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~ 雪月花 新撰組異聞 編 ~
~ 端月を迎えて少し後の事 小夜更けて ~
登場人物
近藤勇、土方歳三、沖田総司、斉藤一、お孝、少女[美鈴・鈴]
「やすらはで 寝なましものを 小夜更けて かたぶくまでの 月を見しかな」
「小倉百人一首 五十九番」、及び、「後拾遺集」
作者:赤染衛門(あかぞめえもん)
お孝には姉のお雪がいた。
美雪太夫と名乗っていた時がある。
天女のような女性と喩えられていた。
近藤勇に、身請けをされて、家を用意してもらった。
病のために昨年の冬に亡くなった。
お孝は大坂で長く暮らしていたため、お雪と一緒に過ごした日は少なかった。
近藤勇の勧めがあり、お雪が亡くなる少し前から一緒に暮らし始めた。
お雪とお孝が、姉妹としてゆっくりと過ごした僅かな時間だった。
お孝は、お雪が亡くなったので、大坂に戻る状況になるのだが、近藤勇の勧めがあり、大坂に戻らずにお雪の家に住み続ける状況になった。
お雪が亡くなった後の慌しさが落ち着いた或る日の事。
近藤勇はお孝に大坂に戻らずに傍に居て欲しいと話した。
お孝は、お雪の想いから、近藤勇の話から、近藤勇の傍に居ると決めた。
近藤勇とお孝は、付き合い始めた。
近藤勇は忙しい日々を送るため、お孝は一人で居る時間が長くなっている。
お孝は、近藤勇に宛てて、怒る内容の文や拗ねる内容の文を、幾度も書いている。
近藤勇からは、忙し過ぎる理由が関係しているのかも知れないが、お孝に宛てた文は書くが、お孝には滅多に逢いに来ない。
近藤勇とお孝は、付き合っているのに、すれ違いの生活が多くなっている。
幾日か後の事。
今は春。
ここは、京の町。
暦は春だが、寒い日が続いている。
ここは、お孝の住む家。
玄関。
若い新撰組隊士が近藤勇のお孝に宛てた文を持ち訪ねてきた。
お孝は半分拗ねて現れた。
お孝は若い新撰組隊士から半分拗ねて文を受け取った。
若い新撰組隊士は、お孝に慌てて軽く礼をした。
若い新選組隊士は、慌てて居なくなった。
お孝は半分拗ねて文を読み始めた。
近藤勇がお孝に宛てた文には、明日は時間に余裕があるので逢う内容が書いてあった。
お孝は文を読み終わると、笑顔で呟いた。
「明日が楽しみだな。近藤さんが好きな物をたくさん作ろう。」
お孝の周りが明るい様子へ変わった。
翌日の事。
ここは、屯所。
近藤勇の部屋。
近藤勇は困惑して居る。
土方歳三は部屋を普通に訪れた。
近藤勇は土方歳三に困惑して話し出す。
「昨日、今日は時間に余裕があるから、お孝に逢う内容の文を書いた。若い隊士に文を預けてお孝に届けさせた直後に、急な予定が入ってしまった。お孝に逢う時間が無くなってしまう可能性が有る。」
土方歳三は近藤勇に不思議な様子で話し出す。
「急な用事が入ったために逢えない可能性について、追加の文を書かなかったのか?」
近藤勇は土方歳三に困惑して話し出す。
「お孝の不機嫌になる様子を想像して文が書けなかった。」
土方歳三は近藤勇に呆れて話し出す。
「近藤さん。お孝さんと付き合っているのに、落ち着いて逢う時間を作らずに文のみで用を済ませているだろ。お孝さんが、機嫌を悪くして、返事が遅くなるんだ。不測の事態が起きた時に、今回のように更に事態を悪化させる状況になる。」
近藤勇は土方歳三を困惑して見た。
土方歳三は近藤勇に呆れて話し出す。
「近藤さん。お孝さんに家を用意して付き合っている。お孝さんに、約束を守れなくて悪いと思う内容の詫びの文を、直ぐに書いてくれ。俺に文の内容を確認させてくれ。」
近藤勇は土方歳三を困惑して話し出す。
「分かった。」
土方歳三は近藤勇に呆れて話し出す。
「近藤さんも総司も、刀を持つと、威勢は良いし勘も鋭いのに、細やかな内容に関しては、威勢も勘も、無くなる。総司は、忙しい時間が続いても無理やりにでも逢う時間を作るのに、近藤さんは、忙しさを理由にして先延ばしの状況を作る。近藤さんと総司は、似る部分はあるのに、雲泥の差になっている。」
近藤勇は土方歳三に困惑して話し出す。
「詫びの文は書く。今日は無理だが、近い日に何としてでもお孝に逢う時間を作る。」
土方歳三は近藤勇を微笑んで頷いた。
近藤勇は土方歳三に困惑して話し出す。
「歳。後の事は頼む。」
土方歳三は近藤勇に微笑んで頷いた。
少し後の事。
ここは、屯所。
土方歳三の部屋。
土方歳三は微笑んで居る。
沖田総司は微笑んで居る。
斉藤一は普通に居る。
土方歳三は沖田総司と斉藤一に微笑んで話し出す。
「総司。斉藤。今夜は、任務を兼ねながら、美味い酒と肴を味わえる。良かったな。」
沖田総司は土方歳三を怪訝な様子で見た。
斉藤一は土方歳三と沖田総司を普通の表情で見た。
沖田総司は部屋の外に出る気配を見せた。
斉藤一は沖田総司に普通に話し出す。
「総司。何処に行く?」
沖田総司は斉藤一を困惑して見た。
土方歳三は沖田総司に微笑んで話し出す。
「今夜は、近藤さんとお孝さんが、逢う予定だったが、近藤さんの都合が急に悪くなった。お孝さんが美味い酒や肴を用意しているそうだ。総司と斉藤は、お孝さんのご機嫌伺いも兼ねて過ごしてくれ。」
沖田総司は土方歳三に困惑して話し出す。
「ご機嫌伺いの言葉は少し違うように思います。」
土方歳三は沖田総司に微笑んで話し出す。
「総司の希望を受けて言い換える。美味い酒と肴を食べながら、機嫌の悪いお孝さんをなだめる、になる。」
沖田総司は土方歳三を困惑して見た。
土方歳三は沖田総司に微笑んで話し出す。
「総司。お孝さんを早くなだめれば、美味い酒や肴をゆっくりと味わえる。」
沖田総司は土方歳三に困惑して話し出す。
「私には、機嫌の悪いお孝さんをなだめられません。私には、無理です。」
斉藤一は沖田総司に普通に話し出す。
「お孝さんをなだめなくても、酒も肴も、味わえる。」
沖田総司は斉藤一を困惑して見た。
土方歳三は沖田総司と斉藤一に微笑んで話し出す。
「総司。斉藤。今夜は長丁場になるかも知れない。別な隊士に今日の残る任務を振り分けた。次に呼ぶ時までゆっくり過ごしてくれ。」
沖田総司は土方歳三に不思議な様子で話し出す。
「土方さんと私と斉藤さんで、お孝さんの家に行くのですか?」
土方歳三は沖田総司と斉藤一に微笑んで話し出す。
「俺は少し経ったら用事のために外出する。総司と斉藤が外出する時間までに戻れないかも知れない。いろいろと困るだろ。総司。斉藤。後は頼んだ。」
沖田総司は土方歳三に納得のいかない様子で話し出す。
「土方さん。お孝さんの家に行かないのですか?」
土方歳三は沖田総司に微笑んで話し出す。
「お孝さんは近藤さんの想い人だ。適当な人物には任せられない。近藤さんも俺も、総司と斉藤を、信頼している。後は頼む。」
沖田総司は土方歳三に納得のいかない様子で軽く礼をした。
斉藤一は土方歳三に普通の表情で軽く礼をした。
土方歳三は沖田総司と斉藤一を微笑んで見た。
少し後の事。
ここは、屯所。
土方歳三の部屋の外。
沖田総司はため息をついている。
斉藤一は普通に居る。
斉藤一は沖田総司に普通に話し出す。
「総司。暫くの間、予定が無い。美鈴さんに逢いに行け。」
沖田総司は斉藤一を笑顔で見た。
斉藤一は沖田総司に普通の表情で頷いた。
沖田総司は斉藤一に笑顔で話し出す。
「鈴ちゃんの家に行きます!」
斉藤一は沖田総司に普通の表情で頷いた。
沖田総司は笑顔で歩き出した。
暫く後の事。
ここは、お孝の住む家。
一室。
土方歳三は微笑んで居る。
お孝は拗ねて居る。
土方歳三はお孝に微笑んで話し出す。
「近藤さんから詫びの文を預かった。」
お孝は土方歳三に拗ねて話し出す。
「要りません。」
土方歳三はお孝に微笑んで話し出す。
「近藤さんは、逢えると文で知らせたのに、逢えなくなってしまったから、後悔している。」
お孝は土方歳三に拗ねて話し出す。
「勝手に後悔してください。」
土方歳三はお孝に微笑んで話し出す。
「近藤さんから付き合って欲しいと話があった時。逢う時間が少ない状況は理解して返事をしたんだろ。」
お孝は土方歳三に拗ねて話し出す。
「近藤さんが忙しい人物だと理解していたわよ。姉さんの妹として近藤さんを見ている時と、付き合う女性として近藤さんを見ている時は、かなり違うの。落ち着いて逢えないから、大坂に帰ると話した時があるの。近藤さんは帰らないで欲しいと話したの。近藤さんが頼んだから、大坂に帰るのを止めて、近藤さんと一緒に居るの。」
土方歳三はお孝に微笑んで話し出す。
「京の町での生活は、相談の出来る人物が少ない状況は、理解している。近藤さんと付き合っている。付き合う状況は、対外的に知られている人数は分からないが、新撰組内では知っている人数は多い。新撰組局長の近藤さんが、お孝さんに常に振り回される様子がはっきりとした形で分かると、面目が無くなる。拗ねるのは構わないが、ほどほどにしてくれ。」
お孝は土方歳三を見ながら、詰まらない様子でため息を付いた。
土方歳三はお孝に微笑んで話し出す。
「今の近藤さんには、お雪さんの代わりとしてではなく、お孝さん本人が必要だ。忘れないでくれ。」
お孝は土方歳三を見ながら、詰まらない様子でため息をついている。
土方歳三はお孝に微笑んで話し出す。
「今の状況に耐えなれないならば、大阪に帰ってくれ。帰る費用と当面の生活費は、俺が用意する。」
お孝は土方歳三に寂しく話し出す。
「土方さんも藤堂さんも他の隊士も、近藤さんと付き合った以降から、以前と接し方が変わったの。一人で居る時が少しずつ増えているの。」
土方歳三はお孝に微笑んで話し出す。
「近藤さんの想い人の妹。想い人本人。対応が違って当然だろ。」
お孝は土方歳三に不思議な様子で話し出す。
「沖田さんと斉藤さんは、変わらないように思う。」
土方歳三はお孝に微笑んで話し出す。
「斉藤は、態度を変えなくても影響が無いと判断したんだろ。総司は、突然に態度を変えるのを控えているのか、態度を変える必要がない、と判断したんだろ。」
お孝は土方歳三を微笑んで見た。
土方歳三は懐から文を微笑んで取り出した。
お孝は土方歳三に微笑んで話し出す。
「土方さん。文は要らないわ。」
土方歳三は文を懐に微笑んで戻した。
お孝は土方歳三に微笑んで話し出す。
「“やすらはで 寝なましものを 小夜更けて かたぶくまでの 月を見しかな”。今の歌だけを書いて近藤さんに文を渡したいと思っているの。」
土方歳三はお孝に微笑んで話し出す。
「今回の経緯から考えると、近藤さんが、待っている、と解釈するか、待っていない、と解釈するか、分からないが、良い歌だと思う。」
お孝は土方歳三に微笑んで話し出す。
「土方さんに歌に関して初めて褒められた。嬉しいな。」
土方歳三はお孝を微笑んで見た。
お孝は土方歳三に微笑んで話し出す。
「お酒と肴を用意して待っているね。」
土方歳三はお孝に微笑んで話し出す。
「近藤さんが、来るにしても、来ないにしても、暇だろ。誰か寄越す。」
お孝は土方歳三に微笑んで話し出す。
「土方さん。ありがとう。」
土方歳三はお孝を微笑んで見た。
お孝は土方歳三に微笑んで話し出す。
「土方さん。近藤さんが外出する前に必ず渡してね。」
土方歳三はお孝に微笑んで頷いた。
お孝は土方歳三を微笑んで見た。
土方歳三はお孝に微笑んで話し出す。
「関連の話題になる。一つ頼みがある。」
お孝は土方歳三を不思議な様子で見た。
土方歳三はお孝を微笑んで見た。
少し後の事。
ここは、屯所。
近藤勇の部屋。
近藤勇は心配な様子で居る。
土方歳三は微笑んで居る。
土方歳三は懐から二通の文を取り出すと、近藤勇に微笑んで話し出す。
「お孝さんは近藤さんの書いた文を受け取らなかった。お孝さんから近藤さんに文を渡して欲しいと頼まれた。」
近藤勇は土方歳三から心配して二通の文を受け取った。
土方歳三は近藤勇を微笑んで見た。
近藤勇はお孝の書いた文を心配して読み始めた。
お孝が書いた文には、百人一首の歌が一首だけ書いてある。
やすらはで 寝なましものを 小夜更けて かたぶくまでの 月を見しかな
近藤勇は土方歳三を見ると、土方歳三に困惑して話し出す。
「歌の意味のみで判断すると、お孝は私を待っているから、今夜は何としてでも時間を作って逢いに行くべきに思える。今までの経過を含めて判断すると、お孝は私を怒っているから、お孝は待っていないから逢いに来ないで欲しいとも思える。今回の歌を贈った真意が分からない。」
土方歳三は近藤勇を微笑んで見た。
近藤勇は文を困惑して読んだ。
少し後の事。
ここは、お孝の住む家。
玄関。
沖田総司は普通に訪れた。
斉藤一も普通に訪れた。
お孝は包みを持ち、微笑んで現れた。
沖田総司はお孝に不思議な様子で軽く礼をした。
斉藤一はお孝に普通の表情で軽く礼をした。
お孝は包みを持ち、沖田総司に微笑んで話し出す。
「沖田さん。頼みがあるの。」
沖田総司はお孝を不思議な様子で見た。
お孝は沖田総司に包みを渡すと、沖田総司に微笑んで話し出す。
「お菓子を食べたくて買ったの。気付いたら、お菓子を買い過ぎてしまったの。美鈴さんにお菓子を食べて欲しいと思ったの。私は美鈴さんに逢いに行けないから、沖田さんに頼みたいと思ったの。」
沖田総司はお孝から包を受け取ると、お孝に微笑んで話し出す。
「分かりました。私が美鈴さんに菓子を持って行きます。」
お孝は沖田総司を微笑んで見た。
沖田総司は包みを持ち、斉藤一に微笑んで話し出す。
「斉藤さん。美鈴さんに菓子を渡したら、直ぐに戻ってきます。」
お孝は沖田総司に微笑んで話し出す。
「美鈴さん。お菓子を渡して直ぐに帰ったら、寂しい気持ちになるわよ。お菓子を食べながら、話しながら、楽しく過ごしてね。」
沖田総司は包みを持ち、斉藤一を確認する様子で見た。
斉藤一は沖田総司に普通の表情で頷いた。
沖田総司は包みを持ち、斉藤一とお孝を見ると、斉藤一とお孝に微笑んで軽く礼をした。
斉藤一は沖田総司に普通の表情で頷いた。
お孝は沖田総司を微笑んで見た。
沖田総司は包みを持ち、微笑んで居なくなった。
斉藤一はお孝を普通の表情で見た。
お孝は斉藤一に微笑んで話し出す。
「土方さんが来たの。沖田さんと斉藤さんが来る前に、お菓子を買って欲しいと頼まれたの。」
斉藤一はお孝を普通の表情で見ている。
お孝は斉藤一に微笑んで話し出す。
「お酒も肴も、用意したの。近藤さんが来ても、気にしないで過ごしてね。」
斉藤一はお孝に普通の表情で頷いた。
少し後の事。
ここは、少女の住む家。
玄関。
沖田総司は包みを持ち、微笑んで訪れた。
少女は不思議な様子で現れた。
沖田総司は包みを持ち、少女に微笑んで話し出す。
「鈴ちゃん。お孝さんからお菓子を分けてもらったんだ。私だけでは多くて食べきれないんだ。鈴ちゃんと一緒に食べたいと思ったんだ。」
少女は沖田総司に微笑んで話し出す。
「総司さんとお菓子を一緒に食べられるのですね。嬉しいです。」
沖田総司は包を持ち、少女を微笑んで見た。
少女は沖田総司に微笑んで話し出す。
「私の部屋でお菓子を一緒に食べませんか?」
沖田総司は包みを持ち、少女に微笑んで頷いた。
少し後の事。
ここは、お孝の住む家。
一室。
食卓には、たくさんの肴と酒が載っている。
斉藤一は杯の酒を飲みながら、肴を普通の表情で食べている。
お孝は微笑んで居る。
玄関から誰かが訪ねる音が聞こえた。
斉藤一は杯の酒を飲みながら、お孝を見て、お孝に普通の表情で見た。
お孝は斉藤一に微笑んで話し出す。
「行ってくるね。」
斉藤一は杯の酒を飲みながら、お孝に普通の表情で頷いた。
お孝は微笑んで居なくなった。
斉藤一は杯の酒を飲むのを普通の表情で止めた。
僅かに後の事。
ここは、お孝の住む家。
玄関。
お孝は微笑んで来た。
近藤勇が微笑んで居る。
お孝は近藤勇を微笑んで見た。
近藤勇はお孝に微笑んで話し出す。
「“やすらはで 寝なましものを 小夜更けて かたぶくまでの 月を見しかな”。今の歌のような想いをお孝にさせる訳にはいかないと思った。屯所に戻らずに、直ぐにお孝の家に来た。」
お孝は近藤勇に微笑んで抱き付くと、近藤勇に微笑んで話し出す。
「近藤さん。ありがとう。」
近藤勇はお孝を微笑んで抱きしめた。
直後の事。
ここは、お孝の住む家。
一室。
斉藤一は普通に居る。
斉藤一は杯の酒を飲みながら、肴を普通の表情で食べた。
「やすらはで 寝なましものを 小夜更けて かたぶくまでの 月を見しかな」
月が傾く前までに逢いたい想い人が居る。
お孝は近藤勇に月が傾く前に逢えた。
近藤勇とお孝は、短い時間になるが、楽しい時間を過ごせる雰囲気に包まれた。
* * * * * *
ここからは後書きになります。
この物語に登場する歌は「小倉百人一首 五十九番」、及び、「後拾遺集」
「やすらはで 寝なましものを 小夜更けて かたぶくまでの 月を見しかな」
ひらがなの読み方は「やすらはで ねなましものを さよふけて かたぶくまでの つきをみしかな」
作者は「赤染衛門(あかぞめえもん)」
歌の意味は「あなたが来ないということが初めからわかっていたなら、何もためらうことなく寝ていたでしょうに。今か今かと待っているうちに夜は更け、とうとう月が西に傾くのを見るまでになってしまいましたよ。」となるそうです。
作者についてです。
生没年は未詳です。
「赤染衛門」は「小倉百人一首」に選ばれている「和泉式部(いずみしきぶ)」と、歌人として並び称されています。
「赤染衛門」は、「穏やか」・「良き妻・良き母」・「優秀な家刀自」・「内助の功」と表現され、宮仕えもしっかりと勤めたと言われています。
「和泉式部」は、「情熱的」・「恋多き女性」と表現され、「赤染衛門」とは違う人生を送っていると言われています。
この物語の補足です。
この物語の時間設定は、旧暦の一月の出来事です。
お雪さんは旧暦で前年の十二月に亡くなっている設定のため、翌月の出来事なります。
近藤勇さんとお雪さんの妹のお孝さんが付き合い始めた月にもなります。
近藤勇さんとお孝さんが付き合い始めた頃の設定の物語は、「新撰組異聞 短編」と「雪月花 新撰組異聞 編 短編」で、「端月を迎えて少し後の事」から始まる題名で何作か書きました。
土方歳三さんが近藤勇さんと付き合い始めたばかりのお孝さんに会いに行きます。
土方歳三さんは、近藤勇さんと付き合い始めた女性に会うと考えて書きました。
史実などで伝える近藤勇とお孝さんが付き合い始めた時期は、お雪さんの存命中といわれています。
物語の展開上、お雪さんが亡くなってから付き合い始めた設定です。
本来ならば、土方歳三さんはお孝さんに対して、少し丁寧に接しても良いのですが、お孝さんの性格、土方歳三さんとお孝さんの今でのやりとり、近藤勇さんと付き合う経過、などを含めた上での態度だと思ってください。
題名についてです。
「端月(たんげつ)」の「端」の文字には、「はじめ」の意味があるそうです。
そこから、「陰暦正月の異称」となっているそうです。
楽しんで頂けると嬉しいです。
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