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~ 雪月花 新撰組異聞 編 ~


~ 鳴神月 音のみ聞きし 今日見つるかも ~


登場人物

土方歳三、沖田総司、斉藤一、少女[美鈴・鈴]




「鳴る神の 音のみ聞きし 巻向の 桧原の山を 今日見つるかも」

「万葉集 第七巻 一〇九二番」より

作者:柿本人麻呂(かきのもとのひろまろ)歌集より




今は夏。



ここは、京の町。



暑い日が続いている。



ここは、料亭。



一室。



土方歳三は杯の酒を微笑んで飲んでいる。

沖田総司は肴を美味しく笑顔で食べている。

斉藤一は杯の酒を普通の表情で飲んでいる。

土方歳三の膳、沖田総司の膳、斉藤一の膳には、豪華な肴、美味しい酒が載っている。



沖田総司は肴を食べながら、土方歳三に笑顔で話し出す。

「土方さん! 酒も肴も、とても美味しいです!」

斉藤一は杯の酒を飲みながら、土方歳三に普通の表情で軽く礼をした。

土方歳三は杯の酒を飲みながら、沖田総司と斉藤一を微笑んで見た。

沖田総司は肴を食べながら、土方歳三に笑顔で話し出す。

「土方さん! 豪華な酒も豪華な肴も、本当にご馳走になっても良いのですか?!」

土方歳三は杯の酒を飲みながら、沖田総司に微笑んで話し出す。

「勿論、約束のとおり、奢る。安心してくれ。」

沖田総司は肴を食べながら、土方歳三に笑顔で話し出す。

「豪華な酒や豪華な肴をご馳走するのに、本当に頼み事は無いのですか?!」

土方歳三は杯の酒を飲みながら、沖田総司に微笑んで話し出す。

「豪華な酒と豪華な肴をご馳走するのだから、見合った頼み事がある。」

沖田総司は肴を食べるのを止めると、土方歳三を驚いた表情で見た。

斉藤一は杯の酒を飲みながら、土方歳三と沖田総司を普通の表情で見た。

土方歳三は杯の酒を飲みながら、沖田総司に微笑んで話し出す。

「総司。俺は料亭で奢ると話した。純粋に奢るだけで終わる訳がないだろ。」

沖田総司は土方歳三を苦笑して見た。

斉藤一は杯の酒を飲みながら、土方歳三と沖田総司を普通の表情で見ている。

沖田総司は斉藤一に苦笑して話し出す。

「斉藤さんも純粋に奢られると思って了承しましたよね。」

斉藤一は杯の酒を飲みながら、沖田総司に普通に話し出す。

「土方さんは、策士で鬼の副局長だ。土方さんが料亭で奢ると話した。土方さんは何かの礼で奢ると話していない。今回は、土方さんが頼み事のために、俺と総司を誘った、と考えるのが妥当だ。」

沖田総司は斉藤一を感心して見た。

斉藤一は杯の酒を飲みながら、沖田総司を普通の表情で見た。

沖田総司は斉藤一に微笑んで話し出す。

「斉藤さん。土方さんから頼まれた内容は何ですか?」

斉藤一は杯の酒を飲みながら、沖田総司に普通に話し出す。

「俺は、簡単に頼み事の内容を確認したが、総司の頼み事は確認していない。」

沖田総司は土方歳三に微笑んで話し出す。

「土方さん。私への頼み事は何ですか?」

土方歳三は杯の酒を飲みながら、沖田総司に微笑んで話し出す。

「今は忘れた。少し経ったら思い出す。」

沖田総司は土方歳三を怪訝な様子で見た。

土方歳三は杯の酒を飲みながら、沖田総司と斉藤一に微笑んで話し出す。

「総司。斉藤。話を変える。実は、今回の店で飲みたかったんだ。」

沖田総司は土方歳三に怪訝な様子で話し出す。

「土方さん。話を逸らさないでください。」

土方歳三は杯の酒を飲むのを止めると、沖田総司を微笑んで見た。

斉藤一は杯の酒を飲みながら、土方歳三と沖田総司を普通の表情で見た。

沖田総司は土方歳三を怪訝な様子で見た。

土方歳三は沖田総司を見ながら、人差し指を土方歳三の口元に微笑んで当てた。

沖田総司は土方歳三を納得いかない様子で見た。



部屋の外から、数人の声が聞こえた。

「新撰組の副長の土方は、切れ者らしいな。」

「確かに切れ者だ。」

「切れ者で恰好が良いらしいぞ。」

「かなり持てるという噂を聞いた。」

「切れ者で恰好が良いという噂の他に、策士、冷淡、という噂もある。」

「俺も両方の内容の噂を聞いた。」

「冷淡の表現が一番合う人物は、新撰組の三番組組長の斉藤という噂を聞いた。」

「新撰組の斉藤は、冷淡の表現より、怖い、恐ろしい、という表現が近いらしい。」

「新撰組の斉藤は、無表情で無口らしいな。」

「新撰組の斉藤の表情の変わる様子。新撰組の斉藤の話し声。誰も知らないという噂を聞いた。」

「何故、誰も知らないんだ?」

「斉藤に斬られて亡くなるかららしい。」

「怖いな。」

「俺は、土方にも斉藤にも、会いたくない。」

「俺も二人共に会いたくない。」



沖田総司は土方歳三と斉藤一を心配して見た。

斉藤一は杯の酒を飲みながら、土方歳三を普通の表情で見ている。

土方歳三は杯に酒を注ぐと、沖田総司に微笑んで話し出す。

「噂が合っているならば、俺も総司も、斉藤に斬られて既に亡くなっているな。」

斉藤一は杯の酒を飲みながら、土方歳三に普通に話し出す。

「噂が合っているならば、総司は土方さんより幾度も多く亡くなっています。現在の総司は、幾人目なのか数え切れません。」

土方歳三は杯の酒を飲みながら、沖田総司に微笑んで話し出す。

「総司。斉藤が噂と違っていて良かったな。」

沖田総司は斉藤一に微笑んで話し出す。

「斉藤さんは、私に対して怒る状況になった経験が一度も無いそうです。斉藤さんは、冷静で優しい人物です。私と斉藤さんは、物凄く大切な友達です。私も斉藤さんも、強いです。斉藤さんは無茶をしない人物です。」

斉藤一は杯の酒を飲みながら、沖田総司に普通に話し出す。

「総司の言動に対して怒っていたら、回数が物凄く多過ぎて、面倒だ。総司は強過ぎるから、怒る気持ちになる度に斬ろうとすると、物凄く労力が必要だから面倒だ。総司が亡くなると、新撰組の数少ない強い剣士が一人減る。俺にとっては、公私共に面倒が増える。様々な方面から考えた結果、総司との関係が続いている。」

沖田総司は斉藤一に苦笑して話し出す。

「斉藤さん。私を斬らない一番の理由は、斉藤さんにとって一番の友達だからですよね。」

斉藤一は杯の酒を飲みながら、沖田総司に普通に話し出す。

「俺は総司に友達だと答えた記憶は一度もない。」

沖田総司は斉藤一を拗ねて見た。

土方歳三は杯の酒を飲みながら、斉藤一に微笑んで話し出す。

「先程の外の人物達は、斉藤の姿も斉藤の声も、知らないな。」

斉藤一は杯の酒を飲みながら、土方歳三に普通の表情で軽く礼をした。

土方歳三は杯の酒を飲みながら、斉藤一を見て、微笑んで呟いた。

「“鳴る神の 音のみ聞きし 壬生の花 斉藤一を 今日見つるかも”。」

斉藤一は杯の酒を飲みながら、土方歳三を普通の表情で見た。

沖田総司は土方歳三を不思議な様子で見た。

土方歳三は杯の酒を飲みながら、斉藤一に微笑んで話し出す。

「良い表現を考えていたが、普通の喩えになってしまった。更なる精進が必要だな。」

斉藤一は杯の酒を飲みながら、土方歳三に普通に話し出す。

「歌で表現して頂いてありがとうございます。」

沖田総司は土方歳三と斉藤一を不思議な様子で見た。

土方歳三は杯の酒を飲みながら、沖田総司に微笑んで話し出す。

「総司。元歌を知っているか?」

沖田総司は土方歳三に不思議な様子で話し出す。

「知りません。」

土方歳三は杯の酒を飲みながら、沖田総司に微笑んで話し出す。

「元歌は、“鳴る神の 音のみ聞きし 巻向の 桧原の山を 今日見つるかも”。万葉集に掲載している歌だ。」

沖田総司は土方歳三を微笑んで見た。

土方歳三は杯の酒を飲みながら、沖田総司に微笑んで話し出す。

「総司に頼む内容を変えた。」

沖田総司は土方歳三を不思議な様子で見た。

土方歳三は杯の酒を飲みながら、沖田総司に微笑んで話し出す。

「日を改めて、総司に元歌について教える。斉藤も同席させる。しっかりと覚えてくれ。」

沖田総司は土方歳三を驚いた表情で見た。

斉藤一は杯の酒を飲みながら、土方歳三に普通の表情で軽く礼をした。

土方歳三は杯の酒を飲みながら、沖田総司に微笑んで話し出す。

「総司。斉藤が同席する。良かったな。」

沖田総司は土方歳三に渋々と話し出す。

「はい。」

土方歳三は杯の酒を飲みながら、沖田総司と斉藤一を微笑んで見た。

沖田総司は土方歳三に渋々と話し出す。

「今日は、驕りで、頼み事も受けました。今日は、酒も肴も、思い切り頼みますね。」

土方歳三は杯の酒を飲みながら、沖田総司に苦笑して頷いた。

沖田総司は土方歳三を笑顔で見た。



数日後の事。



ここは、京の町。



夕日が空を橙色に染めている。



ここは、小道。



浪士が辺りを気にしながら歩いている。



浪士の前に人影が見えた。



浪士は驚いた表情で止まった。



浪士の前に居る人物は、斉藤一になる。



斉藤一は浪士を普通の表情で見ている。

浪士は斉藤一を驚いた表情で見た。

斉藤一は浪士を睨んだ。

浪士は斉藤一を恐怖の表情で見た。

斉藤一は浪士を睨んで、刀に手を掛けた。



浪士の後ろから、鋭い殺気を感じた。



浪士は後ろを恐怖の表情でゆっくりと見た。



沖田総司が浪士を冷たい表情で見ている。



浪士は沖田総司を恐怖の表情で見た。



沖田総司は浪士を冷たい表情で睨んで、刀に手を掛けた。



浪士は突然に大きく目を見開いた。



沖田総司は浪士を冷たい表情で睨んで、刀に手を掛けている。



浪士は目を見開いたまま、地面へと崩れ落ちた。



沖田総司は浪士を冷たい表情で睨んで、刀に手を掛けている。



浪士は事切れている。



浪士を覆う影が現れた。



沖田総司は刀から手を放すと、影の先を冷たい表情で見た。



斉藤一は刀を持ち、浪士を普通の表情で見た。



沖田総司は斉藤一を冷たい表情で見た。



斉藤一は刀を持ち、沖田総司を普通の表情で見た。



沖田総司は斉藤一に冷めたい表情で頷いた。



斉藤一は刀を持ち、沖田総司に普通の表情で頷いた。



沖田総司は冷たい表情で居なくなった。



斉藤一は刀を持ち、普通の表情で居なくなった。



暫く後の事。



今は夜になる。



ここは、京の町。



夜空には、月がゆったりと浮かんでいる。



ここは、屯所。



土方歳三の部屋。



土方歳三は普通に居る。

斉藤一も普通に居る。



土方歳三は斉藤一に普通に話し出す。

「斉藤。礼を言う。」

斉藤一は土方歳三に普通の表情で軽く礼をした。

土方歳三は斉藤一に普通に話し出す。

「斉藤ならば、一人でも問題なく実行できるが、更に確実性を高めるために、総司を同行させた。正解だったかな?」

斉藤一は土方歳三を普通の表情で見た。

土方歳三は斉藤一に微笑んで話し出す。

「言い直す。斉藤は一人のみで実行できるが、更に確実性を高めるために、総司を同行させた。正解だったかな?」

斉藤一は土方歳三に普通の表情で軽く礼をした。

土方歳三は斉藤一に微笑んで話し出す。

「さすが。斉藤だな。」

斉藤一は土方歳三に普通の表情で軽く礼をした。

土方歳三は斉藤一を微笑んで見た。

斉藤一は土方歳三を普通の表情で見た。

土方歳三は斉藤一に微笑んで話し出す。

「“鳴る神の 音のみ聞きし 壬生の蓮 斉藤一を 今日も見つるかも”。」

斉藤一は土方歳三を普通の表情で見ている。

土方歳三は斉藤一に微笑んで話し出す。

「更なる歌についての精進が必要だな。」

斉藤一は土方歳三に普通に話し出す。

「俺を蓮に喩えたので、即答できませんでした。遅れましたが、返事をします。良いと思います。」

土方歳三は斉藤一を微笑んで見た。

斉藤一は土方歳三を普通の表情で見た。



翌日の事。



ここは、京の町。



沖田総司と少女が良く訪れる寺。



本堂。



縁の傍。



沖田総司は微笑んで居る。

少女も微笑んで居る。



沖田総司は少女に微笑んで話し出す。

「鈴ちゃん。“鳴る神の 音のみ聞きし”、“今日見つるかも”、が詠み込まれている万葉集の歌。知っているかな?」

少女は沖田総司に微笑んで話し出す。

「“鳴る神の 音のみ聞きし 巻向の 桧原の山を 今日見つるかも”、でしょうか?」

沖田総司は少女に微笑んで話し出す。

「今の歌だよ。さすが鈴ちゃん。」

少女は沖田総司に微笑んで話し出す。

「褒めて頂いて嬉しいです。」

沖田総司は少女に微笑んで話し出す。

「数日ほど前に、土方さんと私と斉藤さんで、出掛けたんだ。出掛けた先で、土方さんの奢りで、豪華な酒と豪華な肴を、楽しんだんだ。私が美味しいと話しながら酒と肴を楽しむ間に、奢るための条件が有ると分かったんだ。私は土方さんに条件を確認しないで奢ってもらったから焦ったんだ。土方さんの奢るための条件を受けたから、豪華な酒と肴を、思い切り注文したら、土方さんから別な条件を追加されてしまったんだ。」

少女は沖田総司を微笑んで見ている。

沖田総司は少女に微笑んで話し出す。

「今夜は、土方さんから、斉藤さんと一緒に、鈴ちゃんに話した今の歌について教えてもらうんだ。差し支えなければ、今の歌に関して、鈴ちゃんの知る内容を教えてくれるかな?」

少女は沖田総司に微笑んで話し出す。

「はい。」

沖田総司は少女を微笑んで見た。



暫く後の事。



ここは、屯所。



土方歳三の部屋。



土方歳三は微笑んで居る。



沖田総司は部屋を不思議な様子で訪ねた。



土方歳三は沖田総司に微笑んで話し出す。

「総司。」

沖田総司は土方歳三に不思議な様子で話し出す。

「土方さん。私への用事。何ですか?」

土方歳三は沖田総司を羽交い絞めすると、沖田総司に苦笑して話し出す。

「総司。俺を酷い人物に感じる内容を話すな。勘違いしたら困る。」

沖田総司は土方歳三に困惑して話し出す。

「土方さん。誰から何を聞いたのですか?」

土方歳三は沖田総司を羽交い絞めにて、沖田総司に微笑んで話し出す。

「ひ、み、つ。」

沖田総司は土方歳三を困惑して見た。



斉藤一は部屋を普通に訪ねた。



土方歳三は沖田総司を羽交い絞めにして、斉藤一を微笑んで見た。

沖田総司は斉藤一を見ると、斉藤一に怪訝な様子で話し出す。

「斉藤さん。私は、悪い言動も酷い言動も、していません。何故、土方さんに告げ口をしたのですか?」

斉藤一は沖田総司に普通に話し出す。

「総司。訳の分からない内容を話すな。」

沖田総司は斉藤一に怪訝な様子で話し出す。

「思い切り訳の分かる内容を話しています。」

斉藤一は沖田総司に普通に話し出す。

「総司。俺が信じられないのか?」

沖田総司は斉藤一に怪訝な様子で話し出す。

「勿論、斉藤さんを信じています。」

斉藤一は沖田総司に普通に話し出す。

「俺は土方さんに告げ口をしていない。俺には訳の分からない内容の話だ。総司が俺を本当に信じているならば、総司の返事は一つになる。」

沖田総司は斉藤一に怪訝な様子で頷いた。

斉藤一は沖田総司に普通に話し出す。

「総司。態度も表情も、俺を思い切り疑っている。」

土方歳三は沖田総司を微笑んで放した。

沖田総司は下を見ると、軽く息をはいた。

斉藤一は沖田総司を普通の表情で見た。

沖田総司は斉藤一を見ると、斉藤一に苦笑して話し出す。

「私は斉藤さんを信じています。」

斉藤一は沖田総司に普通の表情で頷いた。

沖田総司は土方歳三と斉藤一を見ながら、疲れた様子で軽く息をはいた。

土方歳三は沖田総司と斉藤一に微笑んで話し出す。

「今夜は、先日の教えた歌について、しっかりと覚えてもらう。歌の勉強を始める時間までに余裕が有る。少し休め。」

沖田総司は土方歳三に疲れた様子で軽く礼をした。

斉藤一は土方歳三に普通の表情で軽く礼をした。

土方歳三は沖田総司と斉藤一を微笑んで見た。



沖田総司は部屋を疲れた様子で出て行った。

斉藤一は部屋を普通に出て行った。



僅かに後の事。



ここは、屯所。



沖田総司の部屋。



沖田総司は床の中で静かに寝ている。

斉藤一は沖田総司を普通の表情で見ている。



斉藤一は沖田総司を見ながら、普通の表情で頷いた。

「“鳴る神の 音のみ聞きし 壬生桜 沖田総司を 今日見つるかも”。俺は総司に幾度も逢っている。歌の内容とは違うが、今後もたくさん楽しませてくれ。」

沖田総司は床の中で静かに寝ている。

斉藤一は沖田総司を普通の表情で見た。



「鳴る神の 音のみ聞きし 巻向の 桧原の山を 今日見つるかも」

噂のみで聞く斉藤一は、無口で無表情で鳴る神のように恐れられている。

斉藤一に実際に会うと噂のとおりと感じる人物達が多い。

実際に斉藤一に会っても、噂のとおりに感じない人物が一部のみだが居る。

斉藤一にとっては、不思議な人物になり、興味のある人物になる。



夏の時間は、様々な出来事と共に過ぎていく。




*      *      *      *      *      *




ここからは後書きになります。

この物語に登場する歌は「万葉集 第七巻 一〇九二番」

「鳴る神の 音のみ聞きし 巻向の 桧原の山を 今日見つるかも」

ひらがなの読み方は「なるかみの おとのみききし まきむくの ひはらのやまを けふみつるかも」

作者は「柿本人麻呂(かきのもとのひろまろ)歌集より」

歌の意味は「うわさだけに聞いていた巻向の、桧原の山を、きょう見たのです。」となるそうです。

原文は「動神之 音耳聞 巻向之 桧原山乎 今日見鶴鴨」

「鳴る神の」は、「音に聞く」を導く枕詞です。

「鳴る神」は、「雷」様の事です。

「桧原」は「桧の原」という意味です。

「巻向」は、奈良県桜井市に山や駅名などで在ります。

「桧原神社」が奈良県桜井市に在ります。

万葉集では、雷を「鳴る神」という言い方がされています。

神聖で恐ろしいものを意味しているようです。

「鳴神月(なるかみづき)」についてです。

「陰暦六月の異称」です。

「雷鳴が多い月」という意味から付いた異称だそうです。

楽しんで頂けると嬉しいです。





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