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〜 雪月花 新撰組異聞 編 〜


〜 夏初月 杜若丹つらふ妹はいかにかあるらむ 〜


登場人物

近藤勇、土方歳三、沖田総司、斉藤一、お雪、少女[美鈴・鈴]



「吾のみや、かく恋すらむ、杜若、丹つらふ妹は、いかにかあるらむ」

「万葉集 第十巻 一九八六番」より

作者:詠み人知らず



夏が始まっている。



ここは、京の町。



夏の花が咲き始めた。



ここは、お雪の家。



一室。



近藤勇は杜若の花束を持ち、微笑んで居る。

お雪は微笑んで居る。



近藤勇は杜若の花束を持ち、お雪に微笑んで話し出す。

「忙しい時が続いたために、お雪に逢えない日が続いてしまった。お雪への詫びとして、綺麗に咲く杜若の花を用意した。」

お雪は近藤勇と杜若を見ながら、近藤勇に微笑んで話し出す。

「ありがとうございます。」

近藤勇はお雪に杜若の花束を微笑んで渡した。

お雪は近藤勇から杜若の花束を微笑んで受け取った。

近藤勇はお雪に微笑んで話し出す。

「お雪。時間に余裕があれば、杜若を活けて欲しい。」

お雪は杜若の花束を持ち、近藤勇に微笑んで話し出す。

「庭から、杜若に合う植物を探します。少しお待ちください。」

近藤勇はお雪に微笑んで話し出す。

「紫色の杜若の花と白色の杜若の花を用意した。杜若のみでも綺麗に活けられると思う。」

お雪は杜若の花束を持ち、近藤勇に不思議な様子で話し出す。

「杜若のみで活けるのですか?」

近藤勇はお雪に不思議な様子で話し出す。

「杜若のみで活けないのか?」

お雪は杜若の花束を持ち、近藤勇に微笑んで話し出す。

「一輪のみで活ける方法があります。今回は白色の花と紫色の花があります。綺麗に活けられると思います。」

近藤勇はお雪に微笑んで話し出す。

「お雪が杜若を活ける様子を見たい。」

お雪は杜若の花束を持ち、近藤勇に微笑んで軽く礼をした。

近藤勇はお雪を微笑んで見た。

お雪は杜若の花束を持ち、近藤勇を微笑んで見た。



少し後の事。



ここは、お雪の家。



一室。



近藤勇は微笑んで居る。

お雪は杜若を微笑んで花器に生けている。

お雪の傍には、花器と杜若が置いてある。



近藤勇はお雪と杜若を微笑んで見ている。

お雪は杜若を様々な長さに切ると、杜若を花器の中に隠れる剣山に微笑んで刺していく。



白色の杜若の花と紫色の杜若の花が花器に納まり、更に綺麗な姿になった。



お雪は近藤勇に微笑んで話し出す。

「近藤先生。終わりました。」

近藤勇は杜若を微笑んで見た。

お雪は近藤勇を微笑んで見た。

近藤勇はお雪を見ると、お雪に微笑んで話し出す。

「私が杜若を見た時より、更に綺麗になっている。流石。お雪だ。」

お雪は近藤勇に微笑んで話し出す。

「褒めて頂いて嬉しいです。ありがとうございます。」

近藤勇はお雪に微笑んで話し出す。

「活けた杜若は床の間に置くのかな?」

お雪は近藤勇に微笑んで話し出す。

「はい。」

近藤勇は杜若を活けた花器を丁寧に微笑んで持った。

お雪は近藤勇を微笑んで見た。

近藤勇は杜若を活けた花器を床の間に微笑んで丁寧に置いた。

お雪は近藤勇に微笑んで話し出す。

「近藤先生。ありがとうございます。」

近藤勇はお雪に微笑んで話し出す。

「私から頼んだ。気にするな。」

お雪は近藤勇を微笑んで見た。

近藤勇はお雪に微笑んで話し出す。

「お雪。杜若を見ながら話したい。」

お雪は近藤勇に微笑んで話し出す。

「私も杜若を見ながら話したいです。」

近藤勇はお雪と杜若を微笑んで見た。

お雪も近藤勇と杜若を微笑んで見た。



暫く後の事。



ここは、屯所。



近藤勇の部屋。



近藤勇は部屋の中に微笑んで入った。



土方歳三が部屋の中に微笑んで入ってきた。



土方歳三は近藤勇に微笑んで話し出す。

「近藤さんが穏やかに歩く姿を見た。近藤さんの部屋を直ぐに訪ねた。」

近藤勇は土方歳三に微笑んで話し出す。

「歳。お雪は杜若を喜んで受け取った。今回も様々な気配りをありがとう。」

土方歳三は近藤勇に微笑んで頷いた。

近藤勇は土方歳三に微笑んで話し出す。

「お雪に杜若を活けてもらった。とても綺麗だった。流石だと思った。」

土方歳三は近藤勇に不思議な様子で話し出す。

「もしかして、お雪さんに杜若のみで活けて欲しいと頼んだのか?」

近藤勇は土方歳三に不思議な様子で頷いた。

土方歳三は近藤勇に不思議な様子で話し出す。

「一輪で活ける方法は広く知られているが、一種類で活ける方法は珍しいと思う。お雪さんは不思議な様子になった時は有ったか?」

近藤勇は土方歳三に心配な様子で話し出す。

「お雪は私に不思議な様子で話した。」

土方歳三は近藤勇を微笑んで見た。

近藤勇は土方歳三に心配して話し出す。

「歌や書物に関しては、一般的な内容は勉強しているつもりだ。生け花の活ける方法は勉強していなかった。風流な物事についても、更なる勉強が必要だな。」

土方歳三は近藤勇に微笑んで話し出す。

「生け花には、幾つかの流派があり、様々な活ける方法がある。心配するな。」

近藤勇は土方歳三に微笑んで話し出す。

「お雪は私が生け花について疎いと気付いたと思う。お雪は呆れていると思う。」

土方歳三は近藤勇に微笑んで話し出す。

「お雪さんは努力する人物に対して、悪い印象は抱かないし、呆れない。心配するな。」

近藤勇は土方歳三に微笑んで頷いた。

土方歳三は近藤勇を微笑んで見た。

近藤勇は土方歳三に微笑んで話し出す。

「歳。今後は、花に関して更に勉強する。今回の件を僅かでも挽回したい。手伝いを頼みたい。」

土方歳三は近藤勇に微笑んで頷いた。

近藤勇は土方歳三を微笑んで見た。



数日後の事。



ここは、屯所。



近藤勇の部屋。



近藤勇は机に普通の表情で向かっている。

机には、文と紙が置いてある。



斉藤一は部屋を普通に訪ねた。



斉藤一は近藤勇に普通の表情で軽く礼をした。

近藤勇は文と紙を取ると、斉藤一に微笑んで話し出す。

「斉藤。紙に書いた場所で、杜若を受け取ってから、お雪に文と杜若を届けて欲しい。」

斉藤一は近藤勇から紙と文を受け取ると、近藤勇に普通の表情で軽く礼をした。

近藤勇は斉藤一に微笑んで話し出す。

「斉藤。頼む。」

斉藤一は文と紙を懐に仕舞うと、近藤勇に普通の表情で軽く礼をした。

近藤勇は斉藤一を微笑んで見た。



斉藤一は部屋を普通に出て行った。



暫く後の事。



ここは、お雪の家。



玄関。



斉藤一は杜若の花束を持ち、普通に訪れた。



お雪は微笑んで来た。



斉藤一は杜若の花束を持ち、お雪に普通に話し出す。

「近藤さんが忙しいので、杜若と文を預かってきました。」

お雪は斉藤一に微笑んで話し出す。

「ありがとうございます。」

斉藤一は杜若の花束を普通の表情で渡した。

お雪は斉藤一から杜若の花束を微笑んで受け取った。

斉藤一は懐から文を取り出すと、お雪に普通の表情で渡した。

お雪は杜若の花束を持ち、斉藤一から文を微笑んで受け取った。

斉藤一はお雪を普通の表情で見た。

お雪は杜若の花束と文を持ち、斉藤一に微笑んで話し出す。

「文の返事が必要かも知れません。お部屋で少しお待ちください。」

斉藤一はお雪に普通の表情で軽く礼をした。



少し後の事。



ここは、お雪の家。



一室。



斉藤一は普通に居る。



お雪が文を持ち、部屋の中に微笑んで入ってきた。



斉藤一はお雪を普通の表情で見た。

お雪は文を持ち、斉藤一に微笑んで話し出す。

「近藤先生への文の返事です。お願いします。」

斉藤一はお雪から文を普通の表情で受け取った。

お雪は斉藤一を微笑んで見た。

斉藤一は懐かに文を普通の表情で仕舞った。

お雪は斉藤一に微笑んで話し出す。

「昨日、近藤先生から綺麗な杜若の花束を頂きました。今日は、近藤先生から、綺麗な杜若の花束の他に、文と素晴らしいお歌も頂きました。」

斉藤一はお雪に普通の表情で軽く礼をした。

お雪は斉藤一に恥ずかしく話し出す。

「申し訳ありません。嬉しくて、余計な内容を話してしまいました。」

斉藤一はお雪に普通に話し出す。

「余計な内容は話していません。」

お雪は斉藤一に微笑んで話し出す。

「気軽に話せる方が近くに居ません。気楽に話せる方が近くに居る時は、たくさん話してしまいます。嬉しい時は、更にたくさん話してしまいます。」

斉藤一はお雪に普通に話し出す。

「俺はたくさん話せませんが、話しを聞くのみならば出来ます。」

お雪は斉藤一を微笑んで見た。

斉藤一はお雪を普通の表情で見た。

お雪は斉藤一に微笑んで話し出す。

「近藤先生と逢えない日が続くと、寂しい気持ちになります。近藤先生と逢う時は、近藤先生の気遣いが伝わる時は、嬉しい気持ちになります。」

斉藤一はお雪に普通の表情で軽く礼をした。

お雪は斉藤一に微笑んで話し出す。

「“吾のみや、かく恋すらむ、杜若、丹つらふ妹は、いかにかあるらむ”」

斉藤一はお雪を普通の表情で見た。

お雪は斉藤一に微笑んで話し出す。

「近藤先生もお歌のような気持ちになる時があるのでしょうか?」

斉藤一はお雪を普通の表情で見ている。

お雪は斉藤一に微笑んで話し出す。

「近藤先生も皆様も、お仕事が大変で忙しいですよね。近藤先生が私に逢いに来た時だけでも、ゆっくりと過ごして頂けるようにしたいと思います。」

斉藤一はお雪を普通の表情で軽く礼をした。

お雪は斉藤一に微笑んで話し出す。

「お話しを聞いて頂いて嬉しかったです。ありがとうございます。」

斉藤一はお雪を普通の表情で軽く礼をした。

お雪は斉藤一に微笑んで話し出す。

「今日、買い物の途中でお菓子を買いました。沖田様や親しい方と食べてください。」

斉藤一はお雪を普通の表情で軽く礼をした。

お雪は斉藤一に微笑んで話し出す。

「お菓子を持って帰るための用意をします。少しお待ちください。」

斉藤一はお雪を普通の表情で軽く礼をした。



お雪は部屋から微笑んで居なくなった。



暫く後の事。



ここは、屯所。



斉藤一の部屋。



斉藤一は包みを持ち、部屋の中に普通に入った。



沖田総司が部屋の中に笑顔で入ってきた。



斉藤一は包みを持ち、沖田総司を普通の表情で見た。

沖田総司は斉藤一に笑顔で話し出す。

「斉藤さんが包みを持って屯所内を歩いていました! 任務中の可能性があるので様子を見ました! 斉藤さんは、包みを持って近藤さんの部屋に入って、包みを持って近藤さんの部屋を出て、包みを持って斉藤さんの部屋に入りました! 斉藤さんは任務中ではないと思ったので、斉藤さんの部屋を訪ねました!」

斉藤一は包みを持ち、沖田総司を普通の表情で見ている。

沖田総司は斉藤一に笑顔で話し出す。

「斉藤さん! 今日の任務は終わりですか?!」

斉藤一は包みを持ち、沖田総司に普通の表情で頷いた。

沖田総司は斉藤一に嬉しく話し出す。

「今から、鈴ちゃんと杜若を見に行きます! 斉藤さんも杜若を見に行きましょう!」

斉藤一は包みを持ち、沖田総司に普通の表情で頷いた。

沖田総司は斉藤一に嬉しく話し出す。

「今から、鈴ちゃんを迎えに行きます! 斉藤さんも鈴ちゃんを迎えに行きましょう!」

斉藤一は包みを持ち、沖田総司に普通に話し出す。

「俺は別な場所で待つ。美鈴さんの家には、総司が一人で迎えに行け。」

沖田総司は斉藤一に嬉しく話し出す。

「分かりました!」

斉藤一は包みを持ち、沖田総司に普通の表情で頷いた。

沖田総司は斉藤一を笑顔で見た。



暫く後の事。



ここは、杜若のたくさん咲く場所。



沖田総司は微笑んで居る。

斉藤一は包みを持ち、普通の表情で居る。

少女は微笑んで居る。



少女は紫色の杜若や白色の杜若を微笑んで見た。



沖田総司は数歩ほど後ろに静かに下がった。

斉藤一は包みを持ち、数歩ほど後ろに普通の表情で静かに下がった。



少女は紫色の杜若や白色の杜若を微笑んで見ている。



沖田総司は斉藤一に不安な様子で小さい声で話し出す。

「先日、私が杜若と菖蒲の区別が付かないために、鈴ちゃんとの会話が土地夕で止まってしまいました。昨年、斉藤さんと鈴ちゃんから、杜若と菖蒲の区別を教えてもらったのに、今も杜若と菖蒲の区別が付きません。斉藤さんや土方さんは、杜若と菖蒲の区別が付きます。私は花について疎いです。鈴ちゃんは私と居て楽しいのでしょうか?」

斉藤一は包みを持ち、沖田総司に普通の表情で小さい声で話し出す。

「“吾のみや、かく恋すらむ、杜若、丹つらふ妹は、いかにかあるらむ”」

沖田総司は斉藤一を赤面して見た。

斉藤一は包みを持ち、沖田総司を普通の表情で見た。

沖田総司は斉藤一に赤面して話し出す。

「斉藤さん! 鈴ちゃんは物凄く大切な友達です! 変な歌を詠まないでください!」

少女は沖田総司を驚いた様子で見た。

斉藤一は包みを持ち、沖田総司と少女を普通の表情で見た。

沖田総司は斉藤一と少女を赤面して見た。



沖田総司は赤面して走って居なくなった。



斉藤一は包みを持ち、少女に普通に話し出す。

「総司と話す途中で、或る人物が杜若の花束と共に贈った歌を詠んだ。総司は、赤面して騒いだ後に、赤面して走って居なくなった。」

少女は斉藤一を心配して見た。

斉藤一は包みを持ち、少女に普通に話し出す。

「総司は冷静になれば、直ぐに戻る。心配するな。」

少女は斉藤一に微笑んで話し出す。

「はい。」

斉藤一は包みを持ち、少女に普通に話し出す。

「今日の任務の最中に菓子をもらった。俺は菓子を余り食べない。俺の代わりに菓子を食べて欲しい。」

少女は斉藤一に微笑んで話し出す。

「総司さんと斉藤さんと私で、お菓子を食べたいです。」

斉藤一は包みを持ち、少女に普通に話し出す。

「総司は菓子を代わりに食べて欲しいと話すと、代わりに食べる量より多い量を勢い良く食べる。総司が戻る前に、美鈴さんの好きな菓子を選べ。」

少女は斉藤一に微笑んで話し出す。

「ありがとうございます。」

斉藤一は少女に包みを普通に渡した。

少女は斉藤一から包みを微笑んで受け取った。

斉藤一は少女を普通の表情で見た。

少女は包みを微笑んで広げた。

斉藤一は少女を普通の表情で見ている。

少女は包みを持ち、菓子を微笑んで見た。

斉藤一は少女を普通の表情で見ている。

少女は包みを持ち、斉藤一を見ると、斉藤一に微笑んで話し出す。

「いただきます。」

斉藤一は少女に普通の表情で頷いた。

少女は包みを傍に置くと、菓子を微笑んで取った。

斉藤一は少女を普通の表情で見た。

少女は菓子を微笑んで美味しく食べ始めた。

斉藤一は辺りを普通の表情で見た。

少女は菓子を微笑んで美味しく食べている。

斉藤一は少女を見ると、少女に普通に話し出す。

「美鈴さんは二個の菓子を食べられる。総司の戻る前に、残りの一個の菓子を選べ。」

少女は菓子を食べるのを止めると、斉藤一に微笑んで話し出す。

「はい。」

斉藤一は少女に普通の表情で頷いた。

少女は菓子を微笑んで食べた。

斉藤一は少女を普通の表情で見た。

少女は菓子を微笑んで見た。

斉藤一は少女に普通に話し出す。

「美鈴さん。近い距離だが、少し離れる。直ぐに戻る。」

少女は斉藤一を見ると、斉藤一に微笑んで話し出す。

「はい。」

斉藤一は少女に普通の表情で頷いた。



直後の事。



ここは、斉藤一と少女が居る場所から少し離れた場所に有る一本の大きな木。



沖田総司は木の幹に隠れて、斉藤一と少女を寂しく見ている。



斉藤一が大きめな木に向かって普通の表情で歩いてくる。



沖田総司は木の幹に隠れて、斉藤一を慌てて見た。



斉藤一は普通に来た。



斉藤一は沖田総司に普通に話し出す。

「総司。相変わらず、隠れるのが下手だ。今は美鈴さんが気付いていない。美鈴さんが気付いたら恥ずかしい状況になるぞ。」

沖田総司は木の幹に隠れるのを止めると、斉藤一に拗ねて話し出す。

「斉藤さん〜 包みの中身は菓子だったのですね〜 私も菓子を食べたいです〜」

斉藤一は沖田総司に普通に話し出す。

「近藤さんに頼まれて、お雪さんの家に行った。お雪さんが、俺の帰る少し前に、総司や親しい人物と食べて欲しいと話して、菓子を渡した。」

沖田総司は少女を寂しく見た。

斉藤一は沖田総司に普通に話し出す。

「美鈴さんが一人になっている。直ぐに戻るぞ。」

沖田総司は斉藤一を見ると、斉藤一に微笑んで話し出す。

「はい。」

斉藤一は沖田総司に普通の表情で頷いた。



沖田総司は微笑んで歩き出した。

斉藤一は普通に歩き出した。



直後の事。



ここは、杜若のたくさん咲く場所。



少女は沖田総司と斉藤一を微笑んで見ている。

少女の傍には、お菓子の入った包みが置いてある。



沖田総司は微笑んで来た。

斉藤一は普通に来た。



少女は沖田総司と斉藤一に微笑んで話し出す。

「総司さん。斉藤さん。お帰りなさい。」

沖田総司は少女に微笑んで頷いた。

斉藤一は少女に普通の表情で頷いた。

沖田総司は少女に微笑んで話し出す。

「鈴ちゃん。直ぐに戻れなかった。ご免ね。」

少女は沖田総司に微笑んで話し出す。

「斉藤さんは総司さんが直ぐに戻ると話しました。総司さんは直ぐに戻りました。」

沖田総司は斉藤一と少女を微笑んで見た。

斉藤一は沖田総司と少女を普通の表情で見た。

沖田総司は少女と菓子を見ると、少女に微笑んで話し出す。

「美味しい様子が伝わる菓子だね。」

少女は沖田総司に微笑んで話し出す。

「とても美味しいお菓子です。」

沖田総司は斉藤一と少女を微笑んで見た。

少女は沖田総司を微笑んで見た。

沖田総司は菓子を取ると、斉藤一と少女に笑顔で話し出す。

「いただきます!」

少女は沖田総司を微笑んで見ている。

斉藤一は沖田総司に普通の表情で頷いた。

沖田総司は菓子を笑顔で美味しく食べ始めた。



「吾のみや、かく恋すらむ、杜若、丹つらふ妹は、いかにかあるらむ」

杜若のような、お雪。

杜若のような、少女。

杜若はお雪と少女を見守るように咲いている。

近藤勇の気持ちが分かるのは、土方歳三と斉藤一と杜若。

沖田総司の気持ちが分かるのは、斉藤一と杜若。

以上が、杜若の咲く頃に起きた出来事になる。




*      *      *      *      *      *




ここからは後書きになります。

この物語に登場する歌は「万葉集 第十巻 一九八六番」

「吾のみや、かく恋すらむ、杜若、丹つらふ妹は、いかにかあるらむ」

ひらがなの読み方は「あのみや、かくこひすらむ、かきつはた、につらふいもは、いかにかあるらむ」

作者は「詠み人知らず」

歌の意味は「こんな風に恋をしているのは私だけなのでしょうか。杜若のようなきれいなあの娘はどうなのでしょうか。」となるそうです。

原文は「吾耳哉、如是戀為良武、垣津旗、丹頬合妹者、如何将有」

「杜若(かきつばた)」についてです。

アヤメ科の多年草です。

池や川辺などの湿地に生え、紫色や白色の花を咲かせます。

紫色の花も白色の花も、花弁の真ん中は白色です。

現在の暦で、初夏の頃(5月中旬〜5月下旬頃)にかけて咲きます。

夏の季語です。

この物語について簡単に補足します。

史実の時間設定に合わせると、土方歳三さんと斉藤一さんは、江戸に居る可能性があります。

この物語の設定時期は、早めに咲いた杜若が見られる頃か遅めに咲いた杜若が見られる頃になる可能性があります。

近藤勇さんのイメージといえば、剣の腕が強い、新撰組の局長、たくさんの個性的な隊士達に慕われている、たくさんの女性と付き合っている、などの、豪快な内容で表現する事が多いです。

近藤勇さんは、歌を詠む、本を読む、などの、教養面の内容も伝わっています。

近藤勇さんは、会話や文を交わす状況で、恥ずかしいと思われない知識はあったそうです。

近藤勇さんは、誠の武士を自分の中に持ち、剣術関連以外も、誠の武士に近付くために精進していたと思います。

「夏初月(なつはづき)」は「陰暦四月の異称」です。

楽しんで頂けると嬉しいです。





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