられているようです。

この歌は一つ前の歌の長歌に対する返歌のようです。

藤堂平助さんの想いを巡る桜の物語です。

藤堂平助さんは鈴ちゃんへの想いを気付かれないようにしています。

そのため、沖田総司さんは藤堂平助さんの想いにほとんど気付いていません。

沖田総司さんには誰も怖くて何も言えないため、気付いた人も伝えていません。

「桜月(さくらづき)」は「陰暦三月の異称」です。

楽しんで頂けると嬉しいです。





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