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~ 雪月花 新撰組異聞 編 ~


~ 真夏の夜の夢 兎苔 誰れか織りけむ ~


登場人物

沖田総司、斉藤一、少女[美鈴・鈴]

夜の国の住人:夢




「み吉野の 青根が岳の 蘿むしろ 誰れか織りけむ 経緯なしに」

「万葉集 第七巻 一一二〇番」より

作者:詠み人知らず




今は夏。



ここは、京の町。



雨の降る時間や曇りの時間が多く続いている。

蒸し暑さを感じる時間が少しずつ増えている。



屯所。



沖田総司の部屋。



蚊帳が吊ってある。



蚊帳の中に床が敷いてある。



沖田総司は床の中で静かに寝ている。



部屋の中が不思議な空気に包まれた。



沖田総司は床の中でゆっくりと目を開けた。



少女が沖田総司を笑顔で見ている。



沖田総司は、夜の国の住人で少女と同じ容姿の“夢”だと直ぐに分かった。



沖田総司は床の中で、夢に微笑んで話し出す。

「夢ちゃん。今晩は。」

夢は沖田総司に微笑んで話し出す。

「総司さん。こんばんは。」

沖田総司は床の中で、夢を微笑んで見た。

夢は沖田総司を微笑んで見た。

沖田総司は床の上に体を微笑んで起こした。

夢は沖田総司に微笑んで抱き付いた。

沖田総司は床の上に体を起こして、赤面して動きを止めた。



夢は沖田総司を微笑んで抱いて、不思議な空気に包まれた。

沖田総司は赤面して床の上に体を起こして、不思議な空気に包まれた。



夢は沖田総司を微笑んで抱いて、静かに居なくなった。

沖田総司は赤面して床の上に体を起こして、静かに居なくなった。



一瞬の後の事。



ここは、夜の国。



夜空には、月と満天の星が輝いている。



心地好い空気に包まれている。



夢の住む家。



一室。



心地好い空気に包まれている。



夢は沖田総司を微笑んで抱いて、静かに現れた。

沖田総司は赤面して動きを止めて、静かに現れた。



夢は沖田総司から微笑んで放れた。

沖田総司は夢を赤面して見た。

夢は沖田総司に微笑んで話し出す。

「総司さん。こんばんは。」

沖田総司は夢に赤面して話し出す。

「夢ちゃん。今晩は。」

夢は沖田総司に微笑んで話し出す。

「総司さん。相変わらずの照れ屋さんですね。」

沖田総司は夢に赤面して話し出す。

「夢ちゃんが抱き付くからだよ。」

夢は沖田総司に寂しく話し出す。

「美鈴さんが総司さんに抱き付いても、総司さんは赤面しません。総司さんが美鈴さんに抱き付いても、総司さんは赤面しません。私が抱き付くと、総司さんは赤面します。総司さんは私に対して良い印象を持っていないのですね。寂しいです。」

沖田総司は夢に赤面して慌てて話し出す。

「夢ちゃん! 誤解だよ! 本当だよ!」

夢は沖田総司を寂しく見た。

沖田総司は夢を赤面して心配して見た。

夢は沖田総司に微笑んで抱き付いた。

沖田総司は夢を赤面して驚いて見た。

夢は沖田総司から微笑んで離れた。

沖田総司は夢を赤面して驚いて見ている。

夢は沖田総司に微笑んで話し出す。

「総司さんは、天才的な照れ屋さんですね。」

沖田総司は夢を赤面して不思議な様子で見た。

夢は沖田総司に微笑んで話し出す。

「天才的な照れ屋の総司さん。夜の国の時間を楽しんでください。」

沖田総司は夢を赤面して不思議な様子で見ている。



夢は微笑んで、静かに居なくなった。



沖田総司は赤面して、ゆっくりと息をはいた。



沖田総司の後ろから、斉藤一の普段と同じ気配を感じた。



沖田総司は後ろを驚いて見た。



斉藤一は沖田総司を普通の表情で見ている。



沖田総司は斉藤一を驚いて見た。

斉藤一は沖田総司に普通に話し出す。

「美鈴さんが総司に抱き付いても、総司は赤面しない。総司が美鈴さんに抱き付いても、総司は赤面しない。俺が抱き付くと、総司は赤面する。総司は俺に対して良い印象を持っていないのか。寂しいな。」

沖田総司は斉藤一に慌てて話し出す。

「斉藤さん! 私と夢ちゃんの話を最初から聞いていたのですか?!」

斉藤一は沖田総司に普通に話し出す。

「総司は俺の話を否定しない。総司は俺に対して良い印象を持っていない状況が確定した。」

沖田総司は斉藤一に慌てて話し出す。

「斉藤さんは物凄く大切な友達です! 斉藤さんは物凄く大切で信頼できる人物です! 私は斉藤さんに良い印象を持っています! 安心してください!」

斉藤一は沖田総司に普通の表情で頷いた。

沖田総司は斉藤一を安心して見た。

斉藤一は沖田総司に普通に話し出す。

「総司。相変わらず面白い。」

沖田総司は斉藤一を苦笑して見た。

斉藤一は沖田総司を普通の表情で見た。

沖田総司は斉藤一を慌てて見た。

斉藤一は沖田総司を普通の表情で見ている。

沖田総司は斉藤一に慌てて話し出す。

「斉藤さん! 私と夢ちゃんは、いろいろと話していました! 鈴ちゃんが誤解する可能性があります! 鈴ちゃんは夢ちゃんの家に居ないですよね!」

斉藤一は沖田総司を普通の表情で見ている。

沖田総司は斉藤一に慌てて話し出す。

「斉藤さん! 何故、黙っているのですか?!」

斉藤一は沖田総司に普通に話し出す。

「総司は先程から大騒ぎをしている。美鈴さんが居たら、俺達が居る部屋に来る。美鈴さんは部屋に来ない。以上の状況から考えると、答えは一つになる。」

沖田総司は斉藤一を安心して見た。

斉藤一は沖田総司を普通の表情で見た。



夢が小さな植木鉢を持ち、微笑んで静かに現れた。



斉藤一は夢を普通の表情で見た。

沖田総司は夢を不思議な様子で見た。

夢は小さな植木鉢を傍に微笑んで置いた。

沖田総司は小さな植木鉢を不思議な様子で見た。

斉藤一は植木鉢を普通の表情で見た。



小さな植木鉢には、小さな花がたくさん咲き、苔が生えている。



夢は沖田総司と斉藤一に微笑んで話し出す。

「“兎苔”が手に入りました。総司さんと斉藤さんと美鈴さんに、楽しんで頂きたいと思って持って来ました。」

沖田総司は兎苔を不思議な様子で見た。

夢は沖田総司斉藤一に微笑んで話し出す。

「花の姿が兎に似ている様子から付いた名前です。」

沖田総司は兎苔の花を見て、斉藤一に微笑んで話し出す。

「斉藤さん。花が兎の姿に見えます。」

斉藤一は沖田総司に普通の表情で頷いた。

夢は沖田総司に微笑んで話し出す。

「兎苔は食虫植物です。」

沖田総司は夢を見ると、夢に不思議な様子で話し出す。

「兎苔は虫を食べる植物なんだ?」

夢は沖田総司に微笑んで話し出す。

「兎苔が捕食する部分は、花ではなく、地中の中の根に有る物凄く小さな袋です。兎苔は虫ではなく微生物を捕食します。」

沖田総司は夢に微笑んで話し出す。

「いろいろと教えてくれてありがとう。」

夢は沖田総司に微笑んで話し出す。

「はい。」

沖田総司は夢を微笑んで見た。

夢は沖田総司と斉藤一に微笑んで話し出す。

「必要な物や相談があれば、遠慮なく呼んでください。」

沖田総司は夢に微笑んで頷いた。

斉藤一は夢に普通の表情で頷いた。

夢は沖田総司と斉藤一に微笑んで話し出す。

「総司さん。斉藤さん。美鈴さんと一緒に、夜の国の時間を楽しんでください。」

沖田総司は夢に微笑んで頷いた。

斉藤一は夢に普通の表情で頷いた。



夢は微笑んで、静かに居なくなった。



沖田総司は斉藤一を見ると、斉藤一に微笑んで話し出す。

「夢ちゃんから兎苔について教えてもらいました。鈴ちゃんに兎苔について説明が出来ます。」

斉藤一は沖田総司に普通の表情で頷いた。

沖田総司は斉藤一に微笑んで話し出す。

「兎苔の花は小さくて可愛い姿です。兎苔の花は、鈴ちゃんのようです。」

斉藤一は沖田総司に普通の表情で頷いた。

沖田総司は斉藤一に微笑んで話し出す。

「鈴ちゃんは兎苔の花を見たら喜びますよね。」

斉藤一は沖田総司に普通の表情で頷いた。

沖田総司は斉藤一を微笑んで見た。

斉藤一は沖田総司に普通に話し出す。

「総司。美鈴さんに兎苔を見る間に歌を贈れ。」

沖田総司は斉藤一に不思議な様子で話し出す。

「兎苔を見る間に贈る歌。良い歌があるのですか?」

斉藤一は沖田総司に普通に話し出す。

「苔を詠んだ歌。」

沖田総司は斉藤一に考えながら話し出す。

「苔を詠んだ歌。地味な内容の歌を想像します。」

斉藤一は沖田総司に普通に話し出す。

「総司の今の話の内容は、総司が歌を学ぶ行為を苦手とする証拠だ。総司が美鈴さんに今の総司の内容を話せば、美鈴さんは総司を呆れる。」

沖田総司は斉藤一に慌てて話し出す。

「困ります!」

斉藤一は沖田総司に普通に話し出す。

「総司。俺に面白い展開を見せてくれ。」

沖田総司は斉藤一に慌てて話し出す。

「嫌です!」

斉藤一は沖田総司に普通に話し出す。

「美鈴さんを落ち込ませる訳にはかいない。仕方が無い。苔を詠んだ歌を教える。美鈴さんが呆れないように、しっかりと覚えろ。」

沖田総司は斉藤一に慌てて話し出す。

「はい!」

斉藤一は沖田総司に普通に話し出す。

「総司。落ち着け。」

沖田総司は斉藤一を見ながら、軽く息をはいた。

斉藤一は沖田総司に普通の表情で頷いた。

沖田総司は斉藤一に微笑んで話し出す。

「斉藤さん。お願いします。」

斉藤一は沖田総司に普通に話し出す。

「“み吉野の 青根が岳の 蘿むしろ 誰れか織りけむ 経緯なしに”。“万葉集 第七巻 一一二〇番”。作者は“詠み人知らず”。歌の意味は、“吉野の青根が岳の苔のじゅうたんは、誰が編んだのでしょう。縦糸も横糸もきっちりと編んだようにきれいです。”、となるそうだ。」

沖田総司は斉藤一に微笑んで話し出す。

「苔を綺麗に詠んだ歌ですね。」

斉藤一は沖田総司に普通の表情で頷いた。

沖田総司は斉藤一に微笑んで話し出す。

「鈴ちゃんのために歌を覚えます。」

斉藤一は沖田総司に普通の表情で頷いた。

沖田総司は兎苔を微笑んで見た。



暫く後の事。



ここは、夜の国。



夢の住む家。



一室。



机に兎苔が置いてある。



沖田総司は微笑んで、静かに表れた。

斉藤一は普通の表情で、静かに現れた。

少女は微笑んで、静かに現れた。



沖田総司は少女に微笑んで話し出す。

「夜の国の人達が、兎苔を用意してくれたんだ。兎苔は、兎の姿のような花が咲くんだ。兎苔の花は、小さくて可愛いんだ。鈴ちゃんに見て欲しいと思って、机の上に飾ってあるんだ。」

少女は机を微笑んで見た。

沖田総司は少女を微笑んで見た。

斉藤一は少女を普通の表情で見た。

少女は兎苔を微笑んで見た。

沖田総司は少女に微笑んで話し出す。

「兎苔は、食虫植物の一種類なんだ。兎苔が捕食する部分は、花ではなく、地中の中の根に有る物凄く小さな袋なんだ。兎苔は虫ではなく微生物を捕食するんだ。」

少女は沖田総司と斉藤一を見ると、沖田総司と斉藤一に微笑んで話し出す。

「総司さんも斉藤さんも、物知りです。勉強になります。」

沖田総司は少女に恥ずかしく話し出す。

「夜の国の住人に、兎苔について教えてもらったんだ。私は物知りではないよ。」

斉藤一は少女に普通の表情で頷いた。

沖田総司は斉藤一を拗ねて見た。

「斉藤さん~ 直ぐに同意しないでください~」

斉藤一は少女に普通に話し出す。

「美鈴さん。総司は美鈴さんが兎苔を見た時に歌を贈りたいと話していた。」

少女は沖田総司に微笑んで話し出す。

「総司さん。お歌の贈り物が頂けるのですね。楽しみです。」

沖田総司は懐から紙を取り出すと、少女に微笑んで渡した。

少女は紙を受け取ると、紙を微笑んで見た。



紙には、兎の透かし絵が入っている。



沖田総司は少女に微笑んで話し出す。

「夜の国で、兎の透かし絵の入った紙を見付けたんだ。鈴ちゃんへの歌の贈り物を書く紙に使いたいと思ったんだ。夜の国の住人から、兎の透かし絵の入った紙を分けてもらったんだ。」

少女は紙を持ち、沖田総司を見ると、沖田総司に微笑んで話し出す。

「可愛い兎の柄の透かし絵入りの紙に書いたお歌。贈り物のお歌を知る時が楽しみです。」

沖田総司は少女を微笑んで見た。

少女は紙を持ち、紙を微笑んで見た。

沖田総司は少女を微笑んで見ている。

斉藤一は少女を普通の表情で見た。

少女は紙を持ち、沖田総司を見ると、沖田総司に微笑んで話し出す。

「“み吉野の 青根が岳の 蘿むしろ 誰れか織りけむ 経緯なしに”。苔を詠んだ素敵なお歌です。総司さん。ありがとうございます。」

沖田総司は少女に微笑んで話し出す。

「斉藤さんが、今回の鈴ちゃんへの贈り物の歌の候補を教えてくれたんだ。」

少女は紙を持ち、斉藤一に微笑んで話し出す。

「斉藤さん。ありがとうございます。」

斉藤一は少女に普通の表情で頷いた。

少女は紙を持ち、沖田総司と斉藤一に微笑んで話し出す。

「兎苔の用意。可愛い兎の透かし絵の入る紙の用意。気遣って頂いた夜の国の方達にもお礼を伝えたいです。」

沖田総司は少女に微笑んで話し出す。

「私と斉藤さんから、鈴ちゃんの感謝の気持ちを伝えるよ。」

斉藤一は少女に普通の表情で頷いた。

少女は紙を持ち、沖田総司と斉藤一に微笑んで話し出す。

「総司さん。斉藤さん。お願いします。」

沖田総司は少女に微笑んで頷いた。

斉藤一は少女に普通の表情で頷いた。

少女は紙を持ち、兎苔と紙を微笑んで見た。



「み吉野の 青根が岳の 蘿むしろ 誰れか織りけむ 経緯なしに」

兎の姿の花の咲く兎苔。

沖田総司と少女の想いは、斉藤一の助けと夜の国の住人の助けによって、縦糸も横糸もきっちりと編んだように綺麗に彩られている。

夜の国の夏の時間は、穏やかに過ぎていく。




*      *      *      *      *      *




ここからは後書きになります。

この物語に登場する歌は「万葉集 第七巻 一一二〇番」

「み吉野の 青根が岳の 蘿むしろ 誰れか織りけむ 経緯なしに」

作者は「詠み人知らず」

ひらがなの読み方は「みよしのの あおがたけの こけむしろ たれかおりけむ たてぬきなしに」

原文は「三芳野之 青根我峯之 蘿席 誰将織 經緯無二」

歌の意味は「吉野(よしの)の青根が岳(たけ)の苔(こけ)のじゅうたんは、誰が編んだのでしょう。縦糸も横糸もきっちりと編んだようにきれいです。」となるそうです。

「青根が岳(あおがたけ)」は、吉野の奥に在る山の事です。

「苔(こけ)」は、コケ類の事です。

一般的には湿気を好み、渓流のそばなどに生えますが、乾いたところに生える種類もあります。

万葉集では、時間の長さを表現するのに、「苔生す(こけむす)」という言葉が使われています。

「兎苔(うさぎごけ)」についてです。

タヌキモ科タヌキモ属の多年草です。

「兎苔」は、花がウサギの姿に見える様子か付いた和名です。

「兎苔」、「ウサギゴケ」、などで流通している事が多いです。

学名は「utricularea.sandersonii」です。

学名をカタカナ読みした「ウトリキュラリア・サンダーソニー」で呼ぶ事もあります。

食虫植物です。

湿地に生える植物です。

南アフリカ原産です。

1cmほどの小さな花が咲きます。

花がウサギの姿に見えるのが特徴です。

薄い藤色の花が咲きます。

草丈は、5cmほどです。

根の部分に、目に見えないくらいの小さな袋(捕虫嚢)が有り、そこで小さな微生物を捕まえて栄養にしています。

楽しんで頂けると嬉しいです。





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