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~ 雪月花 新撰組異聞 編 ~


~ 春宵の夢物語 沈丁花 夢の通い路 ~


登場人物

沖田総司、斉藤一、少女[美鈴・鈴]

夜の国の住人 夢




「住の江の、岸による波、よるさへや、夢の通い路、人めよくらむ」

「小倉百人一首 十八番」、及び、「古今集」より

作者:藤原敏行朝臣(ふじわらのとしゆきあそん)




今は春。



ここは、京の町。



寒さを感じる時間が減ってきた。



今夜は綺麗な月が浮かんでいる。



屯所。



沖田総司の部屋。



沖田総司の床の中で静かに寝ている。



部屋の中が不思議な空気に包まれた。



沖田総司は床の中で、ゆっくりと目を開けた。



少女が沖田総司を笑顔で覗き込んでいる。



沖田総司は、少女と同じ姿の夜の国の住人の“夢”という名前の少女だと直ぐに分かった。



沖田総司は床の中で、夢に微笑んで話し出す。

「夢ちゃん。今晩は。」

夢は沖田総司から笑顔のまま離れた。

沖田総司は床の上に体を起こすと、夢を微笑んで見た。

夢は沖田総司に笑顔で抱き付いた。

沖田総司の床の上に体を起こして、赤面して動きを止めた。



沖田総司は床の上に体を起こして、赤面して動きを止めて、不思議な空気に包まれた。

夢は沖田総司を笑顔で抱いて、不思議な空気に包まれた。



一瞬の後の事。



ここは、夜の国。



夜空には月と満天の星が輝いている。



草原が広がっている。



心地良い空気に包まれている。



沖田総司は赤面して動きを止めて、静かに現れた。

夢は沖田総司を抱いて、微笑んで、静かに現れた。



沖田総司を包む不思議な空気が、静かに消えた。

夢を包む不思議な空気も、静かに消えた。



沖田総司は心地好い気宇気を感じた。

夢も心地好い空気を感じた。



夢は沖田総司から離れると、沖田総司に微笑んで話し出す。

「総司さん。挨拶が遅れました。今から挨拶します。こんばんは。」

沖田総司は夢に赤面して頷いた。

夢は沖田総司に微笑んで話し出す。

「総司さん。今夜の夜の国は、ホワイトデーです。」

沖田総司は夢に微笑んで話し出す。

「今回も、夜の国の“ほわいとでー”の日に来たんだ。鈴ちゃんに“ほわいとでー”の贈り物を用意したいな。時間に余裕はあるかな?」

夢は沖田総司を寂しく見た。

沖田総司は夢に慌てて話し出す。

「夢ちゃんには夜の国でたくさん世話になっているよね! 夢ちゃんにも礼を兼ねて“ほわいとでー”の贈り物を用意するよ!」

夢は沖田総司に微笑んで話し出す。

「総司さん。ありがとうございます。」

沖田総司は夢に不思議な様子で話し出す。

「夢ちゃん。私の発言で悲しい思いをしていなかったの?」

夢は沖田総司に微笑んで話し出す。

「大丈夫です。」

沖田総司は夢を安心した様子で見た。

夢は沖田総司に微笑んで話し出す。

「総司さん。話を戻します。私は前回と同様の赤の椿の贈り物で構いません。」

沖田総司は夢に不思議な様子で話し出す。

「前回と同じ贈り物で良いの?」

夢は沖田総司に微笑んで話し出す。

「赤の椿の花言葉は“気取らぬ魅力。気取らない優美さ。慎み深い。”です。今年も総司さんが選んだ赤い椿が頂けたらとても嬉しいです。」

沖田総司は夢を赤面して見た。

夢は沖田総司に微笑んで話し出す。

「白の椿の花言葉は“申し分のない魅力。理想の愛。愛らしさ。”です。前回は美鈴さんに贈られた白の椿も嬉しいです。」

沖田総司は夢に赤面して話し出す。

「夢ちゃんの望みどおり、赤色の椿を用意するよ。」

夢は沖田総司に微笑んで話し出す。

「総司さん。美鈴さんの贈り物を一番に考えてください。私の贈り物は時間に余裕があれば用意してください。」

沖田総司は夢に微笑んで話し出す。

「夢ちゃん。気遣いありがとう。」

夢は沖田総司を微笑んで見た。



心地好い風が吹いた。



穏やかな甘い香りが辺りを包んだ。



沖田総司は辺りを不思議な様子で見た。

夢は沖田総司に微笑んで話し出す。

「沈丁花の香りが風に乗って届きました。」

沖田総司は夢を見ると、夢に微笑んで話し出す。

「夢ちゃんは沈丁花の香りが好きなんだ。」

夢は沖田総司に微笑んで話し出す。

「はい。」

沖田総司は夢に微笑んで話し出す。

「鈴ちゃんも沈丁花の香りが好きなんだ。」

夢は沖田総司を微笑んで見た。

沖田総司は夢に微笑んで話し出す。

「鈴ちゃんへの“ほわいとでー”の贈り物に沈丁花の花を選んだら喜ぶかな?」

夢は沖田総司に微笑んで話し出す。

「はい。」

沖田総司は夢を微笑んで見た。

夢は沖田総司に微笑んで話し出す。

「総司さん。私は暫く出掛けます。私の家を遠慮なく利用してください。ホワイトデーの時間を楽しんで過ごしてください。」

沖田総司は夢に微笑んで話し出す。

「夢ちゃん。ありがとう。」

夢は沖田総司を微笑んで見た。



夢は微笑んで、静かに居なくなった。



沖田総司は微笑んで、静かに居なくなった。



一瞬の後の事。



ここは、夜の国。



夢の住む家。



一室。



部屋の中は心地好い空気に包まれている。



斉藤一は普通に居る。



沖田総司は微笑んで、静かに現れた。



斉藤一は沖田総司を普通の表情で見た。

沖田総司は斉藤一に不思議な様子で話し出す。

「斉藤さん。一人ですか?」

斉藤一は沖田総司に普通の表情で頷いた。

沖田総司は斉藤一を残念な様子で見た。

斉藤一は沖田総司に普通に話し出す。

「総司。今夜の夜の国は“ほわいとでー”だ。美鈴さんへの贈り物を決めていないのだろ。美鈴さんに“ほわいとでー”の贈り物を決める前に逢う予定なのか?」

沖田総司は斉藤一に考えながら話し出す。

「鈴ちゃんに早く逢いたいですが、鈴ちゃんに逢う前に“ほわいとでー”の贈り物を用意したいです。」

斉藤一は沖田総司を普通の表情で見た。

沖田総司は斉藤一に考えながら話し出す。

「夢ちゃんにも“ほわいとでー”の贈り物を用意したいです。夢ちゃんは“ほわいとでー”の贈り物を前回同様の赤い椿を希望しました。夢ちゃんには赤い椿を用意します。鈴ちゃんへの贈り物は、歌と沈丁花の花にしたいと考えています。」

斉藤一は沖田総司に普通に話し出す。

「今回の“ほわいとでー”の歌の贈り物は決まっているのか?」

沖田総司は斉藤一に恥ずかしく話し出す。

「今回は、夜の国の関連で“夢”の登場する歌を贈りたいと考えています。」

斉藤一は沖田総司を普通の表情で見ている。

沖田総司は斉藤一に慌てて話し出す。

「夢ちゃんと“夢”が登場する歌は、関係が無いです!」

斉藤一は沖田総司に普通に話し出す。

「総司。何故、焦って話す?」

沖田総司は斉藤一を動揺して見た。

斉藤一は沖田総司に普通に話し出す。

「総司。美鈴さんに早く逢いたいのだろ。俺が美鈴さんへの歌の贈り物の候補を選んでおく。沈丁花の花と赤い椿の花を探しに行け。贈り物の赤い椿の花を選んだら、夢さんの部屋に飾れ。美鈴さんに歌と沈丁花の花を贈る方法を考えろ。」

沖田総司は斉藤一に微笑んで話し出す。

「はい。」

斉藤一は沖田総司を普通の表情で見た。

沖田総司は斉藤一に微笑んで話し出す。

「斉藤さん。行ってきます。」

斉藤一は沖田総司に普通の表情で頷いた。



沖田総司は微笑んで、静かに居なくなった。



暫く後の事。



ここは、夜の国。



夢の住む家。



一室。



机の上には、沈丁花を挿した花瓶が飾ってある。

沈丁花を挿した花瓶の前には、文が置いてある。



部屋の中は沈丁花の甘い香りに包まれている。



斉藤一は普通に居る。

沖田総司は微笑んで居る。



少女は微笑んで、静かに現れた。



沖田総司は少女を微笑んで見た。

斉藤一は少女を普通の表情で見た。

沖田総司は少女に微笑んで話し出す。

「鈴ちゃん。今晩は。」

斉藤一は少女を普通に普通の表情で頷いた。

少女は沖田総司と斉藤一に微笑んで話し出す。

「総司さん。斉藤さん。こんばんは。」

沖田総司は少女を微笑んで見た。

少女は沈丁花を微笑んで見た。

沖田総司は少女に微笑んで話し出す。

「沈丁花の花は良い香りだよね。」

少女は沖田総司を見ると、沖田総司に微笑んで話し出す。

「はい。」

沖田総司は少女に恥ずかしく話し出す。

「鈴ちゃん。夜の国で鈴ちゃんに歌を贈りたいと思ったんだ。斉藤さんに相談して“夢”が登場する歌を選んだんだ。沈丁花の花を挿した花瓶の前に文が置いてあるよね。受け取って。」

斉藤一は少女に普通の表情で頷いた。

少女は沖田総司と斉藤一に微笑んで話し出す。

「ありがとうございます。」

沖田総司は少女に恥ずかしく頷いた。

斉藤一は少女に普通の表情で頷いた。

少女は文を持ち、文を微笑んで読んだ。

沖田総司は少女を恥ずかしく見た。

少女は文を持ち、沖田総司と斉藤一を見ると、沖田総司と斉藤一に恥ずかしく話し出す。

「ありがとうございます。大切にします。」

沖田総司は少女に心配して話し出す。

「鈴ちゃん。今回も鈴ちゃんを悩ませる歌を贈ったのかな?」

少女は文を持ち、沖田総司に恥ずかしく話し出す。

「大丈夫です。」

沖田総司は斉藤一を心配な様子で見た。

斉藤一は懐から文を取り出すと、沖田総司に文を普通に渡した。

沖田総司は斉藤一から文を不思議な様子で受け取った。

少女は文を持ち、沖田総司と斉藤一を不思議な様子で見た。

沖田総司は文を持ち、文を不思議な様子で読んだ。

斉藤一は沖田総司を普通の表情で見た。

沖田総司は文を持ち、少女を恥ずかしく見た。

少女は文を持ち、沖田総司を不思議な様子で見た。

沖田総司は文を持ち、少女に恥ずかしく話し出す。

「え~と~ 沈丁花の花の香りが良いのと~ 夜の国で歌を贈るから~ 夢が登場する歌が良いな~と思ったんだ~ それで~ え~と~」

少女は文を持ち、沖田総司と斉藤一に微笑んで話し出す。

「沈丁花のお花の贈り物。お歌の贈り物。総司さんと斉藤さんが、私のために選んだ大切な贈り物です。嬉しいです。京の町に持って行けないのが残念です。夜の国に居る間は大切にします。」

沖田総司は文を持ち、少女に恥ずかしく話し出す。

「鈴ちゃん。ありがとう。」

斉藤一は少女に普通の表情で頷いた。

少女は文を持ち、沖田総司と斉藤一を微笑んで見た。



暫く後の事。



ここは、夜の国。



夢の住む家。



一室。



穏やかな空気に包まれている。



机の上に、沈丁花を挿した花瓶が飾ってある。



部屋の中は沈丁花の甘い香りに包まれている。



沖田総司は気持ち良く眠っている。

斉藤一は杯の酒を普通の表情で飲んでいる。

斉藤一の前には、酒と肴が置いてある。

少女は文を持ち、沖田総司の横で微笑んで眠っている。



斉藤一は杯の酒を飲みながら、沖田総司と少女を普通の表情で見た。

沖田総司は気持ち良く眠っている。

少女は文を持ち、沖田総司の横で微笑んで眠っている。

斉藤一は杯の酒を飲むのを普通の表情で止めた。



斉藤一は普通の表情で静かに居なくなった。



沖田総司は気持ち良く眠っている。

少女は文を持ち、沖田総司の横で微笑んで眠っている。



斉藤一は掛布団を持ち、普通の表情で静かに戻ってきた。



沖田総司は気持ち良く眠っている。

少女は文を持ち、沖田総司の横で微笑んで眠っている。

斉藤一は少女に掛け布団を普通の表情で静かに掛けた。

斉藤一は沖田総司に普通の表情で掛布団を静かに掛けた。

沖田総司は気持ち良く眠っている。

少女は文を持ち、沖田総司の横で微笑んで眠っている。

斉藤一は杯の酒を飲みながら、沖田総司と少女を普通の表情で見た。



鈴ちゃんへ

沈丁花の花は、綺麗だね。

沈丁花の花の甘い香りは、気持ちが落ち着くね。

鈴ちゃんに沈丁花の花と沈丁花の花の香りと共に歌を贈るね。

住の江の 岸による波 よるさへや 夢の通い路 人めよくらむ

沈丁花の花と沈丁花の花の香りと共に受け取ってもらえたら嬉しいな。

沖田総司より



総司へ

総司が美鈴さんに贈った歌。

「住の江の 岸による波 よるさへや 夢の通い路 人めよくらむ」

歌の意味は次に書く内容になる。

「住の江の岸に寄る波ではないけれど、夜でさえ夢の通い路を通って来てくれない。そんなにもあなたは人目を避けているのでしょうか。」

花に言葉を重ねる花言葉がある。

沈丁花にも花言葉が有る。

沈丁花の花言葉は「栄光。不滅。優しさ。」になる。

美鈴さんは夜の国を幾度も訪れて総司と共に過ごしている。

美鈴さんは人目を避けていない。

美鈴さんは夢の通い路を幾度も通っている。

総司は美鈴さんに歌の内容のような恨みはない。

総司は美鈴さんに「栄光。不滅。優しさ。」の花言葉を持つ沈丁花を夜の国で贈った。

総司は、直接的ではなく、間接的に、美鈴さんに様々な想いを表した状況になっている。

総司は今回も様々な状況を総合的に考えずに贈り物を選んだ。

さすが総司だと様々な意味で思った。

今回は、総司に説明する時間が作れない可能性が高いから、説明を含めて文を書いた。

美鈴さんは賢くて優しい女の子だ。

美鈴さんは今回も総司の物凄い動揺を見て直ぐに気付くはずだ。

総司。

美鈴さんが、呆れないように、飽きないように、更なる精進をしろ。

以上。




*      *      *      *      *      *




ここからは後書きになります。

この物語に登場する歌は「小倉百人一首 十八番」、及び、「古今集」

「住の江の 岸による波 よるさへや 夢の通い路 人めよくらむ」

ひらがなの読み方は「すみのえの かしによるなみ よるさへや ゆめのかよひじ ひとめよくらむ」

作者は「藤原敏行朝臣(ふじわらのとしゆきあそん)」

歌の意味は「住の江の岸に寄る波ではないけれど、夜でさえ夢の通い路を通って来てくれない。そんなにもあなたは人目を避けているのでしょうか。」となるそうです。

「住の江」は「摂津の歌枕」だそうです。

現在の大阪府に在る住吉大社付近の海になるそうです。

「夢の通い路」は「夢の中で恋人の元に向かう時に、魂が通ると考えられた道」だそうです。

「人めよくらむ」には、用心深すぎる恋人に対する恨みのような想いが込められているそうです。

「夢」について少し補足します。

相手が夢の中に現れるのは、相手が自分の事を強く思っているから、自分の夢の中に相手が現れるという考えがありました。

後は、現在のように、自分が恋しい相手の事を強く思うと、恋しい人が自分の夢の中に現れるという考えもあったようです。

この物語の補足です。

夜の国が物語の舞台です。

物語の最初の場面は当時の暦が基準になっていますが、夜の国の場面は現在の暦の3月14日を基準にして書きました。

現在の暦のホワイトデーの頃は、旧暦に合わせると「春」になります。

「ホワイトデー」についてです。

2月14日のバレンタインデーにチョコレートを贈られた男性が、返礼のプレゼントをする日です。

バレンタインデーのチョコレートに対し、ホワイトデーには、キャンデー、マシュマロ、クッキー、ホワイトチョコレートなどをお返しするのが一般的になっています。

日本でバレンタインデーが定着するにしたがって、若い世代の間で、バレンタインデーのお返しをしようという風潮が生まれました。

これを受けたお菓子業界では、昭和50年代に入ってから、個々に独自の日を定めて、マシュマロやクッキーやキャンデーなどを「お返しの贈り物」として宣伝販売するようになりました。

この動きをある団体がキャンデーの促進販売に結びつけ、「ホワイトデー」として催事化しました。

上記と同じ団体が、1978年に「キャンデーを贈る日」として制定しました。

2年の準備期間を経て1980年に第1回目のホワイトデーが開催されました。

「ホワイトデー」を3月14日に定めたといわれている理由についてです。

269年の2月14日に、兵士の自由結婚禁止政策にそむいて結婚しようとした男女を救うため、バレンタイン司教が殉職しました。

その一ヵ月後の3月14日に、その二人は改めて、二人の永遠の愛を誓い合ったといわれている事に由来しています。

「沈丁花(じんちょうげ)」についてです。

ジンチョウゲ科です。

落葉低木です。

中国原産です。

日本では室町時代に渡来したといわれています。

中国名は「瑞香(ずいこう)」といいます。

外側は濃いピンク色で、内側は白色の花が咲きます。

良い香りのする花です。

開花期は、現在の暦で、2月末~3月末です。

「花言葉」についてです。

花言葉には同じ花に幾つかの解釈があるため、今回の説明とは違う解釈の時があります。

ご理解の上、お読みください。

「椿(つばき)・赤色」は「気取らぬ魅力。気取らない優美さ。慎み深い。」です。

「椿・白色」は「申し分のない魅力。理想の愛。愛らしさ。」です。

「沈丁花」は「栄光。不滅。優しさ。」です。

「春宵(しゅんしょう)」についてです。

「春の夜。春の宵。」という意味です。

「夢物語(ゆめものがたり)」についてです。

「見た夢の話し。夢語り。」という意味です。

楽しんで頂けると嬉しいです。





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