このページは、2019年3月に保存されたアーカイブです。最新の内容ではない場合がありますのでご注意ください

〜 雪月花 新撰組異聞 編 〜


〜 残暑の頃 緑の狗尾草 茂き山辺に 〜


〜 改訂版 〜


登場人物

沖田総司、斉藤一、少女[美鈴・鈴]




「垣越しに 犬呼び越して 鳥狩する君 青山の 茂き山辺に 馬休め君」

「万葉集 第七巻 一二八九番」より

作者:柿本人麻呂(かきのもとのひとまろ)歌集より




ここは、京の町。



残暑の続く頃。



沖田総司達にとって、初めての京の町の残暑の続く頃になる。



ここは、落ち着いた雰囲気の寺。



境内。



沖田総司は微笑んで来た。

少女も微笑んで来た。



沖田総司は少女に微笑んで話し出す。

「鈴ちゃん。残暑が続いているよね。日差しを避けるために、本堂の中で話そうね。」

少女は沖田総司に微笑んで話し出す。

「はい。」

沖田総司は少女に微笑んで話し出す。

「鈴ちゃん。花を見ながら話したいよね。本堂の中の花の見える場所で話そうね。」

少女は沖田総司に微笑んで話し出す。

「はい。」

沖田総司は少女を微笑んで見た。

少女も沖田総司を微笑んで見た。



沖田総司は本堂に微笑んで歩き出した。

少女も本堂に微笑んで歩き出した。



僅かに後の事。



ここは、落ち着いた雰囲気の寺。



本堂。



縁の傍。



沖田総司は微笑んで来た。

少女も微笑んで来た。



沖田総司は境内を微笑んで見た。

少女も境内を微笑んで見た。

沖田総司は少女を見ると、少女に微笑んで話し出す。

「鈴ちゃん。今の私達の居る場所は、想像より花が見えないね。少し場所を動くと、花が見えるね。」

少女は沖田総司を見ると、沖田総司に微笑んで話し出す。

「今の居る場所は、お花は見えませんが、植物は見えます。今の居る場所で大丈夫です。」

沖田総司は境内を微笑んで見た。

少女は沖田総司を微笑んで見た。

沖田総司は少女を見ると、少女に微笑んで話し出す。

「鈴ちゃん。今の居る場所から“猫じゃらし”が見えるね。」

少女は沖田総司を不思議な様子で見た。

沖田総司は少女に不思議な様子で話し出す。

「鈴ちゃん。“猫じゃらし”を知らないの?」

少女は沖田総司を不思議な様子で見ている。

沖田総司は少女に微笑んで話し出す。

「“猫じゃらし”を猫の傍で見せると、猫がじゃれるんだよ。」

少女は沖田総司を不思議な様子で見ている。

沖田総司は少女に微笑んで話し出す。

「鈴ちゃんは、私と違って雅な生活をしているから、“猫じゃらし”を知らないのかな?」

少女は沖田総司に微笑んで話し出す。

「“猫じゃらし”を知りたいです。帰る時に、“猫じゃらし”を近くで見たいです。」

沖田総司は少女に微笑んで話し出す。

「分かった。」

少女は沖田総司を微笑んで見た。



暫く後の事。



ここは、屯所。



一室。



斉藤一は普通に居る。



沖田総司は部屋の中に微笑んで入ってきた。



斉藤一は沖田総司を普通の表情で見た。

沖田総司は斉藤一に微笑んで話し出す。

「斉藤さん。今日は、鈴ちゃんに逢いました。鈴ちゃんは、植物について詳しいのに、猫じゃらしを知りませんでした。鈴ちゃんは、雅な生活をしているから、猫じゃらしを知らない可能性があります。帰る時に、鈴ちゃんは猫じゃらしを近くで見ました。鈴ちゃんは猫じゃらしを笑顔で見ました。」

斉藤一は沖田総司に普通に話し出す。

「美鈴さんは、稽古事や用事のために、外出するのだろ。美鈴さんは、植物を見るために外出する時があるのだろ。」

沖田総司は斉藤一に微笑んで話し出す。

「はい。」

斉藤一は沖田総司に普通に話し出す。

「深窓に育つ環境ならば、植物に詳しくても、猫じゃらしを知らない可能性がある。美鈴さんは、様々な場所に外出する。美鈴さんは、猫じゃらしを知っているはずだ。」

沖田総司は斉藤一に微笑んで話し出す。

「鈴ちゃんは、私が猫じゃらしについて話した時に、不思議な様子になりました。鈴ちゃんは猫じゃらしを知らない可能性が高いです。」

斉藤一は沖田総司に普通に話し出す。

「総司。狗尾草を知っているか?」

沖田総司は斉藤一を不思議な様子で見た。

斉藤一は沖田総司に普通に話し出す。

「美鈴さんは、今の総司の同じ状況の可能性が非常に高い。」

沖田総司は斉藤一を不思議な様子で見ている。

斉藤一は沖田総司に普通に話し出す。

「猫じゃらし。主に、江戸を含める周辺で使用する呼び名だ。」

沖田総司は斉藤一に不思議な様子で話し出す。

「猫じゃらしには、別名があるのですか?」

斉藤一は沖田総司に普通に話し出す。

「“狗”、“尾”、“草”、と書いて、“えのころぐさ”。」

沖田総司は斉藤一に不思議な様子で話し出す。

「江戸を含める周辺では、主に、猫。京の町を含める西では、狗。同じ植物なのに、別な動物が使われているのですか?」

斉藤一は沖田総司に普通の表情で頷いた。

沖田総司は斉藤一に不思議な様子で話し出す。

「鈴ちゃんは、猫じゃらしを見た時に、狗尾草、と呼びませんでした。」

斉藤一は沖田総司に普通に話し出す。

「美鈴さんは総司に気を遣ったと思う。」

沖田総司は斉藤一に不思議な様子で話し出す。

「江戸の風習と京の町の風習は、違う内容がたくさんあります。鈴ちゃんは、私に京の町の風習を含めてたくさん教えてくれます。」

斉藤一は沖田総司に普通に話し出す。

「総司。美鈴さんに自信満々で話しただろ。」

沖田総司は斉藤一に考えながら話し出す。

「猫じゃらしについて、自信満々で話していません。」

斉藤一は沖田総司に普通に話し出す。

「最悪の状況で考えると、美鈴さんは総司が狗尾草の呼び名を知らないから、呆れた可能性がある。」

沖田総司は斉藤一に動揺して話し出す。

「斉藤さん! 困ります! 責任を取ってください!」

斉藤一は沖田総司に普通に話し出す。

「俺が総司に責任を取る理由は一つも無い。」

沖田総司は斉藤一を動揺して見た。

斉藤一は沖田総司に普通に話し出す。

「総司。良い機会だから、美鈴さんと共に狗尾草を見ながら、犬を詠んだ歌について話せ。」

沖田総司は斉藤一に不思議な様子で話し出す。

「犬を詠んだ歌があるのですか?」

斉藤一は沖田総司に普通の表情で頷いた。

沖田総司は斉藤一に微笑んで話し出す。

「斉藤さん。教えてください。」

斉藤一は沖田総司に普通に話し出す。

「“垣越しに 犬呼び越して 鳥狩する君 青山の 茂き山辺に 馬休め君”。歌の意味は、“垣越しに、犬を呼び寄せて鷹狩りをなさっている君、青々と葉が茂っている山辺で馬を休ませてあげてください。”、となるそうだ。」

沖田総司は斉藤一に微笑んで話し出す。

「斉藤さん。ありがとうございます。」

斉藤一は沖田総司に普通に話し出す。

「総司。俺が説明した歌は、残暑の頃に贈ると違和感を抱く人物が居る。俺が説明した歌は、夏に歌を贈る展開が良いと思う。」

沖田総司は斉藤一に動揺して話し出す。

「斉藤さん! 酷いです!」

斉藤一は沖田総司に普通に話し出す。

「総司。俺は歌を贈る展開になった場合について話した。歌について話すのみならば、季節に関係なく話せる。」

沖田総司は斉藤一を恥ずかしく見た。

斉藤一は沖田総司を普通の表情で見た。

沖田総司は斉藤一に恥ずかしく話し出す。

「斉藤さん。歌の説明も含めて紙に書いてください。」

斉藤一は沖田総司に普通の表情で頷いた。

沖田総司は斉藤一に微笑んで話し出す。

「斉藤さん。歌について詳しい雰囲気が無いのに、歌について詳しいです。不思議です。」

斉藤一は沖田総司に普通に話し出す。

「歌について詳しい人物の供に就く機会があった。女性に風流な面を見せたいと思う人物の元で働く機会があった。無料で知識を覚えられる機会だ。役に立つ時の訪れる可能性がある。供に就いた時に、傍に居る時に、歌を覚えた。」

沖田総司は斉藤一に微笑んで話し出す。

「斉藤さん。意中の女性がいませんか?」

斉藤一は沖田総司に普通に話し出す。

「居ない。」

沖田総司は斉藤一に微笑んで話し出す。

「本当ですか?」

斉藤一は沖田総司に普通に話し出す。

「総司。俺を怒らせたいのか?」

沖田総司は斉藤一に慌てて話し出す。

「違います! 誤解です!」

斉藤一は沖田総司に普通の表情で頷いた。

沖田総司は斉藤一を安心した表情で見た。



数日後の事。



ここは、落ち着いた雰囲気の寺。



本堂。



沖田総司は微笑んで居る。

少女も微笑んで居る。



沖田総司は少女に微笑んで話し出す。

「鈴ちゃんの猫じゃらしを見た時の様子が気になったんだ。斉藤さんに鈴ちゃんの猫じゃらしを見た時の様子を話したんだ。斉藤さんから、猫じゃらしの別名に狗尾草があると教えてもらったんだ。」

少女は沖田総司を微笑んで見た。

沖田総司は少女に微笑んで話し出す。

「江戸では、猫。京の町では、狗。同じ植物なのに、違う動物が呼び名に入っている。不思議だね。」

少女は沖田総司に微笑んで話し出す。

「はい。」

沖田総司は少女に微笑んで話し出す。

「私は植物について疎いんだ。私は京の町の風習に疎いんだ。私は鈴ちゃんからたくさんの内容を教えてもらって、公私共に助かっているんだ。今後も、遠慮せずに教えてね。」

少女は沖田総司に微笑んで話し出す。

「猫じゃらし。可愛い呼び名です。総司さんと話す時は、猫じゃらしの呼び名を使います。」

沖田総司は少女に微笑んで話し出す。

「私は京の町の風習に早く慣れたいと思っているんだ。鈴ちゃんは私に遠慮しないで、馴染む言動を続けてね。」

少女は沖田総司に微笑んで話し出す。

「はい。」

沖田総司は少女に微笑んで話し出す。

「斉藤さんが、犬の登場する歌を教えてくれたんだ。斉藤さんは、残暑の頃に贈ると違和感を抱く可能性があると説明したんだ。今回は、鈴ちゃんと猫じゃらしを見ながら、歌について話したいと思ったんだ。」

少女は沖田総司微笑んで話し出す。

「総司さん。犬が登場するお歌を教えてください。」

沖田総司は少女に微笑んで話し出す。

「“垣越しに 犬呼び越して 鳥狩する君 青山の 茂き山辺に 馬休め君”。」

少女は沖田総司を微笑んで見た。

沖田総司は少女に微笑んで話し出す。

「犬、鳥、馬。三種類の動物の名前が登場するね。犬、鳥、馬、を使う植物の名前を見た時に、再び今の歌について話せるね。」

少女は沖田総司に微笑んで話し出す。

「はい。」

沖田総司は少女に微笑んで話し出す。

「夏の季節には、再び今の歌についてたくさん話せるね。」

少女は沖田総司に微笑んで話し出す。

「はい。」

沖田総司は少女を微笑んで見た。

少女も沖田総司を微笑んで見た。



「垣越しに 犬呼び越して 鳥狩する君 青山の 茂き山辺に 馬休め君」

猫じゃらし。

狗尾草。

同じ植物の呼び名なのに、地域によって、“猫”と“狗”を別々に使う。

沖田総司と少女は、斉藤一の教えた犬の登場する歌について話しながら、楽しく過ごしている。

沖田総司は、歌の奥深い世界を学びながら、斉藤一に感謝しながら、残暑の頃の京の町で過ごしている。




*      *      *      *      *      *




ここからは後書きになります。

この物語は既に掲載している物語の改訂版です。

改訂前の物語の展開や雰囲気を出来るだけ残して改訂しました。

改訂前の物語を掲載するのは止めました。

以上、ご了承願います。

ここからは改訂前の後書きを加筆訂正して書きます。

この物語に登場する歌は「万葉集 第七巻 一二八九番」

「垣越しに 犬呼び越して 鳥狩する君 青山の 茂き山辺に 馬休め君」

ひらがなの読み方は「かきごしに いぬよびこして とがりするきみ あおやまの しげきやまへに うまやすめきみ」

作者は「柿本人麻呂(かきのもとのひとまろ)歌集より」

原文は「垣越、犬召越、鳥猟為公、青山、葉茂山邊、馬安公」

歌の意味は「垣(かき)越しに、犬を呼び寄せて鷹狩りをなさっている君、青々と葉が茂っている山辺で馬を休ませてあげてください。」となるそうです。

万葉集に掲載された歌の中で、犬を詠んだ歌は、四首のみです。

狩を共にしたことがうかがえる歌もあります。

犬が飼われるようになったのは、2万年程度前と考えられているそうです。

縄文時代の遺跡からも、人と共に丁寧に埋葬された犬の骨が見付かっているそうです。

「猫じゃらし(ねこじゃらし)」(※植物)についてです。

イネ科の一年草です。

和名は「狗尾草(えのころぐさ)」です。

英語名は「fox tail」です。

路地や空き地の至る所に見られます。

高さは、20〜80cmです。

葉は、細長く、先はとがっています。

夏([※現在の暦]6〜8月頃)、茎の円柱状の太い緑色の穂を一本出し、子犬の尾に似ています。

秋([※現在の暦]9〜11月頃)になると、茎の円柱状の太い緑色の穂は枯れ始め、黄金色のような色に変わり始めます。

「粟(あわ)」の原型と推定されるそうです。

「粟」は、日本では、縄文時代から栽培されていた「稗(ひえ)」と並ぶ日本最古の穀物です。

現在の和猫は、奈良時代に中国から渡来したと伝わっています。

「猫じゃらし」の名前の由来に繋がる「和猫」は奈良時代に渡来しています。

「猫じゃらし」を改良した「粟」は日本で縄文時代頃から栽培されていました。

以上の事から考えて、「猫じゃらし」は、この物語の時間設定では既に日本で見られると想定して書きました。

「猫じゃらし」は、江戸の方言、関東地方でよく呼ばれる名前、などの説明が有ります。

沖田総司さんは、江戸で生まれ、多摩で過ごした時期がある、と伝わっています。

沖田総司さんは、「猫じゃらし」の名前で呼ぶ設定です。

鈴ちゃんは、京都生まれ、京都育ち、家庭環境、の設定から、「狗尾草」の名前で呼びます。

題名は、文字の雰囲気と物語の雰囲気から「狗尾草」にしました。

以上、ご了承ください。

「残暑(ざんしょ)」についてです。

「立秋を過ぎてもなお残る暑さ」をいいます。

秋の季語です。

楽しんで頂けると嬉しいです。





←前            目次            次→


このページは、2019年3月に保存されたアーカイブです。最新の内容ではない場合がありますのでご注意ください