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〜 雪月花 新撰組異聞 編 〜
〜 千里香の花 後にも逢はむな恋ひそ我妹 〜
登場人物
土方歳三、沖田総司、斉藤一、少女[美鈴・鈴]
「春されば、まづ三枝の、幸くあらば、後にも逢はむ、な恋ひそ我妹」
「万葉集 第十巻 一八九五番」より
作者:柿本朝臣人麻呂(かきのもとのあそんひとまろ)歌集より
今は春。
ここは、京の町。
寒さを感じる時間の中にも、温かさを感じる時間が僅かに訪れた。
ここは、落ち着いた雰囲気の家。
一室。
床の間に、沈丁花を挿した花瓶が飾ってある。
沈丁花の香りが部屋の中を包んでいる。
土方歳三は杯の酒を普通の表情で飲んでいる。
斉藤一は杯の酒を普通の表情で飲んでいる。
土方歳三の膳と斉藤一の膳には、酒と肴が載っている。
斉藤一は杯の酒を飲みながら、沈丁花を普通の表情で見た。
土方歳三は杯の酒を飲みながら、斉藤一に普通に話し出す。
「沈丁花の香りの中で酒を飲みたいと思った。沈丁花を部屋に飾って酒を飲みたいと思った。沈丁花は香りのためだと思うが、茶花に使う機会は少ない。料亭に頼んで沈丁花を用意する方法より、懇意にする人物に頼んで用意してもらう方法が良いと思った。」
斉藤一は杯の酒を飲みながら、土方歳三に普通の表情で軽く礼をした。
土方歳三は杯の酒を飲みながら、斉藤一に普通に話し出す。
「斉藤。楽しいか?」
斉藤一は杯の酒を飲みながら、土方歳三に普通の表情で軽く礼をした。
土方歳三は杯の酒を飲みながら、斉藤一を微笑んで見た。
斉藤一は杯の酒を飲みながら、土方歳三に普通に話し出す。
「今回は土方さんの希望の趣向で酒を飲んでいます。土方さんは、俺と酒を飲むより、近藤さんか土方さんの懇意にする女性と酒を飲む方が、楽しいですよね。俺が相手で良いのですか?」
土方歳三は杯の酒を飲みながら、斉藤一に微笑んで話し出す。
「近藤さんは予定が合わない。懇意にする女性と酒を飲む時は、懇意にする女性の香りを感じたい。今回は斉藤が一番に良い相手だ。」
斉藤一は杯の酒を飲みながら、土方歳三に普通の表情で軽く礼をした。
土方歳三は杯の酒を飲みながら、斉藤一に微笑んで話し出す。
「斉藤。沈丁花の香りの中でも、酒を楽しんで飲んでいるのだろ。斉藤は俺に付き合ってくれる。俺も楽しい。」
斉藤一は杯の酒を飲みながら、土方歳三に普通の表情で軽く礼をした。
土方歳三は杯の酒を飲みながら、斉藤一を微笑んで見た。
斉藤一は杯の酒を飲みながら、土方歳三を普通の表情で見た。
土方歳三は杯の酒を飲みながら、斉藤一に微笑んで話し出す。
「斉藤。良い機会だ。歌を教える。」
斉藤一は杯の酒を飲みながら、土方歳三に普通の表情で軽く礼をした。
土方歳三は杯の酒を飲みながら、斉藤一に微笑んで話し出す。
「万葉集に、三枝、を詠んだ歌を掲載している。三枝、そのものを詠んだ歌ではなく、枕詞として詠んでいる。三枝、が何かは分かっていない。説は、福寿草、沈丁花、三椏、だ。」
斉藤一は杯の酒を飲みながら、土方歳三に普通の表情で軽く礼をした。
土方歳三は杯の酒を飲みながら、斉藤一に微笑んで話し出す。
「“万葉集 第十巻 一八九五番”。“柿本朝臣人麻呂歌集”からの歌。」
斉藤一は杯の酒を飲みながら、土方歳三に普通の表情で軽く礼をした。
土方歳三は杯の酒を飲みながら、斉藤一に微笑んで話し出す。
「“春されば まづ三枝の 幸くあらば 後にも逢はむ な恋ひそ我妹”。」
斉藤一は杯の酒を飲みながら、土方歳三に普通の表情で軽く礼をした。
土方歳三は杯の酒を飲みながら、斉藤一に微笑んで話し出す。
「歌の意味は、“春になると咲く三枝の花のように幸せならば、後で会っても良いでしょう。そんなに恋を焦らずに、ね、君。”、となるそうだ。」
斉藤一は杯の酒を飲みながら、土方歳三に普通に話し出す。
「“万葉集 第十巻 一八九五番”。“柿本朝臣人麻呂歌集”からの歌。“春されば まづ三枝の 幸くあらば 後にも逢はむ な恋ひそ我妹”。歌の意味は、“春になると咲く三枝の花のように幸せならば、後で会っても良いでしょう。そんなに恋を焦らずに、ね、君。”、となる。」
土方歳三は杯の酒を飲みながら、斉藤一に微笑んで話し出す。
「直ぐに覚えた。さすが。斉藤。」
斉藤一は杯の酒を飲みながら、土方歳三に普通の表情で軽く礼をした。
土方歳三は杯の酒を飲みながら、斉藤一に微笑んで話し出す。
「燃え上がる恋人達に、今の歌を詠んでみたい。今の状況では仕方が無いが、俺の知る限り、今の歌を詠める恋人達を知らない。」
斉藤一は杯の酒を飲みながら、土方歳三に普通の表情で軽く礼をした。
土方歳三は杯の酒を飲みながら、斉藤一に微笑んで話し出す。
「総司とあの子は、総司が細やかな感情に天才的な鈍さを発揮しているから、今の歌は詠めない。」
斉藤一は杯の酒を飲みながら、土方歳三に普通の表情で軽く礼をした。
土方歳三は杯の酒を飲みながら、斉藤一に微笑んで話し出す。
「斉藤と斉藤の恋人に今の歌を詠んでみたい。斉藤。恋愛をしたら、直ぐに教えてくれ。」
斉藤一は杯の酒を飲みながら、土方歳三に普通に話し出す。
「遠慮します。」
土方歳三は杯の酒を飲みながら、斉藤一に微笑んで話し出す。
「斉藤。遠慮したいのは、恋愛、俺に教える行為、どちらになるのかな?」
斉藤一は杯の酒を飲みながら、土方歳三に普通に話し出す。
「共に、です。」
土方歳三は杯の酒を飲みながら、斉藤一に微笑んで話し出す。
「斉藤の性格。今の斉藤の状況。二つの状況から考えると、当然の返事だ。仕方が無い。」
斉藤一は杯の酒を飲みながら、土方歳三を普通の表情で見た。
土方歳三は杯の酒を飲みながら、斉藤一に微笑んで話し出す。
「斉藤。急がなくて構わない。必ず恋愛をしろ。」
斉藤一は杯の酒を飲みながら、土方歳三を普通の表情で見ている。
土方歳三は杯の酒を飲みながら、斉藤一を微笑んで見た。
翌日の事。
ここは、落ち着いた雰囲気の寺。
本堂。
沖田総司は微笑んで居る。
少女も微笑んで居る。
少女は沖田総司に微笑んで話し出す。
「斉藤さん。遅いですね。」
沖田総司は少女に微笑んで話し出す。
「斉藤さん。用事があるから少し遅れると話したんだ。用事は直ぐに終わると話したんだ。想像より遅いね。」
少女は沖田総司を微笑んで見た。
沖田総司は少女に微笑んで話し出す。
「斉藤さんが来るまで、昨日、斉藤さんと話した内容を話すね。」
少女は沖田総司に微笑んで話し出す。
「はい。」
沖田総司は少女に微笑んで話し出す。
「斉藤さんが沈丁花を詠んだ歌の説明を始めて直ぐに、土方さんに呼ばれて部屋から居なくなったんだ。斉藤さんは直ぐに部屋に戻ってきたんだ。斉藤さんと再び話したんだ。気付いたら、別な内容の話で盛り上がっていたんだ。私は沈丁花を詠んだ歌の説明を聞いていないと思い出したんだ。斉藤さんに沈丁花を詠んだ歌について教えて欲しいと話したんだ。斉藤さんは長く話していたから、改めて沈丁花を詠んだ歌を説明すると話したんだ。私は了承したんだ。」
少女は沖田総司に微笑んで話し出す。
「沈丁花を詠んだお歌。知りたいです。」
沖田総司は少女に微笑んで話し出す。
「鈴ちゃんへの贈り物になる歌かも知れない。屯所に戻ったら、斉藤さんに沈丁花を詠んだ歌についての説明を聞くね。」
少女は沖田総司に微笑んで話し出す。
「総司さんからお歌の贈り物が頂ける可能性があるのですね。楽しみに待っています。」
沖田総司は少女に微笑んで話し出す。
「鈴ちゃんに贈り物に出来ない歌かも知れない。期待しないで待っていてね。」
少女は沖田総司に微笑んで話し出す。
「総司さんの迷惑にならないように期待して待っています。」
沖田総司は少女を微笑んで見た。
少女も沖田総司を微笑んで見た。
斉藤一は本堂に普通に入ってきた。
沖田総司は斉藤一を微笑んで見た。
少女も斉藤一を微笑んで見た。
斉藤一は沖田総司と少女に普通の表情で頷いた。
沖田総司は斉藤一に微笑んで話し出す。
「斉藤さん。用事が終わるのが想像より遅かったですね。」
斉藤一は沖田総司に普通に話し出す。
「予定どおりだ。」
沖田総司は少女に微笑んで話し出す。
「鈴ちゃん。斉藤さんと話す時間を楽しみに待っていたよね。斉藤さんは想像より来るのが遅いと話していたよね。」
少女は沖田総司と斉藤一に微笑んで話し出す。
「はい。」
沖田総司は斉藤一に微笑んで話し出す。
「斉藤さん。次回からは、張り切って用事を早く終えてください。」
斉藤一は沖田総司と少女を普通の表情で見た。
沖田総司は少女に微笑んで話し出す。
「鈴ちゃん。斉藤さんとたくさん話せるよ。楽しみだね。」
少女は沖田総司に微笑んで話し出す。
「はい。」
沖田総司は斉藤一と少女を微笑んで見た。
斉藤一は沖田総司と少女を普通の表情で見た。
暫く後の事。
ここは、屯所。
斉藤一の部屋。
沖田総司は微笑んで居る。
斉藤一は普通に居る。
斉藤一は沖田総司に普通に話し出す。
「総司。昨日、三枝、を枕詞として使用した歌の説明が途中だった。今から続きを説明する。」
沖田総司は斉藤一に微笑んで話し出す。
「お願いします。」
斉藤一は沖田総司に普通に話し出す。
「総司。美鈴さんが総司から沈丁花を詠んだ歌の贈り物を受け取れると喜んでいた。必ず贈れ。」
沖田総司は斉藤一に微笑んで話し出す。
「鈴ちゃんには必ず歌を贈ると約束していません。」
斉藤一は沖田総司に普通に話し出す。
「美鈴さんは、総司から沈丁花を詠んだ歌の贈り物を受け取れないと分かったら、落ち込む。総司は美鈴さんが落ち込む姿を見たいのか。総司。冷酷だな。」
沖田総司は斉藤一に慌てて話し出す。
「私は鈴ちゃんの笑顔がたくさん見たいです! 私は鈴ちゃんの落ち込む姿を見たくありません! 誤解です!」
斉藤一は沖田総司に普通に話し出す。
「総司。今から、美鈴さんへの贈り物の歌を説明する。」
沖田総司は斉藤一を安心した様子で見た。
斉藤一は沖田総司に普通に話し出す。
「“万葉集 第十巻 一八九五番”。“柿本朝臣人麻呂歌集”からの歌。」
沖田総司は斉藤一に微笑んで話し出す。
「“万葉集 第十巻 一八九五番”。“柿本朝臣人麻呂歌集”からの歌。」
斉藤一は沖田総司に普通に話し出す。
「“春されば まづ三枝の 幸くあらば 後にも逢はむ な恋ひそ我妹”。歌の意味は、“春になると咲く三枝の花のように幸せならば、後で会っても良いでしょう。そんなに恋を焦らずに、ね、君。”、となるそうだ。」
沖田総司は斉藤一を赤面して見た。
斉藤一は沖田総司を普通の表情で見た。
沖田総司は斉藤一に赤面して恥ずかしい様子で話し出す。
「斉藤さん。鈴ちゃんへの贈り物の歌は、別な歌が良いです。別な歌を教えてください。」
斉藤一は沖田総司に普通に話し出す。
「知らない。」
沖田総司は斉藤一を赤面して動揺して見た。
斉藤一は沖田総司に普通に話し出す。
「総司。美鈴さんに今の歌を贈りたくないのか。仕方が無い、土方さんか近藤さんから、沈丁花を詠んだ歌を教えてもらえ。」
沖田総司は斉藤一に動揺して話し出す。
「斉藤さん! 怒りましたか?!」
斉藤一は沖田総司に普通に話し出す。
「怒っていない。普通だ。」
沖田総司は斉藤一に動揺して話し出す。
「斉藤さん! 今の歌は鈴ちゃんに贈り難い歌です! 今回は、沈丁花を贈るなどの別な方法を教えてください!」
斉藤一は沖田総司に普通の表情で頷いた。
沖田総司は斉藤一を安心した様子で軽く息をはきながら見た。
「春されば まづ三枝の 幸くあらば 後にも逢はむ な恋ひそ我妹」
沈丁花の咲く頃の京の町。
新撰組隊士達は、厳しい時間の中でも、穏やかな時間を見付けて過ごしている。
沈丁花の咲く中で、今の歌を詠める日を想像しながら、厳しい日々を過ごしている。
* * * * * *
ここからは後書きになります。
この物語に登場する歌は「万葉集 第十巻 一八九五番」
「春されば まづ三枝の 幸くあらば 後にも逢はむ な恋ひそ我妹」
ひらがなの読み方は「はるされば まづさきくさの ささくあらば のちにもあはむ なこひそわぎも」
作者は「柿本朝臣人麻呂(かきのもとのあそんひとまろ)歌集より」
歌の意味は「春になると咲く三枝(さきくさ)の花のように幸せならば、後で会っても良いでしょう。そんなに恋を焦らずに、ね、君。」となるそうです。
原文は「春去 先三枝 幸命在 後相 莫戀吾妹」
「三枝(さきくさ)」から「幸く(さきく)」を導いています。
花そのものを詠んだ歌ではなく、枕詞として詠み込んでいるそうです。
「三枝(さきくさ)」が何かははっきりとしていないそうです。
「三椏(みつまた)」、「福寿草(ふくじゃそう)」、「沈丁花(じんちょうげ)」、などの説があります。
「沈丁花(じんちょうげ)」についてです。
ジンチョウゲ科の常緑低木です。
中国原産です。
春の季語です。
現在の暦で、2月〜4月初め頃に掛けて開花します。
枝の繊維は紙の原料になるそうです。
良い香りが特徴です。
遠くからでも分かる香りのためと思われますが、「茶花(ちゃばな)」に使用しないそうです。
中国名は「瑞香(ずいこう)」です。
別名には、「七里香(ななりこう)」、「千里香(せんりこう)」、があります。
沈丁花が日本に渡来したのは、室町時代という説があります。
沈丁花は室町時代には日本で既に栽培などをしていたという説もあります。
日本に古くからある花です。
題名は「千里香」にしましたが、物語中は「沈丁花」にしました。
以上、ご了承ください。
楽しんで頂けると嬉しいです。
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