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〜 雪月花 新撰組異聞 編 〜


〜 秋の夜長の夢語り 温泉と庭園 鴨鳥の遊ぶ 〜


登場人物

沖田総司、斉藤一、少女[美鈴・鈴]

夜の国の住人 夢



「鴨鳥の 遊ぶこの池に 木の葉落ちて 浮きたる心 我が思はなくに」

「万葉集 第四巻 七一一番」より

作者:丹波大女娘子(たにはのおほめをとめ)



今は秋。



ここは、京の町。



日中は暑さを感じる時間があっても、陽が落ちると暑さは感じなくなっている。



ここは、屯所。



沖田総司の部屋。



蚊帳が吊ってある。



蚊帳の中に床が敷いてある。



沖田総司は床の中で静かに寝ている。



部屋の中が不思議な空気に包まれた。



沖田総司は床の中でゆっくりと目を開けた。



少女が沖田総司を笑顔で覗き込んでいる。



沖田総司は、夜の国の住人で少女と同じ顔の“夢”だと直ぐに分かった。



沖田総司は床の中で、夢に微笑んで話し出す。

「夢ちゃん。こんばんは。」

夢は沖田総司の顔を覆い、沖田総司に微笑んで話し出す。

「総司さん。こんばんは。」

沖田総司は床の中で、夢を微笑んで見た。

夢は沖田総司から微笑んで離れた。

沖田総司は床の上に体を微笑んで起こした。

夢は沖田総司に微笑んで抱き付いた。

沖田総司は床の上に体を起こして、赤面して動きを止めた。



夢は沖田総司を微笑んで抱いて、不思議な空気に包まれた。

沖田総司は赤面して、床の上に体を起こして、不思議な空気に包まれた。



夢は沖田総司を微笑んで抱いて、静かに居なくなった。

沖田総司は赤面して床の上に体を起こして、静かに居なくなった。



一瞬の後の事。



ここは、夜の国。



夜空には、月と満天の星が輝いている。



心地好い空気に包まれている。



夢の家。



一室。



心地好い空気に包まれている。



夢は沖田総司を微笑んで抱いて、静かに現れた。

沖田総司は赤面して動きを止めて、静かに現れた。



夢は沖田総司から微笑んで放れた。

沖田総司は夢を赤面して見た。

夢は沖田総司に微笑んで話し出す。

「総司さん。夜の国へようこそ。」

沖田総司は夢を赤面して見ている。

夢は沖田総司に微笑んで話し出す。

「夜の国で、温泉と落ち着いた雰囲気の庭園で楽しんで頂くためにご招待しました。」

沖田総司は夢に赤面して微笑んで話し出す。

「今回も夜の国の温泉が楽しめるんだ。」

夢は沖田総司に微笑んで話し出す。

「はい。」

沖田総司は夢を微笑んで見た。

夢は沖田総司に微笑んで話し出す。

「総司さん。ご案内します。」

沖田総司は夢に苦笑して話し出す。

「夢ちゃん。夜の国に来る時と同じ行動をしないよね。」

夢は沖田総司を微笑んで見た。

沖田総司は夢を緊張して見た。

夢は沖田総司に微笑んで話し出す。

「総司さん。大丈夫です。緊張しないでください。」

沖田総司は夢を安心して見た。

夢は沖田総司に微笑んで話し出す。

「総司さん。行きましょう。」

沖田総司は夢に慌てて頷いた。

夢は沖田総司を微笑んで見た。



僅かに後の事。



ここは、夜の国。



温泉地。



山に覆われている。

山は緑色の葉の木々に覆われている。

川が絶え間なく流れている。

川の流れる音が絶え間なく聞こえる。



一軒の宿。



緑色の葉の木々に覆われている。

川が見える。

川の流れる音が絶え間なく聞こえる。



一室。



心地好い空気に包まれている。



夢は微笑んで、静かに現れた。

沖田総司も微笑んで、静かに現れた。



沖田総司は夢を微笑んで見た。

夢は沖田総司に微笑んで話し出す。

「総司さん。私は戻ります。暫く後に再び逢いましょう。」

沖田総司は夢に微笑んで頷いた。



夢は微笑んで、静かに居なくなった。



沖田総司は部屋の中を微笑んで見た。



斉藤一が沖田総司を普通の表情で見ている。



沖田総司は斉藤一を驚いて見た。

斉藤一は沖田総司に普通に話し出す。

「総司。毎回のように俺を見て驚く。」

沖田総司は斉藤一に動揺して話し出す。

「突然に斉藤さんが姿を現すからです!」

斉藤一は沖田総司に普通に話し出す。

「俺は、毎回のように、総司の到着前から居る。総司は抱き付かれる状況になって、勘が鈍っている。」

沖田総司は斉藤一を複雑な様子で見た。

斉藤一は沖田総司に普通に話し出す。

「総司。毎回の話になるが、美鈴さんに総司が抱き付かれた状況は教えない。安心しろ。」

沖田総司は斉藤一に動揺して話し出す。

「鈴ちゃんも居るのですか?!」

斉藤一は沖田総司に普通に話し出す。

「美鈴さんは既に宿に到着しているが、総司の到着より少し前に出掛けた。」

沖田総司は斉藤一を安心して見た。

斉藤一は沖田総司に普通に話し出す。

「総司。庭園の下見に行く。」

沖田総司は斉藤一に微笑んで話し出す。

「私と斉藤さんが庭園に出掛ける間に、鈴ちゃんが宿に戻ると困ります。庭園の下見は止めます。」

斉藤一は沖田総司に普通に話し出す。

「美鈴さんは宿に直ぐに戻らない。長時間でなければ、庭園の下見が出来る。」

沖田総司は斉藤一に微笑んで話し出す。

「分かりました。庭園の下見に行きます。」

斉藤一は沖田総司に普通の表情で頷いた。



斉藤一は普通の表情で、静かに居なくなった。

沖田総司は微笑んで、静かに居なくなった。



僅かに後の事。



ここは、夜の国。



庭園。



落ち着いた雰囲気に包まれている。



月の光が池を輝かせている。

真鴨が池に居る。

季節の花が咲いている。



沖田総司は微笑んで、静かに現れた。

斉藤一は普通の表情で、静かに現れた。



沖田総司は庭園を微笑んで見た。

斉藤一は沖田総司を普通の表情で見た。

沖田総司は斉藤一を微笑んで見た。



雄の真鴨が歩いてきた。

雌の真鴨が歩いて来た。



沖田総司は雄の真鴨と雌の真鴨を微笑んで見た。

斉藤一は沖田総司と雄の真鴨と雌の真鴨を普通の表情で見た。

沖田総司は斉藤一に微笑んで話し出す。

「斉藤さん。庭園を歩きながら見ましょう。」

斉藤一は沖田総司に普通の表情で頷いた。



沖田総司は微笑んで歩き出した。

斉藤一は普通の表情で歩き出した。

雄の真鴨はゆっくりと歩き出した。

雌の真鴨もゆっくりと歩き出した。



沖田総司は微笑んで止まった。

斉藤一は普通に止まった。



雄の真鴨はゆっくりと止まった。

雌の真鴨もゆっくりと止まった。



沖田総司は斉藤一に微笑んで話し出す。

「真鴨が付いてきます。」

斉藤一は沖田総司に普通に話し出す。

「真鴨が総司に親しみを感じている。」

沖田総司は斉藤一を不思議な様子で見た。

斉藤一は沖田総司に普通に話し出す。

「真鴨が総司に親しみを感じる理由を尋ねないのか?」

沖田総司は斉藤一に微笑んで話し出す。

「私が明るいから、などが理由ですよね。」

斉藤一は沖田総司に普通に話し出す。

「俺は、総司の傍に居る雄の真鴨に、“総司”、総司の傍に居る雌の真鴨に、“美鈴”、と名付けた。以上が、真鴨が総司に親しみを感じる理由だ。総司。答えを間違った。」

沖田総司は斉藤一に不思議な様子で話し出す。

「斉藤さん。真鴨の名付け親になったのですか?」

斉藤一は沖田総司に普通に話し出す。

「諸事情から、総司の傍に居る真鴨の名付け親になった。」

沖田総司は斉藤一を不思議な様子で見た。

斉藤一は沖田総司に普通に話し出す。

「総司。俺の考えた名前が不服なのか。仕方がない。総司の傍に居る雄の真鴨は“惣次郎”、総司の傍に居る雌の真鴨は“鈴”、に改名する。」

沖田総司は斉藤一を考え込んで見た。

斉藤一は沖田総司に普通に話し出す。

「総司。不服なのか。仕方がない。総司の傍に居る雄の真鴨は“一”。総司の傍に居る雌の真鴨は“鈴”。以上の名前に改名する。」

沖田総司は斉藤一の袖を掴むと、斉藤一に慌てて話し出す。

「斉藤さん! 駄目です!」

斉藤一は沖田総司に普通に話し出す。

「不服なのか。仕方がない。総司の傍に居る雄の真鴨は“歳三”。総司の傍に居る雌の真鴨に“鈴”。以上の名前に改名する。」

沖田総司は斉藤一の袖を掴んで、斉藤一に慌てて話し出す。

「斉藤さん! 絶対に駄目です!」

斉藤一は沖田総司に普通に話し出す。

「総司は俺の考える名前が全て不服なのか。」

沖田総司は斉藤一の袖を掴んで、斉藤一に慌てて話し出す。

「違います!」

斉藤一は沖田総司を普通の表情で見た。

沖田総司は斉藤一の袖を掴んで、斉藤一を慌てて見た。

斉藤一は沖田総司に普通に話し出す。

「総司。今回も楽しませてもらった。」

沖田総司は斉藤一の袖を掴んで、斉藤一を不思議な様子で見た。

斉藤一は沖田総司に普通に話し出す。

「俺の考えた名前を教える。総司の傍に居る雄の真鴨は、“藤次郎”。総司の傍に居る雌の真鴨は、“鈴”。」

沖田総司は斉藤一の袖を掴んで、斉藤一に微笑んで話し出す。

「斉藤さんの氏の“斉藤”の“藤”。私の幼名の“惣次郎”の“次郎”。鈴ちゃんの名前の“美鈴”の“鈴”。一文字ずつ使って名前を付けたのですね。」

斉藤一は沖田総司に普通に話し出す。

「総司が拗ねない名前。総司が機嫌の良くなる名前。以上の条件に合う名前を名付けた。俺が名付ける権利を得たのに、総司を優先して考えて名付けた。感謝しろ。」

沖田総司は斉藤一の袖を掴んで、斉藤一に苦笑して頷いた。

斉藤一は沖田総司に普通に話し出す。

「総司。俺の着物の袖を長く掴んでいる。俺の着物の袖を離す予定は何時だ?」

沖田総司は斉藤一の袖を苦笑して放した。

斉藤一は沖田総司に普通に話し出す。

「総司。鴨と池を詠んだ歌がある。女性の作者の歌だが、総司から美鈴さんに贈っても問題ないと思う。美鈴さんも庭園に来た時に、鴨を呼ぶ。総司。鴨が来た時に、美鈴さんに俺が教えた歌を贈れ。」

沖田総司は斉藤一に微笑んで話し出す。

「斉藤さん。歌を教えてください。」

斉藤一は沖田総司に普通に話し出す。

「“鴨鳥の 遊ぶこの池に 木の葉落ちて 浮きたる心 我が思はなくに”。」

沖田総司は斉藤一に微笑んで話し出す。

「斉藤さん。歌の意味を教えてください。」

斉藤一は沖田総司に普通に話し出す。

「総司が美鈴さんに歌を贈った後に教える。」

沖田総司は斉藤一を怪訝な様子で見た。

斉藤一は沖田総司に普通に話し出す。

「総司。不服なのか。」

沖田総司は斉藤一に慌てて話し出す。

「不服は無いです!」

斉藤一は沖田総司に普通の表情で頷いた。

沖田総司は斉藤一を安心して見た。

斉藤一は沖田総司に普通に話し出す。

「総司。宿に戻る。」

沖田総司は斉藤一に微笑んで話し出す。

「はい。」

斉藤一は沖田総司を普通の表情で見た。

沖田総司は雄の真鴨と雌の真鴨に微笑んで話し出す。

「藤次郎。鈴。私と斉藤さんは、少しだけ宿に戻るね。鈴ちゃんが宿に戻ってきたら、私と斉藤さんと鈴ちゃんで、庭園に戻るね。」

雄の真鴨は沖田総司を軽く突いた。

雌の真鴨も沖田総司を軽く突いた。

沖田総司は雄の真鴨と雌の真鴨を微笑んで見た。

斉藤一は、沖田総司、雄の真鴨、雌の真鴨、を普通の表情で見た。



沖田総司は微笑んで、静かに居なくなった。

斉藤一は普通の表情で、静かに居なくなった。



僅かに後の事。



ここは、夜の国。



温泉地。



山に覆われている。

山は緑色の葉の木々に覆われている。

川が絶え間なく流れている。

川の流れる音が絶え間なく聞こえる。



一軒の宿。



緑色の葉の木々に覆われている。

川が見える。

川の流れる音が絶え間なく聞こえる。



一室。



心地好い空気に包まれている。



沖田総司は紙を持ち、微笑んで居る。

斉藤一は普通の表情で居る。



沖田総司は紙を持ち、紙を見ながら、微笑んで呟いた。

「“鴨鳥の 遊ぶこの池に 木の葉落ちて 浮きたる心 我が思はなくに”。掲載は、“万葉集 第四巻 七一一番”。作者は“丹波大女娘子”。」

斉藤一は沖田総司に普通の表情で頷いた。

沖田総司は紙を持ち、紙を微笑んで見た。

斉藤一は沖田総司を普通の表情で見た。



少女が部屋の中に微笑んで入ってきた。



沖田総司は紙を懐に仕舞うと、少女を僅かに慌てて見た。

斉藤一は少女を普通の表情で見た。

少女は沖田総司を不思議な様子で見た。

沖田総司は少女に微笑んで話し出す。

「鈴ちゃん。温泉に浸かった?」

少女は沖田総司に微笑んで話し出す。

「温泉に浸かっていません。総司さん。温泉に浸かりましたか?」

沖田総司は少女に微笑んで話し出す。

「私も温泉に浸かっていないよ。」

少女は沖田総司と斉藤一を微笑んで見た。

沖田総司は少女に微笑んで話し出す。

「鈴ちゃん。庭園に出掛けたいと思っているんだ。温泉に浸かるのは、庭園に出掛けた後が良いかな?」

少女は沖田総司に微笑んで話し出す。

「はい。」

沖田総司は少女に微笑んで話し出す。

「庭園に可愛い鴨が居るんだ。鈴ちゃんにも逢って欲しいんだ。」

少女は沖田総司に微笑んで話し出す。

「楽しみです。」

沖田総司は少女を微笑んで見た。

少女も沖田総司を微笑んで見た。

斉藤一は沖田総司と少女を普通の表情で見た。



沖田総司は微笑んで、静かに居なくなった。

少女も微笑んで、静かに居なくなった。

斉藤一は普通の表情で、静かに居なくなった。



「鴨鳥の 遊ぶこの池に 木の葉落ちて 浮きたる心 我が思はなくに」

沖田総司は少女が真鴨の名前を知る時を楽しみに待っている。

沖田総司は斉藤一と少女と過ごす夜の時間を楽しんでいる。

沖田総司は池に浮く木の葉のような浮ついた気持ちはない。

秋の夜の時間は、和やかに過ぎていく。




*      *      *      *      *      *




ここからは後書きになります。

この物語に登場する歌は「万葉集 第四巻 七一一番」

「鴨鳥の 遊ぶこの池に 木の葉落ちて 浮きたる心 我が思はなくに」

ひらがなの読み方は「かもどりの あそぶこのいけに このはおちて うきたるこころわがおもはなくに」

作者は「丹波大女娘子(たにはのおほめをとめ)」

歌の意味は「鴨が遊んでいるこの池に浮いている木の葉のような、浮いた気持ちはありません。(私の気持ちは変わりませんことよ。)」となるそうです。

原文は「鴨鳥之 遊ぶ此池尓 木葉落而 浮心 吾不念國」

万葉集に登場する「鴨(かも)」についてです。

主に、カモ目カモ亜目ガンカモ科(“カモ科”の別名)の「真鴨(まがも)」や「味鴨(あじかも)」などを言うそうです。

体長は、50cm程度です。

雄の羽色は綺麗です。

その多くは、秋に北からやってきて、春に帰っていきます。

「軽鴨(かるがも)」もカモ目カモ科です。

軽鴨は夏でも見る事が出来ます。

楽しんで頂けると嬉しいです。





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