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〜 雪月花 新撰組異聞 編 〜


〜 白萩慕情 夢の通い路 人めよくらむ 〜


〜 改訂版 〜


登場人物

山南敬助、土方歳三、沖田総司、斉藤一、藤堂平助、少女[美鈴・鈴]




「住の江の 岸による波 よるさへや 夢の通い路 人めよくらむ」

「小倉百人一首 十八番」、及び、「古今集」、より

作者:藤原敏行朝臣(ふじわらのとしゆきあそん)




今は秋。



ここは、京の町。



夏の名残のような暑さが続いている。



白萩の花の咲く姿が見られるようになった。

白萩の花の咲く姿は、夏の名残の暑さを僅かに涼しく感じさせる。



ここは、屯所。



藤堂平助の部屋。



部屋の中も部屋の外も、僅かに暑さを感じるが、穏やかな雰囲気になっている。



藤堂平助は机に肘を付いて、静かに眠っている。



藤堂平助は机に肘を付いて、驚いた表情で目を開けた。

藤堂平助は僅かに赤面すると、部屋の中を慌てた様子で見た。



部屋の中に変わった様子はない。



藤堂平助は僅かに赤面して、安心した様子で、軽く息をはいた。



部屋の中に、藤堂平助の軽く息をはく音のみが聞こえた。



藤堂平助はゆっくりと立った。



藤堂平助は部屋を普通に出ていった。



僅かに後の事。



ここは、屯所。



縁。



藤堂平助は普通に歩いている。



土方歳三が藤堂平助に向かって微笑んで歩く姿が見える。



藤堂平助は普通に止まった。



藤堂平助は普通の表情で僅かに端に寄った。



土方歳三は藤堂平助の傍に微笑んで来た。



藤堂平助は土方歳三に普通の表情で軽く礼をした。

土方歳三は藤堂平助に微笑んで話し出す。

「平助。顔が少し赤い。何が遭った?」

藤堂平助は土方歳三を僅かに動揺して見た。

土方歳三は藤堂平助に苦笑して話し出す。

「平助。何故、動揺している?」

藤堂平助は土方歳三に僅かに動揺して話し出す。

「動揺していません。」

土方歳三は藤堂平助に微笑んで話し出す。

「念のために話す。平助の顔は赤くない。」

藤堂平助は土方歳三を安心して見た。

土方歳三は藤堂平助に顔を僅かに近付けると、藤堂平助に微笑んで話し出す。

「平助。絶対に何か遇っただろ。」

藤堂平助は土方歳三に僅かに動揺して話し出す。

「何もありません。」

土方歳三は藤堂平助の顔に僅かに顔を近付けて、藤堂平助に微笑んで話し出す。

「“住の江の 岸による波 よるさへや 夢の通い路 人めよくらむ”。」

藤堂平助は土方歳三を僅かに動揺して見た。

土方歳三は藤堂平助の顔に僅かに顔を近付けて、藤堂平助に微笑んで話し出す。

「夢の中で想う女性に逢えたのか。良かったな。」

藤堂平助は土方歳三を僅かに動揺して見ている。

土方歳三は藤堂平助の顔に僅かに顔を近付けて、藤堂平助に微笑んで話し出す。

「相手が強く想っているから、平助の夢の中に現れたのかな? 平助が強く相手を想っているから、平助の夢の中に現れたのかな? 答えを知りたい。」

藤堂平助は土方歳三を動揺して見ている。

土方歳三は藤堂平助の顔に僅かに顔を近付けて、藤堂平助に微笑んで話し出す。

「相手は或る人物に一筋だったように思う。」

藤堂平助は土方歳三に僅かに慌てて話し出す。

「土方さん。変な内容を話さないでください。私は土方さんの話す人物が現れる夢を見ていません。」

土方歳三は藤堂平助の顔から離れると、藤堂平助に微笑んで話し出す。

「縁での長話は、無用な不安を抱く人物が居る。話しを終わらせる。」

藤堂平助は土方歳三に僅かに動揺して軽く礼をした。

土方歳三は藤堂平助に微笑んで頷いた。



藤堂平助は僅かに動揺した様子で歩き出した。



土方歳三は藤堂平助を苦笑して見ながら呟いた。

「平助は、剣を持つと威勢が良いのに、細やかな機微の事柄は動揺する。修行が足りない。」



藤堂平助の姿は見えなくなった。



土方歳三は微笑んで歩き出した。



僅かに後の事。



ここは、屯所。



縁。



藤堂平助は僅かに早足で歩いている。



沖田総司が斉藤一に楽しく話しながら歩く姿が見える。

斉藤一が沖田総司に適度に頷いて歩く姿も見える。



藤堂平助は歩調を遅くして、縁の端に寄って歩いた。



沖田総司は藤堂平助の傍に微笑んで来た。

斉藤一は普通に来た。



藤堂平助は普通に止まった。



藤堂平助は沖田総司と斉藤一に普通の表情で軽く礼をした。

沖田総司は藤堂平助に微笑んで話し出す。

「平助。今から出掛けるのか?」

斉藤一は藤堂平助を普通の表情で見た。

藤堂平助は沖田総司に僅かに苦笑して話し出す。

「部屋で行なう任務が残っています。出掛けられません。」

沖田総司は藤堂平助を不思議な様子で見た。

藤堂平助は沖田総司に僅かに苦笑して話し出す。

「沖田さん。斉藤さん。今からお出掛けですか?」

沖田総司は藤堂平助に微笑んで頷いた。

藤堂平助は沖田総司に微笑んで話し出す。

「沖田さんは夢の中に、親しい人物が現れる時はありますか?」

沖田総司は藤堂平助を赤面して僅かに慌てて見た。

藤堂平助は沖田総司を寂しい微笑みで見た。

斉藤一は沖田総司の腕を普通の表情で掴んだ。

沖田総司は藤堂平助を赤面して僅かに慌てて見ている。



斉藤一は沖田総司の腕を掴んで、普通に歩き出した。

沖田総司は赤面して歩き出した。



藤堂平助は沖田総司を見ながら、寂しい微笑みで呟いた。

「“住の江の 岸による波 よるさへや 夢の通い路 人めよくらむ”。」



斉藤一の姿は見えなくなった。

沖田総司の姿も見えなくなった。



藤堂平助は突然に驚いた表情になった。

藤堂平助は辺りを慌てた様子で見た。



藤堂平助の声が聞こえる程度の距離に隊士の姿は見えない。



藤堂平助は安心した様子で僅かに軽く息をはいた。



藤堂平助は普通に歩き出した。



幾日か後の事。



ここは、沖田総司、斉藤一、少女が幾度も訪れる寺。



今の時点では、沖田総司、斉藤一、少女も寺を訪れていない。



境内。



白萩の花が綺麗な姿で咲いている。



山南敬助は白萩の花を微笑んで見ている。

藤堂平助は山南敬助と白萩の花を僅かに落ち着かない様子で見ている。



山南敬助は藤堂平助を見ると、藤堂平助に微笑んで話し出す。

「藤堂君。落ち着かない様子に見える。何か遇ったのかな?」

藤堂平助は山南敬助に僅かに落ち着かない様子で話し出す。

「私達の居る寺は、沖田さん、斉藤さん、あの子が、良く訪れます。沖田さん、斉藤さん、あの子が、寺を訪れる可能性があります。落ち着きません。」

山南敬助は藤堂平助に微笑んで話し出す。

「総司は、任務の合間をぬって、花の咲き具合の確認や親しい子と過ごしている。斉藤君は、土方さんや総司に頼まれて、任務の合間に花の咲き具合やあの子の様子を確認しているらしい。藤堂君の落ち着かない気持ちは理解できる。」

藤堂平助は山南敬助に僅かに動揺して話し出す。

「山南さんは今の居る寺で落ち着いて話している様子に感じます。」

山南敬助は藤堂平助に微笑んで話し出す。

「私は、総司、斉藤君、あの子に逢う時は、嬉しい気持ちになる。藤堂君より落ち着いて過ごせる。」

藤堂平助は山南敬助を僅かに動揺して見た。

山南敬助は藤堂平助に微笑んで話し出す。

「“住の江の 岸による波 よるさへや 夢の通い路 人めよくらむ”。」

藤堂平助は山南敬助を僅かに驚いて見た。

山南敬助は藤堂平助に微笑んで話し出す。

「数日ほど前の出来事になる。土方さんが私の元に来た。土方さんは藤堂君の前で今の歌を詠むと何かが起こるかも知れないと話した。確認のために歌を詠んだ。」

藤堂平助は山南敬助に僅かに苦笑して話し出す。

「山南さんは明里さんに歌を贈らないのですか?」

山南敬助は藤堂平助に微笑んで話し出す。

「明里は歌に関する知識がある。歌を贈る時は、準備が必要になる。」

藤堂平助は山南敬助を微笑んで見た。

山南敬助は藤堂平助に微笑んで話し出す。

「“住の江の 岸による波 よるさへや 夢の通い路 人めよくらむ”。明里から私に今の歌を贈られないために、今夜は明里に逢いに行く。」

藤堂平助は山南敬助を微笑んで見た。

山南敬助は藤堂平助に微笑んで話し出す。

「総司達が実際に来ると、藤堂君が困ると思う。別な場所の白萩を見に行こう。」

藤堂平助は山南敬助に僅かに申し訳なく軽く礼をした。

山南敬助は藤堂平助を微笑んで見た。



藤堂平助は僅かに緊張した様子で歩き出した。

山南敬助は藤堂平助を見ながら、微笑んで歩き出した。



少し後の事。



ここは、沖田総司、斉藤一、少女が幾度も訪れる寺の傍。



沖田総司は微笑んで歩いている。

斉藤一は普通に歩いている。

少女は微笑んで歩いている。



沖田総司は少女に微笑んで話し出す。

「鈴ちゃん。昨日の出来事だけど、境内に白萩の花が綺麗に咲いていたんだ。楽しみだね。」

少女は沖田総司に微笑んで話し出す。

「お仕事の忙しい日が続きますよね。私のために確認して頂いてありがとうございます。」

沖田総司は少女に微笑んで話し出す。

「私は任務の都合が付かなくて、斉藤さんに確認を頼んだんだ。」

少女は斉藤一に微笑んで話し出す。

「斉藤さん。お仕事の忙しい日が続きますよね。私のために確認して頂いてありがとうございます。」

斉藤一は少女に普通の表情で頷いた。

少女は斉藤一を微笑んで見た。



僅かに後の事。



ここは、沖田総司、斉藤一、少女が幾度も訪れる寺。



境内。



白萩の花が綺麗な姿で咲いている。



沖田総司は少女と白萩を微笑んで見ている。

斉藤一は、沖田総司、少女、白萩を普通の表情で見ている。

少女は白萩を微笑んで見ている。



沖田総司は少女と白萩を微笑んで見ている。

斉藤一は沖田総司の耳元で、沖田総司に普通の表情で囁いた。

「“住の江の 岸による波 よるさへや 夢の通い路 人めよくらむ”。美鈴さんに今の歌を贈られないように、しっかりしろ。」

沖田総司は斉藤一を赤面して驚いた表情で見た。

斉藤一は沖田総司の耳元で、沖田総司に普通の表情で囁いた。

「総司。美鈴さんと共に白萩を見ている。俺を見る時間は、無駄な時間だ。美鈴さんと白萩を、見ろ。」

沖田総司は斉藤一を赤面して僅かに困惑して見た。

斉藤一は沖田総司を普通の表情で見た。

少女は沖田総司と斉藤一を不思議な様子で見た。

斉藤一は沖田総司の背中を、少女の方向に向かって普通の表情で押した。

沖田総司は赤面して驚いた表情で、少女へ前のめりのような体勢になった。

少女は沖田総司を僅かに驚いた表情で見た。

沖田総司は少女を赤面して勢い良く抱いた。

少女は沖田総司を驚いた表情で見ている。

斉藤一は沖田総司と少女を普通の表情で見た。

沖田総司は少女を赤面して驚いた様子で抱いている。

少女は沖田総司を不思議な様子で見た。

斉藤一は白萩を普通の表情で見た。



「住の江の 岸による波 よるさへや 夢の通い路 人めよくらむ」

現の中で逢うだけでなく、夢の中でも逢いたい人物。

相手が自分を強く想っているから、自分の夢の中に現れるのか。

自分が相手を強く想っているから、自分の夢の中に現れるのか。

一方の状況のみに該当していても、同じ想いを抱く者達は、現の中で逢うだけでなく、夢の中でも逢えれば、更に嬉しい気持ちになる。




*      *      *      *      *      *




ここからは後書きになります。

この物語は既に掲載している物語の改訂版です。

改訂前の物語の展開や雰囲気を出来るだけ残して改訂しました。

改訂前の物語を掲載するのは止めました。

以上、ご了承願います。

ここからは改訂前の後書きを加筆訂正して書きます。

この物語に登場する歌は、「小倉百人一首 十八番」、及び、「古今集」

「住の江の 岸による波 よるさへや 夢の通い路 人めよくらむ」

ひらがなの読み方は「すみのえの かしによるなみ よるさへや ゆめのかよひじ ひとめよくらむ」

作者は「藤原敏行朝臣(ふじわらのとしゆきあそん)」

歌の意味は、「住の江の岸に寄る波ではないけれど、夜でさえ夢の通い路を通って来てくれない。そんなにもあなたは人目を避けているのでしょうか。」、となるそうです。

「住の江」は、「摂津の歌枕」だそうです。

場所は、現在の大阪府に在る住吉大社付近の海になるそうです。

「夢の通い路」は、夢の中で恋人の元に向かう時に、魂が通ると考えられた道だそうです。

「人めよくらむ」には、用心深すぎる恋人に対する恨みのような想いが込められているそうです。

「夢」について、少し補足します。

相手が夢の中に現れるのは、相手が自分の事を強く思っているから、自分の夢の中に相手が現れるという考えがありました。

現在のように、自分が恋しい相手の事を強く思うと、恋しい人が自分の夢の中に現れるという考えもあったようです。

この物語の補足です。

この物語の時間設定は、山南敬助さんが生きている頃なので、藤堂平助さんは自分の気持ちに気付いていません。

山南敬助さん、土方歳三さん、斉藤一さんは、藤堂平助さんの気持ちについて、程度は様々ですが、気付いている設定です。

「白萩(しらはぎ)」についてです。

白色の花の咲く「萩(はぎ)」です。

秋の季語です。

「慕情(ぼじょう)」についてです。

「慕わしく思う気持ち。特に、異性を恋い慕う気持ち。」をいいます。

楽しんで頂けると嬉しいです。





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