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~ 雪月花 新撰組異聞 編 ~


~ 椿物語 沖の浪の咲く頃 沖つ白波 ~


登場人物

土方歳三、沖田総司、斉藤一、少女[美鈴・鈴]




「わたの原 漕ぎ出でて見れば 久方の 雲居にまがふ 沖つ白波」

「小倉百人一首 七十六番」、及び、「詞花集」、より

作者:法性寺入道前関白太政大臣

(ほうしょうじにゅうどうさきのかんぱくだじょうだいじん)




今は、春。



ここは、京の町。



椿の花が綺麗な姿で咲いている。



ここは、屯所。



土方歳三の部屋。



土方歳三は普通に居る。



斉藤一は部屋を普通に訪れた。



土方歳三は斉藤一を微笑んで見た。

斉藤一は土方歳三に普通の表情で軽く礼をした。

土方歳三は斉藤一に微笑んで話し出す。

「総司はあの子に歌を贈る希望を話しているか?」

斉藤一は土方歳三に普通の表情で軽く礼をした。

土方歳三は斉藤一に微笑んで話し出す。

「斉藤は今回も総司の相談に乗っているのか?」

斉藤一は土方歳三に普通の表情で軽く礼をした。

土方歳三は斉藤一に微笑んで話し出す。

「“沖の浪”の名前の椿がある。総司があの子に贈るのに良い名前の椿だろ。」

斉藤一は土方歳三に普通に話し出す。

「“沖の浪”。名前は、総司が贈る時に良い椿だと思います。雰囲気は、総司よりあの子を想像します。」

土方歳三は斉藤一に微笑んで話し出す。

「さすが。斉藤。“沖の浪”を知っていたんだ。」

斉藤一は土方歳三に普通に話し出す。

「“沖の浪”。以前から見られる椿です。以前に、偶然ですが、見る機会がありました。」

土方歳三は斉藤一に微笑んで話し出す。

「総司があの子に“沖の浪”に添えて贈る歌。“沖の浪”と歌を共に贈る方法。以上の内容を紙に書いた。」

斉藤一は土方歳三に普通の表情で軽く礼をした。

土方歳三は机から紙を取ると、斉藤一に紙を微笑んで渡した。

斉藤一は土方歳三から普通の表情で紙を受け取った。

土方歳三は斉藤一を微笑んで見た。

斉藤一は紙を持ち、紙を普通の表情で見た。

土方歳三は斉藤一に微笑んで話し出す。

「斉藤。何を思った?」

斉藤一は紙を持ち、土方歳三を見ると、土方歳三に普通に話し出す。

「土方さんは、勝負の時が近いと考えているのですか?」

土方歳三は斉藤一に微笑んで話し出す。

「今の総司の様子から勝負の時にするためには、幾つもの後押しが必要だ。今回は勝負の時には該当しないと考えている。」

斉藤一は紙を持ち、土方歳三を普通の表情で見た。

土方歳三は斉藤一に微笑んで話し出す。

「俺は、現況では傍観者と同じ立場だ。紙に書いた内容以外を補足する采配は、斉藤に任せる。」

斉藤一は紙を持ち、土方歳三に普通に話し出す。

「土方さんが台本を書いて、俺が演出をする説明に感じます。」

土方歳三は斉藤一に微笑んで話し出す。

「さすが。斉藤。良い表現だ。」

斉藤一は紙を持ち、土方歳三に普通の表情で軽く礼をした。

土方歳三は斉藤一に微笑んで話し出す。

「俺の書いた台本を忠実に実行する必要はない。状況次第で変更して構わない。」

斉藤一は紙を持ち、土方歳三に普通の表情で軽く礼をした。

土方歳三は斉藤一に微笑んで話し出す。

「斉藤。今回の結果も必ず教えてくれ。」

斉藤一は紙を懐に仕舞うと、土方歳三に普通の表情で軽く礼をした。

土方歳三は斉藤一を微笑んで見た。



斉藤一は部屋を普通に出て行った。



翌日の事。



ここは、屯所。



沖田総司の部屋。



沖田総司は普通に居る。



斉藤一は二枚の紙を持ち、部屋を普通に訪れた。



沖田総司は斉藤一を微笑んで見た。

斉藤一は沖田総司に二枚の紙を渡すと、沖田総司に普通に話し出す。

「総司。美鈴さんに花や歌を贈りたいと話していた。良い花と良い歌を、見付けた。」

沖田総司は斉藤一から二枚の紙を受け取ると、斉藤一に微笑んで話し出す。

「ありがとうございます。」

斉藤一は沖田総司を普通の表情で見た。

沖田総司は二枚の紙を持ち、紙を微笑んで見た。



一枚の紙には、椿の花の絵が描いてある。

一枚の紙には、一首の歌、歌に関する説明と椿に関する説明が、書いてある。



沖田総司は紙を持ち、斉藤一を見ると、斉藤一に微笑んで話し出す。

「私の氏が一文字だけ使われている歌ですね。私の氏が一文字だけ使われている椿ですね。鈴ちゃんに贈るのですね。」

斉藤一は沖田総司に普通の表情で頷いた。

沖田総司は紙を持ち、斉藤一に微笑んで話し出す。

「“沖の浪”。鮮やかなのに可愛いです。鈴ちゃんのようです。」

斉藤一は沖田総司に普通の表情で頷いた。

沖田総司は紙を持ち、斉藤一に微笑んで話し出す。

「今回の用意してもらった歌。“沖の浪”の名前から考えると合う歌のように感じますが、椿の様子から考えると違うように感じます。」

斉藤一は沖田総司に普通に話し出す。

「総司の感じる疑問は、美鈴さんも疑問に感じると思う。総司がさり気なく疑問について説明して、美鈴さんに納得してもらうようにする。」

沖田総司は紙を持ち、斉藤一に考えながら話し出す。

「鈴ちゃんに、歌の説明と花の説明が、さり気なく出来るのでしょうか?」

斉藤一は沖田総司に普通に話し出す。

「出来るのか、ではなく、出来る、にする。」

沖田総司は紙を持ち、斉藤一に苦笑して話し出す。

「分かりました。」

斉藤一は沖田総司に普通の表情で頷いた。

沖田総司は紙を持ち、斉藤一に微笑んで話し出す。

「今の歌は、以前に覚えた時があります。説明を少なくすれば、鈴ちゃんにさり気なく話せると思います。今回は幸いな状況になります。」

斉藤一は沖田総司に普通に話し出す。

「以前に覚えたならば、再び覚える必要はないだろ。」

沖田総司は紙を持ち、斉藤一に恥ずかしく話し出す。

「緊張すると、歌や説明を、忘れる時が有ります。数回の予習と数回の復習が、必要です。」

斉藤一は沖田総司に普通に話し出す。

「任務の合間に、歌を含める説明を覚える。“沖の浪”には見頃がある。気合を入れて覚えろ。」

沖田総司は紙を持ち、斉藤一に微笑んで話し出す。

「はい。」

斉藤一は沖田総司を普通の表情で見た。



数日後の事。



ここは、京の町。



青空に白い雲がゆったりと浮かんでいる。



ここは、椿の花がたくさん咲く場所。



沖田総司が微笑んで居る。

少女も微笑んで居る。

沖田総司の傍と少女の傍には、“沖の浪”の花が咲いている。



少女は沖田総司に微笑んで話し出す。

「椿の花が綺麗に咲いています。」

沖田総司は少女に微笑んで頷いた。

少女は沖田総司を微笑んで見た。

沖田総司は少女に微笑んで話し出す。

「私の傍と鈴ちゃんの傍で咲く椿は、“沖の浪”だよね。」

少女は沖田総司に微笑んで話し出す。

「“沖の浪”で合っていると思います。」

沖田総司は少女に微笑んで話し出す。

「“沖の浪”は、元禄八年の書物に記載のある古くからある椿だよね。」

少女は沖田総司に微笑んで話し出す。

「総司さんは椿についても詳しいです。私は更に椿について勉強します。」

沖田総司は少女に恥ずかしく話し出す。

「私は一種類の椿しか話していないよ。私は、花に疎いから、たくさんの椿の種類を知らないよ。鈴ちゃんが更に勉強をすると、私は鈴ちゃん以上に勉強しないといけないよ。」

少女は沖田総司に微笑んで話し出す。

「総司さんは難しい内容の話をたくさんご存知です。謙遜しないでください。」

沖田総司は少女に恥ずかしく話し出す。

「私は剣術関係しかたくさん知らないよ。謙遜していないよ。」

少女は沖田総司を微笑んで見た。

沖田総司は少女に恥ずかしく話し出す。

「私が“沖の浪”の名前を覚えたのは、私の氏が一文字だけ入っているからだよ。」

少女は沖田総司に微笑んで話し出す。

「私も、総司さんの氏が一文字だけ入っているので、忘れずに覚えられます。」

沖田総司は少女を恥ずかしく見た。

少女は沖田総司を微笑んで見た。

沖田総司は少女に恥ずかしく話し出す。

「“沖の浪”。鮮やかなのに可愛い椿だよね。」

少女は沖田総司に微笑んで話し出す。

「はい。」

沖田総司は少女に恥ずかしく話し出す。

「“沖の浪”。鈴ちゃんに似ているよ。」

少女は沖田総司に恥ずかしく話し出す。

「綺麗な椿に喩えて頂いてありがとうございます。」

沖田総司は少女を恥ずかしく見た。

少女も沖田総司を恥ずかしく見た。

沖田総司は懐から紙を取り出すと、少女に紙を恥ずかしく差し出した。

少女は沖田総司から紙を恥ずかしく受け取った。

沖田総司は少女に恥ずかしく話し出す。

「“沖の浪”と一緒に歌を贈りたいと思ったんだ。百人一首に“わたの原 漕ぎ出でて見れば 久方の 雲居にまがふ 沖つ白波”の歌が掲載されていると思い出したんだ。」

少女は紙を持ち、紙を恥ずかしく見た。

沖田総司は少女に恥ずかしく話し出す。

「歌は“沖つ白波”だけど、鈴ちゃんは白色を連想するから、“白”は鈴ちゃんに重なると思ったんだ。“白”と鈴ちゃんは、“沖つ波”に重なるよね。“沖の浪”は、鮮やかだけど、可愛い椿だよね。鈴ちゃんに贈る椿に相応しい椿になるよね。」

少女は紙を持ち、沖田総司を恥ずかしく見た。

沖田総司は少女に恥ずかしく話し出す。

「上手に説明が出来ているかな?」

少女は紙を持ち、沖田総司に恥ずかしく話し出す。

「はい。」

沖田総司は少女に恥ずかしく話し出す。

「“沖の浪”を分けてもらえるんだ。後で一緒に行こう。」

少女は紙を持ち、沖田総司に恥ずかしく話し出す。

「はい。」

沖田総司は少女に恥ずかしく話し出す。

「綺麗な“沖の浪”を分けてもらおうね。」

少女は紙を持ち、沖田総司に恥ずかしく話し出す。

「はい。」

沖田総司は少女を恥ずかしく見た。

少女は紙を持ち、沖田総司を恥ずかしく見た。



暫く後の事。



ここは、屯所。



斉藤一の部屋。



斉藤一は普通に居る。



沖田総司は部屋を微笑んで訪れた。



斉藤一は沖田総司を普通の表情で見た。

沖田総司は斉藤一に微笑んで話し出す。

「鈴ちゃんに“沖の浪”と歌を贈りました。」

斉藤一は沖田総司に普通の表情で頷いた。

沖田総司は斉藤一に恥ずかしく話し出す。

「“沖の浪”の傍で鈴ちゃんの笑顔を見ていたら、本当に似ていると想いました。」

斉藤一は沖田総司を普通の表情で見た。

沖田総司は斉藤一に恥ずかしく話し出す。

「途中で緊張して恥ずかしくなってしまいました。鈴ちゃんに歌や説明がしっかりと伝えられたのか分かりません。」

斉藤一は沖田総司に普通に話し出す。

「総司の緊張と総司の恥ずかしい気持ちは、見るだけで分かった。総司は、歌も説明も、間違えずに話していた。美鈴さんは、恥ずかしかい様子だったが、喜んでいた。」

沖田総司は斉藤一に恥ずかしい様子と不思議な様子で話し出す。

「斉藤さんの話。斉藤さんが近くに居た内容に感じます。」

斉藤一は沖田総司に普通に話し出す。

「総司。話題を変える。」

沖田総司は斉藤一に恥ずかしい様子で動揺した様子で話し出す。

「斉藤さん。話題を変えずに、私の質問に答えてください。」

斉藤一は沖田総司に普通に話し出す。

「“沖の浪”は、総司の氏が一文字だけ入っている。“沖の浪”は、鮮やかだが可愛くて美鈴さんに似ている。“わたの原 漕ぎ出でて見れば 久方の 雲居にまがふ 沖つ白波”。“沖つ白波”の“白”は、美鈴さんを差している。“沖つ白波”は、総司と美鈴さんを差していると解釈できる。“沖の浪”、美鈴さんに贈った百人一首の歌は、総司と美鈴さんを共に連想する。全ての方向から考えると、歌と椿に込めた想いは一つになる。」

沖田総司は斉藤一に動揺して話し出す。

「斉藤さん! 鈴ちゃんが私の話の解釈した内容を教えてください!」

斉藤一は沖田総司に普通に話し出す。

「美鈴さんは、総司の様子から、裏読みは無く、深読みは無く、話すとおり、だと解釈したと思う。」

沖田総司は斉藤一に動揺して話し出す。

「斉藤さん! 鈴ちゃんは私の話すとおりの内容で解釈したと考えて良いのですね!」

斉藤一は沖田総司に普通に話し出す。

「総司。話が逸れている。話を戻す。」

沖田総司は斉藤一に動揺して話し出す。

「斉藤さん! 突然に話を戻さないでください!」

斉藤一は沖田総司に普通に話し出す。

「総司。話を戻さなくて良いのか?」

沖田総司は斉藤一に動揺して話し出す。

「話を戻さなくて良いです! 鈴ちゃんが間違えて解釈しそうになった内容を教えてください!」

斉藤一は沖田総司を普通の表情で見た。

沖田総司は斉藤一を動揺して見た。

斉藤一は沖田総司の耳元で普通の表情で何かを囁いた。

沖田総司は斉藤一を動揺して見た。

斉藤一は沖田総司から普通の表情で離れた。

沖田総司は斉藤一を赤面して見た。

斉藤一は沖田総司を普通の表情で見た。

沖田総司は赤面して気を失った。

斉藤一は沖田総司を普通の表情で支えた。

沖田総司は赤面して気を失っている。

斉藤一は沖田総司を支えて、沖田総司の額を指で思い切り弾いた。

沖田総司は赤面して気を失いながら、痛い表情になった。

斉藤一は沖田総司を支えて、沖田総司に普通に話し出す。

「総司。本当に面白い。」

沖田総司は赤面して気を失いながら、痛い表情をしている。

斉藤一は沖田総司を支えて、沖田総司に普通に話し出す。

「支え続けると疲れる。早く起こしたいが、少し楽しませてもらいたい。」

沖田総司は赤面して気を失いながら、落ち着いた表情になった。

斉藤一は沖田総司を支えて、沖田総司の額を指で思い切り弾いた。

沖田総司は赤面して気を失いながら、痛い表情になった。

斉藤一は沖田総司を支えて、沖田総司に普通に話し出す。

「総司。土方さんも喜ぶ。良かったな。」

沖田総司は赤面して気を失いながら、痛い表情をしている。

斉藤一は沖田総司を支えて、沖田総司の耳元で普通の表情で何かを囁いた。



「わたの原 漕ぎ出でて見れば 久方の 雲居にまがふ 沖つ白波」

沖田総司と少女を連想できる言葉の入る歌になる。

“沖の浪”。

沖田総司と少女を連想する椿になる。

土方歳三と斉藤一。

様々な状況で強力な組み合わせになる。



沖田総司と少女に楽しく穏やかな春の贈り物が届けられた。




*      *      *      *      *      *




ここからは後書きになります。

この物語に登場する歌は、「小倉百人一首 七十六番」、及び、「詞花集」

「わたの原 漕ぎ出でて見れば 久方の 雲居にまがふ 沖つ白波」

ひらがなの読み方は「わたのはら こぎいでてみれば ひさかたの くもゐにまがふ おきつしらなみ」

作者は「法性寺入道前関白太政大臣(ほうしょうじにゅうどうさきのかんぱくだじょうだいじん)」

歌の意味は「大海原に船を漕ぎ出して見渡してみると、雲と見間違えるばかりに沖に白波が立っています。」となるそうです。

作者の名前の「法性寺入道前関白太政大臣」は、寺の名前や状況や官職や身分などを表しています。

その関係から「藤原忠通(ふじわらのただみち)」として説明する時もあります。

この物語での歌の作者の名前は「法性寺入道前関白太政大臣」とさせて頂きます。

「椿(つばき)」の「沖の浪(おきのなみ)」についてです。

ツバキ科です。

花色は、淡桃色地、濃淡紅色縦絞り、白覆輪。

花形は、八重咲き。

花の大きさは、中~大輪。

開花時期は、現在の暦で、3月~4月。

産地は、江戸。

元禄八年(1695年)の書物に記録のある古い椿です。

楽しんで頂けると嬉しいです。





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