〜　雪月花　新撰組異聞　編　〜


〜　秋萩に寄せて　花よりは実になりてこそ　〜


〜　改訂版　〜


登場人物

土方歳三、沖田総司、斉藤一、藤堂平助、原田左之助、おまさ




「我妹子が　やどの秋萩　花よりは　実になりてこそ　恋ひまさりけれ」

「万葉集　第七巻　一三六五番」より

作者：詠み人知らず




今は秋。



ここは、京の町。



日中は暑さを感じるが、夜になると暑さを感じなくなってきた。



ここは、屯所。



縁。



沖田総司は微笑んで歩いている。



原田左之助の穏やかな声が、沖田総司の後ろから聞こえた。

「総司。」



沖田総司は立ち止まると、後ろを微笑んで見た。



原田左之助は沖田総司を微笑んで見ている。



原田左之助は微笑んで来た。



原田左之助は沖田総司に微笑んで話し出す。

「総司。秋の花を詠んだ歌を勉強する予定はあるか？」

沖田総司は原田左之助を不思議な様子で見た。

原田左之助は沖田総司に微笑んで話し出す。

「予定が無ければ、今の話は忘れてくれ。」

沖田総司は原田左之助に怪訝な様子で話し出す。

「私が勉強した歌を誰かに贈る考えがありますね。」

原田左之助は沖田総司に僅かに慌てて話し出す。

「総司が目的を持って勉強した歌だ。俺の目的に合わなければ、歌は贈れないだろ。」

沖田総司は原田左之助に怪訝な様子で話し出す。

「原田さん。原田さんの目的に合えば、私の勉強した歌を誰かに贈る考えが有りますね。」

原田左之助は沖田総司に僅かに慌てて話し出す。

「俺が歌を贈りたい相手は、おまさちゃんだ。総司とおまさちゃんは、ほとんど会わないだろ。総司。心配するな。」

沖田総司は原田左之助を怪訝な様子で見た。

原田左之助は沖田総司に僅かに慌てて話し出す。

「総司が秋の花を詠んだ歌を勉強する時に、今回のみで良いから、俺も勉強に混ぜて欲しんだ。俺の会話を思い出してくれ。」

沖田総司は原田左之助を見ながら、怪訝な様子で考えた。

原田左之助は沖田総司を僅かに動揺して見た。

沖田総司は原田左之助に考えながら話し出す。

「原田さんの話すとおり、私は勘違いをしたようです。」

原田左之助は沖田総司を安心して見た。

沖田総司は原田左之助を微笑んで見た。

原田左之助は沖田総司に微笑んで話し出す。

「総司。呼び止めて悪かったな。」

沖田総司は原田左之助に微笑んで話し出す。

「大丈夫です。」

原田左之助は沖田総司を微笑んで見た。



沖田総司は微笑んで歩き出した。



少し後の事。



ここは、屯所。



藤堂平助の部屋。



藤堂平助は普通に居る。



原田左之助が部屋を静かに訪れた。



藤堂平助は原田左之助を不思議な様子で見た。

原田左之助は藤堂平助に小さい声で話し出す。

「平助。おまさちゃんに秋の花を詠んだ歌を贈りたい。総司に、秋の花を詠んだ歌を勉強する時に、俺も混ぜて欲しいとさり気なく話した。或る方面に疎い総司が、鋭い勘を発揮して怪しんだ。仕方がないから、簡単に事情を説明した。」

藤堂平助は原田左之助に小さい声で話し出す。

「沖田さんは、沖田さん本人が勉強した歌を、あの子に贈る前に知られるのが嫌なのだと思います。」

原田左之助は藤堂平助に小さい声で話し出す。

「さすが平助。」

藤堂平助は原田左之助に小さい声で話し出す。

「褒めて頂いてありがとうございます。」

原田左之助は藤堂平助に小さい声で話し出す。

「平助。おまさちゃんが喜ぶ歌を知らないか？」

藤堂平助は原田左之助に小さい声で話し出す。

「萩を詠んだ歌はたくさんあります。萩は秋の七草の一つです。歌に萩を添えて贈ると、風流です。喜ぶ可能性が高くなります。」

原田左之助は藤堂平助に小さい声で話し出す。

「萩といえば、菓子のおはぎがある。女性に菓子を贈ると喜ぶ。」

藤堂平助は原田左之助に小さい声で話し出す。

「おはぎと歌を一緒に贈る場合は、菓子を売る店、菓子の味、歌、を含めて詳細に調べないと、原田さんの印象が悪くなる可能性があります。」

原田左之助は藤堂平助に小さい声で話し出す。

「平助。的確な助言をありがとう。」

藤堂平助は原田左之助に小さく礼をした。

原田左之助は藤堂平助に小さい声で話し出す。

「平助。おまさちゃんの喜ぶ萩を詠んだ恋の歌を知りたい。」

藤堂平助は原田左之助に微笑んで話し出す。

「“我妹子が　やどの秋萩　花よりは　実になりてこそ　恋ひまさりけれ”。掲載は、“万葉集　第七巻　一三六五番”。作者は、“詠み人知らず”。歌の意味は、“あの娘の家の萩は、花のときよりも実になってからのほうが、いっそう恋しくなってしまいました。”、となるそうです。」

原田左之助は藤堂平助に微笑んで話し出す。

「俺。作者の気持ちが分かる。」

藤堂平助は原田左之助を微笑んで見た。

原田左之助は藤堂平助に微笑んで話し出す。

「平助も作者の気持ちが分かるだろ。」

藤堂平助は原田左之助を僅かに動揺して見た。

原田左之助は藤堂平助に微笑んで話し出す。

「平助。総司と良く居る子を思い出しただろ。平助も作者の気持ちが分かっている。」

藤堂平助は原田左之助に僅かに慌てて話し出す。

「原田さん。勘違いしないでください。」

原田左之助は藤堂平助に微笑んで話し出す。

「俺は勘違いしていない。」

藤堂平助は原田左之助を苦笑して見た。

原田左之助は藤堂平助に微笑んで話し出す。

「平助。今の歌の意味も含めて紙に書いてくれ。」

藤堂平助は原田左之助に微笑んで話し出す。

「はい。」

原田左之助は藤堂平助に微笑んで話し出す。

「平助。あの子について話すと、総司が良く現れるだろ。今回は総司が現れないな。」

藤堂平助は原田左之助に苦笑して話し出す。

「原田さん。期待する内容を話すと、沖田さんが現れますよ。」

原田左之助は藤堂平助を微笑んで見た。



沖田総司が部屋の中に勢い良く入ってきた。



原田左之助は沖田総司を驚いて見た。

藤堂平助は沖田総司を僅かに驚いて見た。

沖田総司は原田左之助と藤堂平助に大きな声で話し出す。

「彼女に何か遭ったのですか？！」

原田左之助は沖田総司に慌てて話し出す。

「俺は何も知らない！」

藤堂平助は沖田総司に僅かに慌てて話し出す。

「私も何も知りません。」

沖田総司は原田左之助に大きな声で話し出す。

「彼女について話した理由を教えてください！」

原田左之助は沖田総司に慌てて話し出す。

「おまさちゃんに歌を贈りたくて、平助に相談していた！　総司には親しい子がいるだろ！　総司は歌を贈る時があるのかと話していたんだ！」

沖田総司は藤堂平助に大きな声で話し出す。

「平助！　原田さんと話した歌を教えろ！」

藤堂平助は沖田総司に僅かに慌てて話し出す。

「“万葉集　第七巻　一三六五番”に掲載。作者は“詠み人知らず”。“我妹子が　やどの秋萩　花よりは　実になりてこそ　恋ひまさりけれ”。」

沖田総司は藤堂平助と原田左之助に大きな声で話し出す。

「原田さん！　平助！　紛らわしい話はしないように！」

原田左之助は沖田総司に慌てて頷いた。

藤堂平助は沖田総司に僅かに慌てて軽く礼をした。



沖田総司は部屋を勢い良く出て行った。



原田左之助は藤堂平助に苦笑して話し出す。

「平助の話すとおり、本当に現れた。」

藤堂平助は原田左之助を苦笑して見た。

原田左之助は藤堂平助に不思議な様子で話し出す。

「平助。総司に歌の意味を教えなかっただろ。慌てていたのか？」

藤堂平助は原田左之助を苦笑して見た。

原田左之助は藤堂平助に微笑んで話し出す。

「さすが平助。」

藤堂平助は原田左之助を苦笑して見ている。

原田左之助は藤堂平助に微笑んで話し出す。

「平助。話を戻す。歌の意味も含めて紙に書いてくれ。」

藤堂平助は原田左之助に微笑んで話し出す。

「はい。」

原田左之助は藤堂平助を微笑んで見た。



直後の事。



ここは、屯所。



斉藤一の部屋。



沖田総司は落ち着かない様子で居る。

斉藤一は普通に居る。



沖田総司は斉藤一に大きな声で話し出す。

「斉藤さん！　原田さんはおまささんに歌を贈るために、平助に歌の相談をしたそうです！　原田さんは、私と鈴ちゃんについて、平助に話していました！　原田さんと平助は、私と鈴ちゃんは関係ないと否定していました！　物凄く怪しいですよね！」

斉藤一は沖田総司に普通に話し出す。

「総司。二人が話した歌を教えろ。」

沖田総司は斉藤一に大きな声で話し出す。

「“万葉集”の掲載です！　作者は“詠み人知らず”です！　“我妹子が　やどの秋萩”で始まります！」

斉藤一は沖田総司に普通に話し出す。

「総司。俺が歌について調べる。美鈴さんには歌の意味を含めて分かる時まで話すな。」

沖田総司は斉藤一に大きな声で話し出す。

「はい！」

斉藤一は沖田総司に普通に話し出す。

「総司。声が大きい。冷静になれ。」

沖田総司は斉藤一に大きな声で話し出す。

「はい！」

斉藤一は沖田総司を普通の表情で見た。

沖田総司は斉藤一に大きな声で話し出す。

「斉藤さん！　今の歌について早く知りたいです！　土方さんに今の歌の確認を取りたいです！」

斉藤一は沖田総司に普通の表情で頷いた。

沖田総司は斉藤一に大きな声で話し出す。

「斉藤さん！　土方さんの部屋に早く行きましょう！」

斉藤一は沖田総司に普通の表情で頷いた。



沖田総司は部屋を勢い良く出て行った。

斉藤一は部屋を普通に出て行った。



数日後の事。



ここは、おまさの住む家。



玄関。



原田左之助は包みを持ち、笑顔で居る。



おまさは普通に来た。



原田左之助はおまさに包みを渡すと、おまさに微笑んで話し出す。

「今は秋だろ。秋にちなんだ贈り物を用意したんだ。受け取ってくれ。」

おまさは原田左之助から包みを受けると、原田左之助に普通に話し出す。

「ありがとう。」

原田左之助はおまさに微笑んで話し出す。

「おまさちゃん。包みを開けてくれ。」

おまさは包みを傍に置くと、包みを丁寧に開けた。

原田左之助はおまさを微笑んで見た。



包みの中に、小さな包みがある。

小さな包みの上に、萩の花と小さな紙が添えてある。

小さな紙には、歌が書いてある。



“我妹子が　やどの秋萩　花よりは　実になりてこそ　恋ひまさりけれ”



おまさは萩の花と小さな紙を除けると、小さな包みを丁寧に開いた。



小さな包みの中に、おはぎが入っている。



おまさは小さな包みを丁寧に閉じた。

原田左之助はおまさを微笑んで見た。

おまさは小さな紙を持ち、原田左之助を見ると、原田左之助に微笑んで話し出す。

「美味しさの伝わるお菓子のおはぎ。綺麗な萩の花。萩を詠んだ素敵な歌。秋にちなんで萩尽くしなのね。素敵な組み合わせね。左之助さん一人では気の利く贈り物の用意は難しいわよね。」

原田左之助はおまさに微笑んで話し出す。

「平助に手伝ってもらった。今回の贈り物にした萩を詠んだ歌を教えてくれて、おはぎの美味しいお店を探す助言をしてくれて、贈る方法を教えてくれた。」

おまさは小さな紙を持ち、原田左之助に微笑んで話し出す。

「平助さんの人柄の良さが伝わる話ね。左之助さんの人柄の良さも伝わる話ね。」

原田左之助はおまさに苦笑して話し出す。

「平助を優先して褒めているな。」

おまさは小さな紙を持ち、原田左之助に微笑んで話し出す。

「今回の贈り物を用意できたのは、平助さんの助けがあったからよね。同僚が褒められているのよ。左之助さんは心を広く持って喜ぶように。」

原田左之助はおまさに微笑んで話し出す。

「おまさちゃんの話すとおりだな。俺は精進が足りないな。今後もたくさん指導してくれ。」

おまさは小さな紙を持ち、原田左之助に微笑んで話し出す。

「私は指導するほどの内容を話していないわ。」

原田左之助はおまさに微笑んで話し出す。

「俺は、新撰組の組長を務めているし、勢いの良い性格だ。俺に対して意見する人物は少ないんだ。俺にとって、おまさちゃんは大切な人達の中の一人なんだ。」

おまさは小さな紙を持ち、原田左之助に微笑んで話し出す。

「左之助さん。今の会話の中で、私が一番に大切な人と話せば、私は物凄く喜ぶのよ。しっかりとしなさい。」

原田左之助はおまさに恥ずかしく話し出す。

「助言をありがとう。」

おまさは小さな紙を持ち、原田左之助を微笑んで見た。

原田左之助はおまさに微笑んで話し出す。

「歌の作者は、“あの娘に逢うことができてから、いっそう恋しくなってきてしまいました。”という意味を込めているそうなんだ。俺は作者の込めた意味が分かるよ。」

おまさは小さな紙を持ち、原田左之助に微笑んで話し出す。

「左之助さん。歌の作者が込めた意味が分かるようになったのは、いつ頃からなの？」

原田左之助はおまさに微笑んで話し出す。

「おまさちゃんに逢ってからだよ。」

おまさは小さな紙を持ち、原田左之助に微笑んで話し出す。

「左之助さんの都合が悪くなければ、おはぎを一緒に食べましょう。」

原田左之助はおまさに笑顔で話し出す。

「俺の都合は調整する！　おまさちゃんと一緒におはぎを食べる！」

おまさは小さな紙を持ち、原田左之助を微笑んで見た。

原田左之助はおまさを笑顔で見た。

おまさは小さな紙を包みに戻すと、包みを丁寧に閉じた。

原田左之助はおまさを笑顔で見ている。

おまさは包みを持ち、原田左之助に微笑んで話し出す。

「左之助さん。家に上がって。」

原田左之助はおまさに笑顔で頷いた。



原田左之助は家の中へ笑顔で入って行った。

おまさは包みを持ち、家の中へ微笑んで入って行った。



暫く後の事。



ここは、屯所。



土方歳三の部屋。



土方歳三は微笑んで居る。

斉藤一は普通に居る。



土方歳三は斉藤一に微笑んで話し出す。

「総司に、“あの娘の家の萩は、花のときよりも実になってからのほうが、いっそう恋しくなってしまいました。”の意味のみ教えて、更に深い意味の“あの娘に逢うことができてから、いっそう恋しくなってきてしまいました。”は教えなかった。俺の想像どおり、総司はあの子に笑顔で歌を贈って動揺したのか。斉藤。報告をありがとう。」

斉藤一は土方歳三に普通の表情で軽く礼をした。

土方歳三は斉藤一に微笑んで話し出す。

「総司とあの子について話すと、総司が良く現れる。今回は、総司が現れるかな？」

斉藤一は土方歳三に普通に話し出す。

「土方さん。総司が勢い良く現れると、騒がしくなります。面倒です。期待は止めてください。」

土方歳三は斉藤一に微笑んで話し出す。

「確かに。」

斉藤一は土方歳三を普通の表情で見た。



沖田総司の勢い良く聞こえる足音が、部屋の外から聞こえた。



土方歳三は斉藤一を苦笑して見た。

斉藤一は土方歳三に普通の表情で軽く礼をした。



障子が勢い良く開いた。



土方歳三は障子の開く様子を苦笑して見た。

斉藤一は障子の開く様子を普通の表情で見た。



沖田総司が部屋の中に勢い良く入ってきた。



土方歳三は沖田総司を苦笑して見た。

斉藤一は沖田総司を普通の表情で見た。



「我妹子が　やどの秋萩　花よりは　実になりてこそ　恋ひまさりけれ」

沖田総司、藤堂平助、原田左之助には、作者の想いが分かる様子。

萩の花に想いを寄せて、賑やかで和やかな不思議な時間が過ぎていく。




＊　　　　　　＊　　　　　　＊　　　　　　＊　　　　　　＊　　　　　　＊




ここからは後書きになります。

この物語は既に掲載している物語の改訂版です。

改訂前の物語の展開や雰囲気を出来るだけ残して改訂しました。

改訂前の物語を掲載するのは止めました。

以上、ご了承願います。

ここからは改訂前の後書きを加筆訂正して書きます。

この物語に登場する歌は「万葉集　第七巻　一三六五番」

「我妹子が　やどの秋萩　花よりは　実になりてこそ　恋ひまさりけれ」

ひらがなの読み方は「わぎもこが　やどのあきはぎ　はなよりは　みになりてこそ　こひまさりけれ」

作者は「詠み人知らず」

歌の意味は「あの娘の家の萩は、花のときよりも実になってからのほうが、いっそう恋しくなってしまいました。」となるそうです。

原文は「吾妹子之　屋前之秋芽子　自花者　實成而許曽　戀益家礼聞」

萩の花に託して詠んだ歌だそうです。

「あの娘に逢うことができてから、いっそう恋しくなってきてしまいました。」というような意味になるそうです。

「萩（はぎ）」についてです。

マメ科ハギ属の落葉低木の総称です。

秋の季語です。

秋の七草の一つです。

万葉集には１４１首を掲載しています。

多く詠まれている花です。

一般的に「萩」というと、「山萩（やまはぎ）」を差す事が多いそうです。

襲の色目の「萩襲」を「萩」と呼ぶ事がありますが、一般的には植物の「萩」を差す事が多いです。

「寄せて（よせて）」についてです。

「寄せる」の言葉には幾つかの意味があります。

この物語では、「愛情・興味・好意などの気持ちを抱く。思いをかける。」と「あることに関係付ける。」の意味で使用しています。

楽しんで頂けると嬉しいです。





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