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〜 雪月花 新撰組異聞 編 〜


〜 夏葛と秋葛 絶えぬ使いのよどめれば 〜


〜 改訂版 〜


登場人物

山南敬助、沖田総司、斉藤一、明里、女の子




「夏葛の 絶えぬ使いの よどめれば 事しもあるごと 思ひつるかも」

「万葉集 第四巻 六四九番」より

作者:大伴坂上郎女(おおとものさかのうへのいつらめ)




ここは、京の町。



暑さを感じる日が始まっている。



今は、陽の沈む前の時間。



青色の空が橙色の空に、ゆっくりと変化しながら広がっている。



ここは、島原。



たくさんの客で活気付く時は、少し後の事になる。



一軒の店。



明里という名前の遊女がいる。



明里は太夫に次ぐ地位に居る。



太夫は最高位になる。



太夫に成るためには、容姿や教養など、様々な方面に秀でている必要がある。

太夫に成るためには、金銭面を含めて支える人物が必要になる。

太夫には、成りたいと願っても成れる地位ではない。



一室。



数人の遊女が集まって身支度などをしている。



明里は微笑んで身支度をしている。

明里の可愛がっている下働きの女の子は、明里の身支度を微笑んで手伝っている。



明里の可愛がっている女の子は、遊女になる予定だが、今は下働きをしている。



明里は身支度をしながら、女の子に微笑んで話し出す。

「新撰組の隊士さんは、報奨金を受け取ると、店に威勢良く来るわね。」

女の子は明里の身支度を手伝いながら、明里に苦笑して話し出す。

「店に威勢良く来るのは構いませんが、威勢良く騒ぎ続けます。お金を手に入れると、店で威勢良く騒ぎ続けます。みんなが、新撰組の隊士は遊び方を知らないから困ると話しています。新撰組の隊士が壬生狼と呼ばれる状況は、当然だと思います。」

明里は身支度をしながら、女の子に微笑んで話し出す。

「壬生狼と呼ばれる人達は、お客様よ。今の内容の話は良くないわよ。」

女の子は明里の身支度を手伝いながら、明里に微笑んで話し出す。

「さすが明里さんです。」

明里は身支度をしながら、女の子に微笑んで話し出す。

「壬生狼と呼ばれていているけれど、私達に大きな声で話しても、怒鳴る状況も乱暴する状況も、少ないわ。私達のために命を掛けて手に入れたお金を使ってくれるのよ。更に、私達のためにお金を使ってもらえるように努力をしましょう。」

女の子は明里の身支度を手伝いながら、明里に微笑んで話し出す。

「明里さんの前向きな気持ちが、明里さんの地位を上げる理由なのですね。」

明里は身支度をしながら、女の子を微笑んで見た。

女の子は明里の身支度を手伝いながら、明里に微笑んで話し出す。

「私も新撰組の幹部さんを上客にしたいです。」

明里は身支度をしながら、女の子に微笑んで話し出す。

「新撰組の幹部さんを上客にする気持ちが有るのね。新撰組局長、新撰組総長、新撰組副局長、新撰組一番組組長、などの上の地位を狙いなさい。」

女の子は明里の身支度を手伝いながら、明里に微笑んで話し出す。

「はい。」

明里は身支度をしながら、女の子に微笑んで話し出す。

「新撰組の幹部さんの中でも、上の地位の隊士さんを上客にして、歌を詠みたいわね。新撰組の隊士さんに、島原の遊女の凄さを実感してもらって驚かせたいわね。」

女の子は明里の身支度を手伝いながら、明里に微笑んで話し出す。

「明里さん。明里さんが、新撰組の上役の幹部さんと付き合っていると仮定します。前回から少し日数が経ってから、来た状況だとします。明里さんが新撰組の上役の幹部さんに詠む歌を知りたいです。」

明里は身支度を止めると、女の子の耳元で微笑んで囁いた。

「“夏葛の 絶えぬ使いの よどめれば 事しもあるごと 思ひつるかも”。今の歌の“使い”の部分を、相手の名前に変えて、切ない顔で歌を詠むの。」

女の子は明里の身支度を止めると、明里の耳元で微笑んで囁いた。

「さすが明里さんです。」

明里は女の子に微笑んで囁いた。

「今の歌を上客に詠んだ時があるの。上客が私を驚いて見たの。今の歌を詠んだ以降は、私の元に頻繁に通うようになったの。」

女の子は明里を感心して見た。

明里は女の子の耳元で微笑んで囁いた。

「女性が知識をひけらかすと、男性は近寄らなくなるの。ここぞという時に知識を使うの。覚えておきなさい。」

女の子は明里に微笑んで話し出す。

「はい。」

明里は女の子の耳元で微笑んで囁いた。

「周りの人達が使うと意味が無くなるわ。今の話は二人だけの秘密よ。」

女の子は明里に微笑んで話し出す。

「はい。」

明里は女の子を微笑んで見た。

女の子も明里を微笑んで見た。

明里は女の子に微笑んで話し出す。

「壬生狼、ではなく、新撰組の隊士さん、の話で盛り上がり過ぎたわね。身支度が途中で止まってしまったわね。身支度の続きを手伝ってくれる?」

女の子は明里に微笑んで話し出す。

「はい。」

明里は女の子を微笑んで見た。

女の子は明里の身支度を微笑んで手伝った。

明里は微笑んで身支度をした。



幾日か後の事。



ここは、京の町。



新撰組の活躍した事件などを含めて、短い間に様々な出来事があった。



新撰組の名前は、評価の良し悪しは別にして、広く知られるようになった。



ここは、屯所。



沖田総司の部屋。



沖田総司は普通に居る。



沖田総司は討ち入りの任務の時に体調を悪くした。

沖田総司は、剣の才能や剣を持った時の勘の鋭さは、天才的になる。

沖田総司は怪我をしていない。

沖田総司は、一時的に軽い任務か任務をしない日が続いている。

大きな任務の時には、屯所に残る人物が必要なので、面目的には問題の無い状況になる。

沖田総司は体調面での万が一の時の状況を考えて、少女に逢い難い状況となっている。

沖田総司にとって、気持ちの落ち込む日が続いている。



沖田総司は寂しく呟いた。

「鈴ちゃんは元気かな? 鈴ちゃんに逢う予定の日が伸びている。鈴ちゃんは、心配になっているか、不安になっているよね。斉藤さんに鈴ちゃんの様子を更に確認してもらうように頼もうかな。」

沖田総司は寂しくため息をついた。



僅かに後の事。



ここは、屯所。



縁。



斉藤一は普通に歩いている。



山南敬助が斉藤一を見ながら微笑んで歩く姿が見えた。



斉藤一は普通に止まった。



山南敬助は微笑んで止まった。



斉藤一は山南敬助に普通の表情で軽く礼をした。

山南敬助は斉藤一に微笑んで話し出す。

「斉藤君。総司の部屋に行ったのかな?」

斉藤一は山南敬助に普通の表情で小さく首を横に振った。

山南敬助は斉藤一に微笑んで話し出す。

「総司は親しい女の子の様子を心配している。私もあの子の様子が心配だ。総司とあの子が逢えない状態の中で、私があの子の家に出掛けたら、あの子は心配すると思う。斉藤君。あの子の様子の確認を頼みたい。良いかな?」

斉藤一は山南敬助に普通の表情で軽く礼をした。

山南敬助は斉藤一に微笑んで話し出す。

「“夏葛の 絶えぬ使いの よどめれば 事しもあるごと 思ひつるかも”。今の歌のような心境かな?」

斉藤一は山南敬助に普通の表情で軽く礼をした。

山南敬助は斉藤一を微笑んで見た。

斉藤一は山南敬助に普通の表情で軽く礼をした。

山南敬助は斉藤一に微笑んで頷いた。



斉藤一は普通に歩き出した。



幾日か後の事。



ここは、島原。



客の人数が増えて、活気が出始める時間になった。



一軒の店。



一室。



山南敬助は微笑んで居る。



明里が部屋の中に微笑んで入ってきた。



山南敬助は明里を微笑んで見た。

明里は山南敬助に微笑んで抱き付いた。

山南敬助は明里を抱いて、明里を微笑んで見た。

明里は山南敬助に抱き付いて、山南敬助に微笑んで話し出す。

「先生。二人きりになりました。」

山南敬助は明里を抱いて、明里に微笑んで頷いた。

明里は山南敬助に抱き付いて、山南敬助を拗ねて見た。

山南敬助は明里を抱いて、明里を不思議な様子で見た。

明里は山南敬助に抱き付いて、山南敬助に拗ねて話し出す。

「先生。再び来ると話したのに、直ぐに来ませんでした。」

山南敬助は明里を抱いて、明里を困惑して見た。

明里は山南敬助に抱いて、山南敬助に微笑んで話し出す。

「困った顔の先生も素敵です。」

山南敬助は明里を抱いて、明里を苦笑して見た。

明里は山南敬助に抱き付いて、山南敬助に微笑んで話し出す。

「先生。先生のお顔に、私は明里にからかわれているのか? と書いてあります。」

山南敬助は明里を抱いて、明里を苦笑して見た。

明里は山南敬助に抱き付いて、山南敬助に微笑んで話し出す。

「先生。突然ですが、話を変えます。」

山南敬助は明里を抱いて、明里に苦笑して頷いた。

明里は山南敬助に抱き付いて、山南敬助に微笑んで話し出す。

「“夏葛の 絶えぬ使いの よどめれば 事しもあるごと 思ひつるかも”。ご存知ですか?」

山南敬助は明里を抱いて、明里に微笑んで頷いた。

明里は山南敬助に抱き付いて、山南敬助に寂しく話し出す。

「私にとっては、“絶えぬ使い”、ではなく、“絶えぬ先生”、です。」

山南敬助は明里を抱いて、明里を心配して見た。

明里は山南敬助に抱き付いて、山南敬助に微笑んで話し出す。

「という話を、可愛がっている女の子に話しました。」

山南敬助は明里を抱いて、明里を不思議な様子で見た。

明里は山南敬助に抱き付いて、山南敬助に微笑んで話し出す。

「先生。今の歌を馴染みになって欲しいお客様の前で詠んだ時があります。」

山南敬助は明里を抱いて、明里を不思議な様子で見た。

明里は山南敬助に抱き付いて、山南敬助に微笑んで話し出す。

「私は、花の咲いた葛を、先生と一緒に見たいです。」

山南敬助は明里を抱いて、明里に微笑んで頷いた。

明里は山南敬助に抱き付いて、山南敬助に微笑んで話し出す。

「私は先生に馴染みの上客になって欲しいです。私は先生とずっと一緒に居たいです。」

山南敬助は明里を抱いて、明里を不思議な様子で見た。

明里は山南敬助に抱き付いて、山南敬助に微笑んで話し出す。

「先生。私の話した中で、本当の話は、何になると思いますか?」

山南敬助は明里を抱いて、明里に微笑んで話し出す。

「全て本当の話になる。」

明里は山南敬助に抱き付いて、山南敬助を微笑んで見た。

山南敬助は明里を抱いて、明里に微笑んで話し出す。

「葛の花が咲いたら、二人で一緒に見よう。」

明里は山南敬助に抱き付いて、山南敬助に微笑んで話し出す。

「先生。嬉しいです。ありがとうございます。」

山南敬助は明里を抱いて、明里に微笑んで頷いた。

明里は山南敬助に抱き付いて、山南敬助に微笑んで話し出す。

「先生。答えは、何時になるか分かりませんが、話します。」

山南敬助は明里を抱いて、明里に微笑んで頷いた。

明里は山南敬助に抱き付いて、山南敬助に微笑んで話し出す。

「先生。答えを知ったとしても、私の傍にずっと居てくださいね。」

山南敬助は明里を抱いて、明里に微笑んで頷いた。

明里は山南敬助に抱き付いて、山南敬助を微笑んで見た。



暫く後の事。



ここは、屯所。



一室。



山南敬助は微笑んで居る。



斉藤一は部屋を普通に訪ねた。



山南敬助は斉藤一を不思議な様子で見た。

斉藤一は山南敬助に普通に話し出す。

「あの子の様子を確認しました。あの子は、寂しい様子でしたが、心労を含める体調面の心配は無いと思います。」

山南敬助は斉藤一に微笑んで話し出す。

「必要な時には、私の名前を理由に使って構わない。私が全く知らない状況は困る。私に問題の無い程度に教えてくれ。」

斉藤一は山南敬助に普通の表情で軽く礼をした。

山南敬助は斉藤一を微笑んで見た。



幾日か後の事。



沖田総司の体調が落ち着いた。

沖田総司は他の隊士と同じ状態で任務を務めている。

沖田総司は少女と共に幾度も一緒に過ごしている。



沖田総司にとって、厳しい時間と穏やかな時間が戻った。



ここは、屯所。



斉藤一の部屋。



斉藤一は普通に居る。



沖田総司は部屋を元気良く訪れた。



斉藤一は沖田総司を普通の表情で見た。

沖田総司は斉藤一に笑顔で話し出す。

「斉藤さん! 私と斉藤さんと鈴ちゃんが、一緒に逢う日です! 早く行きますよ!」

斉藤一は沖田総司に普通の表情で頷いた。



沖田総司は部屋を元気良く出て行った。

斉藤一は部屋を普通に出て行った。



少し後の事。



ここは、島原。



一軒の店。



明里は微笑んで居る。

明里の可愛がっている下働きの女の子も微笑んで居る。



明里は女の子に微笑んで話し出す。

「先生が江戸の町で有名な葛粉を使わない“くず餅”について話しての。江戸の町では美味しいと評判らしいの。」

女の子は明里を微笑んで見た。

明里は女の子に微笑んで話し出す。

「次に先生に逢った時に、“くず餅”について、更に詳しく確認するわ。」

女の子は明里に微笑んで話し出す。

「明里さん。楽しい様子が伝わります。」

明里は女の子を不思議な様子で見た。

女の子は明里を微笑んで見た。



「夏葛の 絶えぬ使いの よどめれば 事しもあるごと 思ひつるかも」

夏葛も、秋葛も、逢いたい人物に逢えない時は、寂しい想いに包まれる。

夏葛も、秋葛も、逢いたい人物に逢える時は、嬉しい想いに包まれる。

夏葛の花の咲く中で、秋葛の花の咲く中で、数多の想いが重なって時が過ぎていく。




*      *      *      *      *      *




ここからは後書きになります。

この物語は既に掲載している物語の改訂版です。

改訂前の物語の展開や雰囲気を出来るだけ残して改訂しました。

改訂前の物語を掲載するのは止めました。

以上、ご了承願います。

ここからは改訂前の後書きを加筆訂正して書きます。

この物語に登場する歌は「万葉集 第四巻 六四九番」

「夏葛の 絶えぬ使いの よどめれば 事しもあるごと 思ひつるかも」

ひらがなでの読み方は「なつくずの たえぬつかいの よどめれば ことしもあるごと おもひつるかも」

作者は「大伴坂上郎女(おおとものさかのうへのいつらめ)」

歌の意味は、「いつも(夏葛のように)絶えることなくやってくる使いの人が来ないので、何事かが起こったのかと思ってしまいました。」となるそうです。

原文は「夏葛之 不絶使乃 不通<有>者 言下有如 念鶴鴨」

「葛(くず)」についてです。

マメ科の蔓性の多年草の植物です。

山野などに生えて、茎もかなりの長さに伸びます。

繁殖力が強い植物です。

秋の七草の一つです。

花期は、現在の暦で、7月の終わりから9月の初旬です。

赤紫色の小さな花が集まって咲きます。

葛の根の部分は、薬や「葛粉(くずこ)」に使用されます。

薬の使用方法と効能、葛粉、について気になる方は、各自でお調べください。

「葛餅(くずもち)」についてです。

一般的な「葛餅」の説明です。

葛粉を水で練って煮た後に、型に流し込み冷やして固めたお菓子です。

葛粉に小麦粉や生麩粉を加えて、蒸して作る事もあります。

三角などの形に切るか、そのままの形で、黒蜜やきな粉などをつけて食べます。

「葛饅頭(くずまんじゅう)」も含んで呼ぶ事もあります。

夏の季語です。

葛粉だけで葛餅を作ると、手間が掛かるために値段が高くなるそうです。

そのため、いつの頃からか分かりませんが、葛餅を手軽に食べる事が出来るように、小麦粉や生麩粉を加えて作る事があるそうです。

江戸時代は、夏の時期(から残暑の頃まで?)の期間のお菓子として食べたと思います。

葛粉を使うので、季節にこだわらなくても作る事の出来るお菓子ですが、当時の人達は、それぞれの季節のお菓子を食べていたと考えられます。

秋から冬の季節になると寒くなるので、当時の環境では食べる事は少なくなると思います。販売しているとしても、お店が限定されていたか、注文販売のようになっていたように思いました。

明里さんの話す「くず餅(くずもち)」について、簡単に説明します。

明里さんの話す中に登場する「くず餅」は、「葛粉」を使いません。

詳しい製造方法は書きませんが、小麦のでん粉を使用して「くず餅」を作ります。

一般的な「葛餅」より、もちもちとした感じの食感があります。

この物語の時間設定時には、既に江戸の町の或る場所で「くず餅」を販売していました。

明治時代になってからも、美味しい食べ物として紹介された事があります。

そのお店は、平成時代もほとんど変わらない場所で「くず餅」を販売しています。

「上客(じょうきゃく)」についてです。

この物語では、「商売上での大切なありがたい客」の意味で使用しています。

この物語の補足です。

この物語は、有名な「池田屋事変」や「蛤御門の変」より少し前と少し後の出来事を想定して書きました。

新撰組も忙しく緊迫した状況だったと思います。

この物語では、そのような状況かも知れないけれど、穏やかな様子で展開しています。

基本的には短編集なので、その点についてはご了承ください。

この物語では触れていませんが、山南敬助さんと明里さんが逢ったのは偶然です。

物語の前半と後半では、明里さんの心境に変化が出ていると思ってください。

楽しんで頂けると嬉しいです。





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