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〜 雪月花 新撰組異聞 編 〜
〜 初夏の綾糸 えやはいぶきの 〜
登場人物
土方歳三、沖田総司、斉藤一、少女[美鈴・鈴]
「かくとだに えやはいぶきの さしも草 さしも知らじな 燃ゆる思ひを」
「小倉百人一首 第五一番」、及び、「後拾遺集」より
作者:藤原実方朝臣(ふじわらのさねかたあそん)
今は初夏。
ここは、京の町。
過ごしやすい日が続いている。
ここは、屯所。
土方歳三の部屋。
土方歳三は普通に居る。
斉藤一は普通に訪れた。
土方歳三は斉藤一に微笑んで話し出す。
「斉藤。総司関連の頼みがある。」
斉藤一は土方歳三に普通の表情で軽く礼をした。
土方歳三は斉藤一を微笑んで見た。
斉藤一は土方歳三を普通の表情で見た。
暫く後の事。
ここは、屯所。
沖田総司の部屋。
斉藤一は普通に訪ねた。
沖田総司は斉藤一を微笑んで見た。
斉藤一は沖田総司に普通に話し出す。
「総司。予行練習をしたい。付き合え。」
沖田総司は斉藤一に微笑んで話し出す。
「剣術の予行練習ですか?」
斉藤一は沖田総司に普通に話し出す。
「違う。」
沖田総司は斉藤一を不思議な様子で見た。
斉藤一は沖田総司を普通の表情で抱いた。
沖田総司は斉藤一を驚いて見た。
斉藤一は沖田総司を抱いて、沖田総司に普通に話し出す。
「“かくとだに えやはいぶきの さしも草 さしも知らじな 燃ゆる思ひを”」
沖田総司は斉藤一を驚いて見ている。
斉藤一は沖田総司を抱いて、沖田総司に普通に話し出す。
「言葉にして、伝えたい。一度のみ言葉にする。聞いてくれ。」
沖田総司は斉藤一を驚いて見ている。
斉藤一は沖田総司を抱いて、沖田総司に普通に話し出す。
「愛している。一緒になってくれ。」
沖田総司は斉藤一を驚いて見ている。
斉藤一は沖田総司を放すと、沖田総司に普通に話し出す。
「予行練習。其の一。終了。」
沖田総司は斉藤一に不思議な様子で話し出す。
「斉藤さん。何が遭ったのですか?」
斉藤一は沖田総司を普通に抱いた。
沖田総司は斉藤一を不思議な様子で見た。
斉藤一は沖田総司を抱いて、沖田総司に普通に話し出す。
「“かくとだに えやはいぶきの さしも草 さしも知らじな 燃ゆる思ひを”」
沖田総司は斉藤一を不思議な様子で見ている。
斉藤一は沖田総司を抱いて、沖田総司に普通に話し出す。
「今回だけは、言葉で伝えたい。聞いてくれ。」
沖田総司は斉藤一を不思議な様子で見ている。
斉藤一は沖田総司を抱いて、沖田総司に普通に話し出す。
「美鈴。愛している。一緒になってくれ。」
沖田総司は斉藤一に驚いて話し出す。
「斉藤さん?!」
斉藤一は沖田総司を放すと、沖田総司に普通に話し出す。
「予行練習。其の二。終了。」
沖田総司は斉藤一に大きな声で話し出す。
「斉藤さん!」
斉藤一は沖田総司に普通に話し出す。
「予行練習の其の二を実行する方向で調整する。総司。協力。感謝する。」
沖田総司は斉藤一に大きな声で話し出す。
「斉藤さん! 鈴ちゃんは私の物凄く大切な友達です! 駄目です!」
斉藤一は沖田総司を普通の表情で見た。
「総司の提案は拒否する。」
沖田総司は斉藤一に大きな声で話し出す。
「斉藤さん! 絶対に駄目です!」
斉藤一は部屋を普通に出て行った。
沖田総司は部屋を慌てて出て行った。
少し後の事。
ここは、屯所。
斉藤一の部屋。
斉藤一は部屋の中に普通に入ってきた。
沖田総司は部屋の中に慌てて入ってきた。
沖田総司は斉藤一に大きな声で話し出す。
「斉藤さん! 駄目です!」
斉藤一は沖田総司に普通に話し出す。
「総司。時間は早いが寝る準備をする。部屋から出て行ってくれ。」
沖田総司は斉藤一に大きな声で話し出す。
「斉藤さん! 部屋から出ません! 私の話を聞いてください!」
斉藤一は沖田総司に普通に話し出す。
「俺は寝る準備を始める。仕方が無いから、総司の話は聞く。俺の邪魔をせずに話せ。」
沖田総司は斉藤一に大きな声で話し出す。
「斉藤さんを一人にすると心配です! 私も斉藤さんの部屋で寝ます!」
斉藤一は沖田総司を普通の表情で見た。
沖田総司は斉藤一に大きな声で話し出す。
「斉藤さん! 私は少しだけ部屋に戻って、寝具と寝巻きを持ってきます! 私が戻るまで部屋から出ないでください!」
斉藤一は沖田総司に普通の表情で頷いた。
沖田総司は部屋から慌てて出て行った。
斉藤一は普通の表情で呟いた。
「面白い。」
翌日の事。
ここは、屯所。
斉藤一の部屋。
斉藤一は普通に居る。
沖田総司が部屋の中に慌てて入ってきた。
斉藤一は沖田総司を普通の表情で見た。
沖田総司は斉藤一に大きな声で話し出す。
「斉藤さん! しっかりと任務を遂行しましたか?! 鈴ちゃんに逢っていませんか?!」
斉藤一は沖田総司に普通の表情で頷いた。
沖田総司は斉藤一に大きな声で話し出す。
「斉藤さんの言動は非常に危険です! 今日も斉藤さんの傍で寝食を共に過ごします!」
斉藤一は沖田総司を普通の表情で見た。
土方歳三の普通の声が、部屋の外から聞こえた。
「斉藤。話が有る。部屋に入る。」
斉藤一は障子を普通に開けた。
土方歳三が部屋の中に普通に入った。
沖田総司は土方歳三を僅かに不機嫌に見た。
斉藤一は土方歳三に普通の表情で軽く礼をした。
土方歳三は沖田総司に微笑んで話し出す。
「総司。昨日から大きな声で話す時間が多いな。」
沖田総司は土方歳三に大きな声で話し出す。
「普通です!」
土方歳三は沖田総司に微笑んで話し出す。
「総司。昨夜は斉藤の部屋で、斉藤と共に寝たらしいな。総司が斉藤を慕って仲が良いのは分かるが、総司も斉藤も疲れて倒れないように気を付けろ。」
沖田総司は土方歳三に大きな声で話し出す。
「斉藤さんを一人にすると危険なので、斉藤さんの傍で過ごしているだけです!」
土方歳三は斉藤一を微笑んで見た。
斉藤一は土方歳三に普通の表情で軽く礼をした。
沖田総司は斉藤一に大きな声で話し出す。
「斉藤さん! 私は少しだけ部屋に戻って、寝具と寝巻きを持ってきます! 私が戻るまで部屋から出ないでください!」
土方歳三は沖田総司に微笑んで話し出す。
「総司。気持ちが高ぶる様子が伝わる。総司が戻るまで、俺が斉藤の傍に居る。気持ちを静めてから、斉藤の部屋に来い。」
沖田総司は土方歳三に大きな声で話し出す。
「直ぐに戻ります!」
土方歳三は沖田総司を微笑んで見た。
斉藤一は土方歳三と沖田総司を普通の表情で見た。
沖田総司は部屋を慌てて出て行った。
土方歳三は斉藤一に微笑んで話し出す。
「俺にとっては予想以上の反応だが、斉藤にとっては予想どおりの反応かな?」
斉藤一は土方歳三に普通の表情で軽く礼をした。
土方歳三は斉藤一に微笑んで話し出す。
「総司は物凄く気持ちが高ぶる理由に気付かない。剣術関係は天才的な能力を発揮するが、一部の細やかな感情は天才的な鈍さを発揮しているな。」
斉藤一は土方歳三に普通の表情で軽く礼をした。
土方歳三は斉藤一に微笑んで話し出す。
「総司の気持ちが高ぶり過ぎている。総司を含める隊士達の任務に影響が出ると困る。あの子が総司を心配して倒れると困る。斉藤。事態を早く収める。」
斉藤一は土方歳三に普通の表情で軽く礼をした。
土方歳三は斉藤一を微笑んで見た。
斉藤一は土方歳三を普通の表情で見た。
沖田総司が寝具と寝巻きを持ち、部屋の中に慌てて入ってきた。
土方歳三は沖田総司を微笑んで見た。
斉藤一は沖田総司を普通の表情で見た。
沖田総司は寝具と寝巻きを傍に慌てて置いた。
土方歳三は沖田総司に微笑んで話し出す。
「総司。斉藤が総司に告白の予行練習をしただろ。実は、俺が、俺の知り合いのために考えた告白の予行練習になる。詳しい話は、斉藤から聞いてくれ。」
沖田総司は土方歳三を驚いて見た。
斉藤一は土方歳三と沖田総司を普通の表情で見た。
土方歳三は部屋から微笑んで出て行った。
沖田総司は斉藤一に悲しい様子で話し出す。
「斉藤さん! 私を騙したのですね! 酷いです!」
斉藤一は沖田総司に普通に話し出す。
「土方さんの知り合いに、或る方面に物凄く疎い人物が居る。土方さんが、土方さんの知り合いを心配している。土方さんが、告白された相手が、告白を聞いた後の言動を知りたいと考えた。土方さんから協力して欲しいと頼まれた。俺が総司に事情を説明すれば、総司は俺を直ぐに許す。俺は総司を相手に実行した。」
沖田総司は斉藤一に怪訝な様子で話し出す。
「斉藤さんの話の内容に嘘が混じっているように感じます。」
斉藤一は沖田総司に普通に話し出す。
「俺は総司に事実を話している。俺は数多くの嘘を付いて生きている。俺は数多くの嘘を付く任務を遂行している。総司が俺の話に嘘を感じるのは当然だ。」
沖田総司は斉藤一を僅かに動揺して見た。
斉藤一は沖田総司に普通に話し出す。
「総司は俺を友達だと幾度も話す。俺は総司を信じて実行した。俺の生き方から考えると、総司が俺を許さないのは当然だ。」
沖田総司は斉藤一に慌てて話し出す。
「斉藤さんが私を頼って土方さんの依頼を実行した状況が分かりました! 私と斉藤さんは、大切な友達の関係です! 今後も末永くよろしくお願いします!」
斉藤一は沖田総司に普通の表情で頷いた。
沖田総司は斉藤一に慌てて話し出す。
「斉藤さん! 私は土方さんに話しが有ります! 私は土方さんの部屋に行きます!」
斉藤一は沖田総司に普通の表情で頷いた。
沖田総司は部屋を慌てて出て行った。
斉藤一は普通の表情で呟いた。
「面白い。」
僅かに後の事。
ここは、屯所。
土方歳三の部屋。
土方歳三は普通に居る。
沖田総司は部屋の中に不機嫌に入ってきた。
土方歳三は沖田総司を不思議な様子で見た。
沖田総司は土方歳三に不機嫌に話し出す。
「土方さん! 私と斉藤さんと彼女は、物凄く大切な友達の関係です! 私と斉藤さんの友情を壊したいのですか?! 私と彼女の友情を壊したいのですか?! 斉藤さんと彼女の友情を壊したいのですか?! 酷いです!」
土方歳三は沖田総司を苦笑して見た。
沖田総司は土方歳三に不機嫌に話し出す。
「土方さん! 私の話しをしっかりと聞いてください!」
土方歳三は沖田総司に苦笑して頷いた。
翌日の事。
ここは、沖田総司、斉藤一、少女が、良く訪れる寺。
本堂。
沖田総司は微笑んで居る。
斉藤一は普通に居る。
少女は微笑んで居る。
少女は沖田総司に微笑んで話し出す。
「総司さんと斉藤さんは、二日間も傍で過ごしたのですね。」
沖田総司は少女に微笑んで話し出す。
「土方さんが、土方さんの知り合いのために考えた告白の予行練習のために、私と斉藤さんは落ち着かない二日間を過ごしたんだ。落ち着かない二日間だったけれど、斉藤さんと長く過ごせたんだ。」
少女は沖田総司に微笑んで話し出す。
「見方を変えると、総司さんとにとって、良い出来事が起きた二日間だったのですね。」
沖田総司は少女に微笑んで頷いた。
斉藤一は少女に普通に話し出す。
「土方さんに頼まれた告白の予行練習中に、俺が美鈴さんの名前を話した。総司が動揺して大騒ぎになった。二日間の間の俺と総司は、別行動の任務の時は離れていたが、寄り添って食事をして、寄り添って寝て、寄り添って過ごした。」
沖田総司は斉藤一に赤面して話し出す。
「斉藤さん! 話しを止めてください!」
斉藤一は少女に普通に話し出す。
「“かくとだに えやはいぶきの さしも草 さしも知らじな 燃ゆる思ひを”」
沖田総司は斉藤一に赤面して話し出す。
「斉藤さん! 話しを止めてください!」
斉藤一は少女に普通に話し出す。
「美鈴さん。土方さんが、土方さんの知り合いの告白のために選んだ歌だ。感想を教えてくれ。」
少女は斉藤一に赤面して話し出す。
「素敵なお歌です。お歌を受け取った女性が羨ましいです。」
斉藤一は沖田総司に普通に話し出す。
「総司。美鈴さんの話を聞いたな。」
沖田総司は斉藤一を赤面して見た。
斉藤一は沖田総司に普通に話し出す。
「総司。今夜は、同じ部屋の中で、少し離れて寝よう。」
沖田総司は斉藤一に赤面して話し出す。
「斉藤さんの申し出です。了承します。」
斉藤一は沖田総司を普通の表情で見た。
少女は沖田総司と斉藤一を微笑んで見た。
暫く後の事。
ここは、京の町。
綺麗な星が輝いている。
ここは、屯所。
斉藤一の部屋。
寝具の用意は終わっている。
沖田総司は拗ねて居る。
斉藤一は普通に居る。
沖田総司と斉藤一は、寝巻きを着ている。
沖田総司は斉藤一に拗ねて話し出す。
「斉藤さん〜 鈴ちゃんは、物凄く優しくて、物凄く良い子です〜 私と斉藤さんは、物凄く大切な友達です〜 私と鈴ちゃんは、物凄く大切な友達です〜 斉藤さんと鈴ちゃんは、大切な友達です〜」
斉藤一は沖田総司に普通に話し出す。
「総司。俺と美鈴さんは、物凄く大切な友達から、大切な友達に変わったのか?」
沖田総司は斉藤一に拗ねて話し出す。
「だって〜」
斉藤一は沖田総司に普通に話し出す。
「総司。面白い。」
沖田総司は斉藤一を拗ねて見た。
斉藤一は沖田総司に普通に話し出す。
「総司。土方さんの話す知り合いが誰だか分かるか?」
沖田総司は斉藤一に拗ねて話し出す。
「分かりません〜」
斉藤一は沖田総司に普通に話し出す。
「総司。面白い。」
沖田総司は斉藤一を拗ねて見た。
斉藤一は沖田総司に普通に話し出す。
「総司。休まないと、明日に影響が出る。床に横になって休みながら話そう。」
沖田総司は斉藤一に拗ねて話し出す。
「分かりました〜 横になって話します〜」
斉藤一は床に普通に着いた。
沖田総司は床に着くと、斉藤一に拗ねて話し出す。
「斉藤さん〜 起きていますか〜?」
斉藤一は床に着いて、沖田総司に普通に話し出す。
「起きている。」
沖田総司は床に着いて、斉藤一を微笑んで見た。
斉藤一は床に横になり、沖田総司を普通の表情で見た。
「かくとだに えやはいぶきの さしも草 さしも知らじな 燃ゆる思ひを」
沖田総司は、剣術関連では天才的な能力を発揮しているが、或る細やかな感情関連では天才的な鈍さを発揮している。
或る細やかな方面の達人の土方歳三は、既に気付いた内容がある。
洞察力が有り勘の鋭い斉藤一は、既に気付いた内容がある。
或る細やかな感情関連では天才的な鈍さを発揮する沖田総司が、気付く日は幾日後になるのか?
少女の幸せで満面の笑顔が見られる日は、幾日後になるのか?
答えを知るのは、初夏の綾糸が彩る時の流れのみかも知れない。
* * * * * *
ここからは後書きになります。
この物語に登場する歌は、「小倉百人一首 第五一番」、及び、「後拾遺集」
「かくとだに えやはいぶきの さしも草 さしも知らじな 燃ゆる思ひを」
ひらがなの読み方は「かくとだに えやはいぶきの さしもぐさ さしもしらじな もゆるおもひを」
作者は「藤原実方朝臣(ふじわらのさねかたあそん)」
歌の意味は「こんなにも恋い慕っているのにと言いたいのですが、どうしても口にすることができません。伊吹山のさしも草のように、この燃えるような私の想いをあなたはきっと知らないのでしょうね。」となるそうです。
作者の名前の「朝臣(あそん)」は、「平安時代、五位以上の人につける敬称。三位以上は、姓の下につけ、四位は、名の下につけ、五位は姓名の下につけ、たらしい。」と「平安時代、宮廷貴族間で使われた、男子に対する敬称」です。
「藤原実方」についてです。
生没不詳〜長徳四年(998年)
小一条左大臣師尹の孫です。
中古三十六歌仙に選ばれています。
正暦二年(991年)、右近中将。
正暦四年(993年)、従四位上。
正暦五年(994年)、左近中将。
長徳元年(995年)、陸奥守に任ぜられる。
長徳四年(998年)、任地で亡くなります。
「さしも草」は「指燃草」とも書きます。
「蓬」の別名です。
他の別名は、「艾(もぐさ)」、「餅草」、があります。
蓬は、春の季語です。
「綾糸(あやいと)」は「綾取り遊びに使う糸。美しいいろどりの糸。綜糸(あぜいと)と同じ。」です。
「初夏(しょか)」は「夏の始め(←夏の季語)。陰暦四月の異称。」です。
楽しんで頂けると嬉しいです。
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