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~ 雪月花 新撰組異聞 編 ~


~ 春雨慕情 それも知るごとやまず降りつつ ~


登場人物

伊東甲子太郎、沖田総司、斉藤一、藤堂平助、少女[美鈴・鈴]




「我妹子に 恋ひつつ居れば 春雨の それも知るごと やまず降りつつ」

「万葉集 第十巻 一九三三番」より

作者:詠み人知らず




今は春。



ここは、京の町。



春雨の降る日が続いている。



ここは、屯所。



伊東甲子太郎の部屋。



伊東甲子太郎は微笑んで居る。

藤堂平助は微笑んで居る。



藤堂平助は伊東甲子太郎に微笑んで話し出す。

「季節は春ですが、雨が降り続くと、気分が暗くなりますね。」

伊東甲子太郎は藤堂平助に微笑んで話し出す。

「藤堂君の場合は、雨が降ると出掛ける回数の減る人物を見掛ける機会が少なくなるから、更に気分が暗くなると思う。」

藤堂平助は伊東甲子太郎を僅かに赤面して見た。

伊東甲子太郎は藤堂平助に微笑んで話し出す。

「藤堂君。照れているのかな?」

藤堂平助は伊東甲子太郎に僅かに赤面して話し出す。

「伊東さん。山南さんと同じ内容を話さないでください。」

伊東甲子太郎は藤堂平助に微笑んで話し出す。

「私は山南さんと同じ内容を話しているのか。」

藤堂平助は伊東甲子太郎に僅かに赤面して話し出す。

「はい。」

伊東甲子太郎は藤堂平助に微笑んで話し出す。

「藤堂君は若い。藤堂君が、剣術や勉学の他にも興味を持つ言動は、とても良い言動だ。私は藤堂君の更なる成長を見る時が楽しみだ。」

藤堂平助は伊東甲子太郎を不思議な様子で見た。



伊東甲子太郎は微笑んで立った。



伊東甲子太郎は障子を微笑んで静かに開けた。

伊東甲子太郎は外を微笑んで見た。



春雨が静かに降り続いている。



伊東甲子太郎は春雨を見ながら、微笑んで呟いた。

「“我妹子に 恋ひつつ居れば 春雨の それも知るごと やまず降りつつ”、というところかな?」



藤堂平助は伊東甲子太郎の横に不思議な様子で来た。



藤堂平助は伊東甲子太郎に不思議な様子で話し出す。

「伊東さん。何かありましたか?」

伊東甲子太郎は藤堂平助を見ると、藤堂平助に微笑んで話し出す。

「春雨を詠んだ歌を思い出した。藤堂君。春雨を詠んだ歌を勉強する気持ちはあるかな?」

藤堂平助は伊東甲子太郎に微笑んで話し出す。

「お願いします。」

伊東甲子太郎は藤堂平助に微笑んで話し出す。

「“我妹子に 恋ひつつ居れば 春雨の それも知るごと やまず降りつつ”。」

藤堂平助は伊東甲子太郎を僅かに赤面して僅かに動揺して見た。

伊東甲子太郎は藤堂平助に微笑んで話し出す。

「掲載は、“万葉集 第十巻 一九三三番”、になる。歌を詠んだ人物は、分からないそうだ。万葉の時代も、雨が降るために、愛しい人物に逢えずに、寂しい想いを抱く人物の居た様子が分かる歌だと思う。」

藤堂平助は伊東甲子太郎に僅かに赤面して僅かに動揺して話し出す。

「はい。」

伊東甲子太郎は藤堂平助を微笑んで見た。

藤堂平助は伊東甲子太郎に僅かに赤面して僅かに慌てて話し出す。

「私は歌に関する内容を話しただけです。」

伊東甲子太郎はと藤堂平助に微笑んで話し出す。

「藤堂君。話す意味は分かる。落ち着くように。」

藤堂平助は伊東甲子太郎に僅かに赤面して話し出す。

「はい。」

伊東甲子太郎は藤堂平助に微笑んで話し出す。

「剣術の更なる高みを目指す。勉学の更なる知識を得る。大切な言動だ。歌に関する知識を得る言動も大切だ。他の知識を得る言動も大切だ。」

藤堂平助は伊東甲子太郎を僅かに赤面して見た。

伊東甲子太郎は障子を微笑んで静かに閉めた。



直後の事。



ここは、屯所。



斉藤一の部屋。



沖田総司は微笑んで居る。

斉藤一は普通に居る。



沖田総司は斉藤一に微笑んで話し出す。

「斉藤さん。明日、鈴ちゃんに逢う予定があります。雨が降ると、鈴ちゃんが濡れる可能性が有ります。明日、雨が降ったら、鈴ちゃんの家で話したいと思います。明日は、念のために、鈴ちゃんが喜ぶ菓子を買ってから、鈴ちゃんの家に行きます。」

斉藤一は沖田総司に普通の表情で頷いた。

沖田総司は斉藤一に微笑んで話し出す。

「斉藤さん。一緒に行きましょう。」

斉藤一は沖田総司に普通に話し出す。

「美鈴さんの家に男が二人で訪ねる。良いのか?」

沖田総司は斉藤一に寂しく話し出す。

「最近、私が落ち着かない時が多いです。鈴ちゃんが寂しい思いをしています。鈴ちゃんは斉藤さんと一緒に話す時間を楽しみにしています。斉藤さんは都合が悪いのですね。仕方がありません。私が一人で行きます。」

斉藤一は沖田総司に普通に話し出す。

「総司。俺は都合が悪い内容を話していない。」

沖田総司は斉藤一に恥ずかしく話し出す。

「確かに、斉藤さんは都合が悪い内容を話していませんね。」

斉藤一は沖田総司に普通に話し出す。

「総司が外出する時に、俺に用事が無ければ行く。」

沖田総司は斉藤一に微笑んで話し出す。

「鈴ちゃんが喜びます。ありがとうございます。」

斉藤一は沖田総司に普通の表情で頷いた。

沖田総司は斉藤一に微笑んで話し出す。

「斉藤さん。明日を楽しみにしています。」

斉藤一は沖田総司に普通の表情で頷いた。

沖田総司は斉藤一に微笑んで話し出す。

「斉藤さん。私は部屋に戻ります。」

斉藤一は沖田総司に普通の表情で頷いた。



沖田総司は部屋から普通に出て行った。



斉藤一は障子を普通の表情で静かに開けた。

斉藤一は外を普通の表情で見た。



沖田総司が縁を歩く後姿が見える。



春雨が静かに降り続く様子が見える。



斉藤一は春雨を見ながら、普通の表情で呟いた。

「“我妹子に 恋ひつつ居れば 春雨の それも知るごと やまず降りつつ”。総司には縁の無い歌だな。」



春雨の静かに降る音が途切れずに聞こえている。



斉藤一は障子を普通の表情で静かに閉めた。



翌日の事。



ここは、京の町。



朝から春雨が静かに降り続いている。



ここは、屯所。



斉藤一の部屋。



斉藤一は普通に居る。



沖田総司は部屋を微笑んで訪れた。



斉藤一は沖田総司を普通の表情で見た。

沖田総司は斉藤一に微笑んで話し出す。

「斉藤さん。今から鈴ちゃんの家に行きます。大丈夫ですか?」

斉藤一は沖田総司に普通の表情で頷いた。

沖田総司は斉藤一を微笑んで見た。

斉藤一は沖田総司に普通の表情で頷いた。



沖田総司は部屋から微笑んで出て行った。

斉藤一は部屋から普通の表情で出て行った。



少し後の事。



ここは、京の町。



春雨が静かに降り続いている。



ここは、少女の住む家。



玄関。



沖田総司は包みを持ち、微笑んで訪れた。

斉藤一は普通に訪れた。



少女は微笑んで来た。



沖田総司は包みを持ち、少女に微笑んで話し出す。

「鈴ちゃん。斉藤さんが一緒に来てくれたよ。」

少女は斉藤一に微笑んで話し出す。

「斉藤さん。こんにちは。」

斉藤一は少女に普通の表情で頷いた。

沖田総司は少女に微笑んで話し出す。

「今日は雨が降っているよね。鈴ちゃんの家で話しながら過ごしたいと思ったんだ。大丈夫かな?」

少女は沖田総司と斉藤一に微笑んで話し出す。

「話す場所は、私のお部屋で良いですか?」

沖田総司は包みを持ち、少女に微笑んで頷いた。

斉藤一は少女に普通の表情で頷いた。

少女は沖田総司と斉藤一を微笑んで見た。



少し後の事。



ここは少女の住む家。



少女の部屋。



沖田総司は微笑んで居る。

沖田総司の横には、包みが置いてある。

斉藤一は普通に居る。



沖田総司は少女の前に包みを置くと、少女に微笑んで話し出す。

「鈴ちゃん。団子を買ってきたんだ。一緒に食べよう。」

少女は沖田総司と斉藤一に微笑んで話し出す。

「総司さん。斉藤さん。ありがとうございます。」

沖田総司は少女に微笑んで頷いた。

斉藤一は少女に普通の表情で頷いた。

少女は沖田総司と斉藤一に微笑んで話し出す。

「お茶を用意します。」

沖田総司は少女に微笑んで頷いた。

斉藤一は少女に普通の表情で頷いた。

少女は包みを微笑んで持った。



少女は包みを持ち、部屋から微笑んで出て行った。



斉藤一は沖田総司を見ると、沖田総司に普通に話し出す。

「美鈴さんは喜んでいる。」

沖田総司は斉藤一を見ると、斉藤一に微笑んで話し出す。

「はい。」

斉藤一は沖田総司に普通に話し出す。

「総司のみが訪ねても、美鈴さんは喜ぶ。俺が総司と共に訪ねる必要は無かったと思う。」

沖田総司は斉藤一を困惑して見た。

斉藤一は沖田総司に普通に話し出す。

「総司。今は困惑するな。今は悩むな。今は美鈴さんを一番に考えろ。」

沖田総司は斉藤一に微笑んで話し出す。

「はい。」

斉藤一は沖田総司に普通の表情で頷いた。

沖田総司は斉藤一を微笑んで見た。



少女がお盆にお茶とお団子を載せて、部屋の中に微笑んで入ってきた。



沖田総司は少女を微笑んで見た。

斉藤一は少女を普通の表情で見た。

少女は沖田総司の前と斉藤一の前に、お茶とお団子の載る小皿を微笑んで置いた。

沖田総司は少女に微笑んで話し出す。

「いただきます。」

斉藤一は少女に普通の表情で頷いた。

少女は沖田総司と斉藤一を微笑んで見た。

沖田総司はお団子を持つと、お団子を微笑んで美味しく食べ始めた。

斉藤一はお団子を普通の表情で食べ始めた。

少女はお団子を微笑んで食べた。

沖田総司はお団子を食べ終わると、お茶を微笑んで美味しく飲んだ。

少女はお団子を微笑んで食べている。

斉藤一は団子を食べ終わると、お茶を普通の表情で飲んだ。

沖田総司はお茶を微笑んで飲み終わった。

斉藤一はお茶を普通の表情で飲んでいる。

沖田総司は少女に微笑んで話し出す。

「鈴ちゃん。団子がいつもより美味しいよ。お茶が美味しいからだよ。」

斉藤一はお茶を飲みながら、少女に普通の表情で頷いた。

少女はお団子を食べるのを止めると、沖田総司と斉藤一に微笑んで話し出す。

「お世辞でも褒めて頂けると嬉しいです。」

沖田総司は少女に微笑んで話し出す。

「お世辞ではないよ。」

斉藤一はお茶を飲みながら、少女に普通の表情で頷いた。

少女は沖田総司と斉藤一を恥ずかしく見た。

沖田総司は少女に微笑んで話し出す。

「鈴ちゃん。美味しいお茶が残っているよ。美味しいお茶が冷めたらもったいないよ。早く飲もう。」

斉藤一はお茶を飲みながら、少女に普通の表情で頷いた。

少女は沖田総司と斉藤一に恥ずかしく話し出す。

「はい。」

沖田総司は少女を微笑んで見た。

少女はお茶を飲むと、沖田総司と斉藤一を微笑んで見た。



沖田総司は、お団子を微笑んで美味しく食べながら、お茶を微笑んで美味しく飲んでいる。

少女は、お団子を微笑んで食べながら、お茶を微笑んで飲んでいる。

斉藤一は、お団子を普通の表情で食べながら、お茶を普通の表情で飲んでいる。



京の町は春雨が静かに降り続いている。



新撰組にとって、色色な出来事が起きているが、少しずつ静かな時が増えている。



伊東甲子太郎にも藤堂平助にも、色色な出来事が起きているが、少しずつ静かな時間が増えている。

沖田総司にも斉藤一にも、色色な出来事が起きているが、少しずつ静かな時間が増えている。



少女にも、少しずつ静かな時が増えている。



春雨が降るために出逢えない人がいる。

春雨が降っても出逢える人がいる。



たくさんの想いが春雨の滴の中に溶けていく。




*      *      *      *      *      *




ここからは後書きになります。

この物語に登場する歌は「万葉集 第十巻 一九三三番」

「我妹子に 恋ひつつ居れば 春雨の それも知るごと やまず降りつつ」

ひらがなの読み方は「わぎもこに こひつついれば はるさめの それもしるごと やまずふりつつ」

作者は「詠み人知らず」

歌の意味は「あの娘に会いたいと恋しく想っていると、雨が、それを知っているかのように(わざと)、降り続いています。」となるそうです。

原文は「吾妹子尓 戀乍居者 春雨之 彼毛知如 不止零乍」

雨のために、会いにも行けないという歌になるそうです。

この物語の補足です。

当時の恋人達は、現在とは違い、雨が降ると、出掛ける場所が制限されてしまい、不便な思いをしていたと思います。

雨を避ける場所も限られているので、約束の取り消しや変更などがあり、寂しい思いをする恋人達も多かったと思います。

この物語は、時期的に当てはめると、山南敬助さんが切腹をしてから差ほど経過していない頃を想定しました。

鈴ちゃんは、この物語の設定時には、山南敬助さんの切腹(元治二年二月二十三日[1865年3月20日])も、山南敬助さんの亡くなった事実も、知りません。

みんなは、山南敬助さんを忘れている訳ではないのですが、普段どおりに過ごしたい気持ち、穏やかに過ごしたいという気持ち、などがあり、このような状況になっている、と考えてください。

「慕情(ぼじょう)」についてです。

「慕わしく想う気持ちのこと。特に、異性を恋い慕う気持ちを言う。」の意味です。

「慕う(したう)」についてです。

幾つか意味があります。

「離れている人などを恋しく思う気持ち。懐かしく思う気持ち。目上の人の人格や見識などにひかれる。」などの意味があります。

楽しんで頂けると嬉しいです。





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