このページは、2019年3月に保存されたアーカイブです。最新の内容ではない場合がありますのでご注意ください

〜 雪月花 新撰組異聞 編 〜


〜 年末から正月へ 初夢 我が待たむ 〜


〜 改訂版 〜


登場人物

山南敬助、沖田総司、斉藤一、藤堂平助、明里、少女[美鈴・鈴]




「夕さらば 屋戸開け設けて 我が待たむ 夢に相見に 来むといふ人を」

「万葉集 第四巻 七四四番」より

作者:大伴家持(おおとものやかもち)




今は一年の終わりの月。



季節は、冬。



ここは、京の町。



寒い日が続いている。



一年の終わりの月のため、慌しい雰囲気を感じる時がある。



ここは、島原。



一軒の店。



一室。



山南敬助は微笑んで居る。

明里も微笑んで居る。

山南敬助の前の膳には、酒と肴が置いてある。



山南敬助は明里に微笑んで話し出す。

「明里。渡したい物がある。」

明里は山南敬助に微笑んで話し出す。

「先生から贈り物が頂けるのですね。楽しみです。」

山南敬助は懐から紙を微笑んで取った。

明里は山南敬助を微笑んで見た。

山南敬助は明里に紙を渡すと、明里に微笑んで話し出す。

「正月の前だが、良い初夢を見られるように、七福神の乗った宝船の絵に“永き世の遠の眠りの皆目覚め 波乗り船の音の良きかな”の歌を書いた。初夢を見る日に枕の下に置いて眠ってくれ。」

明里は山南敬助から紙を受け取ると、山南敬助に微笑んで話し出す。

「ありがとうございます。とても嬉しいです。」

山南敬助は明里を微笑んで見た。

明里は紙を持ち、紙を微笑んで見た。

山南敬助は明里を微笑んで見ている。

明里は紙を持ち、山南敬助を見ると、山南敬助に僅かに拗ねて話し出す。

「先生。縁起物の紙は、私以外にも渡しますよね。」

山南敬助は明里に微笑んで話し出す。

「数名の隊士に、縁起物の紙を渡したい。私の立場では全ての隊士に紙を渡さなければならない。いろいろと悩んだが、数名の隊士にのみ縁起物の紙を渡すと決めた。」

明里は紙を持ち、山南敬助に僅かに拗ねて話し出す。

「先生。本当に数名の隊士だけですか?」

山南敬助は明里に微笑んで話し出す。

「本当に数名の隊士のみだ。」

明里は紙を持ち、山南敬助に微笑んで話し出す。

「先生が縁起物の紙を渡す数名の隊士。沖田様、斉藤様、藤堂様、ですね。」

山南敬助は明里に微笑んで話し出す。

「さすが明里。合っている。」

明里は紙を持ち、山南敬助に微笑んで話し出す。

「先生。美鈴様には縁起物の紙を渡さないのですか?」

山南敬助は明里に微笑んで話し出す。

「美鈴さんは、私が縁起物の紙を書いて渡す方法より、総司や斉藤君が、縁起物の紙を書いて渡す方法が喜ぶ。総司にさり気なく話す方法、斉藤君に説明を含めて頼む方法、を考えている。」

明里は紙を持ち、山南敬助に微笑んで話し出す。

「美鈴様は、沖田様や斉藤様が、縁起物の紙を書いて渡す方法を喜びますね。」

山南敬助は明里に微笑んで頷いた。

明里は紙を持ち、山南敬助に微笑んで話し出す。

「先生。沖田様は美鈴様に初夢に必ず現れて欲しいと思っていますよね。藤堂様も美鈴様に初夢に必ず現れて欲しいと思っていますよね。」

山南敬助は明里に微笑んで頷いた。

明里は紙を持ち、山南敬助に微笑んで話し出す。

「先生。藤堂様も沖田様も、応援しているのですか?」

山南敬助は明里に微笑んで話し出す。

「総司の想いと藤堂君の想いを考えるより前に、美鈴さんの想いを先に考える必要がある。美鈴さんの想いを無視した言動は出来ない。斉藤君は総司と美鈴さんを幾度も助けている。私は、総司、斉藤君、藤堂君、美鈴さんに、幸せになって欲しい。総司、斉藤君、藤堂君にとって、良い初夢を見て欲しいと想って用意した。」

明里は紙を懐に微笑んで仕舞った。

山南敬助は明里に微笑んで話し出す。

「総司、斉藤君、藤堂君に、良い初夢を見て欲しいと考える間に、“夕さらば 屋戸開け設けて 我が待たむ 夢に相見に 来むといふ人を”、の歌を思い出した。総司と藤堂君に紙を渡す時に、今の歌をさり気なく話したいと考えている。」

明里は山南敬助に微笑んで話し出す。

「沖田様の心。藤堂様の心。お二人の心を表すような歌ですね。」

山南敬助は明里に微笑んで頷いた。

明里は山南敬助に微笑んで抱き付いた。

山南敬助は明里を微笑んで抱いた。

明里は山南敬助に抱き付いて、山南敬助に微笑んで話し出す。

「先生。私の初夢に現れて欲しい人物が、私の傍に居ます。」

山南敬助は明里を抱いて、明里を微笑んで見た。

明里は山南敬助に抱き付いて、山南敬助に微笑んで話し出す。

「先生。楽しみにしています。」

山南敬助は明里を抱いて、明里を微笑んで見ている。

明里は山南敬助に抱き付いて、山南敬助に微笑んで話し出す。

「先生。先程から、私のみが話しています。良い初夢を見る可能性を高めるために、先生には、良いお酒と良い肴を、たくさん味わって頂きたいです。私のためにお願いします。」

山南敬助は明里を抱いて、明里に苦笑した表情で頷いた。

明里は山南敬助から微笑んで放れた。

山南敬助は明里を微笑んで見た。

明里は徳利を微笑んで持った。

山南敬助は杯を微笑んで持った。

明里は徳利を持ち、杯に酒を微笑んで注いだ。

山南敬助は杯の酒を微笑んで飲んだ。

明里は徳利を持ち、山南敬助を微笑んで見た。



幾日か後の事。



今は正月。



季節は、春。



ここは、京の町。



寒い日が続いている。



ここは、屯所。



山南敬助の部屋。



山南敬助は微笑んで居る。

藤堂平助も微笑んで居る。



山南敬助は藤堂平助に微笑んで話し出す。

「藤堂君。良い初夢を見られたかな?」

藤堂平助は山南敬助に微笑んで話し出す。

「はい。」

山南敬助は藤堂平助に微笑んで話し出す。

「藤堂君。希望の初夢を見られたかな?」

藤堂平助は山南敬助を赤面して見た。

山南敬助は藤堂平助に微笑んで話し出す。

「藤堂君。希望の初夢が見られたのか。良かった。」

藤堂平助は山南敬助に赤面して話し出す。

「初夢に縁起が良いとされる諺に“一富士、二鷹、三茄子”があります。初夢は、“一富士、二鷹、三茄子”を見ました。」

山南敬助は藤堂平助に微笑んで話し出す。

「縁起の良い初夢であり、希望の初夢でもある。良い初夢を見られたんだね。」

藤堂平助は山南敬助に赤面して話し出す。

「はい。」

山南敬助は藤堂平助を微笑んで見た。



少し後の事。



ここは、屯所。



山南敬助の部屋。



山南敬助は微笑んで居る。

沖田総司は微笑んで居る。

斉藤一は普通に居る。



山南敬助は沖田総司と斉藤一に微笑んで話し出す。

「総司。斉藤君。良い初夢を見られたかな?」

沖田総司は山南敬助に笑顔で話し出す。

「はい!」

斉藤一は山南敬助に普通の表情で軽く礼をした。

山南敬助は沖田総司と斉藤一に微笑んで話し出す。

「良かった。」

沖田総司は山南敬助に笑顔で話し出す。

「はい!」

斉藤一は山南敬助に普通の表情で軽く礼をした。

山南敬助は沖田総司と斉藤一に微笑んで話し出す。

「質問の内容を変える。希望の初夢を見られたかな?」

沖田総司は山南敬助に赤面して話し出す。

「良い初夢を見たのは分かりますが、初夢の内容を覚えていません。」

斉藤一は山南敬助に普通の表情で軽く礼をした。

山南敬助は沖田総司と斉藤一に微笑んで話し出す。

「総司も斉藤君も、良い初夢を見たのは分かるけれど、初夢の内容を覚えていない。総司と斉藤君は、同じ初夢を見た可能性がある。」

沖田総司は山南敬助と斉藤一を赤面して笑顔で見た。

斉藤一は山南敬助と沖田総司を普通の表情で見た。

山南敬助は沖田総司と斉藤一に微笑んで話し出す。

「美鈴さんも同じ初夢を見たかも知れない。良かった。」

斉藤一は山南敬助に普通の表情で軽く礼をした。

沖田総司は山南敬助と斉藤一を赤面して笑顔で見ている。

山南敬助は沖田総司と斉藤一を微笑んで見た。



数日後の事。



ここは、島原。



一軒の店。



一室。



山南敬助は杯の酒を微笑んで飲んでいる。

明里も微笑んで居る。

山南敬助の前の膳には、酒と肴が置いてある。



明里は山南敬助に微笑んで話し出す。

「先生。良い初夢を見られましたか?」

山南敬助は杯の酒を飲みながら、明里に微笑んで話し出す。

「明里。良い初夢を見られたかな?」

明里は山南敬助に微笑んで話し出す。

「秘密です。」

山南敬助は杯の酒を飲みながら、明里に微笑んで話し出す。

「明里は秘密なのか?」

明里は山南敬助に微笑んで話し出す。

「はい。」

山南敬助は杯の酒を飲みながら、明里に微笑んで話し出す。

「明里が秘密なら、私も秘密にする。」

明里は山南敬助を拗ねて見た。

山南敬助は杯の酒を飲みながら、明里に微笑んで話し出す。

「明里は初夢の結果を秘密にしている。私は良い初夢を見なかった、明里は良い初夢を見た、場合は、不安で寂しい。私は良い初夢を見た、明里は良い初夢を見なかった、場合は、明里に悪い。明里は良い夢を見た、私も良い初夢を見た、場合は、一緒に喜べない。」

明里は山南敬助を拗ねて見ている。

山南敬助は杯の酒を飲みながら、明里に微笑んで話し出す。

「私は明里の初夢の結果が知りたい。私も拗ねて良いかな?」

明里は山南敬助に微笑んで話し出す。

「私は先生の拗ねた姿を見たいです。私と居る時に先生が拗ねたら嬉しいです。」

山南敬助は杯の酒を飲みながら、明里に微笑んで話し出す。

「明里の前で拗ねたら、恥ずかしさが勝ってしまう。明里に拗ねる姿は見せられない。」

明里は山南敬助に微笑んで話し出す。

「私は先生が拗ねる姿を見たいです。私は先生の恥ずかしがる姿を見たいです。私と居る時には、遠慮せずに過ごしてください。」

山南敬助は杯の酒を飲みながら、明里を微笑んで見た。

明里は山南敬助を微笑んで見た。



数日後の事。



ここは、沖田総司、斉藤一、少女が良く訪れる寺。



本堂。



沖田総司は微笑んで居る。

斉藤一は普通に居る。

少女は微笑んで居る。



沖田総司は少女に微笑んで話し出す。

「鈴ちゃん。数日ほど前に、斉藤さんが拗ねたと話したよね。私の勘違いだったんだ。斉藤さんは拗ねていなかったんだ。斉藤さんに、失礼な内容を話したから、詫びるために酒を奢ったんだ。斉藤さんは喜んでくれたんだ。」

少女は沖田総司と斉藤一に微笑んで話し出す。

「総司さん。斉藤さん。一緒に楽しい時間を過ごされたのですね。」

斉藤一は少女に普通の表情で頷いた。

沖田総司は少女に微笑んで頷いた。

少女は斉藤一に微笑んで話し出す。

「斉藤さんは落ち着いた人物です。総司さんからお話を聞いた時に、斉藤さんの拗ねた様子を想像できませんでした。」

斉藤一は少女に普通に話し出す。

「総司は俺が無言だったために勘違いをした。」

少女は斉藤一に微笑んで話し出す。

「斉藤さんと総司さんは、とても親しいお友達です。斉藤さんと総司さんは、気兼ねをしないで過ごせる関係です。羨ましいです。」

斉藤一は少女に普通に話し出す。

「美鈴さんと総司は、互いを信じている。美鈴さんは総司に、総司は美鈴さんに、様々な姿を見せている。俺と総司の関係は、美鈴さんが羨ましく思う関係ではない。」

沖田総司は斉藤一に微笑んで話し出す。

「鈴ちゃんは斉藤さんも信じています。鈴ちゃんは斉藤さんにも様々な姿を見せています。」

少女は斉藤一に微笑んで話し出す。

「斉藤さんも総司さんも、信頼できる人物です。」

斉藤一は少女を普通の表情で見た。

沖田総司は斉藤一と少女を微笑んで見た。



暫く後の事。



ここは、屯所。



沖田総司の部屋。



沖田総司は微笑んで居る。

斉藤一は普通に居る。



斉藤一は沖田総司に普通に話し出す。

「総司。美鈴さんに俺は拗ねていないから早く訂正しろと話した。総司は、美鈴さんに、俺が居る時に、訂正の内容を話した。総司が俺から言われて訂正している状況になっていた。」

沖田総司は斉藤一に不思議な様子で話し出す。

「鈴ちゃんは、私が斉藤さんの訂正の頼みを受けて、訂正したと思っていません。」

斉藤一は沖田総司に普通に話し出す。

「美鈴さんが勘違いしないために、俺が補足の内容を話した。俺が補足の内容を話さなければ、美鈴さんは勘違いをしていた。」

沖田総司は斉藤一に微笑んで話し出す。

「さすが斉藤さん。さすが鈴ちゃんです。」

斉藤一は沖田総司に普通に話し出す。

「総司。俺が美鈴さんに再度の訂正を求める状況にするために、美鈴さんに先程の内容を話したのか?」

沖田総司は斉藤一を不思議な様子で見た。

斉藤一は沖田総司を普通の表情で見た。

沖田総司は斉藤一に考えながら話し出す。

「私は鈴ちゃんに多く逢える可能性があったのですね。」

斉藤一は沖田総司に普通の表情で頷いた。

沖田総司は斉藤一に考えながら話し出す。

「鈴ちゃんと斉藤さんと一緒に、たくさん出掛ける。嬉しい出来事です。斉藤さんの話は当たっているかも知れません。」

斉藤一は沖田総司を普通の表情で見た。

沖田総司は斉藤一に苦笑して話し出す。

「かな?」

斉藤一は沖田総司に普通に話し出す。

「当たっているかも知れない、の話の内容に追加する、かな、なのか?」

沖田総司は斉藤一に苦笑して話し出す。

「斉藤さんも鈴ちゃんも、物凄く大切な友達です。かな? は、かな? です。」

斉藤一は沖田総司を普通の表情で見た。

沖田総司は斉藤一に苦笑して話し出す。

「斉藤さん。都合の良い日に、酒を奢ります。深く考えないでください。」

斉藤一は沖田総司に普通に話し出す。

「総司。気遣い感謝する。」

沖田総司は斉藤一を苦笑して見た。

斉藤一は沖田総司を普通の表情で見た。



「夕さらば 屋戸開け設けて 我が待たむ 夢に相見に 来むといふ人を」

山南敬助、沖田総司、斉藤一、藤堂平助、明里、少女。

それぞれの初夢の内容は何か?

それぞれの初夢の中に現れた人物がいるらしい。

それぞれの初夢に現れた人物は誰なのか?

以前も今も、宝船に乗った七福神のみが知る状況となっている。




*      *      *      *      *      *




ここからは後書きになります。

この物語は既に掲載している物語の改訂版です。

改訂前の物語の展開や雰囲気を出来るだけ残して改訂しました。

改訂前の物語を掲載するのは止めました。

以上、ご了承願います。

ここからは改訂前の後書きを加筆訂正して書きます。

この物語に登場する歌は「万葉集 第四巻 七四四番」

「夕さらば 屋戸開け設けて 我が待たむ 夢に相見に 来むといふ人を」

ひらがなの読み方は「ゆうさらば やとあけまけて われまたむ いめにあひみに こむといふひとを」

作者は「大伴家持(おおとものやかもち)」

歌の意味は「夕暮れになったら家の戸を開いて待っていましょう。夢で会いに来るという人を。」となるそうです。

原文は「暮去者 屋戸開設而 吾将待 夢尓相見二 将来云比登乎」

大伴家持が「坂上大嬢(さかのうえのおおいつらめ)」に贈った歌の一つだそうです。

「初夢(はつゆめ)」についてです。

新年の季語です。

初夢は「大晦日、新年、一月二日、節分等」に見る夢をいいます。

一般的には「新年に初めて見る夢」を初夢と言います。

初夢の内容で一年の吉凶を占う風習があります。

以前は、十二月三十一日から一月一日にかけての夜は眠らずに過ごすのが一般的だったそうです。

室町時代頃から、良い夢を見るには、七福神の乗った宝船の絵に「永き世の遠(とお)の眠(ねぶ)りの皆目覚め 波乗り船の音の良きかな」という回文の歌を書いたものを枕の下に入れて眠ると良いとされているそうです。

この方法でも悪い夢を見た場合は、翌朝に宝船の絵を川に流して縁起直しをするそうです。

初夢に関することわざについてです。

初夢に見ると縁起が良いとされることわざで「一富士、二鷹、三茄子(いちふじ、にたか、さんなすび)」があります。

この三つの組み合わせは、江戸時代初期には既にあったそうです。

楽しんで頂けると嬉しいです。





←前            目次            次→


このページは、2019年3月に保存されたアーカイブです。最新の内容ではない場合がありますのでご注意ください