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~ 雪月花 新撰組異聞 編 ~
~ 夏の物語 向日葵の笑顔 瀬々に ~
登場人物
沖田総司、斉藤一、少女[美鈴・鈴]
「明日香川 瀬々に玉藻は 生ひたれど しがらみあれば 靡きあはなくに」
「万葉集 第七巻 一三八〇番」より
作者:詠み人知らず
今は、夏。
ここは、京の町。
暑さを感じる日が続いている。
ここは、屯所。
斉藤一の部屋。
斉藤一は普通に居る。
沖田総司は部屋を微笑んで訪ねた。
斉藤一は沖田総司を普通の表情で見た。
沖田総司は斉藤一に微笑んで話し出す。
「斉藤さん。暑いですね。」
斉藤一は沖田総司に普通の表情で頷いた。
沖田総司は斉藤一に微笑んで話し出す。
「鈴ちゃんに花を贈りたいです。今の時季に咲く花の中で、贈り物になる花を知りませんか?」
斉藤一は沖田総司に普通に話し出す。
「総司。今回も美鈴さんの気持ちを沈ませる言動をしたのか?」
沖田総司は斉藤一に苦笑して話し出す。
「斉藤さん。私が鈴ちゃんに贈り物をしたいと話す度に、同じ内容を確認しています。」
斉藤一は沖田総司に普通に話し出す。
「総司は、風流に疎く、女性に対する気遣いが足りない。美鈴さんの気持ちを沈ませる可能性が有るから、念のために確認している。」
沖田総司は斉藤一を苦笑して見た。
斉藤一は沖田総司に普通に話し出す。
「総司。先程の答えを話す。」
沖田総司は斉藤一に微笑んで話し出す。
「お願いします。」
斉藤一は沖田総司に普通に話し出す。
「向日葵。」
沖田総司は斉藤一に不思議な様子で話し出す。
「向日葵?」
斉藤一は沖田総司に普通に話し出す。
「総司。向日葵を知らないのか?」
沖田総司は斉藤一に不思議な様子で話し出す。
「食べ物に利用する向日葵ですか?」
斉藤一は沖田総司に普通の表情で頷いた。
沖田総司は斉藤一に微笑んで話し出す。
「鈴ちゃんの笑顔は、向日葵の花に似ています。鈴ちゃんに相応しい贈り物です。」
斉藤一は沖田総司に普通の表情で頷いた。
沖田総司は斉藤一を微笑んで見た。
斉藤一は沖田総司に普通に話し出す。
「向日葵は、花が太陽の動きに連れて動く様子から名付けられたそうだ。実際は、向日葵の花が太陽の動きに連れて動く時は、成長の途中のみらしい。」
沖田総司は斉藤一を感心して見た。
斉藤一は沖田総司に普通に話し出す。
「総司は、剣術関係には天才的な能力を発揮するが、特定の面では天才的な鈍さを発揮する。総司は、美鈴さんに迷惑を掛けながら、気遣いと風流を学んでいる。向日葵が太陽の動きに連れて動く様子は、総司が美鈴さんを見る状況に繋がる。向日葵は、総司より美鈴さんに似合う。」
沖田総司は斉藤一を拗ねて見た。
斉藤一は沖田総司に普通に話し出す。
「俺は事実を話している。俺は総司の質問に答えている。拗ねるな。」
沖田総司は斉藤一を拗ねて見ている。
斉藤一は沖田総司に普通に話し出す。
「総司。以上の内容を踏まえて、美鈴さんに向日葵の花を贈れ。向日葵の花を手に入れるための手伝が必要な時は、教えろ。」
沖田総司は斉藤一に拗ねて話し出す。
「はい~」
斉藤一は沖田総司を普通の表情で見た。
沖田総司は斉藤一を苦笑して見た。
翌日の事。
ここは、屯所。
沖田総司の部屋。
沖田総司は普通に居る。
斉藤一は部屋に普通に来た。
沖田総司は斉藤一を微笑んで見た。
斉藤一は沖田総司に普通に話し出す。
「総司。向日葵の花を譲ってもらう人物は見付かったのか? 美鈴さんへの向日葵の花の贈り物を渡す日は決まったのか?」
沖田総司は斉藤一に微笑んで話し出す。
「鈴ちゃんに向日葵の花と歌を贈りたいです。斉藤さん。良い歌を知りませんか?」
斉藤一は沖田総司に普通に話し出す。
「総司。返事は明日にしたい。良いか?」
沖田総司は斉藤一に微笑んで話し出す。
「はい。」
斉藤一は沖田総司を普通の表情で見た。
沖田総司は斉藤一を微笑んで見た。
翌日の事。
ここは、屯所。
斉藤一の部屋。
斉藤一は普通に居る。
沖田総司は部屋を微笑んで訪ねた。
斉藤一は沖田総司を普通の表情で見た。
沖田総司は斉藤一に微笑んで話し出す。
「斉藤さん。良い歌を教えてもらうために来ました。」
斉藤一は沖田総司に普通に話し出す。
「“明日香川 瀬々に玉藻は 生ひたれど しがらみあれば 靡きあはなくに”」
沖田総司は斉藤一に不思議な様子で話し出す。
「向日葵が歌の中に登場しません。良いのですか?」
斉藤一は沖田総司に普通に話し出す。
「向日葵は、太陽が関係して名付けられた。太陽の明るさと“明日香”を、明日が香る、に置き換えた。向日葵が育つためには水が必要だ。“川”は、水がたくさん集まっている。向日葵に必要な水と“川”を繋げた。」
沖田総司は斉藤一を感心して見た。
斉藤一は沖田総司を普通の表情で見た。
沖田総司は斉藤一に微笑んで話し出す。
「斉藤さん。歌の意味を教えてください。」
斉藤一は沖田総司に普通に話し出す。
「“明日香川の瀬ごとに藻が生えていますが、しがらみがあるので、なびくこともできません。”、となるそうだ。」
沖田総司は斉藤一に微笑んで話し出す。
「斉藤さんの歌の説明を補足して、鈴ちゃんに歌を贈ります。斉藤さん。歌を紙に書いてください。」
斉藤一は沖田総司に普通の表情で頷いた。
沖田総司は斉藤一に微笑んで話し出す。
「斉藤さん。ありがとうございます。」
斉藤一は沖田総司に普通に話し出す。
「総司。言い忘れていた。」
沖田総司は斉藤一を微笑んで見た。
斉藤一は沖田総司に普通に話し出す。
「“明日香川 瀬々に玉藻は 生ひたれど しがらみあれば 靡きあはなくに”。今の歌の中に登場する、“しがらみ”、は、“恋を邪魔する者の比喩として詠まれている”。“邪魔する者のために好きな人に靡くことができない”、と詠んでいるそうだ。」
沖田総司は斉藤一を驚いて見た。
斉藤一は沖田総司を普通の表情で見た。
沖田総司は斉藤一に動揺して話し出す。
「斉藤さんの教えてくれた歌は、歌を贈る方法を間違えると、大問題に発展する可能性があります! 鈴ちゃんが誤解する可能性があります!」
斉藤一は沖田総司に普通に話し出す。
「美鈴さんが誤解しないように歌を贈れ。」
沖田総司は斉藤一に動揺して話し出す。
「無理です!」
斉藤一は沖田総司に普通に話し出す。
「総司。昨日、突然に、美鈴さんと共に話したくなった。昨日、美鈴さんに逢って話した。美鈴さんと俺は、先程の歌について話した。美鈴さんに、先程の歌が総司からの歌の贈り物になると話した。美鈴さんは、総司が贈る歌を知った。美鈴さんには、総司は、歌について疎く、花についても疎い、と、念を押して説明した。美鈴さんは俺の話しをしっかりと理解した。総司は美鈴さんに安心して向日葵と歌を贈れる。」
沖田総司は斉藤一に拗ねて話し出す。
「斉藤さん~ 贈り物を受け取る喜びを半減させました~」
斉藤一は沖田総司に普通に話し出す。
「総司は歌の裏の意味を理解せずに、美鈴さんの歌の贈り物に決めた。美鈴さんは歌の知識が豊富だ。美鈴さんが総司から先程の歌の贈り物を受け取った時に、美鈴さんに迷惑を掛けないために、事前に説明した。」
沖田総司は斉藤一を拗ねて見た。
斉藤一は沖田総司に普通に話し出す。
「美鈴さんに向日葵の贈り物について話していない。美鈴さんの喜びは半減しない。安心しろ。」
沖田総司は斉藤一に拗ねて話し出す。
「今回の歌の贈り物について説明すると~ 向日葵の贈り物が有ると説明する状況になります~ 鈴ちゃんは向日葵の贈り物も有ると知る状況になりました~」
斉藤一は沖田総司に普通に話し出す。
「総司は、向日葵の贈り物も先程の歌の贈り物も、美鈴さんに贈らないのか。仕方が無い。俺が美鈴さんに贈る。」
沖田総司は斉藤一に動揺して話し出す。
「斉藤さん! 駄目です!」
斉藤一は沖田総司に普通に話し出す。
「総司。話し忘れていた。美鈴さんには、総司が贈り物を渡す日は、明日だと話した。美鈴さんは了承している。」
沖田総司は斉藤一に動揺して話し出す。
「斉藤さん! 勝手に決めないでください!」
斉藤一は沖田総司に普通に話し出す。
「贈り主は、総司だ。贈られる相手は、美鈴さんだ。総司は、美鈴さんの予定を確認せずに、総司の都合のみで、贈り物を渡すのか。総司の考えは、傲慢だ。美鈴さんに総司の傲慢な言動を教える。」
沖田総司は斉藤一に動揺して話し出す。
「斉藤さん! 誤解です!」
斉藤一は沖田総司に普通に話し出す。
「俺は誤解しているのか?」
沖田総司は斉藤一に動揺して話し出す。
「はい!」
斉藤一は沖田総司を普通の表情で見た。
沖田総司は斉藤一を動揺して見た。
斉藤一は沖田総司の額を指で普通の表情で思い切り弾いた。
沖田総司は額を痛い様子で押さえて、斉藤一に驚いて話し出す。
「斉藤さん! 痛いです! 何をするのですか?!」
斉藤一は沖田総司に普通に話し出す。
「大切な物が表に出ると思って叩いた。今回も駄目だった。」
沖田総司は額を痛い様子で押さえて、斉藤一に怪訝な様子で話し出す。
「斉藤さんの話す意味が分かりません。」
斉藤一は沖田総司に普通に話し出す。
「総司。面白い。」
沖田総司は額を痛い様子で押さえて、斉藤一を怪訝な様子で見た。
斉藤一は沖田総司に普通に話し出す。
「総司。贈り物を渡す日は、明日だ。時間が無い。先程の歌の説明を追加したい。しっかりと覚えろ。」
沖田総司は額を痛い様子で押さえて、渋々と話し出す。
「はい。」
斉藤一は沖田総司を普通の表情で見た。
翌日の事。
ここは、落ち着いた雰囲気の寺。
本堂。
沖田総司は微笑んで居る。
少女も微笑んで居る。
沖田総司は少女に微笑んで話し出す。
「斉藤さんが花の贈り物を持って来るんだ。少し待っていてね。」
少女は沖田総司に微笑んで話し出す。
「はい。」
沖田総司は少女に微笑んで話し出す。
「鈴ちゃん。昨日、斉藤さんが歌の贈り物について話したよね。事前に説明を受けたから、喜びが半減するよね?」
少女は沖田総司に微笑んで話し出す。
「斉藤さんが、総司さんは向日葵のお花とお歌を繋げて、贈り物に選んだと話しました。贈り物が二つも受け取れます。とても嬉しいです。嬉しさは半減しません。」
沖田総司は少女を微笑んで見た。
少女も沖田総司を微笑んで見た。
沖田総司は少女に微笑んで話し出す。
「向日葵は、花が太陽の動きに連れて動く様子を基にして名付けられたよね。実際は、向日葵の花が太陽の動きに連れて動く時期は、成長途中なんだって。斉藤さんが、私は歌について疎いから成長途中、鈴ちゃんは歌について詳しいから太陽、だと話したんだ。向日葵の花は、鈴ちゃんへの贈り物ではなくて、私が贈り物として受け取った方が良い、と話したんだ。鈴ちゃんは、歌に詳しくて、笑顔が素敵だから、向日葵に似ているよね。斉藤さんの話を全て否定できないと思ったんだ。」
少女は沖田総司に恥ずかしく話し出す。
「向日葵のお花に喩えながら、褒めて頂いて嬉しいです。」
沖田総司は少女に微笑んで話し出す。
「鈴ちゃん。照れる表情も向日葵に似ているよ。」
少女は沖田総司を恥ずかしく見た。
沖田総司は少女を微笑んで見た。
斉藤一が向日葵の花束を持ち、部屋の中に普通に入ってきた。
沖田総司は斉藤一を微笑んで見た。
少女は斉藤一を微笑んで見た。
斉藤一は向日葵の花束を傍に置くと、沖田総司と少女を普通の表情で見た。
沖田総司は斉藤一に微笑んで話し出す。
「斉藤さんが向日葵の花束を抱く姿。印象に残ります。寺に着くまで、たくさんの人達の視線を感じましたよね。」
斉藤一は沖田総司に普通に話し出す。
「俺が向日葵の花束を抱えた場所は、寺の敷地内のみだ。今の寺の敷地内に居る人物は、寺の関係者、総司、俺、美鈴さん、になる。今の居る寺の関係者は、たくさんの視線を向けないし、外部に無駄な内容を話さない。」
沖田総司は斉藤一に不思議な様子で話し出す。
「斉藤さん。寺まで向日葵の花束を持ってきて欲しいと頼んだのですか?」
斉藤一は沖田総司に普通に話し出す。
「誰にも頼んでいない。結果的に、寺まで向日葵の花束を持ってきてもらえた。」
沖田総司は斉藤一を不思議な様子で見た。
斉藤一は沖田総司に普通に話し出す。
「総司。美鈴さんに向日葵の贈り物と歌の贈り物を渡さないのか? 仕方が無い。俺が美鈴さんに贈り物を渡す。」
沖田総司は斉藤一に慌てて話し出す。
「私が鈴ちゃんに贈り物を渡します! 斉藤さん! 向日葵の花束を早くください!」
斉藤一は少女に普通に話し出す。
「美鈴さん。贈り物を受け取る時間が近付いている。楽しみだな。」
少女は斉藤一に微笑んで話し出す。
「はい。」
斉藤一は向日葵の花束を持つと、沖田総司に向日葵の花束を普通に渡した。
沖田総司は軽く息をはくと、斉藤一から向日葵の花束を微笑んで受け取った。
少女は沖田総司と斉藤一を微笑んで見た。
「明日香川 瀬々に玉藻は 生ひたれど しがらみあれば 靡きあはなくに」
歌の贈り物。
向日葵の花束の贈り物。
沖田総司は、別な意味を持つ歌だと知らずに、贈り物に決めた。
沖田総司は、斉藤一から歌の意味の説明を受けて、慌てた。
沖田総司は、剣術関連では天才的能力を発揮しているが、或る面では天才的な鈍さを発揮している。
斉藤一の苦労と少女の苦労は、暫く続く予感がする。
* * * * * *
ここからは後書きになります。
この物語に登場する歌は「万葉集 第七巻 一三八〇番」
「明日香川 瀬々に玉藻は 生ひたれど しがらみあれば 靡きあはなくに」
ひらがなの読み方は「あすかがわ せぜにたまもは おひたれど しがらみあれば なびきあはなくに」
作者は「詠み人知らず」
歌の意味は「明日香川の瀬ごとに藻が生えていますが、しがらみがあるので、なびくこともできません。」となるそうです。
原文は「明日香川 湍瀬尓 玉藻者 雖生有 四賀良美有者 靡不相」
「しがらみ」は、川の流れをせき止めるための柵(さく)のことです。
この歌では、恋を邪魔する者の比喩として詠まれています。
邪魔する者のために好きな人に靡くことができない、と詠んでいるそうです。
「瀬々(せぜ)」についてです。
「せせ」とも読みます。
「瀬瀬」と書く事があるそうです。
「多くの瀬」、の意味と、「その時々。折々。」、の意味があります。
「ひまわり」についてです。
キク科の一年草です。
北アメリカ原産です。
書き方は、「ひまわり」、「ヒマワリ」、「向日葵」、で見る事が多いです。
英語名は「sunflower(サンフラワー)」です。
フランス語名は、「tournesol」、「soleil(ソレイユ)(※“太陽”の意味の他に、“ひまわり”の意味もある)」、です。
中国名は「向日葵」です。
和名の別名は、「日輪草(にちりんそう)」、「日車(ひぐるま)」、「天蓋花(てんがいばな)(※一般的には、彼岸花[ひがんばな]の別名だが、向日葵の別名でもある)」、などです。
夏の季語です。
高さは、約1~3mです。
開花時期は、現在の暦で、7月上旬~9月上旬です。
茎は太くて直立し、長い柄をもつ大きな心臓形の葉が互生します。
夏に、周囲が鮮黄色、中央が褐色の大きな頭状の花を横向きに開きます。
花は太陽を向き、その動きにつれて回るといわれるが、それほど動きません。
種子は、食用、採油用、としても利用しています。
花・種子・茎・葉、などを含めると、観賞用、家畜用飼料、食用、採取用、などに利用しています。
現在のヒマワリは、高さ2m以下、周囲が鮮黄色以外の色、中央が褐色以外の色、大輪・小輪、など様々な種類があります。
16世紀にアメリカからスペイン王立植物園に持ち込まれて、ヨーロッパに広まっていったそうです。
ヨーロッパで観賞用に栽培・改良が進みました。
ロシアでは食用として改良されて栽培されたそうです。
ヨーロッパから中国に伝わったそうです。
日本には、寛文年間(1661年~1673年)に中国から渡来したそうです。
渡来した時の名前は「丈菊(じょうぎく)」だったようです。
最初の頃は「丈菊」と呼んでいたそうです。
元禄時代(1688年~1704年)の頃に「ひまわり」の名前が広まったそうです。
楽しんで頂けると嬉しいです。
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