このページは、2019年3月に保存されたアーカイブです。最新の内容ではない場合がありますのでご注意ください

〜 雪月花 新撰組異聞 編 〜


〜 真夏の夜の夢 花火 笑まひし面影に見ゆ 〜


〜 改訂版 〜


登場人物

沖田総司、斉藤一、少女[美鈴・鈴]

夜の国の住人:夢




「燈火の 影にかがよふ うつせみの 妹が笑まひし 面影に見ゆ」

「万葉集 第十一巻 二六四二番」より

作者:詠み人知らず




今は、夏。



ここは、京の町。



夜空には綺麗な月と星が浮かんでいる。



屯所。



沖田総司の部屋。



部屋の中に蚊帳が吊ってある。



蚊帳の中に床が敷いてある。



沖田総司は蚊帳の中に敷いた床の中で気持ち良く寝ている。



部屋の中が不思議な空気に包まれた。



沖田総司は床の中でゆっくりと目を開けた。



少女が沖田総司の顔を覆うように笑顔で覗き込んでいる。



沖田総司は、少女と同じ容姿の“夢”という名前の少女だと直ぐに分かった。



沖田総司は床の中で、夢に微笑んで話し出す。

「夢ちゃん。今晩は。」

夢は沖田総司の顔を覆うように、沖田総司に微笑んで話し出す。

「総司さん。こんばんは。」

沖田総司は床の中で、少女を微笑んで見た。

夢は沖田総司の顔を覆うのを微笑んで止めた。

沖田総司は床の上に微笑んで体を起こした。

夢は沖田総司に微笑んで抱き付いた。

沖田総司は床に体を起こして、赤面して動きを止めた。



夢は沖田総司を抱いて、不思議な空気にゆっくりと包まれた。

沖田総司は赤面して、動きを止めて、不思議な空気にゆっくりと包まれた。



一瞬の後の事。



ここは、夜の国。



夜空には、満天の星が輝き、綺麗な月が浮かんでいる。



草原が広がっている。



辺りは心地良い空気に包まれている。



沖田総司は赤面して、動きを止めて、静かに現れた。

夢は沖田総司を抱いて、微笑んで、静かに現れた。



沖田総司は赤面して辺りを見た。

夢は沖田総司から微笑んで放れた。

沖田総司は夢を赤面して見た。

夢は沖田総司に微笑んで話し出す。

「今夜の夜の国は、たくさんの花火を打ち上げます。みなさんで楽しんでください。」

沖田総司は夢に赤面して話し出す。

「斉藤さんと鈴ちゃんも、夜の国に来ているんだ。」

夢は沖田総司に微笑んで話し出す。

「総司さん。後程、逢いましょう。」

沖田総司は夢に赤面して話し出す。

「夢ちゃん。私の質問に答えていない。」



夢は微笑んで、静かに居なくなった。



沖田総司は辺りを困惑して見た。



斉藤一も少女も、近くに居る姿か見えない。

斉藤一も少女も、近くに居る気配を感じない。



沖田総司は辺りを見ながら、困惑して呟いた。

「斉藤さんも鈴ちゃんも、居ない。斉藤さんも鈴ちゃんも、現れる気配がない。夢ちゃんの家に行けば良いのかな?」

沖田総司は辺りを見ながら、困惑して呟いた。

「仕方がない。夢ちゃんの家に行こう。」



沖田総司は困惑した様子で、静かに居なくなった。



一瞬の後の事。



ここは、夜の国。



夢の住む家。



一室。



心地好い空気に包まれている。



沖田総司は不思議な様子で、静かに現れた。



家の中に人の気配を感じる。



沖田総司は部屋から微笑んで居なくなった。



僅かに後の事。



ここは、夜の国。



夢の住む家。



縁。



斉藤一が縁に座り、杯の酒を普通の表情で飲んでいる。



沖田総司は微笑んで来た。



斉藤一は杯の酒を飲みながら、沖田総司を普通の表情で見た。



沖田総司は微笑んで座った。



沖田総司は斉藤一に微笑んで話し出す。

「斉藤さん。今晩は。」

斉藤一は杯の酒を飲みながら、沖田総司に普通に話し出す。

「美鈴さんも家に居る。」

沖田総司は辺りを慌てて見た。



沖田総司の見える範囲に、少女の姿は見えない。

沖田総司は少女の気配を感じない。



沖田総司は斉藤一を不思議な様子で見た。

斉藤一は杯の酒を飲みながら、沖田総司に普通に話し出す。

「総司が必ず聞く質問だから、先に答えた。俺は真実を話した。」

沖田総司は斉藤一に慌てて話し出す。

「私は斉藤さんが嘘を付いたと思っていません!」

斉藤一は杯の酒を飲みながら、沖田総司を普通の表情で見た。



少女の穏やかな声が、沖田総司の後ろと斉藤一の後ろから聞こえた。

「総司さん。こんばんは。」



沖田総司は後ろを微笑んで見た。

斉藤一は酒を飲むのを止めると、後ろを普通の表情で見た。



少女は沖田総司と斉藤一を微笑んで見ている。



少女は浴衣を着ている。



沖田総司は少女を赤面して見た。

斉藤一は少女を普通の表情で見た。



少女は沖田総司の隣に微笑んで来た。



少女は沖田総司の横に微笑んで座った。



沖田総司は少女に赤面して話し出す。

「鈴ちゃん。浴衣を着ている。」

少女は沖田総司に微笑んで話し出す。

「夜の国の方達は、花火や夏祭りを楽しむ時に、浴衣を着るそうです。私も今夜の夜の国の花火を楽しむために、夜の国の浴衣を着ました。」

沖田総司は少女に赤面して話し出す。

「鈴ちゃん。鈴の柄の浴衣を着ている。」

少女は沖田総司に微笑んで話し出す。

「名前と同じ柄の浴衣を着ました。」

沖田総司は少女に赤面して話し出す。

「鈴ちゃんだから、鈴の柄の浴衣を着たんだ。」

少女は沖田総司に寂しく話し出す。

「すいません。着替えてきます。」

沖田総司は少女を赤面して不思議な様子で見た。

斉藤一は沖田総司の背中を普通の表情で軽く叩いた。

沖田総司は少女に赤面して慌てて話し出す。

「鈴ちゃん! とても似合っているよ! 何故、着替えるの?!」

少女は沖田総司を驚いた表情で見た。

沖田総司は少女に赤面して恥ずかしく話し出す。

「本当に、似合っているよ。着替えたら、駄目だよ。」

少女は沖田総司を恥ずかしく見た。

沖田総司は斉藤一に恥ずかしく話し出す。

「斉藤さんも、似合っていると、思います、よね。」

斉藤一は沖田総司と少女に普通の表情で頷いた。

沖田総司は少女を赤面して恥ずかしく見た。

少女も沖田総司と斉藤一を恥ずかしく見た。

斉藤一は沖田総司と少女に普通に話し出す。

「俺、総司、美鈴さん。三人が揃った。今から、花火を観に行く。」

沖田総司は斉藤一を見ると、斉藤一に不思議な様子で話し出す。

「縁からも花火が観えますよね。鈴ちゃんが居ます。人込みを避けて、縁で花火を観る方が良いと思います。」

斉藤一は懐から札を取り出すと、沖田総司と少女に普通に話し出す。

「夜の国の住人が、花火を良い位置で観るために、特別に場所を用意してくれた。俺の持つ札が有れば、特別な場所で花火を観られる。」

沖田総司は少女に微笑んで話し出す。

「鈴ちゃん。夜の国の人達の好意で、花火を良い場所で観られるんだって。」

少女は沖田総司に微笑んで話し出す。

「総司さん。斉藤さん。私。一緒に花火を外で観たいです。」

沖田総司は少女を微笑んで見た。

斉藤一は札を懐に仕舞うと、沖田総司と少女を普通の表情で見た。



斉藤一は普通の表情で、静かに居なくなった。

沖田総司は微笑んで、静かに居なくなった。

少女は微笑んで、静かに居なくなった。



直後の事。



ここは、夜の国。



花火を観るために用意された特別な場所。



心地好い空気に包まれている。



広く場所を確保してあるので、花火を落ち着いて観られるようになっている。



酒、肴、簡単な食事、菓子などが用意してある。



斉藤一は普通の表情で、静かに現れた。

沖田総司は微笑んで、静かに現れた。

少女は微笑んで、静かに現れた。



沖田総司は少女に微笑んで話し出す。

「広い場所だね。花火をゆっくりと観られるね。」

少女は沖田総司に微笑んで話し出す。

「はい。」

沖田総司は少女を微笑んで見た。



青色と緑色の鮮やかな花火が打ち上がった。



少女は花火を微笑んで見た。

沖田総司は花火を笑顔で見た。

斉藤一は花火を普通の表情で見た。

沖田総司は少女を見ると、少女に笑顔で話し出す。

「青色と緑色の花火! 鮮やかで綺麗だね!」

少女は沖田総司を見ると、沖田総司に微笑んで話し出す。

「はい。」



赤色と青色の鮮やかな花火が打ち上がった。



沖田総司は少女を優しく抱いた。

少女は沖田総司を不思議な様子で見た。

斉藤一は沖田総司と少女を普通の表情で見た。

沖田総司は少女を放すと、少女に恥ずかしく話し出す。

「鈴ちゃんは赤色の花火が苦手かなと思った瞬間に、鈴ちゃんを抱いてしまった。」

少女は沖田総司に恥ずかしく話し出す。

「お気遣いありがとうございます。」

沖田総司は少女を恥ずかしく見た。



橙色と青色の鮮やかな花火が打ち上がった。



少女は花火を微笑んで見た。

沖田総司は少女を笑顔で見た。



花火の光が、少女を鮮やかに映し出す。



沖田総司は少女を見ながら、恥ずかしく呟いた。

「鈴ちゃん。綺麗。」

斉藤一は沖田総司の耳元で普通の表情で囁いた。

「少し意味が違うが、“燈火の 影にかがよふ うつせみの 妹が笑まひし 面影に見ゆ”、という歌を思い出した。」

沖田総司は斉藤一を不思議な様子で見た。

斉藤一は沖田総司の耳元に顔を近付けて、沖田総司に普通の表情で囁いた。

「歌の意味が分からないのか? 仕方がない。教える。歌の意味は、“燈火の影にきらめくあの娘の微笑みが、はっきりと見えます。”、となるそうだ。」

沖田総司は少女を赤面して見た。



橙色、黄色、青色、緑色などの、鮮やかな花火が連続で打ち上がった。



少女は花火を笑顔で見た。



少女は色鮮やかな花火の光に彩られた。



沖田総司は少女を赤面して見ている。

斉藤一は沖田総司の背中を少女に向かって普通の表情で押した。

沖田総司は少女を驚いた表情で抱いた。

少女は沖田総司を驚いた表情で見た。

沖田総司は少女を抱いて、少女を驚いた表情で見た。

少女は沖田総司を驚いた表情で見ている。

沖田総司は少女を抱いて、少女を微笑んで見た。

少女は沖田総司を微笑んで見た。

斉藤一は、沖田総司、少女、花火を普通の表情で見た。



白色の花火が打ち上がった。



沖田総司、斉藤一、少女は、白色の優しい光に彩られた。



「燈火の 影にかがよふ うつせみの 妹が笑まひし 面影に見ゆ」

花火の鮮やかな光の中でも、笑顔をはっきりと見える。

沖田総司、斉藤一、少女の花火に彩られる夜の国の穏やかな時間は、暫く続く。




*      *      *      *      *      *




ここからは後書きになります。

この物語は既に掲載している物語の改訂版です。

改訂前の物語の展開や雰囲気を出来るだけ残して改訂しました。

改訂前の物語を掲載するのは止めました。

以上、ご了承願います。

ここからは改訂前の後書きを加筆訂正して書きます。

この物語に登場する歌は「万葉集 第十一巻 二六四二番」

「燈火の 影にかがよふ うつせみの 妹が笑まひし 面影に見ゆ」

ひらがなの読み方は「ともしびの かげにかがよふ うつせみの いもがゑ(または、“え”)まひし おもかげにみゆ」

作者は「詠み人知らず」

歌の意味は「燈火の影にきらめくあの娘のほほえみが、はっきりと見えます。」となるそうです。

原文は「燈之 陰尓蚊蛾欲布 虚蝉之 妹蛾咲伏思 面影尓所見」

「面影」は、物や人の姿がはっきりと見えることを言うそうです。

火は古代の重要なエネルギー源と同時に災害をもたらすものでもあり、神が宿るとも考えられていたそうです。

「花火」と「浴衣」についてです。

江戸時代の花火は、現在のように色彩が豊富ではなかったそうです。

現在になってから見られるようになった花火の形があります。

新撰組の人達が見ていた花火は、現在と比較すると、違っているところはたくさんあったと思います。

「夏祭り」・「花火」・「線香花火」といえば、「浴衣」を想像する方が多いと思います。

浴衣は平安時代にはありました。

江戸時代の末期頃かは不明ですが、浴衣を着て花火を見る風習や生活はしていなかったようです。

線香花火は、新撰組の人達の活躍していた時代には、既にあったようです。

江戸から北では、和紙でよってある物を長手としている線香花火が一般的だそうです。

大坂より西では、イグサの穂先や藁の穂先に、蒲の実のようにつけて乾燥させた線香花火が一般的だそうです。

線香花火の様子は違いますが、使用している火薬は同じだそうです。

私は両方の線香花火を使って遊んだ事があります。

現在では、和紙でよってある線香花火の方が一般的のように思います。

現在は、国産の線香花火が手に入り難くなる、というか手に入らなくなるという状況になっているそうです。

そうならないために努力している方がいるそうです。

浴衣を着て、夏祭りや花火などをおこなうようになったのは、かなり後の事だそうです。

江戸時代では、浴衣というと、お風呂に入る時に着る、お風呂の後に着る、寝る時に着る、などの使い方をしていたそうです。

この物語は、当初は、沖田総司さん達が過ごす現実の世界で線香花火が登場する場面を考えていました。

いろいろと考える間に、現在とほぼ同じ花火を見る様子、が浮かびました。

この物語は、沖田総司さんと斉藤一さんは、普段と同じ着物を着て、鈴ちゃんは、浴衣を着ています。

そのため、夜の国で浴衣を着て、現在の花火に近い花火を見る設定にしました。

楽しんで頂けると嬉しいです。





←前            目次            次→


このページは、2019年3月に保存されたアーカイブです。最新の内容ではない場合がありますのでご注意ください