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〜 雪月花 新撰組異聞 編 〜


〜 紫陽花 人も惜し人も恨しもの思ふ身は 〜


登場人物

山南敬助、伊東甲子太郎、沖田総司、斉藤一、藤堂平助、少女[美鈴・鈴]



「人も惜し 人も恨めし あぢきなく 世を思ふゆゑに もの思ふ身は」

「小倉百人一首 第九十九番」、及び、「続後撰集」、より

作者:後鳥羽院(ごとばいん)



ここは、京の町。



紫陽花の花の咲く季節。



ここは、町中。



山南敬助は普通に歩いている。

藤堂平助も普通に歩いている。



山南敬助の視線の先と藤堂平助の視線の先に、少女が一人で寂しい様子で歩く姿が目に留まった。



山南敬助は少女を見ながら、藤堂平助に心配して話し出す。

「藤堂君。時間に少し余裕が有ると思う。あの子と話したい。良いかな?」

藤堂平助は山南敬助を見ると、山南敬助に普通に話し出す。

「はい。」

山南敬助は藤堂平助に微笑んで話し出す。

「藤堂君。一緒に来るかな?」

藤堂平助は山南敬助に心配して話し出す。

「あの子は、物凄く寂しい様子に見えます。私が一緒に行くと、あの子は落ち着かないと思います。私は別な場所で待っています。」

山南敬助は藤堂平助に微笑んで話し出す。

「分かった。私は一人であの子と話す。藤堂君は別な場所で待っていてくれ。」

藤堂平助は山南敬助に心配して話し出す。

「はい。」

山南敬助は藤堂平助に微笑んで頷いた。



僅かに後の事。



ここは、町中。



少女は寂しい様子で歩いている。



山南敬助は微笑んで来た。



少女は山南敬助を不思議な様子で見た。

山南敬助は少女に微笑んで話し出す。

「こんにちは。」

少女は山南敬助に微笑んで話し出す。

「こんにちは。」

山南敬助は少女に微笑んで話し出す。

「何か遭ったのかな?」

少女は山南敬助を微笑んで見た。

山南敬助は少女に微笑んで話し出す。

「総司に逢えなくて寂しいと想う。」

少女は山南敬助に微笑んで話し出す。

「総司さんはお仕事がとても忙しいと聞きました。お仕事が落ち着いたら、お話しが出来ます。総司さんのお仕事が落ち着くまで待っています。」

山南敬助は少女に不思議な様子で話し出す。

「総司は仕事が忙しいと話したのか。」

少女は山南敬助に心配して話し出す。

「総司さんに何か遭ったのですか?」

山南敬助は少女に微笑んで話し出す。

「誤解を招く内容を話してしまった。申し訳ない。」

少女は山南敬助に心配して話し出す。

「総司さんは無事ですか?」

山南敬助は少女に微笑んで話し出す。

「総司には、少し経つと逢えると思う。」

少女は山南敬助に僅かに安心した様子で話し出す。

「総司さんは無事なのですね。」

山南敬助は少女に微笑んで話し出す。

「美鈴さんは一人で寂しい想いをしている。総司に逢った時に、寂しかったと話して、我がままをたくさん話して、構わない。」

少女は山南敬助に微笑んで話し出す。

「私が我がままを話すと、総司さんに迷惑が掛かります。総司さんに我がままは話せません。」

山南敬助は少女に微笑んで話し出す。

「美鈴さん。総司は、たくさん話すが、必要な内容はたくさん話さない。総司に逢える。少しだけ待っていて欲しい。」

少女は山南敬助に微笑んで話し出す。

「はい。」

山南敬助は少女に微笑んで話し出す。

「失礼する。」

少女は山南敬助に微笑んで軽く礼をした。



山南敬助は微笑んで居なくなった。



僅かに後の事。



ここは、落ち着いた雰囲気の寺。



境内。



藤堂平助は普通に居る。



山南敬助は普通に来た。



藤堂平助は山南敬助を心配して見た。

山南敬助は藤堂平助に心配して話し出す。

「総司に逢えない状況が続く。寂しい様子が分かる。我慢している様子が分かる。総司に何か遇ったかも知れないと物凄く心配する様子が分かる。」

藤堂平助は山南敬助に心配して話し出す。

「大丈夫でしょうか?」

山南敬助は藤堂平助に微笑んで話し出す。

「近い内に、あの子は総司と逢えると思う。近い内に、あの子の笑顔はたくさん見られると思う。」

藤堂平助は山南敬助に納得のいかない様子で話し出す。

「あの子は沖田さんの嘘を信じていると考えて良いのでしょうか?」

山南敬助は藤堂平助に微笑んで話し出す。

「総司はあの子に本当の内容は話せないと思う。あの子が知ったら、あの子は倒れるかも知れない。」

藤堂平助は山南敬助に心配して話し出す。

「はい。」

山南敬助は藤堂平助に微笑んで話し出す。

「藤堂君。あの子が心配なんだね。」

藤堂平助は山南敬助に不思議な様子で話し出す。

「物凄く寂しい姿のあの子を見れば、普通は心配になります。」

山南敬助は藤堂平助に微笑んで話し出す。

「普通は、細かい変化などを含めて、分からない。藤堂君は、あの子の笑顔の変化、あの子の様子、一瞬のみで判断する。」

藤堂平助は山南敬助を不思議な様子で見た。

山南敬助は藤堂平助に微笑んで話し出す。

「今分からないと思う。何れ、分かる日が訪れる。」

藤堂平助は山南敬助を不思議な様子で見ている。

山南敬助は藤堂平助を微笑んで見た。



先程の出来事は、山南敬助が新撰組に居た頃の出来事になる。



幾日か過ぎた。



今の新撰組に、山南敬助は居ない。



今は、山南敬助が切腹をして亡くなってから、初めて迎える紫陽花の花の咲く季節になる。



今の新撰組は、山南敬助の切腹の出来事を忘れたかのように落ち着いている。



ここは、屯所。



縁。



沖田総司は微笑んで歩いている。

斉藤一は普通に歩いている。



少し離れた縁。



藤堂平助は沖田総司と斉藤一を普通の表情で見ている。



藤堂平助の視線の先に、沖田総司が斉藤一に微笑んで話す姿が見える。

藤堂平助の視線の先に、斉藤一が沖田総司に普通の表情で頷く姿が見える。



藤堂平助は沖田総司を普通の表情で見た。



藤堂平助の視線の先に、沖田総司が藤堂平助に気付かずに、斉藤一に微笑んで話す姿が見える。



沖田総司の姿と斉藤一の姿は、見えなくなった。



藤堂平助は普通に居なくなった。



翌日の事。



ここは、一軒の料亭。



一室。



床の間に、紫陽花の花を挿した花瓶が置いてある。



伊東甲子太郎は微笑んで杯の酒を飲んでいる。

膳には、酒と肴が載っている。

藤堂平助は杯の酒を普通の表情で飲んでいる。

膳には、酒と肴が載っている。



藤堂平助は杯の酒を飲みながら、伊東甲子太郎に考えながら、話し出す。

「幾度も考えても、分からない内容が有ります。」

伊東甲子太郎は杯の酒を飲みながら、藤堂平助を不思議な様子で見た。

藤堂平助は杯の酒を飲みながら、伊東甲子太郎に納得のいかない様子で話し出す。

「山南さんは、何故、沖田さんに介錯を頼んだのでしょうか? 山南さんは、何故、私に介錯を頼まなかったのでしょうか?」

伊東甲子太郎は杯の酒を飲みながら、藤堂平助に微笑んで話し出す。

「私は山南さんではない。藤堂君の今の質問には答えられない。」

藤堂平助は杯の酒を飲みながら、伊東甲子太郎に納得のいかない様子で話し出す。

「山南さんは私を頼りないと思っていたのでしょうか? 山南さんは私より沖田さんが頼りになると思っていたのでしょうか?」

伊東甲子太郎は杯の酒を飲みながら、藤堂平助に微笑んで話し出す。

「山南さんは藤堂君を頼りないと思っていなかったと想像する。山南さんは藤堂君を沖田君と比べて頼りないと思っていなかったと想像する。私は藤堂君が頼りになる人物だと思っている。」

藤堂平助は杯の酒を飲みながら、伊東甲子太郎に微笑んで話し出す。

「ありがとうございます。」

伊東甲子太郎は杯の酒を飲みながら、藤堂平助に微笑んで頷いた。

藤堂平助は杯の酒を飲むのを止めると、伊東甲子太郎に辛い様子で話し出す。

「山南さんは、私ではなく、沖田さんに、介錯を頼みました。山南さんが沖田さんに介錯を頼んだ事実は変わりません。沖田さんが山南さんの介錯を務めた事実は変わりません。」

伊東甲子太郎は杯の酒を飲みながら、藤堂平助に微笑んで話し出す。

「藤堂君は、山南さんが切腹する時に、藤堂君に介錯を頼みたい、と言って欲しかった、と考えて良いのかな?」

藤堂平助は伊東甲子太郎を困惑した様子で見た。

伊東甲子太郎は杯の酒を飲みながら、藤堂平助を微笑んで見た。

藤堂平助は伊東甲子太郎に寂しく話し出す。

「分かりません。」

伊東甲子太郎は杯の酒を飲みながら、藤堂平助を微笑んで見ている。

藤堂平助は伊東甲子太郎に寂しく話し出す。

「山南さんが私に介錯を頼んだら、私は受けます。私は断りません。何故、山南さんは沖田さんに介錯を頼んだのでしょうか?」

伊東甲子太郎は杯の酒を飲みながら、藤堂平助に微笑んで話し出す。

「藤堂君は介錯の頼みを断らないと思う。藤堂君は介錯を務める返事を即答すると思う。」

藤堂平助は伊東甲子太郎に考えながら話し出す。

「山南さんの介錯を務めた後の私は、何を想いながら過ごしているのか、考える時があります。」

伊東甲子太郎は杯の酒を飲みながら、藤堂平助に普通に話し出す。

「藤堂君の今の話す状況の場合は、仮定の出来事を考える必要は無いと思う。山南さんが藤堂君に介錯を頼まなかった状況を、周囲の人達は不思議に思っていない。逆の話になるが、山南さんが藤堂君に介錯を頼んだ場合は、周囲の人達は驚かないと思う。」

藤堂平助は伊東甲子太郎に僅かに安心して話し出す。

「少しだけ安心しました。」

伊東甲子太郎は杯の酒を飲みながら、藤堂平助に微笑んで話し出す。

「藤堂君。考え込まないように。」

藤堂平助は山南敬助を微笑んで見た。

伊東甲子太郎は杯の酒を飲みながら、紫陽花を微笑んで見た。

藤堂平助は杯の酒を飲むと、紫陽花を微笑んで見た。

伊東甲子太郎は杯の酒を飲みながら、紫陽花を見て、微笑んで呟いた。

「“人も惜し 人も恨めし あぢきなく 世を思ふゆゑに もの思ふ身は”」

藤堂平助は杯の酒を飲みながら、伊東甲子太郎を不思議な様子で見た。

伊東甲子太郎は杯の酒を飲みながら、藤堂平助を見ると、藤堂平助に微笑んで話し出す。

「今の歌のように生きる。寂しい生き方だと思わないかな? 山南さんの気持ちが分かる人物は、本人のみだ。山南さん以外の人物は、山南さんの気持ちを想像するのみだ。悩む出来事だと思うが、悩まないように。」

藤堂平助は杯の酒を飲みながら、伊東甲子太郎を微笑んで見た。

伊東甲子太郎は杯の酒を飲みながら、藤堂平助を微笑んで見た。



翌日の事。



ここは、屯所。



縁。



沖田総司は微笑んで居る。

斉藤一は普通に居る。



沖田総司が斉藤一に微笑んで話し出す。

「今から、紫陽花を見に行きます。斉藤さんも紫陽花を一緒に見に行きましょう。」

斉藤一は沖田総司に普通の表情で頷いた。

沖田総司は斉藤一に笑顔で話し出す。

「楽しみですね!」

斉藤一は沖田総司に普通に話し出す。

「総司が花を見に行く出来事を楽しく話す姿。不思議に感じる。」

沖田総司は斉藤一を不思議な様子で見た。

斉藤一は沖田総司に普通に話し出す。

「大切な内容を忘れていた。総司が見て楽しく感じる対象は、花以外だった。」

沖田総司は斉藤一に不思議な様子で話し出す。

「花を観る。楽しいです。」

斉藤一は沖田総司に普通に話し出す。

「総司。花の名前などを覚えるまでに、多くの時間が必要になっている。多くの時間が掛からずに覚える花は、或る人物が説明した花のみだ。」

沖田総司は斉藤一に赤面して話し出す。

「斉藤さん。私は、花について疎いので、勉強しています。覚える時間が違う状況は、仕方が無いです。今の話の内容。酷いです。」

斉藤一は沖田総司に普通に話し出す。

「総司は、或る人物からもらった大切な花を、俺が頻繁に注意しなければ、幾度も枯らしそうになっている。酷くない。」

沖田総司は斉藤一に拗ねた様子で話し出す。

「斉藤さん。酷いです。」

斉藤一は沖田総司に普通に話し出す。

「俺は本当の内容を話した。酷くない。」

沖田総司は斉藤一を拗ねて見た。



藤堂平助が普通に通り過ぎようとした。



沖田総司は藤堂平助を微笑んで見た。

斉藤一は藤堂平助を普通の表情で見た。

沖田総司は藤堂平助に微笑んで話し出す。

「平助。今から、斉藤さんと一緒に出掛けるんだ。」

藤堂平助は沖田総司に微笑んで話し出す。

「何処に出掛けるのですか?」

沖田総司は藤堂平助微笑んで話し出す。

「紫陽花を見に行くんだ。」

藤堂平助は沖田総司に普通に話し出す。

「去年の出来事になりますが、紫陽花を寂しく見る人物を見掛けました。」

沖田総司は藤堂平助を不思議な様子で見た。

藤堂平助は沖田総司に普通に話し出す。

「山南さんが或る人物を心配して話し掛けた時があります。或る人物は、相手の人物の仕事が忙しい嘘の理由を信じて、寂しい思いを誰にも話せずに我慢していました。」

沖田総司は藤堂平助を普通の表情で見た。

斉藤一は沖田総司と藤堂平助を普通の表情で見た。

藤堂平助は沖田総司に普通に話し出す。

「沖田さん。質問が有ります。嘘を付いて寂しい思いをしている人物を慰める良い方法。知っていますか?」

沖田総司は藤堂平助を普通の表情で見ている。

斉藤一は沖田総司と藤堂平助を普通の表情で見ている。

藤堂平助は沖田総司を普通の表情で見た。

沖田総司も藤堂平助を普通の表情で見ている。

藤堂平助は沖田総司と斉藤一に普通の表情で軽く礼をした。



藤堂平助は普通に歩き出そうとした。



沖田総司は藤堂平助に普通に話し出す。

「平助。待ってくれ。」



藤堂平助は歩き出すのを普通に止めた。



沖田総司は藤堂平助の胸倉を掴むと、藤堂平助を睨んで静かに話し出す。

「念のために確認する。彼女に変な内容を話していないだろうな。」

藤堂平助は沖田総司を驚いた表情で見た。

沖田総司は藤堂平助の胸倉を掴んで、藤堂平助を睨んで見た。

藤堂平助は沖田総司に僅かに驚いて話し出す。

「私は悲しませる内容を気軽に話しません。あの子が悲しい思いをする内容は話せません。山南さんも私も、何も話していません。」

沖田総司は藤堂平助の胸倉を掴んで、藤堂平助を睨んで静かに話し出す。

「本当だろうな。」

藤堂平助は沖田総司に真剣な表情で話し出す。

「本当です。見損なわないでください。」

沖田総司は藤堂平助の胸倉を掴んで、藤堂平助を睨んで静かに話し出す。

「平助。彼女に変な内容を話した時は、斬る。」

藤堂平助は沖田総司を驚いて見た。

沖田総司は藤堂平助の胸倉を掴んで、藤堂平助を睨んで静かに話し出す。

「平助。今の話。忘れるな。」

藤堂平助は沖田総司を驚いて見ている。

沖田総司は藤堂平助の胸倉を乱暴に睨んで離した。



藤堂平助は沖田総司が胸倉を乱暴に離した勢いで、驚いた様子で後ろに下がった。



沖田総司は斉藤一に普通の表情で静かに話し出す。

「斉藤さん。出掛けましょう。」

斉藤一は沖田総司に普通の表情で頷いた。



沖田総司は普通に歩き出した。

斉藤一も普通に歩き出した。



藤堂平助は沖田総司の後姿を見ながら、寂しく呟いた。

「あの子が悲しむ内容は話せません。」

藤堂平助は庭を普通の表情で見た。



紫陽花の花が綺麗な青色で咲く姿が見えた。



藤堂平助は紫陽花を見ながら、寂しく呟いた。

「“人も惜し 人も恨めし あぢきなく 世を思ふゆゑに もの思ふ身は”」



少し後の事。



ここは、町中。



沖田総司は普通に歩いている。

斉藤一も普通に歩いている。



沖田総司は斉藤一に悲しく話し出す。

「去年の鈴ちゃんに申し訳ない言動をたくさんしてしまいました。」

斉藤一は沖田総司を普通の表情で見た。

沖田総司は斉藤一に悲しく話し出す。

「鈴ちゃんが寂しい思いをしないようにしたいです。何か起きた時は、斉藤さんにお願いすると思います。いつもお願いばかりで申し訳ありません。」

斉藤一は沖田総司に普通の表情で頷いた。

沖田総司は斉藤一に悲しく話し出す。

「歩いて頼むお願いに該当しません。申し訳ありません。」

斉藤一は沖田総司に普通に話し出す。

「気にするな。」

沖田総司は斉藤一に微笑んで話し出す。

「ありがとうございます。」

斉藤一は沖田総司に普通の表情で頷いた。



少し後の事。



ここは、紫陽花の花の咲く場所。



沖田総司は微笑んで居る。

斉藤一は普通に居る。

少女は紫陽花の花を笑顔で見ている。



沖田総司は少女を微笑んで見た。

少女は沖田総司と斉藤一を見ると、沖田総司と斉藤一に微笑んで話し出す。

「総司さん。斉藤さん。紫陽花はたくさん見ました。お休みしたいです。」

沖田総司は少女に心配して話し出す。

「鈴ちゃん。今の場所に来て、少しだけしか経っていない。調子が悪いの?」

少女は沖田総司と斉藤一に微笑んで話し出す。

「私は大丈夫です。」

沖田総司は少女を心配して見た。

少女は沖田総司に心配して話し出す。

「総司さん。疲れていませんか? 大丈夫ですか?」

沖田総司は少女に微笑んで話し出す。

「私は大丈夫だよ。鈴ちゃん。心配してくれてありがとう。」

少女は沖田総司を安心した様子で見た。

沖田総司は少女に微笑んで話し出す。

「今の場所に来て少しだけしか経っていないけれど、三人で話しの出来る場所に行こう。少し経ったら、紫陽花をゆっくりと見よう。」

少女は沖田総司に微笑んで話し出す。

「はい。」

沖田総司は斉藤一を微笑んで見た。

斉藤一は沖田総司に普通の表情で頷いた。



沖田総司は、斉藤一、少女、紫陽花、を見ながら、微笑んで居なくなった。

斉藤一は、沖田総司、少女、紫陽花、を見ながら、普通に居なくなった。

少女は、沖田総司、斉藤一、紫陽花、を見ながら、微笑んで居なくなった。



紫陽花の花が、様々な想いを写しながら咲いている。

紫陽花の花が、様々な想いに染められながら咲いている。



紫陽花の季節は、様々な想いの中で静かに過ぎていく。




*     *     *      *      *      *




ここからは後書きになります。

この物語に登場する歌は、「小倉百人一首 第九十九番」、及び、「続後撰集」

「人も惜し 人も恨めし あぢきなく 世を思ふゆゑに もの思ふ身は」

ひらがなの読み方は「ひともおし ひともうらめし あぢきなく よをおもふゆゑに ものおもふみは」

歌の意味は「人のことをいとおしくも、また人のことを恨めしくも思われます。おもしろくもなく、苦々しいものとこの世を思い、いろいろともの思いにふけっている自分にとっては」になるそうです。

作者は「後鳥羽院(ごとばいん)」

この物語の補足です。

沖田総司さんと鈴ちゃんが逢えない状況になっています。

「池田屋事変」の頃を想定して書きました。

沖田総司さんの体調が悪くなっていて、鈴ちゃんに逢う事を一時的に控えていると想像してください。

山南敬助さんと藤堂平助さんは、天然理心流に入門しています。

沖田総司さんのように、最初から天然理心流に入門していた状況ではなく、他の流派に入門してから、天然理心流に参加しています。

他の流派を勉強や習得するために違う流派に入門する事は、不思議な事ではないそうです。

斉藤一さんも幾つかの流派を覚えているようです。

山南敬助さんと藤堂平助さんは、同門です。

山南敬助さんと藤堂平助さんが、出会った頃の詳細は分かりません。

仮に、知り合いでなくても、天然理心流で出会ってからは、同門という事で、いろいろと話す事があったと思います。

藤堂平助さんは、沖田総司さんが山南敬助さんの介錯を務めた事を、どのように思っていたのか、と考えました。

そして、この物語を書きました。

藤堂平助さんが複雑に思える内容を話せる相手を考えると、同門の伊東甲子太郎さんしか考えられませんでした。

そこで、伊東甲子太郎さんと藤堂平助さんが、いろいろと話しています。

藤堂平助さんの性格や当時の状況から考えると、人前で長々と恨み事を話すようには考えられませんでした。

気持ちの中でも、大きな恨み事を抱えている人にも感じませんでした。

藤堂平助さんは武士です。

武士としての立場や当時の状況から考えると、余計にそうなるのかな、と考えました。

後に起きる出来事から考えると、藤堂平助さんが、納得していない事があると思いました。

そのため、藤堂平助さんはいろいろと話しています。

歌の内容ほど物語の内容は暗くない雰囲気で書きました。

楽しんで頂けると嬉しいです。





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